AIで仕事がなくなるかもと、身構えすぎないために。韓国の会社員209人の調査では、変化に合わせられるという感覚が強い人ほど、AIを意識しても仕事の不安が強まりにくかった

AIのニュースを見るたびに、自分の仕事もいつか置きかえられるのでは、と身構えてしまう。不安を感じること自体は自然なことです。ただ、同じニュースを見ても、不安が強まりやすい人と、そうでない人がいます。その違いに関わっていたのが、「変化が来ても何とか合わせられる」という感覚でした。韓国の会社員の調査と、研究のまとめから整理します。
3行でわかる
- 韓国の会社員209人の調査では、AIに仕事を置きかえられるかもと考える人ほど、5週間後の仕事の不安が強い関連がありました。
- ただし「変化に合わせられる」「仕事の問題に対処できる」という感覚が強い人ほど、その結びつきは弱めでした。
- 前に乗り越えた変化を書き出す、新しいやり方を小さく試す、困ったときの手順を決めておく。この3つが、研究から考えられる日頃の備えです。
01 結論から言うとAIの不安が強まりにくい人の特徴はある?
あります。韓国の会社員209人の調査では、変化に合わせられるという感覚が強い人ほど、AIを意識しても仕事の不安が強まりにくい傾向がありました。ただし1つの観察研究で、わかっている度は低めです。
研究では、今の仕事が続くかわからないと感じる状態を「雇用不安(ジョブ・インセキュリティ)」と呼びます。AIやロボットに仕事を置きかえられるかもしれない、という不安も、その一つとして調べられています。
今回の中心になる研究は、「キャリア・レジリエンス」という感覚に注目しました。むずかしい言葉ですが、中身は2つの質問で表せます。「状況が変わっても、それに合わせられる」「仕事で起きる問題に、それなりに対処できる」。こう思える度合いのことです。
この記事は、不安が大きくなる前の、日頃の備え方を扱います。不安がすでに長く続いているときは、立ち直る力を育てる練習の記事も参考になります。
02 研究とデータでわかっていること変化に合わせる感覚は、AIの不安とどう関係していた?
AIに仕事を置きかえられるかもと考える人ほど、5週間後の仕事の不安が強い関連がありました。変化に合わせられる感覚が強い人では、その結びつきが弱めでした。別の研究でも、立ち直る力は雇用不安と疲れの結びつきを弱めていました。
Chungら(2025年) [1]
韓国の会社員に、5週間おきに3回アンケートをしました。1回目に「自分の仕事はAIに置きかえられる危険が高い」と考える度合いと、変化に合わせられる感覚をたずね、2回目に仕事の不安をたずねました。AIに置きかえられるかもと考える人ほど、仕事の不安が強い関連がありました(相関0.40)。変化に合わせられる感覚が強い人ほど、仕事の不安は低めでした(相関−0.29)。さらに、この感覚が強いグループでは、AIの考えと仕事の不安の結びつきが、弱いグループより小さくなっていました。
対象: 韓国のフルタイムの会社員209人(調べやすい職場で募集、平均37.6歳) / 限界: 観察の研究で、すべて自己申告です。この集団では仕事の不安が全体に低めで、著者も他の国で確かめる必要があるとしています。
Chungら(2025年) [1]
同じ研究では、仕事の不安が強い人ほど、3回目にたずねた「任された仕事をこなせている」という自己評価が低い関連もありました。著者は、AIのことを気にすると、自分を見張ったり先を心配したりする分だけ頭の負担が増え、目の前の仕事に集中しにくくなるのではないか、と考察しています。
対象: 上と同じ209人 / 限界: 仕事の出来は本人の自己評価で、上司などの評価ではありません。頭の負担の説明は著者の解釈で、測ってはいません。
Shossら(2018年) [3]
米国で、立ち直る力(レジリエンス)が雇用不安の影響をやわらげるかを2つの研究で調べました。大学職員1,071人の研究では、立ち直る力が強い人ほど、雇用不安と心の疲れの結びつきが弱めでした。働く人335人を1か月追った研究でも、立ち直る力は、雇用不安と1か月後の心の疲れの結びつきを弱めていました。
対象: 米国の大学職員1,071人と、米国の働く人335人 / 限界: AIの不安ではなく、雇用不安全般の研究です。立ち直る力は、性格的な傾向と対処のしかたの両方で測られました。
LiangとWong(2026年) [2]
AIやロボットなどの技術に仕事を置きかえられる不安を調べた研究をまとめたメタ分析です。この不安が強い人ほど、目先のストレスが強く(相関0.41)、長く続く気分のよさが低い(相関−0.33)関連がありました。また、学ぶ力が高いと考えられる集団の研究ほど、仕事そのものへの否定的な見方が弱めでした。
対象: 2000年〜2025年6月に発表された96件の研究、合計4万3,104人の働く人 / 限界: 学ぶ力は、研究ごとの大卒者の割合を目安にしたもので、一人ひとりを測ったわけではありません。
03 まだわかっていないこと変化に合わせる力を育てれば、AIの不安は防げる?
まだわかっていません。変化に合わせる感覚を育てて、AIの不安が減るかを確かめた実験は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。紹介した研究は、どれも観察の研究です。
- 変化に合わせられる感覚が強い人は、もともと仕事に余裕がある人だったのかもしれません。感覚そのもののおかげかは、区別できていません。
- 中心の研究は韓国の会社員のもので、仕事の不安が全体に低い集団でした。日本の働く人や、不安が強い人で同じ結果になるかはわかりません。
- 研究のまとめでは、長く続く気分のよさとの関係は、調べた条件では弱まっていませんでした。著者らは、長い目で見た回復には、職場や社会の仕組みなど、より大きな支えが関わる可能性を述べています。
04 今日からできるセルフケアAIの不安に、日頃からどう備える?
前に乗り越えた変化を書き出して、「合わせられた経験」を思い出します。新しいやり方を小さく試し、困ったときの手順を決めておきます。どれもお金をかけずにできます。研究で効果を確かめた方法ではなく、研究で測られた感覚を手がかりにした工夫です。
前に乗り越えた変化を3つ書き出す
部署の異動、新しいシステムの導入、在宅勤務への切りかえなど、最初は戸惑ったけれど慣れたことを書きます。研究で測られた「変化に合わせられる」という感覚を、自分の経験から確かめる作業です。
目安 月に1回・10分
新しいやり方を、小さく1つ試す
いつもの作業の一部を、新しい道具や手順でやってみます。うまくいかなくても戻せる範囲にとどめます。研究のまとめでは、学ぶ力が高いと考えられる集団ほど、仕事への否定的な見方が弱めでした。
目安 週に1回・15分
困ったときの手順を、先に決めておく
「わからないときは誰に聞くか」「まず何を調べるか」を3行でメモします。研究で使われた質問の一つは、仕事の問題にそれなりに対処できると思えるかでした。手順が決まっていると、その感覚を持ちやすくなります。
目安 1回5分・必要に応じて見直す
ふだんから先の計画を立てる習慣については 計画を立てる人の不安が下がりやすかった研究、職場の支えについては 研修や職場の助け合いの研究 でも紹介しています。
05よくある質問
AIで仕事がなくなるのが不安。日頃から何を備えればいい?
研究から言えるのは、「変化が来ても何とか合わせられる」という感覚が、不安の強まり方と関連していた、ということです。韓国の会社員209人の調査では、この感覚が強い人ほど、AIに仕事を置きかえられるかもと考えても、5週間後の仕事の不安が強まりにくい傾向がありました。ただし観察の研究で、効果を確かめた実験ではありません。
「変化に合わせる力」は、あとから育てられる?
研究では、育てられるかどうかまでは確かめられていません。今回の研究は、ある時点の感覚を測っただけです。著者は、研修や学びの機会がこの力を支えうると考察していますが、AIの不安で試した実験は見つかりませんでした。
AIの不安は、気持ちの問題だけ?
気持ちだけの問題とは言えません。96件の研究のまとめでは、AIや自動化への不安が強い人ほど、目先のストレスが強く、長く続く気分のよさが低い関連がありました。韓国の研究の著者は、個人の工夫に加えて、会社がAI導入の見通しを説明することも勧めています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
無料ツール
セルフチェックで「今日やること」をまとめる
当てはまる悩みを選ぶだけ。診断はせず、記事の対策を一覧にします。
研究早見表でほかの悩み210件も見る
出典
- Chung YW, Im S, Kim JE, Yun JK (2025). Artificial intelligence awareness, career resilience, job insecurity and behavioural outcomes. Australian Journal of Psychology, 77(1), 2559910. https://doi.org/10.1080/00049530.2025.2559910
- Liang J, Wong C-H (2026). Navigating the Digital Storm: A Systematic Review and Meta-Analysis of Technology-Induced Job Insecurity, Its Outcomes and Moderators. Behavioral Sciences, 16(9), 1474. https://doi.org/10.3390/bs16091474
- Shoss MK, Jiang L, Probst TM (2018). Bending without breaking: A two-study examination of employee resilience in the face of job insecurity. Journal of Occupational Health Psychology, 23(1), 112-126. https://doi.org/10.1037/ocp0000060


