疲れが何週間も抜けず、体を動かす気力もない。オランダの大学生99人の実験では、話せるくらいの軽いランニングを週3回・6週間続けた組で、疲れの点数が待っていた組より下がっていた

画面と情報に追われる毎日で、週末に休んでも疲れが抜けない。運動がいいとは聞くけれど、そもそも体を動かす気力がない。結論から言うと、オランダの実験では、話せるくらいの軽いランニングを週3回・6週間続けた大学生で、疲れの点数が待っていた組より下がっていました。ただし働く人の実験では、効果が見えたのは最後まで続けた人に限られました。
3行でわかる
- 疲れの強いオランダの大学生99人の実験では、軽いランニングを週3回・6週間続けた組で、疲れの点数が30.5点から25.4点に下がりました。待っていた組は30.9点から28.3点でした。
- 疲れの強い働く人96人の同じ形の実験では、疲れが軽くなったのは最後まで続けた人だけを比べた分析でした。睡眠の質と働ける感覚は、全員で比べてもよくなっていました。
- オランダの働く人2,275人の1年の追跡では、体を動かす量が増えた人ほど疲れが減り、疲れが増えた人ほど体を動かさなくなる、という両向きの関係がありました。
01 結論から言うと疲れが何週間も抜けないとき、軽い運動は効く?
疲れの強い大学生の実験では、話せるくらいの軽いランニングを6週間続けた組で、疲れが待っていた組より軽くなっていました。働く人では最後まで続けた人に限った結果で、効果の出方には差があります。わかっている度は中くらいです。
ここで紹介する実験は、勉強や仕事による疲れを調べたものです。画面や情報による疲れそのものを調べた研究ではありません。それでも、頭を使い続けて疲れが抜けない状態に近いため、手がかりとして整理します。
ポイントは「きつくない運動」だったことです。研究者は、もともと疲れている人には、強すぎる運動は逆効果になりうると考え、会話ができる速さに抑えていました。燃え尽きたような疲れが続くときの全体像は 燃え尽きた感じが続くときの記事 にまとめています。
02 研究とデータでわかっていること軽いランニングを6週間続けた人の疲れは、どう変わった?
オランダの大学生の実験では、軽いランニングを続けた組で、疲れと「回復したい気持ち」の強さが待っていた組より下がり、睡眠の質もよくなりました。働く人の実験では、疲れが下がったのは最後まで続けた人の分析だけでした。
de Vriesら(2016年) [1]
勉強による疲れが強い大学生を、6週間の軽いランニングの組と、待つ組にくじで分けました。週3回走り、そのうち2回は指導者のいる10人のグループ、1回は自分で走りました。1回60分のうち、準備15分、走りと歩きをくり返す30分、整理15分です。疲れの点数(10〜50点)は、走った組で30.47点から25.35点に、待った組で30.92点から28.29点に下がり、走った組のほうが大きく下がりました。睡眠の質も、走った組のほうがよくなりました。
対象: オランダのラドバウド大学の学生99人(平均約21歳、8割が女性、運動は週1時間以下、病気による疲れのない人) / 限界: 待つ組との比較で、本人も走っていると知っているため、期待の影響を除けません。
de Vriesら(2016年) [1]
3つの疲れの指標のうち、心のエネルギーが尽きた感じ(情緒的消耗感)は、走った組も待った組も同じくらい下がり、組の差ははっきりしませんでした。走った組では、6週間の終わりから12週間後にかけて、疲れの点数がさらに23.31点まで下がりました。12週間後も8割の人が自分で運動を続けていました。
対象: 上と同じ実験の走った組 / 限界: 12週間後は待った組も走り始めていたため、比べる相手のいない結果です。
de Vriesら(2017年) [2]
仕事による疲れが強い働く人を、同じ6週間の運動の組(49人)と待つ組(47人)に分けた実験です。くじで分けた全員で比べると、疲れの差ははっきりしませんでした。最後まで続けた31人と、待つ間に運動を増やさなかった35人を比べると、運動の組のほうが情緒的消耗感と疲れが低くなりました。睡眠の質と「働ける」感覚は、全員で比べても運動の組のほうがよく、その効果は12週間後まで保たれていました。
対象: 疲れの強いオランダの働く人96人 / 限界: 運動の組の3割以上が最後まで続けられていません。続けられた人がもともと元気だった可能性もあります。
de Vriesら(2016年) [3]
オランダの働く人の全国調査を、1年あけて2回分析しました。体を動かす量が増えた人ほど、1年後に仕事の疲れが減る関係がありました。逆に、疲れが増えた人ほど、1年後に体を動かす量が減る関係もありました。著者は、運動でいちばん得をしそうな疲れた人ほど、体を動かさなくなっていると述べています。
対象: 体を使う仕事ではない、フルタイムで働く人2,275人 / 限界: 観察の研究で、運動が疲れを減らしたと言い切ることはできません。
03 まだわかっていないこと画面や情報による疲れにも、運動は効く?
まだはっきりしていません。今回の実験は勉強や仕事による疲れが対象で、画面や情報の多さによる疲れを測った実験は見つかりませんでした。どのくらいの強さと回数がいちばんよいかも、まだわかっていません。
- 実験はどちらもオランダの、人数が100人前後のものです。日本の働く人で同じ結果になるかはわかりません。
- グループで指導者と走る形でした。一人で走る場合に同じくらい続けられるか、同じ効果があるかは確かめられていません。
- ランニング以外の運動(歩く、自転車など)で同じ結果になるかは、この実験では比べていません。
04 今日からできるセルフケア疲れて気力がないときは、どう始めればいい?
話せるくらいの速さで、歩きと軽い走りをくり返すところから始めます。週3回の時間を先に決め、6週間は続けて記録します。どれもお金をかけずにでき、実験の内容をもとにした工夫です。
「おしゃべりできる速さ」で、歩きと軽い走りをくり返す
息が上がって話せなくなったら歩きに戻します。実験では、走りと歩きをくり返しながら、6週間かけて20分続けて走れるようにしていました。走るのがつらければ、早歩きから始めてかまいません。
目安 1回30分(前後の準備と整理を入れて約1時間)
週3回の曜日と時刻を、先に決めておく
実験では火曜と木曜の18時から、決まった時間に走っていました。「火・木の帰り道、土曜の朝」のように、曜日と時刻を手帳に書いておきます。予定の決め方は 「いつ・どこで・何を」を決める記事 が参考になります。
目安 週3回
6週間は続けて、回数だけ記録する
カレンダーに走った日の印をつけます。働く人の実験では、疲れが軽くなったのは最後まで続けた人でした。疲れて休んだ週があっても、次の週から再開すれば大丈夫です。
目安 1日10秒・6週間
運動で気分の落ち込みがどう変わるかは 運動と落ち込み・不安の記事、眠気も抜けないときは 寝床に入る時間を早めた実験の記事 で扱っています。
05よくある質問
疲れているのに運動したら、もっと疲れない?
強すぎなければ、疲れが軽くなった実験があります。オランダの疲れの強い大学生の実験では、会話ができる速さの軽いランニングを週3回・6週間続けた組で、疲れの点数が30.5点から25.4点に下がりました。研究者は、もともと疲れている人には強い運動は合わない可能性があるとしています。
どのくらい続ければ、疲れは軽くなる?
今回の実験はどちらも6週間でした。大学生の実験では、6週間で疲れが待っていた組より下がり、12週間後にはさらに下がっていました。働く人の実験では、疲れが軽くなったのは最後まで続けた人の分析だけでした。もっと短い期間で効くかは調べられていません。
ランニングではなく、散歩でもいい?
この実験では散歩と比べていないため、同じ効果があるかはわかりません。ただし実験のランニングも、最初は歩きと軽い走りをくり返す形でした。オランダの働く人2,275人の追跡では、体を動かす量が増えた人ほど1年後の疲れが減る関係がありました。
運動しても疲れが抜けないときは?
実験の参加者は、病気が原因の疲れがない人に限られていました。疲れが長く続く背景には、睡眠や体の不調など別の理由があることもあります。休んでも運動しても抜けないときは、医療機関に相談できます。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- de Vries JD, van Hooff MLM, Geurts SAE, Kompier MAJ (2016). Exercise as an Intervention to Reduce Study-Related Fatigue among University Students: A Two-Arm Parallel Randomized Controlled Trial. PLoS ONE, 11(3), e0152137. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0152137
- de Vries JD, van Hooff MLM, Geurts SAE, Kompier MAJ (2017). Exercise to reduce work-related fatigue among employees: a randomized controlled trial. Scandinavian Journal of Work, Environment & Health, 43(4), 337-349. https://doi.org/10.5271/sjweh.3634
- de Vries JD, Claessens BJC, van Hooff MLM, Geurts SAE, van den Bossche SNJ, Kompier MAJ (2016). Disentangling longitudinal relations between physical activity, work-related fatigue, and task demands. International Archives of Occupational and Environmental Health, 89, 89-101. https://doi.org/10.1007/s00420-015-1054-x


