不安なことをAIに何度も聞き直してしまう。確認のくり返しで記憶への自信が下がった実験と、「聞くのはあとで」の工夫

体の不調、送ってしまったメール、仕事のミス。気になることをAIに聞き、「大丈夫」と答えてもらう。少し落ち着いたのに、しばらくすると言い方を変えてまた聞いている。聞くほど、かえって落ち着かなくなる。そんなくり返しに疲れていませんか。AIに限った研究はまだほとんどありませんが、安心を求める確認の研究からは、この流れと、その場でできる工夫が見えてきます。
3行でわかる
- 安心を求める確認は、不安が強い人たちの報告では「その場で楽になり、あとで不安と確かめたい気持ちが戻る」流れになっていました。
- 健康な人の実験では、同じ確認をくり返すと記憶の正しさは変わらないのに、記憶への自信が下がっていました。
- その場では、聞きたいことをメモして「あとで聞く時間」に回す、同じ質問は1回までにする、が手がかりになります。
01 結論から言うとAIに何度も聞き直してしまうのは、なぜ?
安心を求めて確かめるのは自然な行動ですが、くり返すと安心がすぐ薄れ、また確かめたくなる流れが研究で報告されています。AIはいつでも何度でも答えるため、この流れが続きやすい可能性があります。
不安なとき、だれかに「大丈夫」と言ってもらいたくなるのは、ごく普通のことです。研究では、この行動を「安心を求める確認」と呼んで調べてきました。
問題になりやすいのは、確認そのものより「くり返し」です。1回で落ち着ければ、それで十分に役立っています。何度聞いても落ち着かない、聞くほど不安が増える。そう感じるときは、確認が不安を長引かせる側に回っているのかもしれません。
AIは夜中でも、同じ質問を10回しても、嫌な顔をせずに答えます。人に聞くときのような「もう聞きにくい」という歯止めが働きにくいのです。AIが相談者の考えを肯定しやすい傾向はAIに何でも肯定されて不安になる記事、AIの答えをつい信じてしまう心理はAIの答えを信じてしまう記事で整理しています。
02 研究とデータでわかっていること聞くほど不安が増えるのは、よくあること?
不安が強い人ほど、確認のあとに不安が戻ったり、検索のあとに不安が増したりする傾向が複数の研究で報告されています。確認のくり返しが、記憶への自信を下げた実験もあります。
SalkovskisとKobori(2015年)[1]
不安の問題で診断を受けている人たち(強迫症153人、パニック症50人)と、比較のための健康な人52人に、安心を求めたときの経験を聞きました。不安の強い2つのグループでは、安心をもらうとその場では楽になり、あとで不快感と「また確かめたい」気持ちが戻ると報告されていました。ふだん安心を求める回数が多い人ほど、この戻りが大きい傾向がありました。健康な人のグループでは、目立った戻りは見られませんでした。
対象: 強迫症・パニック症の人と健康な人の計255人 / 限界: 過去の経験を思い出して答えてもらった調査で、実際の行動を観察したものではありません。
van den HoutとKindt(2003年)[2]
健康な参加者に、パソコン画面上のガスコンロを確認する作業をしてもらう実験を3回行いました。同じコンロの確認をくり返したグループでは、記憶の正しさは変わらないのに、記憶の鮮明さや細かさが落ち、記憶への自信が下がっていました。関係のない電球を確認したグループでは、この変化は見られませんでした。
対象: 健康な参加者 39人・40人・40人(3つの実験) / 限界: 画面上の確認作業の実験で、AIや人に質問をくり返す場面を調べたものではありません。
Doherty-Torstrickら(2016年)[3]
体の症状をネットで調べたことのある731人にオンラインで回答してもらいました。健康への不安が強い人ほど、調べている間と調べたあとに不安が増したと答えていました。不安が弱い人は、調べると安心したと答えていました。ネットで健康情報を見る時間が長い人ほど、調べている間とあとの不安も高い傾向がありました。
対象: ネットで募集した、症状を調べたことのある731人 / 限界: 思い出して答えてもらった調査で、検索が不安を増やした原因だと確かめたものではありません。
McMullanら(2019年)[4]
20の研究・7,373人をまとめたメタ分析です。健康への不安は、ネットで健康情報を調べる行動と相関があり(r=0.34)、調べることで苦しくなったり不安が増したりする傾向とは、より強い相関がありました(r=0.62)。
対象: 20研究の参加者7,373人 / 限界: 相関の分析で、どちらが原因かはわかりません。多くの研究が同じ1つの質問票を使っていました。
StarrとDavila(2008年)[5]
「本当に大丈夫?」と周りに安心を求めすぎる傾向を調べた38の研究・6,973人をまとめたメタ分析です。この傾向は、同じ時点の気分の落ち込みと関連がありました(r=0.32)。
対象: 38研究の参加者6,973人 / 限界: 人に安心を求める研究で、AIに聞く行動は含まれません。多くは同じ時点の相関です。
McGowanとBehar(2013年)[6]
心配しやすい傾向が強い53人を2つのグループにくじで分けました。心配する時間と場所を毎日30分に限る練習をしたグループは、2週間後、心配・不安・不眠の症状が、もう一方のグループより減っていました。気分の落ち込みには差がありませんでした。
対象: 心配しやすい傾向が強い53人 / 限界: 予備的な小さな実験で、AIへの質問について調べたものではありません。
03 まだわかっていないことAIへの聞き直しを直接調べた研究はある?
AIへの質問のくり返しが不安を増やすかを直接確かめた研究は、まだ見つかりませんでした。紹介した研究は、人への確認やネット検索、確認作業についてのものです。
- 2026年の論文[7]は、いつでも答えるAIの特徴が、確認のくり返しや不確かさへの耐えにくさを強めうるという考え方を示しました。ただし著者自身が、裏づける研究はまだ限られていると書いています。
- AIに聞く場合と、ネット検索や人に聞く場合で、不安の戻り方が違うかは比べられていません。
- 「あとで聞く」工夫がAIへの聞き直しにも効くかは、試されていません。04の工夫は、近い研究からの応用です。
04 今日からできるセルフケア聞き直したくなったその場で、何をする?
聞く前後の不安に点数をつける、聞きたいことをメモして「あとで聞く時間」に回す、同じ質問は1回までにする、の3つです。どれもその場で、お金をかけずにできます。
聞く前と聞いたあとの不安に、0〜10で点数をつける
AIに聞く前に今の不安を数字で書き、答えを読んで少し時間がたってから、もう一度つけます。研究では、調べて安心する人と、かえって不安が増す人がいました。自分がどちらの流れにいるかが見えると、次の一手を選びやすくなります。
目安 1回・10秒
聞きたいことをメモして、「あとで聞く時間」に回す
聞きたくなったら、質問を1行だけメモに書き、今は送らずに閉じます。夕方など、1日の決まった時間にまとめて見直します。心配する時間を1日30分に決めた実験では、2週間で心配と不安が減っていました。見直すころには、聞く必要がなくなっている質問もあります。
目安 1日1回・30分まで
同じ質問は1回まで。答えを読み返さない
言い方を変えた同じ質問や、前の答えの読み返しも「くり返し」に入ります。確認をくり返すほど記憶への自信が下がった実験があります。1回聞いたら「わからない部分は残る」と認めて、別の作業に戻ります。
目安 1つの不安につき1回
AIとの会話そのものが長くなりがちな人はAIとのチャットがやめられない記事、AIに悩みを相談するときの範囲はAIに悩みを相談してもいいかの記事も参考になります。
05よくある質問
不安なことをAIに何度も聞き直すのは、おかしい?
おかしなことではありません。安心を求めて確かめるのは、多くの人がする行動です。ただ研究では、不安が強い人たちほど、安心がその場だけで終わり、また確かめたくなる流れを報告していました。
AIに聞くほど不安が増えるのはなぜ?
はっきりした理由はまだわかっていません。近い研究では、同じ確認をくり返すと記憶の正しさは変わらないのに、記憶への自信が下がっていました。安心がすぐ薄れ、また聞きたくなる流れも報告されています。
ネットで検索するより、AIに聞くほうが安心できる?
比べた研究はまだ見つかりませんでした。2026年の論文は、いつでも何度でも答えてくれるAIの特徴が、確認のくり返しを強めうるという考え方を示していますが、実際に確かめた研究ではありません。
聞き直したくなったら、我慢するしかない?
我慢だけに頼らなくてもかまいません。心配が強い人53人の実験では、心配する時間と場所を1日30分に決めた2週間で、心配や不安が減っていました。聞きたいことをメモして、あとでまとめて見る形に応用できます。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Salkovskis, P. M., & Kobori, O. (2015). Reassuringly calm? Self-reported patterns of responses to reassurance seeking in obsessive compulsive disorder. Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry, 49, 203-208. https://doi.org/10.1016/j.jbtep.2015.09.002
- van den Hout, M., & Kindt, M. (2003). Repeated checking causes memory distrust. Behaviour Research and Therapy, 41(3), 301-316. https://doi.org/10.1016/s0005-7967(02)00012-8
- Doherty-Torstrick, E. R., Walton, K. E., & Fallon, B. A. (2016). Cyberchondria: Parsing Health Anxiety From Online Behavior. Psychosomatics, 57(4), 390-400. https://doi.org/10.1016/j.psym.2016.02.002
- McMullan, R. D., Berle, D., Arnáez, S., & Starcevic, V. (2019). The relationships between health anxiety, online health information seeking, and cyberchondria: Systematic review and meta-analysis. Journal of Affective Disorders, 245, 270-278. https://doi.org/10.1016/j.jad.2018.11.037
- Starr, L. R., & Davila, J. (2008). Excessive reassurance seeking, depression, and interpersonal rejection: a meta-analytic review. Journal of Abnormal Psychology, 117(4), 762-775. https://doi.org/10.1037/a0013866
- McGowan, S. K., & Behar, E. (2013). A preliminary investigation of stimulus control training for worry: effects on anxiety and insomnia. Behavior Modification, 37(1), 90-112. https://doi.org/10.1177/0145445512455661
- Golden, A., & Aboujaoude, E. (2026). A transdiagnostic model for how general purpose AI chatbots can perpetuate OCD and anxiety disorders. npj Digital Medicine, 9, 343. https://doi.org/10.1038/s41746-026-02531-7


