画面で読むと、紙より頭に入らない気がするのはなぜ?中国の大学生34人の実験では、同じ人でも画面ではひっかけ問題の直感の答えに自信を持ちやすく、見直して正解できた割合が紙より低かった

資料もメールもAIの答えも、いまは画面で読むのが当たり前です。それなのに、同じ文章を紙で読んだときより頭に入っていない気がする、という人は少なくありません。研究では、画面だと「わかったつもり」になりやすく、深く考える前に答えを決めてしまう傾向が見つかっています。ただし差はいつも出るわけではなく、条件しだいで小さくなります。
3行でわかる
- 中国の大学生34人が同じ日に画面と紙の両方で解いた実験では、ひっかけ問題で見直したあとの正答率が、画面53%、紙73%でした。
- 画面では直感の答えに自信を持ちやすく、答えを考え直す割合も紙より低くなっていました。北京大学の学生210人の実験では、スマホで覚えた内容がいちばん思い出しにくくなっていました。
- 差は、答えを自分で書く形式やメモ用紙を使える条件では小さくなっていました。画面が悪いというより、画面だと浅く読みやすい、と考えられています。
01 結論から言うと画面で読むと、本当に頭に入りにくい?
入りにくくなることがあります。紙より画面で理解や記憶の成績が下がる研究は多く、その一因は「画面だと浅く読み、わかったつもりになりやすい」ことだと考えられています。ただ、差が出ない研究もあります。
研究者は、画面で読むときに成績が下がることを「画面劣位効果」と呼んでいます。以前は、画面のちらつきや見づらさが原因だと考えられていました。最近の研究では、画面という環境そのものが浅く読む合図になり、深く考えるのを妨げている可能性のほうが注目されています。
ですから、画面で読むと頭に入らない気がするのは、気のせいでも、集中力が落ちたせいだけでもありません。読み方を少し変えれば、差は小さくできることもわかってきています。
02 研究とデータでわかっていること画面と紙で、何がどれくらい違った?
ひっかけ問題の実験では、見直したあとの正答率が画面で約20ポイント低くなっていました。記憶の実験では、スマホで覚えた内容が3つの課題すべてで紙より思い出しにくくなっていました。
Wang ら / 浙江師範大学(2023)[1]
大学生34人が、32問の短い文章題を、半分は画面で、半分は紙で解きました。まず7秒で直感の答えを出し、そのあと時間をかけて最終の答えを出します。最初に浮かぶ答えが誤りになる「ひっかけ問題」で、最終的に正解できた割合は画面53%、紙73%でした。ひっかけのない問題でも、画面75%、紙89%と画面のほうが低くなっていました。
画面では、ひっかけ問題の直感の答えに「合っている」と感じる度合いが紙より高く、答えを考え直した割合は画面29%、紙43%でした。研究者たちは、画面だと直感の答えに自信を持ちすぎて見直さないことが、正答率の差の一部を説明していると考えています。
同じチームが別の大学生35人で、選択肢をなくして答えを自分で書かせ、メモ用紙も使えるようにすると、画面での自信過剰の差は見られなくなりました。それでも最終の正答率は紙のほうが高いままでした。
対象: 中国の大学生34人(平均20歳)と35人(18〜25歳) / 限界: 1つの大学の少人数の実験で、長い文章ではなく短い文章題を使っています。仕事の資料を読むときに同じ差が出るかはわかりません。
Han ら / 北京大学(2024)[2]
学生210人を、スマホ・パソコン・紙の3組にくじで分け、日常の場面を表す文、学問の用語の説明、知らない言語(スワヒリ語)と中国語の単語の組み合わせを覚えてもらいました。スマホの組は、3つの課題すべてで紙の組より思い出せた割合が低くなっていました。パソコンの組が紙より劣ったのは、いちばん難しい単語の組み合わせだけでした。
研究者たちは、深く処理しにくい道具ほど、また覚える内容が難しいほど、画面での不利が大きくなると考えています。
対象: 北京大学の学生210人(平均20.2歳) / 限界: 覚えたあとすぐ思い出すテストだけで、何日もたったあとの記憶は調べていません。答えの速さや自信は測っていません。
Peras ら / スロベニア教育研究所ほか(2023)[3]
6〜18歳の子どもを対象に、画面と紙の読みを比べた23本の研究をまとめると、理解に差がなかった研究と、紙が有利だった研究に分かれていました。紙で読むのが得意な子ほど画面で読むのも得意で、ある研究では両方の力の相関が0.80と強く結びついていました。
このレビューが紹介している先行研究のまとめでは、画面の不利は物語より説明文で出やすく、時間の制限や文章の種類、発表された年によって結果が変わっていました。スペインの実験では、読む力が弱い子が時間に追われたときに、タブレットでの理解が落ちていました。
対象: 2015〜2022年に発表された、6〜18歳を対象にした23本の研究 / 限界: 子どもの研究のまとめで、英語の論文だけを集めています。大人に同じ結果があてはまるとは限りません。
03 まだわかっていないこと画面で読む不利について、何がわかっていない?
大人が仕事の長い資料を画面で読むときの研究や、画面に慣れると差が消えるのかを確かめた研究は、まだ十分ではありません。AIの答えを読む場面を調べた研究も見当たりません。
- ここで紹介した大人の実験は、どちらも中国の大学生で、短い問題や覚える課題を使ったものです。職場で長い資料を読む場面は調べられていません。
- 画面で読むことに慣れた世代では差が小さくなるのか、逆に大きくなるのかは、まだはっきりしていません。
- チャットでAIの答えを読むときにも、わかったつもりになりやすいのかは、直接調べた研究がありません。
- 記憶の実験は覚えた直後のテストだけで、何日もたったあとに差が残るかはわかりません。
04 今日からできるセルフケア画面でもしっかり頭に入れるには?
大事な文章ほどスマホを避けること、読んだあとにキーワードを書き出すこと、答えを決める前にメモで見直すことです。どれもお金をかけずにすぐ試せます。
大事な文章は、スマホでなくパソコンか紙で読む
北京大学の実験では、スマホで覚えた内容がいちばん思い出しにくくなっていました。契約や試験勉強など、あとで使う文章だけでも大きな画面か印刷で読みます。
目安 大事な資料1つから
読み終えたら、少し間をおいてキーワードを3つ書く
浙江師範大学の論文が紹介している先行研究では、読んだ少しあとに要点のキーワードを書き出すと、画面での不利が小さくなっていました。画面を閉じてから書くと、自分がどこまでわかったかを確かめる機会にもなります。
目安 1回1〜2分
画面で答えを決める前に、メモ用紙で見直す
答えを自分で書き、メモ用紙を使えるようにした実験では、画面での自信過剰の差が見られなくなりました。計算や比較は、頭の中だけで済ませず紙に書きます。
目安 1問につき30秒ほど
時間に追われているときほど、画面で流し読みしない
浙江師範大学の論文が紹介している先行研究では、時間の制限があらかじめわかっているときに画面の不利が出ていました。急ぎのときは全部を読もうとせず、大事な段落だけを選んでゆっくり読みます。
目安 急ぎの資料を開いたときに毎回
要約だけで済ませることの影響はAIの要約だけで済ませてしまう、長い文章が読めなくなった感覚については本が読めなくなった、長い文章に集中できないで整理しています。手書きと記憶の研究は手で書かなくなって、覚えられなくなった気がするも参考になります。
05よくある質問
スマホやタブレットで読むと、理解が浅くなる?
いつもそうなるとは言えません。研究のまとめでは紙のほうが少し有利という結果がある一方、差がなかった研究もあります。北京大学の学生210人の実験では、スマホで覚えた内容は3つの課題すべてで紙より思い出しにくかったので、大事な内容をスマホだけで済ませるのは避けたほうがよさそうです。
画面で読むのに慣れれば、紙との差はなくなる?
まだわかっていません。研究のまとめでは、発表された年によって結果が変わっていたと紹介されていますが、慣れで差が消えると確かめた研究はありません。子どもの研究では、紙で読むのが得意な子ほど画面で読むのも得意で、両方の力は強く結びついていました。
パソコンとスマホでも違いはある?
北京大学の学生210人の実験では違いがありました。パソコンで覚えた場合、紙より劣ったのはいちばん難しい単語の組み合わせだけでした。スマホでは、日常の場面の文、学問の用語、単語の組み合わせの3つすべてで紙より成績が低くなっていました。
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出典
- Wang X, Chen L, Liu X, Wang C, Zhang Z, Ye Q (2023). The screen inferiority depends on test format in reasoning and meta-reasoning tasks. Frontiers in Psychology, 14, 1067577. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1067577
- Han M, Xie M, Li B (2024). Don't Throw Away Your Notebook: Effects of Task Difficulty and Presentation Medium on Memory Performance. Behavioral Sciences, 14(10), 917. https://doi.org/10.3390/bs14100917
- Peras I, Klemenčič Mirazchiyski E, Japelj Pavešić B, Mekiš Recek Ž (2023). Digital versus Paper Reading: A Systematic Literature Review on Contemporary Gaps According to Gender, Socioeconomic Status, and Rurality. European Journal of Investigation in Health, Psychology and Education, 13(10), 1986-2005. https://doi.org/10.3390/ejihpe13100142


