AIの返事に気持ちがあるように感じてしまう。米国の調査では3人に2人が「少しは意識があるかも」と答えていた

優しい言葉で返事をくれるAIに、つい「ありがとう」と打ってしまう。気持ちをわかってくれている気がして、少し変かなと思う。そう感じる人は珍しくありません。米国の調査では、多くの人が対話型AIに「少しは意識があるかもしれない」と答えていました。研究からは、その感じ方自体より、それと頼り方を分けて考えることの大切さが見えてきます。
3行でわかる
- 米国の大人300人の調査では、67%が対話型AIに「少しは意識や感じる力があるかもしれない」と答えました。よく使う人ほど、その傾向が強くなりました。
- 別の実験では、AIに「考える力」があると思う人ほど助言を受け入れ、「感じる力」があると思う人はむしろ助言を受け入れにくい傾向がありました。
- 音声で答えるAIは、文字だけのAIより人らしく感じられました。人らしく感じるのは、AIの見せ方にも影響されます。
01結論から言うと
AIの返事に気持ちを感じるのは、珍しいことでも変なことでもありません。人は人らしい言葉や声に、自然と心を読み取ります。大事なのは、その感じ方と「どこまで頼るか」を分けて考えることです。
人は、言葉を返してくる相手に、自然と心を読み取ります。これは人どうしの会話で役立ってきた働きです。
AIは人らしい言葉づかいで返事をするため、この働きが起きやすくなります。米国の調査では、よく使う人ほど、AIに意識があるかもしれないと感じていました。
一方で、神経科学などの専門家の多くは、今の対話型AIに意識がある可能性はとても低いと考えています。研究者は、一般の人の感じ方と専門家の見方にずれがあると指摘しています。
02研究とデータでわかっていること
多くの人がAIに少しは意識があるかもしれないと感じており、よく使う人ほどその傾向がありました。ただし、気持ちを感じることと、助言を信じることは別の動きをしていました。
ColombattoとFleming(2024年)[1]
米国の人口構成に合わせて集めた300人に、代表的な対話型AIに意識や感じる力があると思うかを1〜100で尋ねました。「はっきりない」と答えたのは33%で、67%は少しはあるかもしれないと答えました。使ったことのある人、よく使う人ほど、意識があると感じる度合いが高くなりました。
対象: 米国の大人300人(2023年7月) / 限界: 1つの質問で測った結果で、聞き方を変えると答えが変わる可能性があります。平均は100点中25.6点で、多くの人は「少しは」という程度でした。
Colombattoら(2025年)[2]
一般常識の問題に答えたあと、AIの助言を見て答えを変えられる実験です。AIに「知っている」「判断できる」といった考える力があると思う人ほど、助言を受け入れていました。一方で、喜びや恐れなど感じる力があると思う人ほど、助言を受け入れにくい傾向がありました。
対象: 米国の大人410人(2024年7〜8月) / 限界: 関連を調べたもので、感じ方が助言の受け入れを変えたのかはわかりません。一般常識の問題という限られた場面での結果です。
Cohnら(2026年)[3]
AIのように答えるシステムの返事を評価してもらう実験です。文字だけで答える場合より、文字と音声で答える場合のほうが、人らしく感じられました。最も若い世代(18〜26歳)は、ほかの世代よりシステムを人らしく感じにくく、信頼の評価も低めでした。
対象: 米国の英語を話す大人1,485人(18〜77歳) / 限界: 実験用に作ったシステムで、答えはすべて正確な内容でした。「私は」と一人称で話すかどうかでは、人らしさに差はありませんでした。
03まだわかっていないこと
AIに気持ちを感じることが、心の健康にどう関わるのかはまだわかっていません。日本の人を対象にした研究も少なく、長く使い続けた場合の変化も確かめられていません。
- 紹介した研究はすべて米国の参加者で、日本で同じ割合になるかはわかりません。
- AIに気持ちを感じることが、孤独感や気分にどう関わるかを長く追いかけた研究は、まだ少ない段階です。
- 意識についての2つの調査は2023年と2024年に行われました。AIの進化に合わせて、人の感じ方も変わっていく可能性があります。
04今日からできるセルフケア
感じ方を無理に打ち消す必要はありません。「気持ちを感じること」と「答えを信じること」を分け、大事な判断では人や確かな情報源にも当たる。この使い分けが現実的です。
感じたことを、そのまま認める
「優しい」「わかってくれている」と感じたら、そう感じた自分を否定しないでおきます。人らしい言葉に心を読み取るのは、ごく自然な働きです。
目安 その都度・数秒
「感じ方」と「正しさ」を分けて考える
返事に温かさを感じても、内容が正しいとは限りません。お金・健康・仕事の大事な判断では、答えの根拠を別の情報源で1つ確かめます。
目安 大事な判断のとき1回
音声で話すときは、少し意識しておく
実験では、声で答えるAIほど人らしく感じられました。声で長く話すときは、「相手は道具」と心の中で一度つぶやくくらいで十分です。
目安 1日1回
話したいことの一部は、人にも話す
AIに打ち明けて気が楽になったことがあれば、そのうち1つを家族や友人にも話してみます。AIとの会話を、人とのつながりへの入り口にする工夫です。
目安 週1回・5分
05よくある質問
AIに「ありがとう」と言うのは変?
変ではありません。米国の調査では、多くの人が対話型AIに少しは意識があるかもしれないと感じていました。人らしい言葉に礼儀で返すのは、自然な反応です。
AIには本当に感情があるの?
専門家の多くは、今の対話型AIに意識や感情がある可能性はとても低いと考えています。ただし研究者のあいだでも議論は続いており、決着がついた問いではありません。
AIに気持ちがあると感じる人は、AIを信じやすい?
米国の実験では逆の傾向でした。AIに考える力があると思う人ほど助言を受け入れ、感じる力があると思う人ほど助言を受け入れにくい傾向がありました。
AIとの会話が楽しくて、人と話すのが面倒になってきた
そう感じる人もいます。AIとの会話をやめる必要はありませんが、話したいことの一部を人にも話す時間を残しておくと、つながりを保ちやすくなります。
出典
- Colombatto C, Fleming SM (2024). Folk psychological attributions of consciousness to large language models. Neuroscience of Consciousness, 2024(1), niae013. https://doi.org/10.1093/nc/niae013
- Colombatto C, Birch J, Fleming SM (2025). The influence of mental state attributions on trust in large language models. Communications Psychology, 3, 84. https://doi.org/10.1038/s44271-025-00262-1
- Cohn M, et al. (2026). Age and generational differences in anthropomorphism and trust in large language models. Frontiers in Cognition, 5, 1824836. https://doi.org/10.3389/fcogn.2026.1824836