仕事とAIの不安

40代・50代からAIを学ぶのは遅い?60〜90歳がタブレットを一から学んだ実験では、記憶の成績まで上がっていた

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わかっている度 ★★☆ 中研究4本・公的指針0件を整理
本棚の前の木の机に置かれたノートパソコン
Photo: www.Pixel.la Free Stock Photos / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

若い同僚がAIを使いこなすのを見て、「この年から覚えても遅いのでは」と感じる人は少なくありません。結論から言うと、40代・50代で学ぶのが遅いと示す研究は見当たりませんでした。もっと年上の人たちが新しい機器を一から学べた実験があり、むしろ「もう年だから」という思い込みのほうが、成績を下げていました。

3行でわかる

  1. 60〜90歳のパソコン初心者がタブレットを約3か月学んだ米国の実験では、使い方を学びながら、記憶と処理の速さの成績も比較群より上がっていた。
  2. 高齢者を対象にした実験のまとめでは、年齢についての否定的な思い込みを意識させるだけで、記憶などの成績が小〜中程度に下がっていた。
  3. 年齢と新しい技術の使いにくさの関係には、自信や不安もかかわっていた。小さく試して「できた」を積むことが、今日からできる一歩になる。

01結論から言うと

40代・50代からAIを学ぶのが遅いと示す研究は見当たりません。60代以上でも新しい機器や技能を一から身につけた実験があり、気をつけたいのは年齢そのものより「年だから無理」という思い込みです。

生成AIの使い方を年代別に比べた学習の研究は、まだほとんどありません。そこでこの記事では、近い分野の研究を集めました。年をとってから新しい機器や技能を学んだ実験と、年齢についての思い込みが成績に与える影響の研究です。

どの研究も、40代・50代より年上の人を対象にしています。それでも、60〜90歳でタブレットを一から学べたという結果は、「40代・50代ではもう遅い」という考えを支えるものではありません。

AIの情報を全部追いかけて疲れている人は、AIについていけない焦りの記事もあわせて読むと、学ぶ範囲の決め方がわかります。

02研究とデータでわかっていること

年をとってからでも、新しい機器や技能を学ぶことはできていました。また、年齢についての否定的な思い込みは成績を下げ、年齢と技術の使いにくさの関係には自信や不安もかかわっていました。

約3か月60〜90歳のパソコン初心者がタブレットを学んだ期間(米国、2016年発表)
d=0.32年齢の否定的な思い込みを意識したときの成績の下がり方(小〜中程度。平均69.5歳、3,882人分のまとめ)
1,204人年齢と技術の使い方の関係を調べた人数(18〜91歳、2006年発表)
35〜51歳3つの技能を学んだ高齢者が、途中の時点で近い成績になった比較群の年齢(米国、2023年発表)

Chanら(2016)[1]

パソコンに慣れていない60〜90歳が、タブレットの使い方を週15時間ほど、約3か月学びました。学んだグループは、新しい学びのない作業をしたグループや、人と交流するだけのグループより、記憶(出来事を覚える力)と処理の速さの成績が大きく上がっていました。

対象: 米国テキサス州の60〜90歳の54人(タブレットを学んで最後まで参加したのは18人) / 限界: グループは無作為に分けたものではなく、人数も少ない。注意の切り替えや空間を把握する力では差がなかった。

Leanosら(2023)[2]

高齢者が、スペイン語・絵・タブレットなど3つの新しい技能を同時に、約3か月学びました。2つ目の研究では、途中の時点で作業記憶や記憶などの成績が上がり、別に測った35〜51歳のグループに近い水準になっていました。

対象: 米国の58〜86歳。研究1は15人(学ぶグループ6人・比較グループ9人)、研究2は27人 / 限界: 実現できるかを確かめる小規模な研究で、研究2には比較グループがない(開始前の自分の成績と比べた)。研究1では、比較グループとの差は一部の記憶テストを除いてはっきりしなかった。

Lamontら(2015、2018年に訂正)[3]

未発表を含む32本の論文(82の効果量)をまとめた分析では、「年をとると記憶力が落ちる」といった否定的な思い込みを意識させると、高齢者の記憶などの課題の成績が下がっていました。下がり方は小〜中程度(訂正後の効果量 d=0.32)でした。

対象: 合計3,882人、平均69.5歳の実験 / 限界: 40代・50代を対象にした実験ではない。2018年の訂正で一部の効果量が計算し直されたが、結論への影響は小さかったと著者は述べている。

Czajaら(2006)[4]

18〜91歳の1,204人を調べると、年齢が高い人ほど、パソコンやインターネットなどの技術を使っていない傾向がありました。ただ、年齢と技術の使い方の関係は、認知の力に加えて、パソコンへの自信や不安を通じたものでした。

対象: 地域に住む18〜91歳の1,204人 / 限界: 一時点の調査で、関連を示したもの。2006年発表で、生成AIが広まる前の研究。

4つの研究を合わせると、学べるかどうかは年齢だけでは決まらないことが見えてきます。若い同僚と比べて焦るときは、AIを使いこなす同僚と比べて焦るときの記事も参考になります。

03まだわかっていないこと

40代・50代が生成AIを学ぶときの研究は、まだほとんどありません。紹介した研究は年上の人が対象で、人数も少ないため、同じ結果になるとは言い切れません。

  • 40代・50代の働く人が、生成AIの使い方をどのくらいの期間で身につけるかを調べた研究は見当たらない。
  • タブレットや語学を学んだ実験の結果が、生成AIの学習にも当てはまるかはわからない。
  • 実験は週15時間ほど学ぶ集中的なもので、仕事の合間の短い学習で同じ効果が出るかはわかっていない。
  • 年齢の思い込みの影響が、40代・50代でどのくらいの大きさなのかは研究が少ない。

04今日からできるセルフケア

「年だから」を具体的なつまずきに言い換え、仕事で使う作業1つから小さく試します。聞ける相手を1人決めておくと、不安で手が止まりにくくなります。

1

「年だから」を、具体的なつまずきに書き換える

「もう年だから無理」と浮かんだら、どこで止まったかを1行で書きます(例:「指示の書き方がわからない」)。年齢の問題を、解ける問題に変えます。

目安 1回2分

2

仕事で毎週やる作業を1つだけAIで試す

議事録の要約やメールの下書きなど、毎週くり返す作業を1つ選びます。タブレットの実験でも、銀行の手続きなど日々の用事に役立つ技能が身につくことが、利点として挙げられていました。

目安 週1回15分

3

「できたこと」を記録して自信を育てる

試した日に、できたことを1つメモします。技術への自信や不安は、年齢と技術の使い方の関係にかかわっていました。

目安 1日1行

4

わからないときに聞ける相手を1人決める

紹介した実験は、どれも講師のいる教室で学ぶ形でした。同僚や家族など、気軽に聞ける人を1人決めておきます。年下に聞くのは恥ずかしいことではありません。

目安 最初に1回声をかける

人に質問するのが怖いと感じるときは、人に質問するのが怖いときの記事で、頼まれた側の受け止め方を紹介しています。

05よくある質問

40代・50代からAIを学び始めても身につく?

身につかないと示す研究は見当たりません。もっと年上の60〜90歳のパソコン初心者が、タブレットを約3か月学んだ米国の実験では、使い方を学びながら記憶や処理の速さの成績も上がっていました。ただし40代・50代を対象にした研究ではありません。

若い人のほうがAIを覚えるのが速いのでは?

18〜91歳の1,204人を調べた研究では、年齢が高い人ほど新しい技術を使っていない傾向がありました。ただ、その差は年齢そのものより、認知の力やパソコンへの自信・不安を通じたものでした。年齢そのものとは別に、自信や不安もかかわっていたということです。

「もう年だから」と思うと本当に覚えにくくなる?

高齢者を対象にした実験のまとめでは、年齢についての否定的な思い込みを意識させると、記憶などの課題の成績が小〜中程度に下がっていました。40代・50代での研究は少ないため、同じ大きさで起きるとは言えません。

仕事が忙しくて勉強の時間がとれない。少しずつでも意味はある?

この記事で紹介した実験は週15時間ほど学ぶ集中的なものだったので、短い時間でどこまで同じ結果になるかはわかっていません。仕事で毎週使う作業を1つ選び、決まった時間に試すなど、続けられる量から始めるのが現実的です。

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出典

  1. Chan MY, Haber S, Drew LM, Park DC (2016). Training Older Adults to Use Tablet Computers: Does It Enhance Cognitive Function? The Gerontologist, 56(3), 475–484. https://doi.org/10.1093/geront/gnu057
  2. Leanos S, Kürüm E, Strickland-Hughes CM, et al. (2023). The Impact of Learning Multiple Real-World Skills on Cognitive Abilities and Functional Independence in Healthy Older Adults. The Journals of Gerontology: Series B, 78(8), 1305–1317. https://doi.org/10.1093/geronb/gbad053
  3. Lamont RA, Swift HJ, Abrams D (2015). A Review and Meta-Analysis of Age-Based Stereotype Threat: Negative Stereotypes, Not Facts, Do the Damage. Psychology and Aging, 30(1), 180–193. https://doi.org/10.1037/a0038586 / 訂正(2018): https://doi.org/10.1037/pag0000269
  4. Czaja SJ, Charness N, Fisk AD, et al. (2006). Factors predicting the use of technology: findings from the Center for Research and Education on Aging and Technology Enhancement (CREATE). Psychology and Aging, 21(2), 333–352. https://doi.org/10.1037/0882-7974.21.2.333