ChatGPTを使うと考える力が落ちる?差が出たのは「頼り方」だった

AIに聞けばすぐ答えが出る。便利な一方で、「最近、自分で考えなくなった気がする」と不安になる人は少なくありません。研究を見ると、AIを使うかどうかより、どう頼るかで結果が分かれていました。
3行でわかる
- 答えをそのまま聞けるAIで練習した高校生は、AIなしのテストで成績が17%下がりました。
- 答えを出さずヒントだけ返すAIでは、そうした低下は見られませんでした。
- 考えを丸ごと任せる使い方は、その場では便利さが同じでも、あとで差が出る可能性が示されています。
01結論から言うと
AIを使うだけで考える力が落ちる、とは言えません。ただ、答えを丸ごと任せる使い方を続けると、AIがないときの力が伸びにくいことが、実験で示されています。
自分で考える作業を道具に預けることを、研究では「認知的オフロード」と呼びます。メモやカレンダーも同じで、それ自体は悪いことではありません。
問題になりやすいのは、考える中心の部分まで任せてしまうときです。その場ではうまくいくので、自分では気づきにくいのが難しいところです。
02研究とデータでわかっていること
答えをそのまま聞ける形のAIで練習すると、AIなしのテストで成績が下がりました。ヒントだけを返す形や、使い方に枠を決めた形では、下がりにくい傾向がありました。
Bastaniら(2025)[1]
ChatGPTに近い形のAIを練習中に使ったクラスは、練習問題の成績が48%上がりました。ところがAIなしのテストでは、AIを使わなかったクラスより17%低くなりました。答えを出さずヒントを返す形のAIでは、練習の成績が127%上がり、テストでの低下ははっきり見られませんでした。
対象: トルコの高校で、約50クラス・約1,000人をクラスごとに3つの条件に分けた実験(数学、90分の授業4回) / 限界: 1つの高校・1教科の短期間の実験で、大人の仕事にそのまま当てはまるかはわかりません。
この実験では、答えを聞ける形のAIを使った生徒のやり取りで最も多かったのは、答えだけを聞くものでした。しかも本人たちは、テストの出来が悪くなったとは感じていませんでした[1]。
Chen(2026)[2]
英語の論文の書き方の授業で、AIに何でも任せてよいクラスは、AIを使える間の作文の出来は最も高くなりました。一方、8週目にAIなしで書いたときは、「段落を丸ごと書かせない」「AIの提案を採用・修正・却下したかを記録する」というルールのクラスの方が、考えの深さなどの得点が高い傾向でした。
対象: 中国の大学生180人(完了は168人、6クラス)、8週間 / 限界: クラス単位の割り当てで、8週目の差は統計的にぎりぎりの水準でした。ルールと記録のどちらが効いたのかは分けられていません。
Zhuら(2026)[3]
考える中心をAIに任せる使い方をしている人ほど、やる気(内発的動機づけ)が低く、その後の「自分で考えられる」という自己評価も低い関連がありました。AIを考えるための足場として使う人は、反対の関連でした。どちらの使い方も、その場で感じる便利さは同じくらいでした。
対象: 大学生と若手社会人589人、2週間おきに3回の調査 / 限界: 考える力は本人の自己評価で、実際のテストではありません。
03まだわかっていないこと
大人が仕事でAIを何年も使い続けたとき、考える力が実際にどう変わるのかは、まだわかっていません。
- 何年も使い続けたときの影響(今ある実験は数週間から1学期ほど)
- 働く大人を対象に、実際の成績や仕事ぶりで測った研究
- 日本の利用者を対象にした研究
04今日からできるセルフケア
AIをやめる必要はありません。「先に自分で考える」「答えではなくヒントを頼む」「ときどきAIなしで試す」の3つで、頼り方を変えられます。
聞く前に、自分の案を1行だけ書く
「たぶんこうだと思う」を先にメモしてから、AIに聞きます。AIの答えと見比べると、考える部分が自分の手元に残ります。
目安 1回1分
「答え」ではなく「ヒント」を頼む
「答えは言わずに、次に考えるべき点だけ教えて」と頼みます。実験で成績の低下が見られなかったのは、ヒントを返す形のAIでした。
目安 頼み方を1文変えるだけ
AIの提案を「使った・直した・使わなかった」で記録する
文章や企画でAIを使ったら、提案をどう扱ったかを一言で残します。自分で判断した部分がはっきりします。
目安 作業1つにつき1〜2分
週に1回、AIなしで同じ種類の作業をしてみる
実験では、本人が気づかないうちに力が下がっていました。ときどきAIなしで試すと、自分の今の力を確かめられます。
目安 週1回・15分
05よくある質問
ChatGPTを使うと頭が悪くなるって本当?
「使うと頭が悪くなる」とまでは言えません。約1,000人の高校生の実験では、答えをそのまま聞ける形のAIで練習すると、AIなしのテストで成績が17%下がりました。一方、ヒントだけを返す形のAIでは、はっきりした低下は見られませんでした。使い方で差が出ています。
自分がAIに頼りすぎているか、どうやって気づける?
研究では、頼りすぎていても、その場では便利さが同じなので本人は気づきにくい可能性が示されています。週に1回ほど、ふだんAIに任せている作業をAIなしでやってみると確かめられます。
仕事ではAIを使わないといけない。考える力を保つには?
AIを使うこと自体をやめる必要はありません。聞く前に自分の案を1行書く、答えではなくヒントを頼む、AIの提案を使ったか直したかを記録する、といった工夫で、考える部分を自分に残せます。
出典
- Bastani, H., Bastani, O., Sungu, A., Ge, H., Kabakcı, Ö., & Mariman, R. (2025). Generative AI without guardrails can harm learning: Evidence from high school mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences, 122(26), e2422633122. https://doi.org/10.1073/pnas.2422633122
- Chen, X. (2026). Layer-sensitive cognitive offloading in generative AI-assisted writing: supported performance and independent no-AI outcomes. Frontiers in Psychology, 17, 1906199. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1906199
- Zhu, Q., Li, X., Dong, Y., Chang, P., & Fan, M. (2026). Not all cognitive offloading is equal: distinguishing dependent and autonomous offloading to generative AI. Frontiers in Psychology, 17, 1878629. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1878629