仕事とAIの不安

プレゼンの前、緊張がバレそうでこわい。「緊張は外から思うほど見えない」と前もって読んだオーストラリアの大学生の実験では、話す直前の不安と、話している間の体のこわばりが少し低かった

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的指針0件を整理
誰もいない講義室の座席
Photo: Yinan Chen / Public Domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

資料はAIで早く作れるようになっても、人前で話すのは自分です。声が震えたら、手が震えたら、と考えるだけで胸が苦しくなる人は少なくありません。結論から言うと、「緊張は自然なことで、外からは思うほど見えない」と前もって知っておくだけでも、話す直前の不安は少し下がっていました。

3行でわかる

  1. オーストラリアの大学生230人の実験では、緊張についての短い文章を本番の2週間前と3日前に読んだ組で、話す直前の不安が少し低かった。
  2. 同じ組では、話している間の体のこわばり(体の緊張や胃の不快感)も少し低かった。一方、「失敗しそう」という心配の点数は、はっきりした差にならなかった。
  3. 人前で話す不安への心理的な取り組み30件の試験のまとめでも、効果ははっきりあった。緊張をゼロにするより、「緊張しても話せる」準備をするのが研究に合う。

01 結論から言うとプレゼン前の緊張は、前もって知っておくと和らぐ?

和らぐ可能性があります。「緊張は自然で、外からは見えにくい」と前もって読んだ大学生は、読まなかった学年より、話す直前の不安と話している間の体のこわばりが少し低くなっていました。

この方法は、心理学で「接種(イノキュレーション)」と呼ばれる考え方にもとづいています。予防接種のように、これから来る不安を前もって小さく体験し、その答えも一緒に知っておくやり方です。

ただし、効果は「少し」です。緊張そのものが消えるわけではありません。研究の結果に合うのは、緊張をなくそうとするより、緊張していても話せる準備を整えることです。

02 研究とデータでわかっていること緊張についての文章を読むと、何が変わった?

話す直前の不安は5点満点で3.74から3.36へ、話している間の体のこわばりは4点満点で2.18から1.90へと、読んだ組で少し低かった。心配の点数と自信の点数には、はっきりした差がなかった。

3.36 と 3.74話す直前の不安(1〜5点)。文章を読んだ組と、読まなかった組(オーストラリアの大学生、2017年発表)
1.90 と 2.18話している間の体のこわばり(1〜4点)。同じ実験で、話し終えた直後にふり返って答えた点数
30件・0.74人前で話す不安への心理的な取り組みの試験30件(1,355人)をまとめた効果の大きさ(2019年発表)
21〜33%人前で話すことへの恐れがある人の割合。地域の人を調べた先行研究として、2019年のまとめが紹介している数字

Jacksonら(2017、西オーストラリア大学ほか)[1]

授業で、約20人の同級生の前で1人約8分の発表をする大学生が参加しました。読んだ組には、課題の説明に加えて、緊張についての文章が本番の2週間前と3日前に配られました。読んだ組は、話す直前の不安が低く(3.36と3.74)、話し終えたあとにふり返った体のこわばりも低くなっていました(1.90と2.18)。

文章は、まず「人前で話す前や話している間は、多くの人が緊張する」と予告します。そのうえで、「緊張は周りから見抜かれにくい」「聞き手は思うほど細かく見ていない」「緊張していても、うまく話せないとは限らない」という3つの安心材料を、研究を引きながら伝えていました。読んだ組は、「この文章のおかげで緊張を気にしなくなった」とも答えていました。

対象: 西オーストラリア大学の大学生230人(平均20歳)。2014年の学年128人が読まない組、2015年の学年102人が読んだ組 / 限界: 1人ずつくじで分けたのではなく、学年ごとに分けている。点数はすべて本人の答えで、発表の出来や、聞き手から見た緊張は調べていない。「失敗しそう」という心配の点数(2.32と2.56)は、複数の比較を補正すると、はっきりした差にならなかった。

Ebrahimiら(2019、ノルウェー・ベルゲン大学ほか)[2]

人前で話す恐れに対する心理的な取り組み(考え方を整える練習や、少しずつ慣れていく練習など)を調べたランダム化比較試験30件(1,355人)をまとめました。効果の大きさは0.74で、比べる側が何かしらの活動をした試験でも効果は保たれていました。ただし、本人の感じ方で測った効果に比べ、体の反応や行動で測った効果は小さめでした。

対象: 人前で話す恐れがある人を対象にした試験 / 限界: 多くは数回にわたる練習やプログラムで、1枚の文章を読むだけの方法とは量が違う。

BosshardとGomez(2024、スイス・ベルン大学ほか)[3]

「緊張やストレスの反応は、体が本番に備えているしるし」と教える方法を調べた35件の研究(44の結果、5,638人)をまとめました。課題の成績は少しよくなっていました(効果の大きさ0.23)。人前で何かをする課題では0.34で、筆記の課題の0.20より大きめの傾向でした。

対象: 筆記の課題や人前での課題など、さまざまな課題の研究 / 限界: 効果は「小さい」水準。44の結果のうち9つは査読のない学位論文から。成績が上がらなかった小さな研究が発表されていない可能性も指摘されている。

研究を並べると、次のように整理できます。

03 まだわかっていないことこの方法で、どこまで緊張が和らぐかは決まっている?

決まっていません。緊張についての文章の実験は1件で、学年ごとに分けた大学生の研究です。働く大人の会議や商談でも同じ効果があるかは、まだ確かめられていません。

  • 読んだ組と読まない組は別の学年で、学年による違いを完全には取り除けていない。
  • 発表の出来がよくなるかは、この実験では調べていない。
  • オンライン会議での発表や、AIで作った資料を説明する場面での効果を調べた研究は見当たらない。
  • 文章を自分で書いた場合と、人から渡された場合で効果が違うかはわからない。

04 今日からできるセルフケアプレゼン前の緊張を和らげるには、何をすればいい?

本番の数日前に、緊張についての「安心メモ」を作って読み返します。当日は、ゆっくりした呼吸で体をゆるめ、緊張を「本番への備え」と言い換えてから話し始めます。

1

本番の数日前に「安心メモ」を作る

「話す前は誰でも緊張する」「緊張は外から思うほど見えない」「聞き手は細かいところまで見ていない」「緊張していても話せる」の4行を書きます。実験では、本番の2週間前と3日前に同じ文章を読んでいました。

目安 作るのに3分。本番の数日前と前日に読み返す

2

直前は、ゆっくりした呼吸で体をゆるめる

実験で差が出たのは、体の緊張や胃の不快感といった体のこわばりでした。出番の前に、5秒吸って5秒吐く呼吸を数回くり返します。呼吸の研究は深呼吸とストレスの記事で整理しています。

目安 出番の前に1〜3分

3

「緊張している」を「準備ができている」と言い換える

胸がどきどきしてきたら、「体が本番に備えている」と心の中で言い直します。とらえ直しの研究は頭が真っ白になるときの記事で詳しく紹介しています。

目安 話し始める直前に1回

4

本番の前に、声に出して1回通す

同僚や家族など少人数の前で、または1人で声に出して通して話します。練習を重ねる取り組みは、30件の試験で効果がはっきりしていました。話す前にAIで言い方を何度も確かめたくなるときは、確認のくり返しの記事も参考になります。

目安 本番の前日までに1回、10〜15分

05よくある質問

プレゼンで緊張しているのは、聞き手にバレている?

この記事の実験は、聞き手から緊張が見えるかどうかは測っていません。実験で配られた文章は、先行研究をもとに「緊張は、本人が思うほど周りからは見抜かれにくい」と伝えていました。少なくとも、そう知っておくことで話す前の不安が少し低くなっていました。

前もって読む文章には、何を書けばいい?

実験の文章は3つの柱でできていました。「人前で話す前や話している間は、多くの人が緊張する」という予告、「緊張は外から見えにくい」「聞き手は思うほど細かく見ていない」という安心材料、そして「緊張があってもうまく話せないとは限らない」という見方です。

緊張しないようにする方法はある?

緊張をゼロにする方法は、研究でも見つかっていません。この実験でも不安が少し下がった程度でした。人前で話す不安への心理的な取り組み30件の試験をまとめた研究では、効果ははっきりありましたが、本人の感じ方に比べ、体の反応や行動の変化は小さめでした。

人前で話すのがこわくて、仕事に支障が出ている

この論文が紹介している先行研究では、地域の人を調べた調査で、人前で話すことへの恐れは21〜33%に見られていました。めずらしい悩みではありません。日常生活や仕事に支障があるときは、専門家に相談することもできます。

発表のあとに「変なこと言ったかも」と反省が止まらないときは、一人反省会の記事で研究を整理しています。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Jackson B, Compton J, Thornton AL, Dimmock JA (2017). Re-Thinking Anxiety: Using Inoculation Messages to Reduce and Reinterpret Public Speaking Fears. PLoS ONE, 12(1), e0169972. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0169972
  2. Ebrahimi OV, Pallesen S, Kenter RMF, Nordgreen T (2019). Psychological Interventions for the Fear of Public Speaking: A Meta-Analysis. Frontiers in Psychology, 10, 488. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.00488
  3. Bosshard M, Gomez P (2024). Effectiveness of stress arousal reappraisal and stress-is-enhancing mindset interventions on task performance outcomes: a meta-analysis of randomized controlled trials. Scientific Reports, 14, 7923. https://doi.org/10.1038/s41598-024-58408-w