会話の沈黙が怖い、間があくと気まずいのはなぜ?米国の大学生の研究では、2秒を超える間が気まずく感じられたのは初対面同士だけで、親しい友達同士ではむしろつながりが高まる瞬間だった

話が途切れて、数秒の沈黙。何か言わなきゃと焦って、あとで「気まずかったな」と思い返す。チャットやAIとのやりとりが増えて、声で話す機会が減るほど、その数秒が怖くなるかもしれません。米国の研究では、長い間を気まずく感じたのは初対面同士だけでした。親しい友達同士では、長い間はむしろつながりが高まる瞬間でした。
3行でわかる
- 会話の間はふだんとても短く、米国の大学生の10分間の会話では平均248ミリ秒(約0.25秒)だった。2秒を超える間は、その中では珍しい長さだった。
- 初対面同士では、2秒を超える間が多い会話ほど楽しさが低く、間に入るとつながりの感じ方が下がった。親しい友達同士では長い間のほうが多く、間に向けてつながりの感じ方が高まっていた。
- 外から見た人も、初対面同士の長い間だけを気まずいと判断した。友達同士の間には本物の笑いが多く、間のあとに話題が変わることも少なかった。
01 結論から言うと会話の沈黙が気まずいのはなぜ?
初対面に近い相手との会話では、長い間が「つながりが下がった合図」として受け取られやすいからです。ただし、親しい相手との間は気まずさのサインではなく、むしろつながりが高まる瞬間でした。
人の会話は、驚くほど速いテンポで進んでいます。相手が話し終えてから次の人が話し始めるまでは、ふつう0.2秒ほどです。そのため、2秒を超える間は、ふだんのテンポから大きく外れた時間として目立ちます。
米国ダートマス大学の研究チームは、すばやく返事が返ってくる会話ほど「通じ合っている」と感じられることを確かめています。この速さは、自分で意識してコントロールできないほど短い時間の差でした。裏返すと、初対面の相手との長い間は「通じ合っていないのかも」という合図として感じられやすいと考えられます。
02 研究とデータでわかっていること長い沈黙は、いつも悪いサイン?
いつもではありません。初対面同士では長い間がつながりの低下と結びついていましたが、親しい友達同士では長い間のほうが多く、その瞬間につながりの感じ方が高まっていました。
Templetonら / 米国・ダートマス大学(2023年)[1]
初対面の大学生の2人組261組と、親しい友達同士の会話65組が、カフェのような席で10分間自由に話した。2秒を超える長い間は、友達同士の会話のほうが多かった。初対面同士では、長い間が多い会話ほど楽しさの評価が低かった。
会話の録画を見ながら、その時々のつながりの感じ方を記録してもらうと、初対面同士では長い間に入るときに下がり、間のあとも低いままだった。友達同士では逆に、長い間に向けて高まっていた。
研究に関わっていない3人が、長い間を含む100本の場面を見て評価すると、気まずいと判断されたのは初対面同士の間で、間が長いほど気まずさの評価が上がった。友達同士の間には本物の笑いが多く、間のあとに話題が変わることも少なかった。
対象: 米国の大学生(初対面261組、友達同士65組の会話) / 限界: 1つの大学の学生の、10分間の会話だけの結果。間の中のしぐさや表情によって意味が変わる可能性を、研究者自身が今後の課題に挙げている。
Templetonら / 米国・ダートマス大学(2022年)[2]
大学生66人が、ほとんど面識のない相手と10分ずつ、合計322回の会話をした。返事が速い会話ほど、楽しさやつながりの感じ方が高かった。効いていたのは、自分が返す速さより、相手が自分に返してくれる速さだった。
別の実験では、ネットで集めた450人が、同じ会話の録音を、間を5分の1に縮めた版、元のままの版、2倍に伸ばした版で聞いた。間が短い版ほど、2人は楽しそうで、通じ合っていると判断された。
対象: 米国の大学生66人(会話の実験)、ネットで集めた450人(聞き比べの実験) / 限界: 初対面の礼儀正しい会話が中心で、話し合いや口論など別の場面では、速い返事の意味が違う可能性があると研究者自身が書いている。
Stiversら / マックス・プランク心理言語学研究所ほか(2009年)[3]
日本語を含む10の言語の自然な会話で、はい・いいえで答える質問への答えが始まるまでの時間を比べた。どの言語でも、相手の話との重なりを避けつつ、短い間で答える傾向が共通していた。平均は日本語が+7ミリ秒でいちばん短く、デンマーク語が+469ミリ秒でいちばん長かった。
どの言語でも、質問にきちんと答える返事は、答えにならない返事より速く返されていた。
対象: 10言語の自然な会話 / 限界: はい・いいえで答える質問への答えだけを比べたもので、雑談の沈黙そのものを調べた研究ではない。
03 まだわかっていないこと沈黙への怖さは、どうすれば減る?
まだわかっていません。今回調べた研究は、間とつながりの関係を見たもので、沈黙への怖さを減らす方法を試した研究ではありません。日本の雑談での研究も見当たりませんでした。
- 初対面と友達の違いを調べたのは米国の1つの大学の学生で、日本の職場や、年齢の違う人でも同じかはわからない。
- オンライン会議や電話のように、表情が見えにくい場面で間がどう感じられるかは、この研究では調べていない。
- チャットやAIとの文字のやりとりが増えることで、声の会話の間を怖く感じやすくなるのかを調べた研究は、今回の調査では見つからなかった。
04 今日からできるセルフケア沈黙が怖いとき、何ができる?
まず「初対面で間が気まずいのは自然なこと」と知っておくことです。そのうえで、間のあとに直前の話へ一言返すことや、気心の知れた人と話す時間を持つことが、研究の結果から考えられる工夫です。
「初対面なら間は気まずくて当たり前」と心の中で言う
研究では、初対面同士の長い間は、外から見た人にも気まずく見えていました。自分だけが下手なわけではないと思い出すと、焦りで次の言葉を探しすぎずに済みます。
目安 その場で数秒
間のあとは、直前の話に一言返す
友達同士の会話では、長い間のあとに話題が変わることが少なく、直前の話を味わう時間になっていました。新しい話題を探すより「さっきの話、いいですね」と戻るほうが、気持ちは楽になりやすいかもしれません。質問の仕方は雑談が続かないときの研究で整理しています。
目安 一言・5秒
気心の知れた人と、声で話す時間を持つ
親しい相手とは、間がむしろつながりを感じる瞬間になっていました。文字だけの日が続いたら、短い電話でも声で話してみます。声と文字の違いは声で話す機会がない日の記事、昔の友達への連絡は連絡をためらうときの記事も参考になります。
目安 週1回・10分
05よくある質問
会話の沈黙が苦手なのは、自分の話し方が下手だから?
そうとは限りません。米国の研究では、初対面同士の会話では、2秒を超える間が多いほど会話の楽しさの評価が低い傾向がありました。初対面で間を気まずく感じるのは、よくある反応です。
親しい人との沈黙も、気まずいサインですか?
研究では逆でした。親しい友達同士の会話では長い間がむしろ多く、その瞬間に向けてつながりの感じ方が高まっていました。間には本物の笑いが多く、話題も変わりにくかったと報告されています。
日本語の会話は、間が長いって本当?
10の言語を比べた研究では、はい・いいえで答える質問への答えが始まるまでの平均は、日本語が+7ミリ秒で10言語の中でいちばん短く、デンマーク語が+469ミリ秒でいちばん長いという結果でした。日本語の会話で間が長いとは言えない結果です。
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出典
- Templeton EM, Chang LJ, Reynolds EA, Cone LeBeaumont MD, Wheatley T (2023). Long gaps between turns are awkward for strangers but not for friends. Philosophical Transactions of the Royal Society B, 378(1875), 20210471. https://doi.org/10.1098/rstb.2021.0471
- Templeton EM, Chang LJ, Reynolds EA, Cone LeBeaumont MD, Wheatley T (2022). Fast response times signal social connection in conversation. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119(4), e2116915119. https://doi.org/10.1073/pnas.2116915119
- Stivers T, Enfield NJ, Brown P, Englert C, Hayashi M, Heinemann T, Hoymann G, Rossano F, de Ruiter JP, Yoon KE, Levinson SC (2009). Universals and cultural variation in turn-taking in conversation. Proceedings of the National Academy of Sciences, 106(26), 10587-10592. https://doi.org/10.1073/pnas.0903616106


