仕事とAIの不安

AIで仕事を失ってから、心も体も重いまま。失業した人の健康づくりを調べた34件の研究のまとめでは、心の健康が少しよくなり、効果が出たのは自分から参加したときだった

約7分で読めます

わかっている度 ★★☆ 中研究2本・公的指針1件を整理
雲海を見下ろす朝の山道
Photo: Forest and Kim Starr / CC BY 3.0 us / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

仕事がなくなってから、朝起きるのがおっくうで、体まで重い。仕事探しのことばかり考えて、自分の体調は後回しになっている。そんな状態が続くと、立て直す気力そのものがわいてきません。結論から言うと、失業した人向けの健康づくりの取り組みは、研究のまとめで心の健康を少しよくしていました。ただし効果が出たのは、自分から参加したときでした。

3行でわかる

  1. 失業した人向けの健康づくりの取り組みを調べた34件の研究のまとめでは、終了直後に心の健康が少しよくなり、数か月後も小さな差が残っていた。
  2. 体を動かすことを勧める取り組みでは、運動量が増えていた。体の調子がよくなったのは、仕事探しの訓練を混ぜない取り組みだった。
  3. 効果があったのは自分の意思で参加した場合で、職業紹介の窓口などで参加が実質的に義務になっていた取り組みでは、効果が見られなかった。

01 結論から言うと失業して心も体も重いとき、何から立て直す?

自分で選んだ小さな健康づくりから始めるのが一つの手です。研究のまとめでは、健康づくりの取り組みで心の健康が少しよくなり、体を動かす量も増えていました。効果は小さく、誰にでも効くとまでは言えません。

仕事を失ったあとに気持ちも体も重くなるのは、あなたが弱いからとは限りません。この記事で紹介する分析の論文が紹介している先行研究では、失業中の人は働いている人より、落ち込みや不安の症状が多く、自己評価も下がりやすいことが示されていました。

ここで扱うのは、仕事探しそのものではなく、心と体の健康を立て直すための取り組みです。考え方を整える練習、リラックス法、体を動かす習慣づくりなどが含まれます。仕事探しの支援や再就職と心の関係は、AIで仕事が変わった・失った後の記事にまとめています。

02 研究とデータでわかっていること失業後の健康づくりは、心と体に効く?

34件の研究のまとめでは、心の健康と運動量は少しよくなり、体の調子は仕事探しの訓練を混ぜない取り組みでだけよくなっていました。自分から参加したときにだけ心の健康への効果が見られました。

34件失業した人向けの健康づくりの取り組みを、比べるグループと比べた研究の数(1989〜2020年発表、2023年のまとめ)
d=0.22取り組みの終了直後の、心の健康への効果の大きさ(小さい効果。同じまとめ)
d=0.29自分の意思で参加した場合の、心の健康への効果の大きさ。参加が義務に近かった場合は効果なし(同じまとめ)
5,303人失業した人の心の健康を守る取り組みを試した、11件のランダム化比較試験の参加者の合計(2017年のまとめ)

Paul・Hollederer(2023)[1]

失業した人の健康をよくするための取り組みを、比べるグループと比べた34件の研究(36のグループ)をまとめました。取り組みを受けた人は、終了直後に心の健康が比べるグループより少しよく(効果量 d=0.22)、数か月後の追跡でも小さな差が残っていました(d=0.11)。体を動かすことを勧めた取り組みでは、運動量が増えていました(d=0.30、小〜中くらいの効果)。体の調子への効果は全体でははっきりせず(d=0.09)、仕事探しの訓練を混ぜない取り組みに限ると、はっきりした効果がありました(d=0.17)。

心の健康への効果は、自分の意思で参加した場合にだけ見られました(d=0.29)。職業紹介の窓口などで参加が実質的に義務になっていた場合は、効果が見られませんでした(d=-0.14、0との差ははっきりしない)。考え方を整える練習、リラックス法、人の支えを増やす方法、運動など、どの方法が特にすぐれているかは確かめられませんでした。

対象: 失業中の人を対象にした研究。半数あまりが欧州、2割あまりがオーストラリア。典型的な取り組みは3週間・計20時間ほどで、参加者の年齢の中央値は41歳、失業期間の中央値は36か月 / 限界: 研究ごとのばらつきが大きく、新しい取り組みが効くかどうかは予測しにくい。AIによる失業を扱った研究ではない。

Mooreら(2017)[2]

失業や借金による心の負担を減らす取り組みのランダム化比較試験11件(参加者5,303人、全員が失業中)を整理しました。仕事探しのやり方を学びながら、仲間と励まし合う集中的な講座(ジョブクラブ)を試した5件では、落ち込みの症状の改善が、最長で終了2年後まで見られました。効果がはっきりしたのは主に落ち込みやすい状態の人で、落ち込みの点数で最大0.2〜0.3標準偏差ほどの改善でした。グループで考え方を整える練習(認知行動療法)は、結果が分かれていました。

対象: 一般の失業中の人 / 限界: どの試験もかたよりの危険が高いと評価され、研究の多くは古い。日本やAIによる失業を扱った試験は含まれない。

世界保健機関(WHO)の指針(Bullら、2020)[3]

18〜64歳の大人には、中くらいの強さの運動を週150〜300分などを勧めています。あわせて、「少しでも体を動かすほうが、まったく動かさないよりよい」とし、基準に届かない人は少しの量から始めて、回数や強さ、時間を徐々に増やすよう勧めています。座っている時間を、軽いものを含むどんな強さの活動に置き換えても、健康によいとしています。

対象: 世界の大人向けの身体活動の指針 / 限界: 失業した人に絞った指針ではない。

3つを並べると、失業後の立て直しでは、自分で選んだ取り組みであることと、体を動かす習慣が手がかりになりそうだと見えてきます。一方で、どれも効果は小さめで、これをすれば元気になる、という方法はまだ見つかっていません。

03 まだわかっていないことAIで仕事を失った人にも、同じことが言える?

まだ結論は出ていません。研究の多くは欧州やオーストラリアの、AIとは関係のない失業を扱ったもので、AIで仕事を失った人を対象にした試験は見当たりません。

  • AIによる仕事の変化や失業を経験した人を対象にした、健康づくりの試験は見当たらない。
  • 日本の失業した人を対象にした試験は、紹介した2つのまとめには含まれていない。
  • 考え方を整える練習、リラックス法、運動のどれが特に効くのかは、はっきりしていない。
  • 体を動かす量が増えたあと、どのくらい続くのかは、追跡できた研究が少なくわかっていない。

04 今日からできるセルフケア仕事を失ったあと、今日できることは?

自分で選んだ健康づくりを1つ決め、短い散歩から体を動かし、仕事探しとは別に体を整える時間をとります。どれも、合わなければやめて構いません。

1

「やりたい」と思える健康づくりを、自分で1つ選ぶ

散歩、ストレッチ、早寝など、候補を3つ書き、気が向くものを1つだけ選びます。研究のまとめでは、自分の意思で参加した取り組みでだけ、心の健康への効果が見られました。人に言われて義務のように続けるより、自分で選ぶことを大切にします。

目安 5分、最初の1回だけ

2

10分の散歩から、体を動かす時間を少しずつ増やす

WHOの指針は「少しでも動くほうがよい」とし、少しの量から始めて徐々に増やすよう勧めています。まずは1日10分歩き、慣れたら時間を延ばします。歩くことと気分の関係は歩くと気分は変わるかを調べた記事にまとめています。

目安 1日10分から

3

仕事探しとは別に、体を整える時間をとる

求人を見る時間と、体を動かしたり休んだりする時間を、1日の予定の中で分けておきます。研究のまとめでは、体の調子がよくなったのは仕事探しの訓練を混ぜない取り組みでした。仕事探しだけで一日を埋めない工夫です。

目安 1日の中に30分

4

誰かと一緒に取り組める場を1つ持つ

一緒に歩く家族や友人、地域の集まりなど、人と顔を合わせる場を週に1回持ちます。研究で試された取り組みの多くは、少人数のグループで行われていました。ひとりで抱え込むと不安が長引きやすい研究は不安が何か月も消えないときの記事にまとめています。

目安 週に1回

05よくある質問

仕事を失ってから体までだるいのは、気のせい?

気のせいとは限りません。紹介したまとめの論文が紹介している先行研究では、失業中の人は働いている人より落ち込みや不安の症状が多く、自分で感じる体の健康も悪い傾向がありました。だるさが続くときは、体の病気が隠れていないか医療機関で相談することもできます。

健康づくりより、早く仕事を探したほうがいい?

どちらか一方を選ぶ必要はありません。仕事探しのやり方を学びながら仲間と励まし合う講座では、特に落ち込みやすい状態の人で、落ち込みの症状の改善が最長で終了2年後まで見られました。一方で、体の調子がよくなったのは仕事探しの訓練を混ぜない取り組みだったため、体を整える時間も別にとるとよさそうです。

運動はどのくらいすればいい?

WHOの指針は、18〜64歳の大人に中くらいの強さの運動を週150〜300分などを勧めています。ただ、基準に届かなくても「少しでも動くほうがよい」としていて、少しの量から始めて徐々に増やすよう勧めています。

支援の講座に通うよう言われたけど、気が進まない。

研究のまとめでは、参加が実質的に義務になっていた取り組みでは、心の健康への効果が見られませんでした。講座の中で、自分がやってみたいと思える部分を1つ見つけると、自分で選んだ取り組みに近づけられるかもしれません。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

無料ツール
セルフチェックで「今日やること」をまとめる
当てはまる悩みを選ぶだけ。診断はせず、記事の対策を一覧にします。
研究早見表でほかの悩み210件も見る

出典

  1. Paul KI, Hollederer A (2023). The Effectiveness of Health-Oriented Interventions and Health Promotion for Unemployed People—A Meta-Analysis. International Journal of Environmental Research and Public Health, 20(11), 6028. https://doi.org/10.3390/ijerph20116028
  2. Moore THM, Kapur N, Hawton K, Richards A, Metcalfe C, Gunnell D (2017). Interventions to reduce the impact of unemployment and economic hardship on mental health in the general population: a systematic review. Psychological Medicine, 47(6), 1062-1084. https://doi.org/10.1017/S0033291716002944
  3. Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, et al. (2020). World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. British Journal of Sports Medicine, 54(24), 1451-1462. https://doi.org/10.1136/bjsports-2020-102955