AIで仕事が変わる不安を、ひとりでためこみたくない。韓国と日本の働く人の調査では、会社の研修や職場の助け合いがある人ほど、不安やつらさが強まりにくかった

新しいAIツールが入るたびに、自分の仕事のやり方や得意なことが通用しなくなる気がする。そんな不安を、ひとりで抱え込んでいないでしょうか。働く人の調査では、会社が用意した研修や、職場でお互いに理解し合える関係がある人ほど、不安やつらさが強まりにくい傾向が見られています。
3行でわかる
- 韓国の働く人28,989人の調査(2021年)では、職場の技術の変化が多い人ほど「仕事の中身が変わる不安」が強く、会社の研修を受けた人ではその結びつきが弱かった。
- 日本の工場の2,971人の調査(2011年)では、職場の助け合いが弱いと感じる人ほど、雇用の不安と心の負担の結びつきが強かった。
- 不安をためないために、変化の情報を同僚と共有し、会社の研修を確かめ、ひとりで抱え込まない仕組みを作る。
01 結論から言うとAIで仕事が変わる不安は、ためずにすむ?
不安そのものをゼロにする方法はわかっていません。ただ、会社の研修を受けられることや、職場でお互いを理解し情報を共有し合える関係は、不安やつらさが強まりにくいことと関連していました。
ここでいう不安は、仕事を失う心配だけではありません。自分のスキルが使えなくなる、仕事のやり方が変わるといった「仕事の中身」についての心配も含みます。研究ではこれを「質的な雇用不安」と呼びます。
技術の変化による雇用不安については、96件・43,104人分の研究をまとめた分析でも、仕事への考え方や気持ち、行動と結びついていることが整理されています[3]。だからこそ、不安が強まる前の「ためない工夫」に目を向ける意味があります。
02 研究とデータでわかっていること職場の助け合いや研修は、不安を和らげる?
関連は見られています。韓国では会社の研修を受けた人ほど技術の変化で不安が強まりにくく、日本では職場の助け合いが強い人ほど、不安と心の負担の結びつきが弱くなっていました。どちらも1時点の調査で、因果は確かめられていません。
Lee ら(2022)[1]
過去3年に職場で新しい機器や仕事のやり方などの変化があった人ほど、技術や自動化で仕事の中身が変わる不安が強い関連がありました(相関0.49)。この不安が強い人ほど、眠りにくさや仕事と家庭の両立の難しさも多い傾向でした。過去1年に会社が費用を出すか用意した研修を受けた人では、技術の変化と不安の結びつきが弱くなっていました。
対象: 韓国の全国調査(第6回 労働環境調査、2021年)に答えた、15〜65歳の雇われて働く人28,989人 / 限界: 1時点の調査で、研修が不安を減らしたのか、もともと不安の少ない職場で研修が多かったのかは区別できません。
Lee ら(2022)[1]
一方、自費で研修を受けた人では、不安と、仕事への熱意の低さ・眠りにくさ・仕事と家庭の両立の難しさとの結びつきが、むしろ強くなっていました。著者らは、仕事の外で自分のお金と時間を使って学ぶことが、休んで回復する時間を削る可能性を挙げています。
対象: 同上 / 限界: 研修は「受けたか・受けていないか」だけを聞いており、内容や質、技術の変化に向けた研修だったかはわかりません。
Inoue ら(2016)[2]
雇用の不安が強い人ほど心の負担が多い関連があり、その結びつきは、職場の助け合いが弱いと感じる人で強くなっていました。雇用の不安が強い人のうち心の負担があった割合は、助け合いが弱い人で77.3%、強い人で65.4%でした(不安が弱い人ではそれぞれ47.6%と39.2%)。
対象: 日本の製造業1社の2工場で働く2,971人(男性2,175人・女性796人、2011年調査)。心の負担は6問の質問票で5点以上 / 限界: AIに限らない雇用の不安を調べた研究です。男女別では、正社員の男性でのみ同じ結果が確かめられました。
03 まだわかっていないこと研修や助け合いで、本当に不安は減る?
まだわかりません。今回の研究はどれも1時点の調査で、研修や助け合いを増やしたら不安が減るかを確かめた実験ではありません。生成AIによる変化だけを対象にした研究もまだ少ない段階です。
- 研修や職場の助け合いを「増やした」ときに、不安や心の負担が下がるかを確かめた試験は見当たりません。
- 日本の研究は2011年の製造業1社の調査で、AIではなく雇用全般の不安を調べたものです。女性では同じ結果が確かめられていません。
- 自費で学んだ人ほどつらさとの結びつきが強かった理由は、わかっていません。
- 生成AIが職場に広がった後の、同じ規模の調査はまだ少ない段階です。
04 今日からできるセルフケア仕事の不安をためないために、今日できることは?
不安をひとりで抱えず、職場の人とつながる工夫をすることです。変化の情報を共有する、会社の研修を確かめる、学びで睡眠や家庭の時間を削りすぎない。この3つから始められます。
AIや仕事の変化の情報を、同僚と共有する
「このツール、こう使ったら楽だった」「来月この作業が変わるらしい」など、知ったことを1つ伝えます。日本の研究で助け合いを測った質問には「仕事の情報を共有し合っている」が含まれていました。
目安 5分・週1回
会社が用意している研修や勉強会を確かめる
社内の研修一覧や、上司・人事に聞ける窓口を一度見てみます。韓国の調査では、会社が費用を出すか用意した研修を受けた人ほど、技術の変化による不安が強まりにくい関連がありました。
目安 15分・一度
自分で学ぶときは、睡眠と家庭の時間を先に確保する
夜遅くまでの独学で寝る時間を削らないよう、学ぶ時間の上限を先に決めます。自費で学んだ人ほど、不安と眠りにくさの結びつきが強い傾向が見られていました。
目安 1日30分までなど、上限を決める
不安を1人だけでいいので、職場の人に話す
「AIで仕事がどう変わるか少し気になっていて」と、信頼できる同僚1人に話してみます。同じ不安を持つ人が見つかると、情報の共有も進みやすくなります。
目安 10分・月1回
頭の中で心配がふくらみやすいときは「心配を1日30分にまとめる練習」、先の見通しを立てる習慣は「計画を立てる人ほど不安が下がりやすかった研究」も参考になります。
05よくある質問
AIで仕事が変わる不安は、ひとりで勉強すれば消えますか?
そうとは言い切れません。韓国の28,989人の調査では、会社が費用を出すか用意した研修を受けた人ほど技術の変化による不安が強まりにくかった一方、自費で研修を受けた人では、不安と眠りにくさなどとの結びつきがむしろ強くなっていました。理由は確かめられていませんが、著者らは仕事の外で学ぶ負担が回復の時間を削る可能性を挙げています。
職場の助け合いとは、具体的にどんなことですか?
日本の研究で使われた質問は「職場に一緒にやっていこうという雰囲気がある」「お互いに理解し認め合っている」「仕事に関する情報を共有し合っている」の3つでした。特別な制度ではなく、ふだんの声かけや情報の共有に近いものです。
職場の雰囲気は自分では変えられないのでは?
職場全体はすぐには変えられませんが、同僚に変化の情報を共有する、困ったことを1人に話すといった小さな行動は自分から始められます。人に頼ることへのためらいについては「人に質問するのが怖い」でも研究を紹介しています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
無料ツール
セルフチェックで「今日やること」をまとめる
当てはまる悩みを選ぶだけ。診断はせず、記事の対策を一覧にします。
研究早見表でほかの悩み210件も見る
出典
- Lee HJ, Probst TM, Bazzoli A, Lee S (2022). Technology Advancements and Employees' Qualitative Job Insecurity in the Republic of Korea: Does Training Help? Employer-Provided vs. Self-Paid Training. International Journal of Environmental Research and Public Health, 19(21), 14368. https://doi.org/10.3390/ijerph192114368
- Inoue A, Kawakami N, Eguchi H, Tsutsumi A (2016). Buffering effect of workplace social capital on the association of job insecurity with psychological distress in Japanese employees: a cross-sectional study. Journal of Occupational Health, 58(5), 460-469. https://doi.org/10.1539/joh.16-0129-OA
- Liang J, Wong CH (2026). Navigating the Digital Storm: A Systematic Review and Meta-Analysis of Technology-Induced Job Insecurity, Its Outcomes and Moderators. Behavioral Sciences, 16(9), 1474. https://doi.org/10.3390/bs16091474


