仕事とAIの不安

仕事やAIの不安でモヤモヤする。気持ちを言葉にすると楽になる?強い動揺では名前をつけると苦痛が下がったが、弱い不快感や文字で打つ形では、かえって増えた実験もあった

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わかっている度 ★☆☆ 低研究4本・公的指針0件を整理
窓辺に並ぶ鉢植えの植物
Photo: MarDe / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

AIで仕事がどう変わるのか、自分は大丈夫なのか。はっきりしない不安でモヤモヤするとき、「気持ちを言葉にすると楽になる」とよく言われます。研究の答えは、条件しだいでした。強く動揺したときは気持ちに名前をつけると苦痛が下がった一方、弱い不快感では逆に増えた実験があり、見方を変えるほうが下がった実験もあります。

3行でわかる

  1. 79人の実験では、強い不快感のときに気持ちに名前をつけると苦痛が下がったが、弱い不快感のときは逆に上がった。
  2. 英語圏のオンライン実験2つ(計226人)では、気持ちを文字で打つだけでは嫌な気分は下がらず、先に名前を打つと「見方を変える」効果が弱まった。
  3. 強く動揺した瞬間は一語で名前をつけ、小さなモヤモヤには名前より別の見方を1つ、と使い分けるのが、今の研究に沿った試し方になる。

01 結論から言うと不安な気持ちは、言葉にすると楽になる?

いつも楽になるとは限りません。気持ちに名前をつけると苦痛が下がったのは主に強い動揺のときで、弱い不快感や、気持ちを文字で打つ実験では、かえって嫌な気分が増えた結果もありました。

心理学では、自分の気持ちに「不安」「焦り」のような名前をつけることを「感情のラベリング」と呼びます。言葉にするだけで気持ちが落ち着く、という研究が積み重なり、身近なストレス対処として紹介されることも増えました。

ただ、近年の実験では、効くときと効かないときがあることがわかってきました。気持ちの強さや、言葉にするやり方によって、結果が変わります。言葉にしても楽にならなかったとしても、やり方が下手だったからではありません。

02 研究とデータでわかっていること気持ちに名前をつけると、どんなときに落ち着く?

強い不快感のときに落ち着いていました。79人の実験では、強い不快感では名前をつけると苦痛が下がり、弱い不快感では逆に上がりました。名前をつけるのは、その瞬間でも10秒後でも効果は同じでした。

79人強い不快感と弱い不快感で、名前をつける効果を比べた実験の参加者(2022年発表)
10秒後名前をつけるのが見た瞬間でも10秒後でも、苦痛の下がり方に差はなかった(63人の実験)
226人気持ちを文字で打つ効果を調べた英語圏のオンライン実験2つの参加者(2026年発表)
151人母語と第二言語で、名前をつけたときの脳の反応を比べたスペインの参加者(2026年発表)

Levy-Gigi と Shamay-Tsoory(2022)[1]

不快な写真を見ながら、自分の気持ちを2つの言葉から選んでもらう実験です。1つめの実験(63人)では、写真を見ている最中でも、見た直後でも、10秒後でも、名前をつけると苦痛が下がりました。2つめの実験(79人)では、強い不快感の写真では名前をつけると苦痛が下がった一方、弱い不快感の写真では逆に苦痛が上がりました。

対象: イスラエルの研究チームが大学の掲示などで募集した参加者 / 限界: 実験室で写真を見る実験で、仕事の不安のような日常の気持ちとは違います。

Ariely ら(2026)[2]

不快な写真を見て、ただ見る、気持ちの名前を打つ、見方を変える、名前を打ってから見方を変える、のどれかをしてもらいました。嫌な気分が下がったのは「見方を変える」だけでした。名前を打つだけの組は、最初に見たときより嫌な気分が増えていました(ただ見る組との差は、統計的にははっきりしませんでした)。先に名前を打つと、見方を変える効果が弱まりました。1〜2日後には、どの組も元の反応に戻っていました。

対象: オンラインで参加した英語を話す大人(2つの実験で計226人) / 限界: 気持ちは声に出さず文字で打つ形でした。著者は、文字で打ったことが嫌な気分の増加に関わった可能性を挙げています。

Davydova ら(2026)[3]

2つの言語を話す人が気持ちに名前をつけたとき、脳で不安や恐れに関わる部位(扁桃体)の活動が下がったのは、ふだんいちばん使う母語で名前をつけたときだけでした。2つの言語を同じくらい使う人では、どちらの言語でも下がりませんでした。

対象: スペインのスペイン語・英語、スペイン語・カタルーニャ語を話す151人 / 限界: 測ったのは脳の活動で、本人が感じる気分の変化とは別のものです。

「見方を変える」練習の具体例は「SNSを見て「自分なんて」と悪いほうに考えてしまう」で、AIで仕事を失う不安そのものとの付き合い方は「AIに仕事を奪われそうで不安」で整理しています。

03 まだわかっていないこと仕事の不安を言葉にする練習は、効く?

まだわかっていません。紹介した実験はどれも写真を見る実験室の研究で、仕事やAIの先行きへの不安を言葉にして、気分が変わるかを確かめた研究は見当たりませんでした。

  • 気持ちを表す言葉を学ぶ短いオンライン練習を、米国の大学生118人で試した研究では、練習した組としなかった組で、気持ちの言い分けや苦痛に直接の差は出ませんでした(Matt ら、2024年)[4]。
  • 声に出す、文字で打つ、紙に書く、のどれがよいかは、比べた研究がまだ少なく、わかっていません。
  • 名前をつける効果も、見方を変える効果も、1〜2日後には元に戻っていた実験があり、続けたときに積み重なるかはわかっていません。
  • 日本語を話す人や、日本の働く人で確かめた研究は見当たりませんでした。

04 今日からできるセルフケアモヤモヤしたとき、言葉をどう使えばいい?

強く動揺した瞬間は一語で気持ちに名前をつけ、小さなモヤモヤには名前を探し込むより別の見方を1つ考える、と使い分けます。研究の条件をもとにした、お金をかけずにできる工夫を3つ挙げます。

1

強く動揺したら、一語で名前をつける

AIの導入や人事の話を聞いて強く動揺したら、心の中で「いま、焦っている」「怖い」と一語で名前をつけます。実験では、強い不快感のときに名前をつけると苦痛が下がり、その瞬間でも10秒後でも差はありませんでした。

目安 数秒

2

小さなモヤモヤには、別の見方を1つ

なんとなく落ち着かない程度なら、気持ちの名前を探し込まず、「新しいことを覚える時期が来た、とも言える」のように別の見方を1つ考えます。実験では、嫌な気分が下がったのは見方を変えた組だけで、弱い不快感では名前をつけると苦痛が上がっていました。

目安 1分

3

名前をつけるなら、いちばん慣れた言葉で

ふだん考えごとをする言葉(多くの人は日本語)で名前をつけます。2つの言語を話す人の研究では、気持ちに関わる脳の反応が下がったのは、いちばん使う母語で名前をつけたときだけでした。

目安 その場で

不安が一日中頭から離れないときは「心配を1日30分にまとめる練習」、体がこわばるほど焦るときは「ゆっくりした呼吸」も手がかりになります。

05よくある質問

モヤモヤを言語化すると、楽になるって本当?

条件しだいです。79人の実験では、強い不快感のときは気持ちに名前をつけると苦痛が下がりましたが、弱い不快感のときは逆に上がりました。気持ちの名前を文字で打つだけの実験では嫌な気分が増え、見方を変えた組だけが下がっていました。

気持ちをノートやスマホに書き出すのは逆効果?

逆効果とまでは言えません。気持ちの名前を文字で打つ実験では、その場の嫌な気分が増えましたが、著者はその理由として文字で打つ形が関わった可能性を挙げているだけで、確かめてはいません。書く方法と声に出す方法を比べた研究も少なく、結論は出ていません。

気持ちに名前をつけるのは、いつがいい?

その瞬間でも、少しあとでも大丈夫です。63人の実験では、不快な写真を見ている最中、見た直後、10秒後のどれで名前をつけても、苦痛の下がり方に差はありませんでした。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Levy-Gigi E, Shamay-Tsoory SG (2022). Affect labeling: The role of timing and intensity. PLoS One, 17(12), e0279303. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0279303
  2. Ariely Y, Mokady A, Reggev N, Anholt GE (2026). Affect Labeling and Reappraisal as an Emotion Regulation Strategy. Affective Science, 7(2), 282–292. https://doi.org/10.1007/s42761-026-00362-z
  3. Davydova T, Marin Marin L, Cherednichenko A, et al. (2026). Affect labeling down-regulates amygdala only in a dominant native language. Proceedings of the National Academy of Sciences, 123(36), e2603126123. https://doi.org/10.1073/pnas.2603126123
  4. Matt LM, Seah THS, Coifman KG (2024). Effects of a brief online emotion word learning task on negative emotion differentiation, emotional self-efficacy, and prospective distress: Preliminary findings. PLoS One, 19(2), e0299540. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0299540