AIに頼むときのそっけない態度が、人への接し方にうつらないか心配。計1,261人の実験では、AIが相手だと思ってやりとりした人は、その後に別の人の作品を少し厳しく評価していた

AIには「もっと短く」「やり直して」と、気をつかわずに頼めます。それに慣れてくると、同僚や家族への言い方まで、知らないうちにそっけなくなっていないか気になることがあります。AIとのやりとりのあとに、人への接し方が変わるのかを確かめた実験があります。結果と、日頃からできる切り替えの工夫を整理しました。
3行でわかる
- 2つの実験(計1,261人)では、同じAIを相手に、AIだと思って2.5分やりとりした人は、人だと思った人より要求が強めになり、その後に別の人の作品を少し厳しく評価していた。
- 米国の大人4,171人のゲームの実験では、ロボットが相手だと思って遊んだ人は、次に組んだ人間の相手にも協力しにくい傾向があった。相手への思いやりの気持ちが下がっていたことが関わっていた。
- どれも短い実験の中の小さな差で、日々AIを使う人に長く続くかはわかっていない。評価の前に間をおく、送る前に相手を思い浮かべる、といった切り替えで備えられる。
01 結論から言うとAIへのそっけなさは、人への接し方にうつる?
短い時間なら、うつることがあります。実験では、AIだと思ってやりとりした直後に、別の人の作品の評価が少し厳しくなっていました。ただし差は小さく、長く続くかや日常でも起きるかは、まだ確かめられていません。
注目したいのは、実験で比べた2つの組が、実はどちらも同じAIとやりとりしていた点です。違ったのは「相手はAI」と伝えられたか、「相手は人」と伝えられたかだけでした。つまり、相手の中身ではなく、「相手はAIだ」という思いが、その後の人への見方に影響していたことになります。
AIを使うこと自体を悪く考える必要はありません。AIの場面から人の場面へ移るときに、少し切り替えを意識すると、備えになりそうです。
02 研究とデータでわかっていることAIとやりとりしたあと、人への態度はどう変わった?
AIだと思ってやりとりした人は、人だと思った人より要求が強く、相手への関心や前向きな気持ちが少なめでした。そのあと、別の人の作品を少し低く評価していました。協力のゲームでも、ロボットのあとは人への協力が減っていました。
Tey ら(2024)[1]
参加者をくじ引きで2組に分け、写真に付ける面白い一言を相手と一緒に考えてもらいました。相手はどちらの組も同じ対話AIでしたが、一方には「AI」、もう一方には「人の参加者」と伝えました。AIだと思った組は、相手への要求が強く、道具のように扱う言い方が多く、前向きな気持ちの表れが少なめでした。その直後、別の参加者の一言を10点満点で評価すると、AIだと思った組のほうが低い点をつけていました。2つ目の実験では、評価が相手に伝わらない場合でも、同じ傾向が見られました。
対象: オンラインの調査サービスで募った人(実験1は500人、実験2は761人)。分析は、AIを何度か使ったことがある人に絞っていました / 限界: 差は小さめでした。丁寧さの点数そのものには、はっきりした差がありませんでした。評価はやりとりの直後に行われ、時間がたつとどうなるかは調べられていません。
Harrell・Traeger(2025)[2]
協力するか裏切るかを選ぶゲームを、最初の相手と10回行い、そのあと新しい人の相手と組んでもらいました。最初の相手を「ロボット」と伝えられた人は、「人」と伝えられた人より、新しい人の相手にも協力しにくい傾向がありました。2つ目の実験では、ロボットが相手だと思った人ほど、相手への思いやりや相手の立場に立つ気持ちが低く、それが次の人への協力の少なさにつながっていました。最初の相手が協力的だった場合は、次の人にも協力しやすくなっていました。
対象: 米国に住む大人4,171人(平均39歳ほど) / 限界: 相手は会話をしない単純なプログラムで、対話AIで同じことが起きるかは、研究チームも今後の課題としています。
Gu ら(2026)[3]
AIとのやりとりで身についた話し方や見方が、人とのやりとりに持ち越されることを「規範の漏れ(ノーム・リーケージ)」と呼び、これまでの研究を整理しました。何でも受け入れて同意しやすいAIほど、この持ち越しを強めるおそれがあると考えています。
対象: これまでの実験・調査の整理と提案の論文 / 限界: 研究チーム自身が、今ある証拠の多くは短期の実験で、長く続くかや現実の場面での大きさはまだはっきりしないと書いています。
AIには話せるのに人には話しにくくなる悩みは「AIになら話せるのに、人には弱みを見せられなくなった」、AIに何でも同意される不安は「AIに相談すると何でも肯定されて、逆に不安になる」で紹介しています。
03 まだわかっていないこと毎日AIを使うと、人に冷たくなっていく?
まだわかっていません。見つかった実験はどれも、やりとりの直後の小さな変化を調べたものです。毎日の使い方が、何週間・何か月とたつうちに人への接し方を変えるかを確かめた研究は、今回見つかりませんでした。
- 影響がどのくらいの時間続くのかは、どの実験でも調べられていません。
- 協力のゲームの実験の相手は単純なプログラムで、今の対話AIとは違います。
- 参加者はオンラインで募った人や米国の人で、日本の職場や家庭で同じことが起きるかは確かめられていません。
- AIにも思いやりのある言い方をすると持ち越しが減るのかは、まだ試されていません。
04 今日からできるセルフケアAIの場面から人の場面へ、どう切り替える?
人の仕事を評価する前に少し間をおくこと、人に送る前に相手の状況を一文思い浮かべること、評価の言葉を送る前に読み直すことが、研究から考えられる切り替えの工夫です。
人の仕事を評価する前に、少し間をおく
AIで作業した直後に同僚の資料を見るときは、席を立つ、水を飲むなどしてから取りかかります。研究チームが、今後試すべき方法として挙げているものです(効果はまだ試されていません)。
目安 3〜5分
送る前に、相手の状況を一文思い浮かべる
「相手は今日、ほかの仕事で忙しいかもしれない」のように、相手の立場を一文だけ考えてから送ります。協力のゲームの実験では、相手への思いやりや立場に立つ気持ちの下がり方が、次の人への協力の少なさに関わっていました。
目安 送信前に30秒
人への評価や指摘は、送る前に読み直す
AIへの指示のような短い言い切りになっていないかを確かめます。実験では、評価が相手に伝わる場合も伝わらない場合も厳しくなっていたので、自分の評価そのものも一度見直します。
目安 1回1分
AIにイライラしたときの気持ちの切り替え方は「AIの答えがかみ合わなくてイライラする」でまとめています。
05よくある質問
AIに丁寧に話さないと、性格が悪くなりますか?
そこまでは言えません。実験で測ったのは、やりとりの直後の評価や協力の傾向で、性格が変わるかどうかは調べられていません。また、AIと思った人と人だと思った人で、丁寧さそのものにははっきりした差がありませんでした。
AIを仕事で使うのをやめたほうがいいですか?
実験からは、やめたほうがよいとは言えません。差は小さく、すぐあとの場面で見られたものです。人の仕事を評価する前に間をおくなど、切り替えの工夫で備えるのが現実的です。
どのくらいの時間で影響は消えますか?
まだわかっていません。研究チーム自身も、影響がどれだけ続くかは今後の課題だと書いています。評価の前に間をおく方法も提案の段階で、効果は試されていません。
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出典
- Tey, K. S., Mazar, A., Tomaino, G., Duckworth, A. L., & Ungar, L. H. (2024). People judge others more harshly after talking to bots. PNAS Nexus, 3(9), pgae397. https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgae397
- Harrell, A., & Traeger, M. L. (2025). Evidence of spillovers from (non)cooperative human-bot to human-human interactions. iScience, 28(8), 113006. https://doi.org/10.1016/j.isci.2025.113006
- Gu, R., Chen, Z., Peng, M., Liu, C., & Lin, Z. (2026). Why sycophantic LLMs may imperil interactive norms between humans. Communications Psychology, 4, 96. https://doi.org/10.1038/s44271-026-00486-9


