AIで仕事を失うかもという不安で、眠りまで浅くなりそう。韓国の働く人4,393人の調査では、仕事の先行きが不安な人は不眠の症状が約2倍多く、寝る前に頭と体が休まらないことがその一部を説明していた

AIで自分の仕事はどうなるのか。昼間は忙しさで紛れても、布団に入ると考えが止まらなくなる。そんな夜が増えそうで心配な人もいるでしょう。韓国の働く人4,393人の調査では、仕事の先行きが不安な人ほど不眠の症状が多く、その関係の一部は「寝る前に頭と体が休まらないこと」で説明されていました。不安そのものはすぐに消せなくても、眠りへの通り道は前もって狭めておけるかもしれません。
3行でわかる
- 韓国の働く人4,393人の調査では、仕事を失う不安が強い人の32.2%に不眠の症状があり、強くない人の17.0%より多かった。
- その関係の一部は、寝る前の考えごと(頭の興奮)と、体の緊張(体の興奮)を通していた。ただし一時点の調査で、AIに限った不安ではない。
- 仕事から心が離れている人ほどよく眠れている傾向があり、心を離す練習を含むプログラムで不眠が軽くなった実験もある。
01 結論から言うと仕事の先行き不安は、眠りにも響く?
響く可能性があります。韓国の大規模な調査では、仕事を失う不安が強い人ほど不眠の症状が多く、寝る前に考えごとが止まらない・体がこわばる状態が、その関係の一部を説明していました。ただし原因と結果の向きは、まだ確かめられていません。
ここで紹介する調査が測ったのは、AIに限らない「仕事を失うかもしれない」という不安(研究では雇用不安と呼びます)です。AIによる仕事の変化に絞った睡眠の研究は、まだ見当たりません。それでも、先行きの見えない不安が夜にどう入り込むのかを考える手がかりにはなります。
研究者らは、寝る前の状態を2つに分けて調べました。1つは、心配や考えごとが頭の中をめぐる「頭の興奮」。もう1つは、動悸や筋肉のこわばりのような「体の興奮」です。仕事の不安と不眠のあいだには、この両方が通り道として入っていました。つまり、不安をなくすことはできなくても、寝る前の頭と体を静める工夫には意味がありそうです。
02 研究とデータでわかっていること不安と不眠をつないでいるのは何?
寝る前の頭と体の興奮です。韓国の調査では、仕事の不安と不眠の関係の一部をこの2つが説明していました。研究のまとめでは、仕事から心が離れている人ほどよく眠れており、心を離す練習を含むプログラムで不眠が軽くなった実験もあります。
Minら(2025年)[1]
韓国の働く人4,393人に、仕事のストレス、不眠の症状、睡眠の質、寝る前の興奮の程度を尋ねました。仕事を失う不安が強い人は、不眠の症状がある人が32.2%、睡眠の質が低い人が57.2%で、不安が強くない人(17.0%、36.4%)より多くなっていました。年齢や収入、労働時間、持病、飲酒、コーヒーなどをそろえても、不眠の症状がある見込みは約2.3倍でした。分析では、寝る前の頭の興奮と体の興奮のどちらも、この関係の一部を説明する通り道になっていました。
対象: 韓国の働く人4,393人(オンライン調査、2022年8月開始の研究の初回データ) / 限界: 一時点の調査で、不安が不眠を招いたのか、眠れないから不安が強まるのかは区別できません。AIに限った不安ではなく、回答者の8割以上が大卒以上で、日本にそのまま当てはまるかはわかりません。
WendscheとLohmann-Haislah(2017年)[2]
仕事が終わった後に、仕事のことから心を離せているほど、よく眠れている傾向がありました(18の調査、1万2,028人、中くらいの強さの関連)。心が離れている人ほど疲れも少なく、休みの時間に仕事の作業をする人ほど心が離れにくいという関連も見られました。
対象: 86本の論文、91の調査、働く人3万8,124人のまとめ / 限界: 関連を見た研究が中心で、調査ごとの結果のばらつきも大きく、心を離すことが眠りをよくする原因だとは言い切れません。
Brücknerら(2024年)[3]
仕事と私生活の境目があいまいで、不眠に悩む働く人128人を、オンラインのプログラムを受ける組と、順番待ちの組に分けました。プログラムは1回45〜60分の6回分で、睡眠の知識や生活の整え方に加え、仕事から心を離す工夫や、寝る前の頭の興奮を静める方法を含んでいました。受けた組は、2か月後と6か月後のどちらでも、順番待ちの組より不眠が大きく軽くなり、仕事から心を離す感覚や心配の程度もよくなっていました。
対象: ドイツの働く人128人(中くらい以上の不眠の症状がある人) / 限界: すでに不眠に悩む人が対象で、予防の効果を確かめたものではありません。比べた相手は何もしない順番待ちの組で、6か月後には44%が回答から抜けていました。
3つを並べると、仕事の不安は寝る前の頭と体を通して眠りに入り込みやすく、仕事から心を離す時間をつくることが、その入り口を狭める手がかりになると考えられます。ただ、予防として前もって取り組んだ人を追った研究はまだありません。
03 まだわかっていないことAIによる不安でも同じことが起きる?
まだわかっていません。AIで仕事が変わる不安と睡眠を直接調べた研究は見当たらず、ここで紹介した結果は、AIに限らない仕事の不安についてのものです。
- 韓国の調査は一時点のもので、不安が先か、眠れないことが先かはわかりません。
- AIによる仕事の変化への不安が、ほかの雇用不安と同じように眠りに響くのかは調べられていません。
- 不眠がまだない人が、前もって心を離す工夫をすると不眠を防げるのかは、実験で確かめられていません。
- ドイツの実験は6回のプログラム全体の効果で、どの工夫がどれだけ効いたのかは区別されていません。
04 今日からできるセルフケア不安を夜に持ち込まないためにできることは?
終業時に気がかりを書き出して区切り、寝る前の1時間は不安をかき立てる情報から離れ、体のこわばりをゆるめます。どれも、寝る前の頭と体の興奮を減らす工夫です。
終業時に「気がかりメモ」を書いて閉じる
仕事の終わりに、AIや仕事の先行きで気になっていることと、明日の最初の一歩を1行ずつ書きます。書いたら閉じて「続きは明日」と区切ります。仕事から心が離れている人ほどよく眠れている、という研究の結果に沿った工夫です。
目安 終業時に5分
寝る前の1時間は、仕事とAIのニュースを開かない
寝る前に考えごとが止まらない状態は、仕事の不安と不眠をつなぐ通り道の1つでした。寝る1時間前からは、仕事の連絡や雇用・AIのニュースを見ない時間にして、気になったら気がかりメモに足すだけにします。
目安 毎晩・寝る1時間前から
布団に入る前に、肩と息をゆるめる
体のこわばりも、もう1つの通り道でした。肩を5秒すくめてからストンと落とす、息をゆっくり長く吐くなど、体の緊張に気づいてゆるめる時間を少しとります。
目安 寝る前に3分
不安が一日中頭から離れないときは 心配を1日30分にまとめる練習、休日も仕事を考えてしまうときは 仕事から心を離す研究 の記事も参考になります。
05よくある質問
仕事の先行きが不安だと、眠れなくなるのは普通?
珍しいことではありません。韓国の働く人4,393人の調査では、仕事を失う不安が強い人の32.2%に不眠の症状があり、不安が強くない人の17.0%より多くなっていました。年齢や働き方、持病などをそろえても、不眠の症状がある見込み(オッズ)は約2.3倍でした。ただし一時点の調査で、どちらが先かは言い切れません。
AIのニュースを寝る前に見るのはよくない?
寝る前のAIのニュースそのものを調べた研究は、ここで扱った中にはありません。韓国の調査では、仕事の不安と不眠の関係の一部を、寝る前に考えごとが止まらない状態が説明していました。寝る前に不安をかき立てる情報を見ないようにするのは、この結果に沿った工夫の1つです。
仕事のことを考えないようにすればいい?
「考えないようにする」と力むより、終業時に気がかりを書き出して区切るほうが取り組みやすいでしょう。研究のまとめでは、仕事が終わったあとに仕事から心が離れている人ほど、よく眠れている傾向がありました。ドイツの実験では、心を離す工夫を含むオンラインの練習で、すでに不眠に悩む働く人の不眠が軽くなっていました。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Min J, Ryu H, Cho SS, Kang MY (2025). Association between work stress and sleep disturbances: the mediating role of pre-sleep arousal symptoms. Industrial Health, 63(5), 478-489. https://doi.org/10.2486/indhealth.2024-0158
- Wendsche J, Lohmann-Haislah A (2017). A Meta-Analysis on Antecedents and Outcomes of Detachment from Work. Frontiers in Psychology, 7, 2072. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2016.02072
- Brückner H, Wallot S, Horvath H, Ebert DD, Lehr D (2024). Effectiveness of an online recovery training for employees exposed to blurred boundaries between work and non-work: Bayesian analysis of a randomised controlled trial. BMJ Mental Health, 27, e301016. https://doi.org/10.1136/bmjment-2024-301016


