考える力・集中

ストレス続きで、考える力まで落ちた気がする。大学生73人の実験では、大切にしていることを書いた人は、ストレスが高くても問題を解く成績が落ちにくかった

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わかっている度 ★☆☆ 低研究3本・公的指針0件を整理
白い机の上のメモとノートパソコン
Photo: JESHOOTS.COM jeshoots / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

忙しい日やAIの変化への不安が何週間も続いて、前ならすぐ思いついたことが出てこない。自分の頭が鈍ったようで、さらに焦ってしまう。そんな状態に心当たりのある人は少なくありません。米国の大学生73人の実験では、自分が大切にしていることについて短く書いた人は、ストレスが高くても難しい問題の成績が落ちにくくなっていました。

3行でわかる

  1. 米国の大学生73人の実験(2013年)では、この1か月のストレスが高い人ほど、プレッシャーの中で難しい問題を解く成績が低かった。
  2. 大切にしている価値について短く書いたグループでは、ストレスが高い人も、ストレスの低い人と同じくらいの成績だった。
  3. ただし実験は1本で、人数も少ない。本番の前に「大切なこと」を書く、ストレスの量を減らす期間をつくる、から試せる。

01 結論から言うとストレス続きで落ちた考える力は、戻る?

戻る可能性があります。米国の大学生73人の実験では、大切にしている価値について書いたあと、ストレスの高い人の問題を解く成績が、ストレスの低い人と同じくらいでした。ただし実験は1本だけです。

この方法は「自己肯定化(セルフ・アファメーション)」と呼ばれます。「自分はできる」と言い聞かせることではありません。自分にとって大切な価値を選び、それがなぜ大事なのかを書く練習です。

ストレスが続くと頭が回らなくなるのは、珍しいことではありません。研究者らは、ストレスで考える力が落ちることを前提に、それを防ぐ手がかりを探していました。頭が鈍ったと感じるのは、意志や才能の問題とは限りません。

02 研究とデータでわかっていること大切なことを書くと、なぜ問題が解けるの?

仕組みはまだはっきりしていません。実験では、書いた人は前向きな気分が高くなりましたが、それでは成績の差を説明できませんでした。著者らは、注意の向け方が柔らかくなる可能性を挙げています。

73人分析の対象になった米国の大学生(18〜34歳、平均21歳。2013年発表)
30問時間制限つき・評価役の前で解いた、難しい言葉の連想問題
約半数1位の価値に「友達や家族との関係」を選んだ参加者の割合
144件高校生・大学生を対象にした自己肯定化の実験のまとめ(2023年)

Creswell ら(2013)[1]

参加者は11個の価値(芸術、仕事やお金、友達や家族など)に順位をつけました。半分は1位の価値がなぜ大事かを書き、残り半分は9位の価値が他の人にとってなぜ大事かを書きました。その後、評価役の前で、3つの言葉に共通する言葉を12秒以内に答える問題を30問解きました。この1か月のストレスが高い人ほど成績は低い関連がありました。一方、1位の価値を書いたグループでは、ストレスの高い人の成績が、ストレスの低い人と同じくらいでした。

対象: 米国ピッツバーグの2つの大学の学生80人(指示に従わなかった人などを除いた73人を分析) / 限界: 人数が少なく、評価役に急かされる特殊な場面での結果です。ストレスの強さは実験の最後に本人の回答で測っていました。

Liston ら(2009)[2]

1か月ほど強いストレスが続いた健康な大人20人は、注意を切り替える課題の成績が落ちていました。1か月後、ストレスが減った時期にもう一度調べると、ストレスの低い人との差は見られなくなっていました。ストレスによる考える力の低下は、元に戻りうることを示した研究です。

対象: 健康な大人20人と、ストレスの低い比較グループ / 限界: 人数が少なく、調べたのは注意の切り替えという1つの働きだけです。

Escobar-Soler ら(2023)[3]

学校や大学で行われた自己肯定化の実験144件をまとめた研究です。成績や心の健康などへの平均の効果の大きさ(d)は0.41で、著者らは「小さい」効果と評価しています。どんな人に、どんな手順で行うかによって効果が変わっていました。

対象: さまざまな国・背景の高校生と大学生 / 限界: 研究ごとの結果のばらつきが大きく、働く大人やストレス下の考える力に絞ったまとめではありません。

大切な価値を書く練習は、人と比べて落ち込む場面でも研究されています。比べる場面での結果は「人と比べて落ち込む日に備えたい」で整理しています。

03 まだわかっていないこと仕事中のAIの不安にも、同じ効果がある?

まだわかりません。中心の実験は米国の大学生73人の1本だけで、働く大人や、AIへの不安が続く人を対象にした研究は見当たりませんでした。効果がどれくらい続くかも調べられていません。

  • 実験の問題は、評価役の前で時間に追われて解く形でした。著者ら自身が、評価される場面でだけ起きる結果かもしれないと書いています。
  • 効果は書いた直後に測っただけです。数日後、数週間後まで続くかはわかっていません。
  • 学生を対象にした144件のまとめでも、結果のばらつきは大きく、どの条件で効くかははっきりしていません。
  • AIに価値を書き出してもらった場合に、同じ結果になるかを調べた研究は見当たりませんでした。

04 今日からできるセルフケア落ちた考える力を、立て直すには?

大事な場面の前に、自分の大切な価値を短く書くことです。あわせて、ストレスの量そのものを減らす期間をつくります。お金をかけずにできる工夫を3つ挙げます。

1

大切なことに順位をつけ、1位の理由を書く

家族や友達、仕事、ユーモア、自由など、大事にしている価値を並べて順位をつけます。1位について、なぜ自分にとって大事かを数行書きます。実験の作文は平均69語ほどの短いものでした。

目安 1回5〜10分

2

会議や試験の「前」に書く

実験では、評価される課題の直前に書いていました。発表や面談、頭を使う仕事の前に、手帳やメモアプリで1の作文を読み返すか、新しく書きます。

目安 本番の前に1回

3

ストレスを減らす期間を、数週間つくる

Liston らの研究では、ストレスが減った1か月のあとに注意の働きが戻っていました。通知を減らす、予定を詰めすぎない日を週に何日か入れるなど、負担の量を下げる時期を意識してつくります。

目安 まず2〜4週間

ストレスのあとの集中力の戻り方は「ストレス続きで頭が回らず、能力が落ちた気がする」、別の立て直し方は「落ちた集中力を、瞑想で取り戻したい」や「1回の運動のあとに注意の働きが少しよくなっていた」も参考になります。

05よくある質問

ストレスで頭が回らないのは、能力が下がったからですか?

能力そのものが下がったとは限りません。20人の健康な大人を調べた研究では、1か月強いストレスが続いた時期に注意の切り替えが落ちていましたが、ストレスが減って1か月後には、ストレスの低い人との差が見られなくなっていました。

どんな「大切なこと」について書けばいいですか?

自分にとって大事なら何でもかまいません。実験では、芸術、仕事やお金、友達や家族、ユーモアなど11個の価値に順位をつけ、1位について理由を書いていました。参加者の約半数が「友達や家族との関係」を1位に選んでいました。

AIに書いてもらっても効果はありますか?

研究ではまだわかっていません。実験では本人が自分の言葉で書いていました。AIが書いた文章を読む場合に同じ結果になるかを調べた研究は見当たりませんでした。短くてもよいので、自分で書くのが研究に近いやり方です。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Creswell JD, Dutcher JM, Klein WMP, Harris PR, Levine JM (2013). Self-affirmation improves problem-solving under stress. PLoS ONE, 8(5), e62593. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0062593
  2. Liston C, McEwen BS, Casey BJ (2009). Psychosocial stress reversibly disrupts prefrontal processing and attentional control. Proceedings of the National Academy of Sciences, 106(3), 912–917. https://doi.org/10.1073/pnas.0807041106
  3. Escobar-Soler C, Berrios R, Peñaloza-Díaz G, Melis-Rivera C, Caqueo-Urízar A, Ponce-Correa F, Flores J (2023). Effectiveness of Self-Affirmation Interventions in Educational Settings: A Meta-Analysis. Healthcare, 12(1), 3. https://doi.org/10.3390/healthcare12010003