年をとるほど、職場のAIやデジタル化についていけずつらくなる?ドイツ語圏の1,216人の追跡では、年齢が上の人ほど技術による疲れは少なかった

新しいAIツールや業務システムが次々に入ってきて、「この年齢ではもうついていけない」と感じる。そんな不安を抱える50代・60代は少なくありません。けれど研究では、年齢が上の人ほど技術による疲れが大きい、という結果にはなっていませんでした。つらくなりやすいのは年齢そのものより、つらさの種類と、向き合い方の違いだったようです。
3行でわかる
- ドイツ語圏の働く人1,216人を8か月追った研究では、年齢が上の人ほど、職場の情報技術(パソコンやネットなど)による疲れが少ない傾向がありました。
- 年齢が上の人ほど「お手上げだと投げ出す」対処が少なく、それが疲れの少なさを説明していました。
- 一方、50〜64歳の1,306人の調査では、60〜64歳は「操作が複雑」「若い人に置いていかれる」という負担を感じやすいという違いが見られました。
01 結論から言うと年をとるほど、職場のデジタル化はつらくなる?
「年をとるほどつらくなる」とは言い切れません。働く人1,216人を8か月追った研究では、年齢が上の人ほど職場の情報技術による疲れは少なめでした。ただし、何がつらいかの中身は年齢で違っていました。
パソコン・ネット・業務ソフトといった情報技術が原因のストレスを、研究では「テクノストレス」と呼びます。生成AIそのものを対象にした年齢別の追跡研究はまだ見当たらないため、この記事では職場の情報技術全般の研究を使います。
「年配の人は新しい技術が苦手」というイメージは根強くあります。けれど、ドイツ語圏の働く人を追跡した研究では、技術にまつわる困りごとに出会う量は年齢でほとんど変わらず、疲れはむしろ年齢が上の人ほど少なめでした。研究者はこの結果を、年配の働き手への思い込みとは逆の結果だと述べています。
ただし、差は小さなものです。年齢が上でも強い負担を感じる人はいますし、50〜64歳だけを調べた別の調査では、年齢層によって負担の中身が違っていました。年齢で一括りにせず、自分が何に疲れているのかを見分けることが手がかりになります。
02 研究とデータでわかっていること年齢と技術のストレスの関係は、研究でどう出た?
年齢が上の人ほど技術による疲れは少なく、その理由は「投げ出す」対処が少ないことでした。50〜64歳の中では、60〜64歳が操作の複雑さや取り残され感を負担に感じやすい傾向がありました。
Haukら(2019年)[1]
ドイツ・オーストリア・スイスのオンライン調査の協力者を、4か月おきに3回調べました。年齢が上の人ほど、仕事で情報技術を使うことによる疲れ(「仕事でのICT利用で気持ちが消耗する」など)が少ない傾向があり、3回の調査のすべてで同じ向きの関連が見られました。技術にまつわる困りごとに出会う量は、仕事で技術に頼る度合いをそろえると、年齢との関連ははっきりしませんでした。年齢が上の人ほど少なかったのは「お手上げだと努力をやめる」という対処で、この違いが疲れの少なさを説明していました。一方、自分で解決しようとする対処や人に助けを求める対処を続けた人も、8か月の間に疲れが増えていました。
対象: 1,216人(2回目840人、3回目631人)、17〜75歳、平均46.3歳、女性55.2% / 限界: 生成AIが広まる前の研究です。関連の強さは小さめです。また、オンラインで答えた人に偏っている可能性があると研究者自身が述べています。
Rašticováら(2025年)[2]
チェコ・ハンガリー・ポーランド・スロバキアの50〜64歳の働く人1,306人に、5種類の技術のストレス(扱う問題が増えて作業が遅くなる、私生活に入り込む、複雑で覚えにくい、個人情報が心配、若い人に置いていかれる感じ)を聞きました。回答の傾向から4つのグループに分けると、ほとんどの項目で強い人が295人、どれも弱い人が307人、「複雑さ」と「置いていかれる感じ」が強い人が316人、「私生活への入り込み」と「個人情報」が強い人が280人でした。50〜54歳は私生活への入り込みと個人情報の心配を、60〜64歳は複雑さ・個人情報の心配・置いていかれる感じを負担に感じやすく、女性は男性より負担が大きい傾向がありました。
対象: 中欧4か国の50〜64歳の会社員・自営業者1,306人(2021年) / 限界: 一度きりの調査で、因果はわかりません。自己申告で、オンラインで答えた人に限られます。
Rabasa-MartínとMartínez-Jarreta(2026年)[3]
AIと職場のデジタル化が働く人の心に与える影響について、論文23件と、国際機関などの報告書20件をまとめました。技術のストレス、仕事の密度が上がること、雇用の不安、自分で決められる幅の縮小、仕事と私生活の境目があいまいになることが繰り返し報告されていました。一方で、十分な研修や組織の支えがあると、効率や成長の機会など良い面も報告されていました。影響は人によって偏りがあり、年配の働き手や技能の低い働き手により重くかかりうるとし、デジタルとAIの知識(リテラシー)が守りになる要素として挙げられていました。
対象: 2016年〜2026年1月の論文と報告書43件 / 限界: 研究の方法がばらばらで、結果の強さを数字でまとめたものではありません。リテラシーが守りになるという点は、主に国際機関の報告書にもとづきます。
03 まだわかっていないこと生成AIでも、同じことが言える?
まだわかっていません。年齢と技術のストレスを追った研究は生成AIが広まる前のもので、AIに仕事を任せる変化が年代によってどう響くかは、追跡研究がまだありません。
- 1,216人の追跡は2019年の発表で、パソコンやネットなど情報技術全般を対象にしています。生成AIに特有の負担が年齢でどう違うかは調べられていません。
- 年齢が上の人ほど疲れが少ないという追跡の結果と、年配の働き手に負担が偏りうるというまとめの指摘は、一見食い違います。対象の国・職場・研修の有無が違うためとも考えられますが、はっきりしません。
- 自分で解決しようとする対処を続けた人の疲れも増えていた理由は、わかっていません。研究者は、長く続く変化に努力を続けること自体が負担になる可能性を挙げています。
- 日本の50代・60代の働き手を対象にした同じような研究は、今回は見つかりませんでした。
04 今日からできるセルフケア「もう年だから」と感じたら、まず何をする?
年齢のせいと決めつけず、何に疲れているのかを5つの種類から見分けることから始められます。そのうえで、仕事に要る1つだけを小さく続け、教わる機会を使います。
疲れの種類を5つから見分ける
「扱う問題が増えて作業が遅くなった」「私生活に入り込む」「操作が複雑で覚えにくい」「個人情報が心配」「若い人に置いていかれる感じ」のうち、いちばん当てはまるものに印をつけます。50〜64歳の調査では、年代で負担の種類が違っていました。種類がわかると、打ち手を選べます。
目安 5分
投げ出さず、1つだけを小さく続ける
追跡研究では「お手上げだと努力をやめる」対処が疲れの増加と関わっていました。ただ、頑張り続けることも疲れと関わっていたため、全部を追わず、いまの仕事に要る機能を1つだけ選び、1日10分だけ触ります。追いかけ方の決め方はAIについていけない焦りの記事でも紹介しています。
目安 1日10分
職場の研修や、詳しい人に教わる機会を使う
研究のまとめでは、十分な研修や組織の支えがある職場で良い面が報告されており、デジタルとAIの知識が守りになるとされていました。社内の研修や勉強会、同僚に操作を見せてもらう時間を、週に1回だけ予定に入れます。学び始める年齢については40代・50代からAIを学ぶ記事も参考になります。
目安 週1回・30分
05よくある質問
年をとると、新しいAIやITについていけなくなるのは本当?
研究では、そうとは言い切れません。ドイツ語圏の働く人1,216人を8か月追った研究では、年齢が上の人ほど職場の情報技術による疲れは少なめでした。ただし差は小さく、生成AIが広まる前の研究です。
50代と60代で、つらさの中身は違う?
中欧4か国の50〜64歳1,306人の調査では、50〜54歳は仕事が私生活に入り込むことを、60〜64歳は操作の複雑さや若い人に置いていかれる感じを、負担に感じやすい傾向がありました。一度きりの調査なので、年をとると変わるのかまではわかりません。
職場のデジタル化がつらいとき、相談してもいい?
研究のまとめでは、研修や組織の支えがあると、デジタル化の良い面も報告されていました。困っている操作や負担を上司や同僚に具体的に伝えることは、支えを得る一つの方法です。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Hauk N, Göritz AS, Krumm S. (2019). The mediating role of coping behavior on the age-technostress relationship: A longitudinal multilevel mediation model. PLoS ONE, 14(3), e0213349. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0213349
- Rašticová M, Šácha J, Lakomý M, Mishra PK. (2025). Technostress Among Older Workers: A Central European Perspective. Psychology Research and Behavior Management, 18, 1211-1225. https://doi.org/10.2147/PRBM.S508500
- Rabasa-Martín Ó, Martínez-Jarreta B. (2026). Impact of artificial intelligence and work digitalization on mental health and occupational well-being: a scoping review. Frontiers in Public Health, 14, 1857108. https://doi.org/10.3389/fpubh.2026.1857108


