人の目を見て話せない。会話を記録した研究では、2人の目が実際に合っていたのは平均で会話の約1割だった

人と話すとき、相手の目を見ようとすると落ち着かない。目が合うとすぐそらしてしまい、感じが悪いと思われていないか気になる。そんな悩みは珍しくありません。会話中の視線を記録した研究では、2人の目が実際に合っていたのは、平均で会話の約1割でした。ずっと目を合わせなくても、顔のあたりを見ていれば会話は成り立ちます。
3行でわかる
- オーストラリアの研究では、初対面の4分の会話で2人の目が同時に合っていたのは平均12%、1回あたり平均0.36秒だった。
- 一方、同じ論文で別の大学1年生171人に聞くと、「目が合っていた」と感じた割合は平均72%。人は目が合った時間を多めに感じやすい。
- 日本とフィンランドの大学生の実験では、目が合うとどちらの国でも気持ちが高ぶり、日本の学生は目を合わせた顔を「怒っている」と受け取りやすかった。
01 結論から言うと人の目を見て話せないのは、おかしい?
おかしくはありません。会話を記録した研究では、2人の目が合っていたのは平均で会話の約1割でした。人は会話中、目と口元など顔のあちこちに視線を動かしていて、1か所を見る時間はふつう1秒足らずでした。
「相手の目を見て話しましょう」とよく言われます。けれど、実際の会話を眼鏡型の装置で記録すると、目と目が合うのはごく短い時間でした。視線は1か所に1秒もとどまらず、目、口元、顔の外へと動き続けていました。
目を合わせるのが苦手な人がまず知っておきたいのは、「みんなは目を見て話せている」という前提そのものが、実際の会話とずれていることです。目を見ることより、顔のあたりを見て、聞いていることを伝えるほうが現実的です。
02 研究とデータでわかっていること会話中、目はどのくらい合っている?
オーストラリアの研究では、2人の目が同時に合っていたのは平均で会話の12%でした。カナダの研究では、目と目が合っていたのは会話の時間の約3.5%でした。一方、目が合っていたと感じる割合は、実際よりずっと高くなっていました。
Rogersら / オーストラリア・イーディスコーワン大学(2018年)[1]
大学生どうしが、眼鏡型の視線の記録装置をつけて、初対面で4分間自由に話しました。2人が同時に相手の顔を見ていたのは会話の平均63%、同時に目を見ていたのは平均12%でした。目が合う1回の長さは平均0.36秒でした。
ところが、別の大学1年生171人に同じような会話をしてもらい、どのくらい目が合っていたかを聞くと、答えの平均は72%でした。研究者は、人は相手の細かな目の動きにはほとんど気づかず、「顔を見合っている」ことを「目が合っている」と感じているのではないか、と考えています。
顔のどこを見るかは人によって大きく違いました。目を多く見る人、口元を多く見る人、その間の人がいて、その見方は会話が変わっても一貫していました。また、話している間は顔から目を外す時間が会話の約29%で、聞いている間の約10%より長くなっていました。
対象: オーストラリアの大学の参加者49人(17〜67歳、平均32歳)の会話51組と、感じ方を答えた大学1年生171人 / 限界: 4分の初対面の会話だけ。会話の組が少なく、目が合う割合は組によって0〜46%と大きくばらついた。目が合ったかだけを聞いたため、感じ方が高めに出た可能性がある。
Mayrandら / カナダ・マギル大学(2023年)[2]
2人1組で、遭難したときに役立つ道具の順位を話し合いで決める課題をしてもらい、視線を記録しました。2人が同時に相手の顔を見ていたのは時間の12%で、そのうち多かったのは、一方が目を、もう一方が口元を見ている組み合わせでした。目と目が合っていたのは、時間の約3.5%でした。
対象: カナダの18〜24歳の大学生(分析できたのは7組14人) / 限界: 人数がとても少ない。道具のリストを話し合う課題で、雑談とは視線の使い方が違う可能性がある。
Akechiら / 東京大学・フィンランドのタンペレ大学ほか(2013年)[3]
日本とフィンランドの大学生が、窓越しに実際の人の顔を見ました。相手がこちらを見ているときは、視線をそらしているときより、どちらの国の学生も「気持ちが高ぶる」と答え、顔を見ている時間は短くなっていました。
違いが出たのは受け取り方でした。日本の学生は、相手がこちらを見ているとき、視線をそらしているときより「怒っている」「悲しそう」と受け取っていました。フィンランドの学生ではこの差はなく、こちらを見ている顔のほうを「近づきやすい」と受け取っていました。研究者は、目を合わせることをめぐる文化のルールの違いが関わっている可能性を挙げています。
対象: 日本とフィンランドの大学生各20人(各国とも女性10人) / 限界: 人数が少なく、それぞれ1か国だけの比較。相手は表情を変えない人で、会話の場面ではない。
03 まだわかっていないこと目を見ないと、相手にどう思われる?
目を合わせる量が、相手からの印象をどう変えるかは、ここで紹介した研究では直接調べられていません。日本の職場や面接のような場面で、どのくらいの視線がよいかもわかっていません。
- 紹介した研究は、どれも数十人規模で、オーストラリア、カナダ、日本とフィンランドの大学生が中心。年齢や場面が変わると結果が違う可能性がある。
- 目が合っていた時間は、研究によって12%や約3.5%と違う。会話の長さ、課題の内容、記録の方法で変わる。
- 「顔を見ていれば、相手は目が合っていると感じる」というのは研究者の解釈で、目の動きを変えたときの相手の感じ方を確かめた実験ではない。
- 視線が怖くて人と話せないほどつらい場合に、視線の工夫だけで楽になるかは、この研究からはわからない。
04 今日からできるセルフケア目が合うのがつらいとき、どこを見て話す?
目にこだわらず、目と口元を含む顔全体をぼんやり見ます。話す番では目をそらしてよく、聞く番に顔へ視線を戻して、うなずきで聞いていることを伝えます。
目ではなく、顔全体を見る
鼻や口元のあたりを中心に、顔全体をぼんやり見ます。研究では、口元を多く見る人も珍しくありませんでした。目が合う時間は会話の1割ほどなので、目を見続けようとしなくてかまいません。
目安 次の会話から・1回2秒ほどずつ
話す番では、目をそらしてよいと決めておく
研究では、話している間は聞いている間より、顔から目を外す時間が長くなっていました。考えながら話すときは、手元や少し横に目をやって、言い終わるころに顔へ戻します。
目安 話し始めの数秒
聞く番は、顔を見てうなずく
相手が話しているときに顔のあたりへ視線を戻し、うなずきや相づちを添えます。目が合ったら、すぐそらそうとせず、口元へ視線をずらすくらいの気持ちで十分です。
目安 相手が話している間
雑談そのものが続かないときは相手の話を掘り下げる質問の研究を、会話のあとに「変だったかも」と考えてしまうときは一人反省会が止まらないときの研究を参考にしてください。
05よくある質問
目を見て話さないと、失礼だと思われますか?
会話を記録した研究では、2人の目が同時に合っていたのは平均で会話の約1割でした。多くの人は、ずっと目を合わせて話しているわけではありません。顔のあたりを見て、うなずきや相づちで聞いていることを伝えれば、目を見続けなくても会話は成り立ちます。
目が合うとドキッとして、すぐそらしてしまうのは自分だけ?
自分だけではありません。日本とフィンランドの大学生の実験では、どちらの国でも、目が合った顔を見たときは、視線がそれた顔より「気持ちが高ぶる」と答え、見ている時間も短くなっていました。
相手の口元ばかり見ていたら、変に思われませんか?
オーストラリアの研究では、顔を見るときに目を多く見る人もいれば、口元を多く見る人もいて、その見方は人ごとに一貫していました。口元を見ること自体は珍しくありません。
話しているときに目をそらすのは、自信がないように見えますか?
研究では、話している間は顔から目を外す時間が会話の約29%と、聞いている間の約10%より長くなっていました。研究者は、話す内容を思い出すために目をそらすという説明を紹介しています。そう見えるかどうかを直接調べた研究ではありません。
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出典
- Rogers SL, Speelman CP, Guidetti O, Longmuir M (2018). Using dual eye tracking to uncover personal gaze patterns during social interaction. Scientific Reports. https://doi.org/10.1038/s41598-018-22726-7
- Mayrand F, Capozzi F, Ristic J (2023). A dual mobile eye tracking study on natural eye contact during live interactions. Scientific Reports. https://doi.org/10.1038/s41598-023-38346-9
- Akechi H, Senju A, Uibo H, Kikuchi Y, Hasegawa T, Hietanen JK (2013). Attention to eye contact in the West and East: autonomic responses and evaluative ratings. PLOS ONE. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0059312


