在宅勤務の日は、夜まで仕事を切り上げられない。17件の研究のまとめでは、時間外もつながる働き方がストレスや燃え尽きと関わっていた

在宅勤務の日は、気づくと夜になっている。夕食のあとも、ついパソコンを開いてしまう。通勤がないぶん、仕事の終わりも決まらない。こうした悩みは、在宅勤務が広がってから研究でもくり返し調べられてきました。
3行でわかる
- 17件の研究をまとめたレビューでは、仕事の時間外もつながっている状態が多いほど、ストレスや燃え尽き、家庭との板ばさみと関連があった。
- 在宅勤務の影響は一律ではなく、仕事量が多い、自分で決められない、仕事と生活の境目があいまい、といった条件で負担が大きくなっていた(長期の研究20件のまとめ)。
- 日本の在宅勤務者2,687人の調査では、仕事をする場所を決める、その日の目標を決める、同僚と雑談する人ほど、自分で評価した仕事のできが低い状態が少ない傾向があった。
01 結論から言うと在宅勤務で仕事を切り上げられないのは、問題?
時間外も仕事につながる状態が続くと、ストレスや燃え尽きと関わることが、複数の研究で示されています。仕事の場所・目標・終わりの時刻を先に決めておくことが、境目をつくる手がかりになります。
研究では、仕事と私生活の間にある見えない線を「境界」と呼びます。在宅勤務では、この線を引く通勤や職場の扉がありません。そのため、自分で線を引かないと、仕事が夜まで流れ込みやすくなります。
ただし、在宅勤務そのものが悪いわけではありません。自分で働き方を決められることは、心の負担を軽くする方向に働くこともわかっています。大事なのは、在宅で働くかどうかより、どう線を引くかです。
休日にも仕事のことが頭から離れないときは休日も仕事のことを考えてしまうときの記事、在宅で人と話さず寂しいときは在宅勤務の孤独の記事も参考になります。
02 研究とデータでわかっていること時間外も仕事につながると、心にどう影響する?
時間外のつながりが多い人ほど、ストレスや燃え尽き、家庭との板ばさみが大きい傾向がありました。在宅勤務では、仕事量の多さや境目のあいまいさが重なると負担が増えていました。
RenkとSutter(2025)[1]
仕事の時間外にもメールや連絡に応じられる状態でいることを調べた17件の研究を、系統的にまとめました。こうした状態が多いほど、仕事と家庭の板ばさみが大きく、ストレスや燃え尽きが高く、心の健康が低い傾向がありました。一方で、自分で仕事の進め方を決められることや、仕事量を調整できること、境界の引き方の好みによって、影響は小さくも大きくもなっていました。
対象: 2010〜2025年に発表された17件の研究(会社員などの働く人) / 限界: 研究の進め方や人数がまちまちで、多くは本人の回答による。結果を数字でまとめる分析はしていない。
Parent-Lamarcheら(2026)[2]
在宅勤務と健康を時間をおいて追った20件の研究をまとめると、影響は条件しだいでした。仕事量が多い、自分で決められない、支えが少ない、仕事から気持ちが離れない、仕事と生活の境目があいまい、といった条件や、在宅勤務を強いられた場合には、心の負担や疲れ、不安が増えていました。反対に、自分で決められることや周りの支えがあると、在宅勤務は健康を守る方向に働いていました。
対象: OECD加盟国で2017〜2024年に発表された長期の研究20件 / 限界: コロナ禍の前・最中・直後と時期の違う研究が混ざり、一貫した傾向ははっきり出ていない。数字をまとめた分析ではない。
Otsukaら(2024、日本大学など)[3]
日本の在宅勤務者に、14の工夫をどれくらいしているかを聞き、自分で評価した仕事のできが低い状態(プレゼンティーイズム。100点中40点を区切りに判定)との関係を調べました。仕事をする場所を決めている人(オッズ比0.67)、同僚と雑談する人(0.42)、その日の仕事の目標を決めている人(0.61)は、この状態が少ない傾向がありました。男性では、仕事の時間を決めていることも関連していました(0.59)。仕事のあとに仕事用の端末を使わないようにすることは、はっきりした関連が見られませんでした。
対象: 日本の5つの会社の在宅勤務者2,687人(2021年12月〜2022年1月) / 限界: 一時点の調査で、工夫が原因で調子がよくなったのか、調子がよい人が工夫できているのかは区別できない。
Kermanら(2022)[4]
在宅勤務の人に、5日間、毎晩短い日誌をつけてもらいました。仕事時間外の仕事の電話など、仕事が私生活に入り込んだ日ほど、私生活への満足が低くなっていました。英国の会社員の調査では、仕事と私生活が入り込み合った日ほど、仕事と家庭の両方でやり残しが増えていました。家庭のやり残しは、私生活と仕事の両方の満足の低さにつながっていました。境目をはっきり分けたい人かどうかで、結果は変わりませんでした。
対象: 2020年の在宅勤務者。スロベニアなどの128人と、英国の138人 / 限界: コロナ禍で在宅勤務を強いられた時期の調査で、今の働き方に同じように当てはまるかはわからない。
4つの研究を並べると、在宅で働くこと自体より、仕事が時間外に入り込み続けることが負担と関わっていることがわかります。仕事の場所や目標を先に決めておくことは、その入り込みを減らす具体的な手がかりになります。
03 まだわかっていないことどの工夫が一番効くかは、わかっている?
まだわかっていません。工夫と調子のよさの関連を調べた研究はありますが、工夫を実際に試して効果を比べた試験はほとんど見当たりません。
- 仕事の場所や終わりの時刻を決める工夫を、実際に試して比べたランダム化比較試験は見当たらない。
- 日本の調査では、男性と女性で関連した工夫が違っていた。その理由はわかっていない。
- AIで仕事が速くなったことが、時間外の仕事を減らすのか増やすのかは、まだ調べられていない。
04 今日からできるセルフケア在宅の日に、仕事の終わりをつくるには?
朝のうちに、仕事の場所・その日の目標・終わりの時刻を決めておきます。終わりの合図と、明日の続きのメモで、仕事が夜に流れ込むのを防ぎます。
仕事をする場所を1か所に決める
机の一角でもかまいません。仕事はそこでだけして、終わったらパソコンを閉じてその場を離れます。日本の調査で、場所を決めている人は、仕事のできが低い状態が少ない傾向がありました。
目安 決めるのは最初の1回だけ。毎日の片づけは1分
朝に「今日の目標」を3つまで書く
終わったら線を引きます。どこまでやれば今日は終わりかが見えると、だらだら続けにくくなります。目標を決めることも、同じ調査で関連していた工夫です。
目安 朝に3分
終わりの時刻と、終わりの合図を決める
「18時になったら明日の最初の作業を1行メモして、パソコンを閉じる」のように、時刻と行動を決めます。気になる続きはメモに預けて、頭の中に持ち帰らないようにします。
目安 終業前に2分
同僚とひとこと雑談する
チャットでも短い通話でもかまいません。日本の調査では、調べた工夫の中で、同僚との雑談が、仕事のできが低い状態の少なさと最も強く関連していました。
目安 1日1回、5分
05よくある質問
在宅勤務は、心の健康に悪いの?
一概には言えません。長期の研究20件のまとめでは、仕事量が多い、自分で決められない、境目があいまいといった条件では負担が増えた一方、自分で決められることや周りの支えがある場合は、健康を守る方向に働いていました。在宅か出社かより、働く条件のほうが大きく関わっていました。
仕事のあとにスマホでメールを見るのをやめれば十分?
それだけで十分とは言えません。日本の在宅勤務者2,687人の調査では、仕事のあとに仕事用の端末を使わないことは、はっきりした関連が見られませんでした。一方、17件の研究のまとめでは、時間外も連絡に応じる状態が多いほどストレスが高い傾向がありました。メールを見ないことに加えて、場所や終わりの時刻を決めるなど、いくつかの工夫を組み合わせるのが現実的です。
上司から夜に連絡が来るので、切り上げられない
個人の工夫だけでは難しい場合があります。研究のまとめでも、仕事量や、自分で決められる度合いといった職場の条件が、影響の大きさを左右していました。返信の目安の時間をチームで話し合うことも一つの方法です。チャットの返信の悩みは仕事のチャットの記事にまとめています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Renk S, Sutter C. (2025). Always available? A systematic review on extended work-related availability, health outcomes and work-family conflict. Frontiers in Psychology, 16, 1726421. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1726421
- Parent-Lamarche A, Beauregard N, Blanc M-È, et al. (2026). Teleworking and its impact on health and well-being: a systematic review of longitudinal studies considering the psychosocial work environment (2005–2024). BMC Public Health, 26, 2717. https://doi.org/10.1186/s12889-026-28220-4
- Otsuka Y, Itani O, Nakajima S, Matsumoto Y, Kaneita Y. (2024). Impact of Teleworking Practices on Presenteeism: Insights from a Cross-Sectional Study of Japanese Teleworkers During COVID-19. Behavioral Sciences, 14(11), 1067. https://doi.org/10.3390/bs14111067
- Kerman K, Korunka C, Tement S. (2022). Work and home boundary violations during the COVID-19 pandemic: The role of segmentation preferences and unfinished tasks. Applied Psychology, 71(3), 784. https://doi.org/10.1111/apps.12335


