AIと毎日話していたら、情が移ってきた。シンガポールの大学生52人の実験では、5日間友だちのように話すと「わかってくれる」と感じる度合いが上がったが、頼る気持ちは増えていなかった

寝る前に今日あったことをAIに話すのが、いつのまにか日課になった。返事を読むと、わかってもらえた気がしてほっとする。でも相手はAIなのに、と少し戸惑う人もいるでしょう。シンガポールの大学生の実験では、5日間友だちのように話しただけで「わかってくれる」と感じる度合いがはっきり上がっていました。一方で、頼る気持ちは増えていませんでした。情が移るのは、あなたが特別だからではなく、人の心の自然な働きのようです。
3行でわかる
- シンガポールの大学生52人の実験では、毎晩5分ほど友だちのようにAIと話した5日間のあと、「AIはわかってくれる」と感じる度合いが、日記を書いた5日間のあとより高かった。
- AIを「生きているよう」と感じる度合いも上がったが、頼る気持ちや孤独感は変わらず、自分を肯定する気持ちは日記の週のほうが少し高かった。
- 別の研究では、AIの返事は人の返事より思いやりがあると評価されやすく、AIをよく使う人ほど、AIに意識があるかもしれないと感じていた。
01 結論から言うとAIに情が移るのはなぜ?
人は、わかってもらえたと感じる言葉を返してくる相手に、自然と心を感じ取ります。AIの返事はそう感じさせやすく、短い期間でも「わかってくれる」という感覚は強まっていました。ただ、研究はまだ少なく、長く続けたときのことはわかっていません。
人どうしの会話では、相手が自分の話をくみ取り、気持ちを認め、気づかってくれると感じると、親しみがわきます。AIは、まさにこうした言葉を返すのが得意です。カナダの研究では、AIの返事は、人の返事より思いやりがあると評価されやすいことが示されていました。
そのため、毎日話していれば「この相手はわかってくれる」という感覚が育つのは、不思議なことではありません。シンガポールの実験は、それが5日間という短いあいだにも起きることを示しました。大事なのは、その感覚を恥じることではなく、「わかってくれる感じ」と「実際にわかっているか」「どこまで頼るか」を分けて考えることです。
02 研究とデータでわかっていること毎日話すと、AIの感じ方はどう変わる?
5日間友だちのように話すと、「わかってくれる」「生きているよう」と感じる度合いが上がりました。一方、AIへの考え方全体や信頼、頼る気持ち、孤独感は変わっていませんでした。
Hoら(2026年)[1]
大学生52人が、5日間は毎晩AIと友だちのように好きな話をし、別の5日間は毎晩日記を書きました(順番はくじで決め、あいだに2日空けています)。AIと話した週のあとは、「AIはわかってくれる」と感じる度合いが100点中67.8点と、日記の週のあとの51.6点より高く、AIを生きているように感じる度合いも少し高くなりました。一方で、AIへの考え方全体、信頼、好ましさ、頼る気持ち、孤独感やストレスには差がありませんでした。自分を肯定する気持ちは、日記の週のあとのほうが少しだけ高くなっていました。
対象: シンガポールの大学の学生52人(2025年3〜6月) / 限界: 人数が少なく、1つの大学の学生だけです。それぞれ5日間と短く、実験を始める前の状態は測っていないため、2つの週の比べ合いにとどまります。話した内容は人によってばらばらでした。
Ovsyannikovaら(2025年)[2]
うれしいこと・つらいことを打ち明けた文章に対する、AIの返事と人の返事を、第三者が読み比べました。4つの実験のどれでも、AIの返事のほうが思いやりがあると評価され、好まれていました。どちらがAIの返事かを知らせても、相手が電話相談の訓練を受けた人でも、この傾向は変わりませんでした。AIの返事は「わかってくれている」「気持ちを認めている」「気づかっている」と感じられやすく、それが評価の高さを一部説明していました。
対象: カナダの研究チームによる4つの実験、計556人 / 限界: 他人あての返事を読んで評価したもので、自分の悩みにAIが答えたときの感じ方とは違う可能性があります。返事は1回きりの短いものでした。
ColombattoとFleming(2024年)[3]
年齢と性別の構成を米国の人口に合わせて集めた300人に、対話型AIに意識や感じる力があると思うかを尋ねました。「はっきりない」と答えたのは33%で、67%は少しはあるかもしれないと答えました。AIをよく使う人ほど、意識があると感じる度合いが高くなっていました。研究者らは、一般の人の感じ方と専門家の見方にずれがあると指摘しています。
対象: 米国の大人300人 / 限界: 一時点の調査で、よく使うから意識を感じるのか、意識を感じるからよく使うのかは区別できません。平均は100点中25.6点で、多くの人は「少しは」という程度でした。
3つを並べると、AIの返事は「わかってくれる」と感じさせやすく、話す回数が増えるほどその感覚は育ちやすいと考えられます。ただし、短い期間の実験では、頼る気持ちが強まるところまでは見られませんでした。
03 まだわかっていないこと情が移ったまま話し続けても大丈夫?
まだわかっていません。5日間では頼る気持ちは増えていませんでしたが、何か月も毎日話したときに、心の状態や人との関係がどう変わるかを確かめた研究はほとんどありません。
- シンガポールの実験は52人・5日間と小さく短いもので、長く続けたときの変化はわかりません。
- 寂しさが強い人や、悩みを抱えている人でも同じ結果になるかは調べられていません。
- AIと話す代わりに人と話した場合と比べた実験はなく、日記との比べ合いにとどまっています。
- 自分を肯定する気持ちの差はわずかで、偶然の可能性も残ります。
04 今日からできるセルフケア情が移ったAIと、どう付き合えばいい?
「わかってくれる感じ」は人の心の自然な働きだと知ったうえで、日記を書く日もつくり、頼る気持ちが強まっていないかを時々確かめます。
「わかってくれる感じ」は自然な反応だと知る
AIの返事は、人の返事より思いやりがあると評価されやすいことがわかっています。情が移っても自分を責めず、「そう感じさせる返事だから」と一歩引いて受け止めます。
目安 1分
週に何日かは、AIに話す代わりに日記を書く
実験では、毎晩5分の日記を書いた週のあとのほうが、自分を肯定する気持ちが少しだけ高くなっていました。今日あったことを、AIではなくノートに書く夜もつくってみます。
目安 夜に5分・週2〜3日
月に1回、「頼る気持ち」を点検する
短い実験では頼る気持ちは増えていませんでしたが、長く続けたときはわかっていません。「AIに話せない日は落ち着かない」「人に話すことが減った」と感じるかを、月に1回、1〜5でメモしておきます。
目安 月1回・3分
AIになら話せるのに人には話しにくいと感じるときは AIになら悩みを話せるのはなぜ?、AIの返事に気持ちがあるように感じるときは AIの返事に気持ちを感じてしまう の記事も参考になります。
05よくある質問
AIに情が移るのは、おかしいこと?
おかしいことではありません。シンガポールの大学生52人の実験では、毎晩5分ほど友だちのようにAIと話した5日間のあと、多くの人が「AIはわかってくれる」と感じる度合いを高めていました。米国の300人の調査では、67%がAIに少しは意識があるかもしれないと答えており、よく使う人ほどその傾向が強くなっていました。
AIと毎日話していると、依存してしまう?
この実験の5日間では、AIに頼る気持ちの点数は、日記を書いた週と変わりませんでした。ただし5日間という短い期間の結果で、何か月も続けたときにどうなるかは、まだわかっていません。
AIは本当に気持ちをわかっている?
この記事で扱った研究は、人がAIをどう感じるかを調べたもので、AIに気持ちがあるかを確かめたものではありません。米国の調査の研究者らは、一般の人の感じ方と専門家の見方にはずれがあると指摘しています。「わかってくれる」と感じることと、実際にわかっているかは、分けて考えるのがよさそうです。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Ho JQH, Hu M, Goh AYH, Pragasam EJ, Hartanto A (2026). How Consistent Friendlike Conversation with AI Companions Influences Our Attitudes and Perceptions Toward AI: An Exploratory Experiment. Behavioral Sciences, 16(2), 278. https://doi.org/10.3390/bs16020278
- Ovsyannikova D, de Mello VO, Inzlicht M (2025). Third-party evaluators perceive AI as more compassionate than expert humans. Communications Psychology, 3, 4. https://doi.org/10.1038/s44271-024-00182-6
- Colombatto C, Fleming SM (2024). Folk psychological attributions of consciousness to large language models. Neuroscience of Consciousness, 2024(1), niae013. https://doi.org/10.1093/nc/niae013


