AIや仕事の先行きが、一日中頭から離れない。心配を1日30分にまとめる練習は、心配しやすい人の実験で心配を減らしていた

会議の合間にも、移動中にも、夜の歯みがき中にも、「AIで仕事はどうなるのか」「この先やっていけるのか」が頭に浮かぶ。考えても答えが出ないのに、止められない。そんな状態は、心配が一日のあらゆる場面に広がっている状態とも言えます。研究では、心配を消すのではなく「考える時間と場所」を決めてそこにまとめる方法が試されてきました。
3行でわかる
- 心配を毎日決まった時間・場所の30分にまとめる方法は、1983年に報告された「刺激統制」という考え方にもとづいています。
- 心配しやすい53人を2週間比べた実験では、この方法をした人のほうが心配・不安・不眠の訴えの得点が下がっていました。
- ただしオンラインで指示を出しただけの研究では差が出ませんでした。「浮かんだらメモして夕方に回す」と先に決めておくと続けやすそうです。
01 結論から言うと一日中続く心配は、時間を決めると減らせる?
減らせる可能性があります。心配を1日30分の決まった枠にまとめる練習は、心配しやすい人の小さな実験で心配と不安を減らしていました。ただし、指示を読むだけでは効かなかった研究もあり、確実な方法とは言えません。
心配が一日中続くのは、意志が弱いからではありません。心配は、パソコンを開く、通勤する、布団に入るといった、いろいろな場面と結びつきやすい性質があります。
Borkovecら(1983年)は、この結びつきを減らすために、心配を毎日同じ時間・同じ場所にまとめて先送りする方法を報告しました[1][6]。これが「心配の時間」を決める方法の始まりです。
AIや仕事の先行きは、すぐには答えの出ない心配の代表です。答えが出ないまま一日中考えていると、休むべき時間まで心配が入り込みます。この記事は、心配をためない日々の習慣としての使い方をまとめます。
02 研究とデータでわかっていること心配を先送りする方法は、どのくらい効いた?
心配を30分の枠に先送りする方法は、心配しやすい人の実験と子どもの研究で心配を減らしていました。一方、一般の大人にオンラインで指示を出した研究では、記録だけのグループと差がありませんでした。
McGowanとBehar(2013年)[2]
心配しやすい傾向の強い53人を2つのグループに分けました。片方は2週間、毎日30分だけ時間と場所を決めて心配し、それ以外の時間は先送りしました。もう片方は、心配を避けずにそのまま考えるよう指示されました。終了時、時間と場所を決めたグループのほうが、心配・不安・嫌な気分・不眠の訴えの得点が下がっていました。落ち込み(抑うつ)の得点には差がありませんでした。
対象: 心配しやすい傾向の強い53人 / 限界: 著者自身が「予備的な研究」と位置づける小規模な実験で、2週間後までの結果です。
Jellesmaら(2009年)[3]
オランダ・ライデンの小学校7校の9〜13歳227人が、1週間、心配が続いた様子を記録しました。そのうち138人は、心配を夕方の早い時間の30分に先送りするよう教わりました。先送りを教わった子どもは心配の回数が減り、女の子では心配の続く時間も短くなっていました。
対象: オランダの9〜13歳227人 / 限界: 子どもを対象にした1週間の研究で、大人の働く人に同じ結果が出るかはわかりません。
Versluisら(2016年)[4]
一般から募集した996人に、研究のウェブサイトで6日間、心配を記録してもらいました。一方のグループには、心配を夕方の早い時間の30分に先送りするよう指示しました。最後まで続けた361人では、先送りのグループ(163人)と記録だけのグループ(188人)で、体の不調の訴えにも、心配の回数や時間にも差がありませんでした。参加者は心配しやすい人が多く、先送りが難しかったと報告していました。
対象: 一般から募集した大人(最後まで続けたのは361人) / 限界: 途中でやめた人が多く、オンラインで指示を読むだけの形でした。
McCarrickら(2025年)[5]
186人(平均30歳)が14日間、毎晩その日の心配を、毎朝前の晩の睡眠を記録しました。心配の先送りに加えて「いつ・どうやって先送りするか」の計画(もし〜したら、〜する)を立てたグループは、先送りだけのグループより1日の心配時間が約15分短くなりました。睡眠は、どのグループも比較対象と比べて改善しませんでした。
対象: オンラインで参加した186人 / 限界: 本人の記録にもとづく結果で、睡眠への効果は確認されませんでした。
不安の強い人を対象にした別の研究については、会議のあとの一人反省会の記事やAIに仕事を奪われそうな不安の記事でも紹介しています[6]。
03 まだわかっていないこと心配の時間は、誰にでも効く方法なの?
誰にでも効くかは、まだわかっていません。研究は人数が少ないものが多く、オンライン版では効果が出ませんでした。AIや仕事の先行きの心配に絞って試した研究も見当たりません。
- 大人の働く人を対象に、数週間以上続けた効果を確かめた研究は少数です。
- 紙と口頭で教わる形と、オンラインで指示を読むだけの形で、結果が分かれています。
- 睡眠がよくなるかは、2013年の研究と2025年の研究で結果がそろっていません。
- AIや仕事の先行きという特定の心配に、この方法が向いているかは調べられていません。
04 今日からできるセルフケア心配を一日中ためないために、何をすればいい?
毎日同じ時間と場所に30分の「心配の時間」を決め、日中に浮かんだ心配はメモして先送りし、時間が来たら終える。この3つを、うまくいかない日があっても続けるのが研究で試された形です。
毎日同じ時間・同じ場所に「心配の時間」を決める
子どもの研究やオンラインの研究では、夕方の早い時間の30分でした。寝る直前は避け、机やいすなど場所も1か所に決めます。布団や仕事用の席は避けると、場面と心配の結びつきを広げずにすみます。
目安 毎日30分
浮かんだ心配は一言メモして「あとで考える」
「もしAIの心配が浮かんだら、メモに一言書いて夕方の時間に回す」と先に決めておきます。いつ・どうするかを先に決めた人は、心配の時間が短くなっていました。
目安 1回10秒
時間が来たら、答えが出なくても終える
心配の時間には、メモを見ながら考えます。手を打てることがあれば次の一歩を1つ書き、時間が来たら終えて残りは翌日に回します。
目安 終わりに1分
休日や仕事後の時間は、心配を持ち込まない時間にする
心配の時間を決めると、それ以外の時間を守りやすくなります。仕事から心を離す工夫は休日も仕事を考えてしまう記事、在宅勤務の切り上げ方は在宅勤務で仕事を切り上げられない記事にまとめています。
目安 週末・終業後
うまく先送りできない日があっても失敗ではありません。オンラインの研究でも、先送りが難しかったという声が多くありました。2週間ほど続けて、心配が一日に広がる感じが変わるかを見てみましょう。
05よくある質問
心配する時間を決めると、本当に心配は減るの?
心配しやすい53人を2週間比べた実験では、毎日30分、時間と場所を決めて心配した人のほうが、心配と不安の得点が下がっていました。ただし小さな予備的な研究で、オンラインで指示だけを出した別の研究では差が出ませんでした。
心配する時間は、いつ・どのくらいがいい?
子どもの研究とオンラインの研究では、夕方の早い時間に30分の枠を取っていました。寝る直前は避け、毎日同じ時間と場所にするのが元の方法の考え方です。最適な時間帯を比べた研究は見当たりません。
日中に心配が浮かんだら、どうすればいい?
紙かメモに一言だけ書いて「あとで考える」と決め、目の前の作業に戻ります。消そうと頑張るのではなく、置き場所を決めて先送りするのがこの方法です。うまく先送りできない日があるのは珍しくありません。
心配の時間に考えても、答えが出なかったら?
答えが出なくてもかまいません。時間が来たら終えて、次の日の枠に回します。2025年の研究では「もし心配が浮かんだら、メモして夕方の枠で考える」のように、いつ何をするかを先に決めた人で、先送りだけの人より1日の心配の時間が約15分短くなっていました。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Borkovec TD, Wilkinson L, Folensbee R, Lerman C (1983). Stimulus control applications to the treatment of worry. Behaviour Research and Therapy, 21(3), 247-251. https://doi.org/10.1016/0005-7967(83)90206-1
- McGowan SK, Behar E (2013). A preliminary investigation of stimulus control training for worry: effects on anxiety and insomnia. Behavior Modification, 37(1), 90-112. https://doi.org/10.1177/0145445512455661
- Jellesma FC, Verkuil B, Brosschot JF (2009). Postponing worrisome thoughts in children: the effects of a postponement intervention on perseverative thoughts, emotions and somatic complaints. Social Science & Medicine, 69(2), 278-284. https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2009.04.031
- Versluis A, Verkuil B, Brosschot JF (2016). Reducing worry and subjective health complaints: A randomized trial of an internet-delivered worry postponement intervention. British Journal of Health Psychology, 21(2), 318-335. https://doi.org/10.1111/bjhp.12170
- McCarrick D, Prestwich A, Ferguson E, O'Connor DB (2025). Effects of worry postponement on daily worry and sleep: a randomised controlled trial. Psychology & Health. https://doi.org/10.1080/08870446.2025.2590072
- Krzikalla C, Buhlmann U, Schug J, et al. (2024). Worry Postponement From the Metacognitive Perspective: A Randomized Waitlist-Controlled Trial. Clinical Psychology in Europe, 6(2), e12741. https://doi.org/10.32872/cpe.12741


