在宅勤務で、一日中だれとも声を出して話していない。文字より声のほうが「つながった感じ」は強かった

在宅勤務の日は、仕事のやりとりはすべてチャット。気づけば一日、一度も声を出していない。夕方になって、なんとなく気分が沈んでいる。そんな経験がある人は少なくありません。研究では、同じ相手とのやりとりでも、文字より声のほうが「つながった感じ」が強く残ることがわかってきました。
3行でわかる
- 昔の友人に電話かメールで連絡する実験や、初対面の相手とビデオ・音声・文字で話す実験では、声のあるやりとりのほうがつながりを強く感じ、気まずさは増えていませんでした。
- 大人486人の日常の会話を観察して調べた研究では、一人で過ごす時間が短く、会話の時間や中身のある会話が多い人ほど、生活の満足度が高い傾向がありました。
- 米国で240人を対象にした実験では、4週間、1回10分未満を目安にした電話を受けた人たちは、受けなかった人たちより孤独感や不安が軽くなっていました。
01結論から言うと
一日だれとも声を出して話さない日が続くと、気分が沈むのは不思議ではありません。研究では、声のあるやりとりは文字よりつながりを強く感じさせていました。1日1回、短い通話を入れることから始められます。
在宅勤務では、連絡の多くがチャットやメールになります。用件は伝わっても、人と話した手応えは残りにくいものです。
実験では、「電話は気まずそう」という見積もりのずれから、文字を選びがちになることが示されました。実際には、声のあるやりとりのほうがつながりを強く感じ、気まずさも増えていませんでした。
思っているより、声で話すハードルは低く、得られるものは大きいのかもしれません。
02研究とデータでわかっていること
声のあるやりとりは文字よりつながりを強く感じさせ、気まずさは増えていませんでした。日常の会話が多い人ほど生活の満足度が高く、短い電話を続けた実験では孤独感が軽くなっていました。
KumarとEpley(2021年)[1]
昔の友人に電話かメールで連絡してもらう実地の実験と、初対面の相手とビデオ・音声・文字のチャットで話してもらう実験を行いました。電話・ビデオ・音声チャットなど声のあるやりとりは、メールや文字のチャットより強いつながりを生み、気まずさは増えていませんでした。一方で、気まずさやつながりの見積もりがずれていると、文字を選びがちになることも示されました。
対象: 実地の実験と実験室の実験の参加者 / 限界: 1回のやりとりでの結果で、毎日の在宅勤務の気分を直接調べたものではありません。
Milekら(2018年)[2]
大人486人の日常の会話を実際に観察して記録した4つの調査のデータをまとめて分析しました。生活の満足度が高い人ほど、一人で過ごす時間が短く、会話の時間が長く、中身のある会話が多いという、中くらいの強さの関連がありました。一方、雑談の量とは、はっきりした関連はありませんでした。
対象: 4つの調査の大人合計486人 / 限界: 関連を見た研究で、会話が多いから満足度が上がるのか、満足度が高い人が会話を多くするのかはわかりません。
Kahlonら(2021年)[3]
米国テキサス州で食事の宅配サービスを受けている240人を、電話を受ける組と受けない組に分けました。研修を1時間受けた17〜23歳の若者16人が、相手の話を聞くことを中心に4週間電話をかけました(最初の5日間は毎日、その後は週2〜5回)。電話を受けた組は、受けなかった組より孤独感の点数が改善し(2つの尺度のうち1つではっきりした差)、落ち込みや不安の点数も改善していました。
対象: 27〜101歳の240人(63%が65歳以上、56%が一人暮らし) / 限界: 外出の難しい人が多い集団で、在宅勤務の働く人に同じ効果があるかはわかりません。
Seltzerら(2012年)[4]
ストレスのかかる課題のあと、女の子たちが母親と直接会う、電話で話す、文字のメッセージをやりとりする、何もしない、のいずれかをしました。直接会った場合と電話の場合は、人とのつながりに関わるホルモン(オキシトシン)が出ていましたが、文字のやりとりでは出ておらず、ストレスの目安となるホルモンも、何もしなかった子と同じくらい高いままでした。
対象: 女の子とその母親 / 限界: 子どもを対象にした小さな実験で、大人の在宅勤務にそのまま当てはまるかはわかりません。
03まだわかっていないこと
在宅勤務の人が、声で話す時間を増やすと気分がどう変わるかを直接確かめた研究は見つかりませんでした。研究の多くは別の場面や集団での結果です。
- 在宅勤務の働く人を対象に、通話の回数や長さと気分の関係を調べた実験はまだ見当たりません。
- 仕事の通話と、家族や友人との私的な通話で、効果に違いがあるかもわかっていません。
- 声のやりとりが文字より有利な理由(声の調子なのか、すぐ返事が来ることなのか)も、はっきりしていません。
04今日からできるセルフケア
チャットで済む相談を1日1回だけ短い通話にする、昼休みか夕方に家族や友人と5〜10分話す、話すときは少しだけ中身のある話題を選ぶ、の3つです。お金はかかりません。
仕事の相談を1日1回、短い通話にする
チャットで何往復もしそうな相談を1つ選び、「5分だけ話せますか」と声をかけます。実験では、気まずさは思っていたほど大きくありませんでした。
目安 1日1回・5分
昼休みか夕方に、だれかと5〜10分話す
家族、友人、離れて暮らす親など、気軽に話せる相手に電話します。電話を続けた実験では、1回10分未満を目安にしていました(実際には長くなることもありました)。
目安 1日1回・5〜10分
雑談に、少しだけ中身のある話を足す
天気の話で終わらせず、最近考えていることや楽しみにしていることを一つ話してみます。日常の会話の研究では、中身のある会話が多い人ほど生活の満足度が高い傾向がありました。
目安 1回1話題
メッセージを送る前に「電話でもいい?」と考える
昔の友人への連絡など、文字で送ろうとしているものを電話に変えられないか一度考えます。気まずさの見積もりがずれると、文字を選びがちになることが示されていました。
目安 週1回
05よくある質問
在宅勤務で一日中だれとも話さないと、気分が落ちるのはなぜ?
まだ直接確かめた研究はありませんが、大人486人の研究では、一人で過ごす時間が短く会話が多い人ほど、生活の満足度が高い傾向がありました。会話が減ると、つながりを感じる機会も減ると考えられます。
電話は気まずいので、チャットのほうが楽なのでは?
実験では、声のやりとりでも気まずさは増えず、つながりは文字より強く感じられていました。気まずさの見積もりがずれていると、文字を選びがちになることも示されています。
ビデオ通話でなく、音声だけの通話でも意味はある?
あります。実験では、電話・ビデオ・音声チャットのどれも、声のないやりとりより強いつながりを生んでいました。顔を映さない音声だけの通話でもかまいません。
電話は何分くらい話せばいい?
決まった目安はありませんが、4週間電話を続けた米国の実験では、1回10分未満を目安にしていて、孤独感が軽くなっていました。まずは5〜10分から始められます。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
出典
- Kumar A, Epley N (2021). It's surprisingly nice to hear you: misunderstanding the impact of communication media can lead to suboptimal choices of how to connect with others. Journal of Experimental Psychology: General, 150(3), 595-607. https://doi.org/10.1037/xge0000962
- Milek A, Butler EA, Tackman AM, Kaplan DM, Raison CL, Sbarra DA, Vazire S, Mehl MR (2018). "Eavesdropping on happiness" revisited: a pooled, multisample replication of the association between life satisfaction and observed daily conversation quantity and quality. Psychological Science, 29(9), 1451-1462. https://doi.org/10.1177/0956797618774252
- Kahlon MK, Aksan N, Aubrey R, et al. (2021). Effect of layperson-delivered, empathy-focused program of telephone calls on loneliness, depression, and anxiety among adults during the COVID-19 pandemic: a randomized clinical trial. JAMA Psychiatry, 78(6), 616-622. https://doi.org/10.1001/jamapsychiatry.2021.0113
- Seltzer LJ, Prososki AR, Ziegler TE, Pollak SD (2012). Instant messages vs. speech: hormones and why we still need to hear each other. Evolution and Human Behavior, 33(1), 42-45. https://doi.org/10.1016/j.evolhumbehav.2011.05.004