考える力・集中

ながら作業で集中できない、頭に残らない。2つを同時にすると何が起きるか、研究の答えと使い分け方

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わかっている度 ★★☆ 中研究5本を整理出典照合済み(2026-10-03)
本が積まれた机とノートパソコン
Photo: freddie marriage fredmarriage / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

会議を聞きながらメールを返し、動画を流しながら資料を読む。たくさん片づけているはずなのに、終わってみると何も頭に残っていない気がする。2つのことを同時にすると、それぞれの出来が落ちやすいことは、心理学の実験で長く確かめられてきました。一方で、「ながら作業が多い人は集中力そのものが落ちる」という説は、研究の結果が分かれています。

3行でわかる

  1. 2つの作業を同時にしたり、行き来したりすると、1つずつするより出来が落ちやすいことが、多くの実験で確かめられています。
  2. ふだんのながら作業が多い人ほど、注意がそれやすく物忘れしやすい、という関連を示した研究があります。
  3. ただし39の結果をまとめた研究では、気が散りやすさとの関連ははっきりしませんでした。大事な作業だけ1つに絞るのが現実的です。

01結論から言うと

2つのことを同時にすると、その場の出来は落ちやすくなります。これはよく確かめられています。一方で、ながら作業の習慣が集中力そのものを弱めるかは、まだ結論が出ていません。大事な作業だけは1つに絞るのが確実です。

人の頭は、2つの作業を本当に同時に進めるのが得意ではありません。実際には、2つの作業の間を細かく行き来しています。

切り替えるたびに、「いま何をしていたか」を思い出す手間がかかります。この手間は、準備する時間があっても完全にはなくならないことが、実験で繰り返し報告されています。

02研究とデータでわかっていること

同時にこなす・切り替える作業で出来が落ちることは、多くの実験でそろっています。ながら作業が多い人の注意の弱さについては、関連を示す研究と示さない研究があります。

80人ながら作業が多い若い大人ほど、注意がそれやすく物忘れしやすい関連(2020年)
39件結果をまとめると、気の散りやすさとの関連は補正後にはっきりしなかった(2017年)
22分この長さの講義動画で、自分で選んだながら作業では成績に差が出なかった(カナダの大学生約220人、2024年)

Strobachら(2018年)[1]

同時にする作業や切り替えの研究をまとめた論文です。複数の作業を組み合わせると、1つずつするより出来が落ちるのがふつうだと整理しています。作業を切り替えるときの遅れは、前もって準備する時間があっても残ることが、一貫して見つかっています。

研究の特集号の巻頭の解説です / 限界: 実験室での単純な作業の結果が中心で、仕事の場面にそのまま当てはまるとは限りません。

Madoreら(2020年)[2]

脳波と瞳孔の大きさで注意の状態を測りながら、覚えて思い出す課題をしてもらいました。思い出す直前に注意がそれていると、思い出せないことが多くなりました。ふだん複数のメディアを同時に使うことが多い人ほど、注意がそれやすく、物忘れしやすい関連がありました。

対象: 平均21.7歳の若い大人80人 / 限界: 関連を調べた研究で、ながら作業が注意を弱めたのか、もともと注意がそれやすい人がながら作業を選ぶのかは区別できません。

WiradhanyとNieuwenstein(2017年)[3]

ながら作業が多い人は気が散りやすい、という有名な研究を確かめ直しました。2つの追試では14の検査のうち、気が散りやすい方向の差が出たのは5つでした。過去の研究の39の結果をまとめると弱い関連はありましたが、小さな研究の偏りを補正すると、はっきりしなくなりました。

対象: 追試2件と、過去の研究のまとめ / 限界: 実験室での検査の結果で、ふだんの仕事での集中とは違う可能性があります。

Marty-Dugasら(2024年)[4]

22分の講義動画を見ながら、横でゲームを自由に表示できるようにしました。自分で遊べる条件の人は、見るだけの条件の人より、ゲームを表示している時間が長くなりましたが、講義の内容のテストの成績に差はありませんでした。研究者は、人は聞き逃しても困らない場面を選んで、ながら作業をしているのかもしれないと考えています。

対象: カナダの大学生約220人(論文内で222人と227人の記載あり) / 限界: テストは選択式で、思い出して書く力までは測っていません。この論文が紹介している先行研究では、ながら作業を指示された場合には成績が下がっていました。

UncapherとWagner(2018年)[5]

ながら作業が多い人と少ない人の、頭の働きを比べた研究をまとめました。全体としては、多い人のほうがいくつかの課題で成績が低い傾向でした。ただし差が出ない研究も多く、とくに注意を長く保つ必要がある課題で差が出やすいと整理しています。

研究のまとめ / 限界: 研究はまだ少なく、どちらが原因かもわかっていないと著者ら自身が述べています。

03まだわかっていないこと

ながら作業の習慣が、集中力を長い目で弱めるのかはわかっていません。関連を示す研究と示さない研究があり、どちらが原因かも区別できていない段階です。

  • ながら作業が注意を弱めるのか、注意がそれやすい人がながら作業を選びやすいのか、まだ区別できていません。
  • 研究の多くは大学生や若い大人が対象です。働く大人の、長い時間の仕事で同じかは確かめられていません。
  • ながら作業を減らす練習で、集中力が戻るかどうかを確かめた研究は、まだほとんどありません。

04今日からできるセルフケア

全部をやめる必要はありません。聞き逃すと困る作業だけを1つに絞り、それ以外は気楽にながらで済ませる。この使い分けから始めるのが現実的です。

1

「聞き逃せない作業」だけ1つに絞る

その日の作業のうち、ミスできないもの・覚えておきたいものを1〜2個選びます。その時間だけは、ほかの画面を閉じて取り組みます。

目安 1日1〜2回、25分ずつ

2

切り替えの回数を減らす

メールやチャットの返信は、思いついたときではなく、まとめて片づける時間を決めます。切り替えるたびにかかる手間を減らせます。

目安 返信は1日3〜4回にまとめる

3

ながら作業の時間を一度だけ記録する

実験では、本人の感じ方と実際のながら作業の量が一致しないことがありました。半日だけ、別の画面を開いた回数をメモしてみると、思ったより多いか少ないかがわかります。

目安 半日・1回だけ

4

中断したら、戻る場所をひとことメモする

急な用事で手を止めるときは、「次はここから」と一行書いておきます。戻ったときに思い出す手間を減らせます。

目安 1回10秒

05よくある質問

マルチタスクは脳に悪い?

ながら作業の習慣が脳や集中力を長く弱めるかは、まだわかっていません。関連を示した研究もありますが、39の結果をまとめた研究では、はっきりした関連は見られませんでした。

ながら作業が得意な人もいる?

2つを同時にすると出来が落ちやすいのは、多くの人に共通です。ただし、聞き逃しても困らない場面を選んで、上手にながら作業をしている可能性を指摘した研究もあります。

音楽を聴きながらの作業もよくない?

この記事で紹介した研究は、画面を見る作業やメディアの同時利用が中心です。音楽を聴きながらの作業については、ここでは確かめていません。

会議中にチャットを見てしまうのをやめたい

会議の中で、聞き逃すと困る部分だけはチャットを閉じると決めるのが手軽です。返信は会議のあとにまとめて片づけると、切り替えの回数も減らせます。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

出典

  1. Strobach T, Wendt M, Janczyk M (2018). Editorial: Multitasking: Executive Functioning in Dual-Task and Task Switching Situations. Frontiers in Psychology. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.00108
  2. Madore KP, Khazenzon AM, Backes CW, et al. (2020). Memory failure predicted by attention lapsing and media multitasking. Nature. https://doi.org/10.1038/s41586-020-2870-z
  3. Wiradhany W, Nieuwenstein MR (2017). Cognitive control in media multitaskers: Two replication studies and a meta-Analysis. Attention, Perception, & Psychophysics. https://doi.org/10.3758/s13414-017-1408-4
  4. Marty-Dugas J, McHardy RJ, Ralph BCW, Kim J, Smilek D (2024). Active vs passive media multitasking and memory for lecture materials. Heliyon. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2024.e31935
  5. Uncapher MR, Wagner AD (2018). Minds and brains of media multitaskers: Current findings and future directions. PNAS. https://doi.org/10.1073/pnas.1611612115