スマホを家に忘れると一日落ち着かない。4万7千人の研究では約2割に強い「スマホがない不安」があった

朝、電車に乗ってからスマホを家に忘れたと気づく。連絡が来ていないか、帰り道は大丈夫か、一日中そわそわしてしまう。そんな経験は珍しくありません。研究では、スマホが使えないことへの不安は「ノモフォビア」と呼ばれ、程度の差はあっても多くの人に見られていました。不安の中身を分けて考えると、手の打ち方が見えてきます。
3行でわかる
- 52の研究(計47,399人、主に若い世代)をまとめると、スマホがない不安が中程度の人は約52%、強い人は約20%でした。
- スマホがない不安が強い人ほど、不安感や眠りの悩みも強い傾向がありました。ただし、どちらが原因かはわかっていません。
- 聞き取りの研究では、不安の理由に「支払い・道案内・連絡ができない」など生活の具体的な困りごとが含まれていました。代わりの手段を準備することが手がかりになります。
01結論から言うと
スマホを忘れて落ち着かないのは、多くの人に見られる反応です。不安の理由には「支払いや連絡ができない」という具体的な困りごともあるので、代わりの手段を用意しておくことが手がかりになります。
スマホが手元にない、使えないときの不安や落ち着かなさは、英語の「No Mobile Phone Phobia」を縮めて「ノモフォビア」と呼ばれます。病気の正式な診断名ではなく、質問紙で程度を測って研究されています。
スマホは今、連絡だけでなく支払い、地図、仕事や勉強の情報まで担っています。それが急になくなれば、不安になるのは自然なことです。
大事なのは、「スマホがないと不安な自分はおかしい」と責めることではありません。何に困るから不安なのかを分けて、一つずつ手を打つことです。
02研究とデータでわかっていること
若い世代の約5割に中程度、約2割に強い「スマホがない不安」がありました。不安が強い人ほど不安感や眠りの悩みも強く、理由には支払いや連絡などの具体的な困りごともありました。
Jahramiら(2022年)[1]
20か国の52の研究(計47,399人)をまとめ、スマホがない不安の程度ごとの割合を調べました。質問紙の基準で、軽い人が25.80%、中程度が52.40%、強い人が20.35%でした。強い不安は、西洋以外の文化圏の大学生で多い傾向がありました。
対象: 主に若者と若い大人 / 限界: 参加者の年齢層が狭く、中高年での割合はわかっていません。研究ごとのばらつきも大きくなっています。
Darajら(2023年)[2]
16の研究をまとめ、スマホがない不安と、ほかの悩みとの関連を調べました。スマホがない不安が強い人ほど、不安感(r=0.31)、スマホの使いすぎ(r=0.39)、眠りの悩み(5つの研究、r=0.56)が強い傾向がありました。
対象: 16の研究の参加者 / 限界: 関連を調べた研究のまとめで、スマホがない不安が眠りの悩みの原因かどうかはわかりません。
Fendelら(2025年)[3]
140の研究(計79,080人)をまとめ、「今この瞬間に注意を向けて、判断せずに受け止める傾向(マインドフルネス傾向)」とネットやスマホの使い方の関係を調べました。この傾向が強い人ほど、スマホがない不安が小さい傾向がありました(12の研究、r=-0.26)。中でも「自分が今していることに気づいて行動する」傾向は、ネットの使いすぎの少なさと最も強く関連していました(r=-0.42)。
対象: 140の研究の参加者 / 限界: 性格的な傾向との関連で、練習で身につけたときに同じ効果があるかは、この研究だけではわかりません。
Luoら(2026年)[4]
スマホがない不安が中程度以上の看護学生13人に、1人40〜60分ずつ話を聞きました。不安の理由として、支払いができない、道がわからない、連絡が取れない、緊急時に助けを呼べないといった生活の困りごとのほか、勉強や人とのつながり、将来への不安に関わる困りごとが挙がりました。対処は「寝る・頭を空にする」「気をそらす」「友人と話す」が多く、代わりの手段を用意する工夫は少数でした。
対象: 中国の看護学生13人 / 限界: 少人数への聞き取りで、働く大人に同じ理由が当てはまるかはわかりません。
03まだわかっていないこと
働く大人や中高年での研究はまだ少なく、どんな方法でスマホがない不安が減るのかを確かめた実験も、ほとんどありません。
- まとめられた研究の多くは学生や若い世代が対象で、中高年での割合はわかっていません。
- スマホがない不安と眠りの悩みなどは関連しているだけで、どちらが原因かはわかっていません。
- スマホがない不安を減らす方法を、実験で比べた研究はまだ少ない段階です。
04今日からできるセルフケア
「スマホがないと何に困るか」を書き出して代わりの手段を用意する、不安に気づいて言葉にする、人と話して気をそらす、の3つです。どれもお金はかかりません。
「困ること」を書き出し、代わりを用意する
支払い・道案内・家族や職場への連絡など、スマホがないと困ることを3つ書き出します。少しの現金、大事な電話番号のメモ、職場の固定電話の番号など、代わりの手段を財布や手帳に入れておきます。聞き取りの研究では、こうした具体的な困りごとが不安の理由の一つでした。
目安 一度・10分
不安に気づいたら、心の中で言葉にする
「今、スマホがなくて不安になっている」と心の中で言います。今この瞬間に注意を向けて受け止める傾向が強い人ほど、スマホがない不安が小さい傾向がありました。
目安 気づいたとき・数秒
近くの人と話す、体を動かす
聞き取りの研究では、友人と話す、ほかのことに注意を向けるといった対処が多く使われていました。昼休みに同僚と話す、少し歩くなど、スマホ以外のことに時間を使います。
目安 5〜15分
帰ったらまず通知をまとめて確認する
「何か大事な連絡を見逃したかも」という不安は、帰宅後にまとめて確認すれば済みます。確認する時間を先に決めておくと、日中の落ち着かなさが和らぐかもしれません。
目安 帰宅後・10分
05よくある質問
スマホを忘れると不安になるのはおかしい?
おかしくありません。52の研究をまとめると、若い世代の約5割に中程度、約2割に強い「スマホがない不安」がありました。支払いや連絡などをスマホに頼っている今、不安になるのは自然な反応です。
ノモフォビアは病気なの?
病気の正式な診断名ではありません。スマホが使えないときの不安の強さを質問紙で測り、研究で使われている言葉です。日常生活に支障が出るほどつらいときは、相談窓口や医療機関に相談できます。
スマホがないと不安な気持ちを和らげるには?
まず、スマホがないと何に困るのかを書き出し、現金や連絡先のメモなど代わりの手段を用意する方法があります。聞き取りの研究では、不安の理由に支払い・道案内・連絡といった具体的な困りごとが含まれていました。
スマホが手元にないと眠れないのも関係ある?
研究のまとめ(眠りを調べた5つの研究)では、スマホがない不安が強い人ほど眠りの悩みも強い傾向がありました。ただし、どちらが原因かはわかっていません。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
出典
- Jahrami H, Trabelsi K, Boukhris O, Hussain JH, Alenezi AF, Humood A, Saif Z, Pandi-Perumal SR, Seeman MV (2022). The prevalence of mild, moderate, and severe nomophobia symptoms: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression. Behavioral Sciences, 13(1), 35. https://doi.org/10.3390/bs13010035
- Daraj LR, AlGhareeb M, Almutawa YM, Trabelsi K, Jahrami H (2023). Systematic review and meta-analysis of the correlation coefficients between nomophobia and anxiety, smartphone addiction, and insomnia symptoms. Healthcare, 11(14), 2066. https://doi.org/10.3390/healthcare11142066
- Fendel JC, Bürkle JJ, Schmidt S (2025). The relationship between trait mindfulness and problematic usage of the internet, screen time, and nomophobia: a systematic review and meta-analysis. Journal of Behavioral Addictions, 14(2), 590. https://doi.org/10.1556/2006.2025.00052
- Luo J, Tang LY, Yahaya NA, Zhou L, Liu Q (2026). Exploring reasons and coping strategies among nursing students with nomophobia: a qualitative study. Frontiers in Psychology, 17, 1863185. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1863185