仕事とAIの不安

AIに備えて始めた学び直しが続かず、自分が情けない。オンライン講座26万人の実験では、最初に計画を書く工夫の効果は1〜2週間で薄れ、修了する人は増えなかった

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的指針0件を整理
机の上のノートとペン
Photo: Thomas Martinsen faceline / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

AIで仕事が変わる前に何か身につけようと、オンライン講座や資格の勉強を始めた。でも数週間で手が止まり、また続かなかったと自分を責めてしまう。そう感じている人は少なくありません。名門大学のオンライン講座で26万人以上を調べた実験では、最初に計画を書いてもらう工夫の効果は1〜2週間で薄れていました。続かないのは珍しいことではなく、立て直し方には研究の手がかりがあります。

3行でわかる

  1. 名門大学のオンライン講座では、最後まで受けるつもりの人でも修了するのは約2割だった。学び直しが途中で止まるのは珍しいことではない。
  2. 26万9千人の実験では、最初に計画を書く工夫で受講は最初の数週間だけ増えたが、効果は1〜2週間で薄れ、修了する人は増えなかった。
  3. 138件の研究のまとめでは、進み具合をこまめに確かめると目標に近づきやすく、記録に残す・人に伝えると効果が大きかった。

01 結論から言うと学び直しが続かないのは、意志が弱いから?

意志の弱さだけでは説明できません。オンライン講座では、最後まで受けるつもりの人でも修了するのは約2割でした。最初に1回計画を立てるだけでは続きにくく、進み具合を確かめながら計画を立て直すほうが、研究の結果に合っています。

学び直しは、何週間も何か月も、仕事や家庭の合間に少しずつ続ける必要があります。選挙に行く、予約を入れるといった1回だけの行動とは、続ける難しさが違います。

研究者たちも、短い工夫は1回だけの行動には効きやすい一方、長く続ける行動には効きにくいと結論づけています。続かなかったことを責めるより、続け方の仕組みを変えるほうが、研究からは筋の通った立て直し方です。

02 研究とデータでわかっていることオンライン講座が続かない人に、何が効いた?

最初に計画を書く工夫は、受講を最初の数週間だけ増やしましたが、修了する人は増えませんでした。一方、進み具合をこまめに確かめる方法は、138件の研究のまとめで目標の達成を後押ししていました。

約2割名門大学のオンライン講座で、最後まで受けるつもりの人のうち修了した人の割合(論文が紹介している先行研究)
26万9千人ハーバード大・MIT・スタンフォード大の247講座で、続けるための工夫を試した実験の規模(2016〜2019年)
1〜2週間最初に計画を書く工夫の効果が続いた期間。そのあとは薄れ、修了率には差が出なかった(同じ実験)
138件進み具合を確かめる方法を試した実験の数(合計19,951人、2016年のまとめ)

Kizilcecら(2020年)[1]

ハーバード大・MIT・スタンフォード大のほぼすべてのオンライン講座で、受講の初めに短い工夫をくじ引きで割り当てました。いつ・どうやって課題を進めるかを具体的に書く「計画」の工夫は、最初の数週間の受講を少し増やしました。しかし効果は1〜2週間で薄れ、最後まで修了する人は増えませんでした。

講座の進み具合を定期的に確かめてもらう人を決める工夫では、受講の増加が2週目まで続いていました。ただし、修了率がはっきり上がったとは言えませんでした。研究者たちは、こうした短い工夫は、長く努力を続ける必要のある行動より、1回だけの行動に効きやすいとまとめています。

対象: ほぼすべての国から受講した269,169人、247講座(2016年9月〜2019年5月) / 限界: 無料のオンライン講座の受講者で、仕事のために学び直す人だけを調べたわけではない。工夫はどれも受講の初めに1回だけ行うもので、くり返し行った場合は調べていない。

KizilcecとCohen(2017年)[2]

オンライン講座の受講者に、目標を達成したときのよい結果、そのじゃまになるもの、じゃまが起きたときの「もし〜なら、〜する」という計画を書いてもらいました。米国やドイツなど個人主義的な文化の国の受講者では、修了する人が32%(1回目の実験)、15%(2回目)多くなりました。

書かれた内容を分析すると、この方法が効いたのは、じゃまになるものが、仕事や家庭の用事のように予測できて乗り越えられるものだったときでした。ネット環境のような現実的な制約や、時間がないこと自体がじゃまになっている人には効いていませんでした。個人主義的でない文化の国の受講者でも、効果は見られませんでした。

対象: 2つのオンライン講座の受講者17,963人 / 限界: のちの大規模な実験[1]では、個人主義的な国の受講者でも修了率への効果は確認されなかった。効く人・効く場面が限られる方法と考えられる。

Harkinら(2016年)[3]

目標の進み具合を確かめる方法を試した138件の実験をまとめたメタ分析です。進み具合を確かめる回数を増やす工夫は、目標の達成を後押ししていました(効果の大きさは小〜中くらい)。進み具合を記録に残したときや、人に伝えたり公開したりしたときに、効果は大きくなっていました。

対象: 138件の実験、合計19,951人 / 限界: さまざまな種類の目標の研究をまとめたもので、学び直しだけで確かめたものではない。

03 まだわかっていないこと一度やめた学び直しは、また続けられる?

一度やめた人が再開したときに何が効くかを、直接調べた研究は見当たりません。また、仕事のために学び直す働く大人に絞った大きな実験も少なく、研究の多くは無料のオンライン講座の受講者を対象にしています。

  • オンライン講座の受講者には、最後まで受けるつもりがない人も多く含まれる。仕事のために学び直す人では、続きやすさが違う可能性がある。
  • 計画の工夫は受講の初めに1回だけ行われた。計画を毎週立て直した場合に効果が続くかは、調べられていない。
  • 日本の働く人で、学び直しを続ける工夫を確かめた大きな実験は見当たらない。文化によって効く方法が違うことも報告されている。

04 今日からできるセルフケア止まった学び直しを、どう立て直す?

計画を1回で終わらせず、短い間隔で立て直すことです。進み具合を記録して誰かに伝え、時間がないことが原因なら、講座を減らして目標を小さくします。止まったこと自体を責める必要はありません。

「もし〜なら、〜する」の計画の立て方は、習慣を続ける計画の記事にくわしくまとめています。年齢が気になって手が止まっている人は、40代・50代からAIを学ぶ記事もあわせて読めます。

1

止まった場所と、次の1回分だけを書く

講座全体を最初からやり直そうとせず、「第3章の途中で止まった」「次は動画1本だけ」と書きます。進み具合を記録に残すと、目標に近づきやすいことが研究のまとめで示されていました。

目安 5分

2

計画は毎週、立て直す

最初に書いた計画の効果は1〜2週間で薄れていました。週に1回、「今週はいつ・何をするか」を決め直し、できなかった分は責めずに次の週へ回します。

目安 週1回10分

3

進み具合を伝える相手を1人決める

同僚や友人に「毎週金曜にどこまで進んだか伝える」と頼みます。進み具合を人に伝えると効果が大きく、確かめてもらう人を決めた工夫では受講の増加が長めに続いていました。

目安 週1回、ひとこと

4

じゃまを1つ書き、「もし〜なら」の対策を決める

「残業の日は」「子どもが寝たら」のように、予測できるじゃまと対策を1文にします。時間がまったく取れないことが原因なら、講座を1つに絞るなど、目標そのものを小さくします。

目安 1回8分ほど

05よくある質問

学び直しが続かないのは、意志が弱いから?

そうとは言えません。名門大学のオンライン講座では、最後まで受けるつもりの人でも修了するのは約2割だったと報告されています。続かないのは珍しいことではなく、続け方の工夫で変えられる部分があります。

最初にしっかり計画を立てれば続く?

最初に1回だけ計画を書く工夫は、26万人規模の実験では効果が1〜2週間で薄れ、修了する人は増えませんでした。計画は1回で終わらせず、進み具合を見ながら立て直すほうが研究に合っています。

一度やめた講座に戻るのは、意味がある?

戻ること自体の効果を調べた研究は見当たりません。ただ、進み具合をこまめに記録する方法は、138件の研究のまとめで目標の達成を後押ししていました。前回止まったところを記録して、そこから再開できます。

忙しくて時間がまったく取れないときは?

8分ほどで書く計画の練習は、仕事や家庭の用事のように予測して乗り越えられる障害には効いていましたが、「時間がない」こと自体が障害の人には効いていませんでした。講座の量を減らすなど、目標の大きさを見直すことが先になります。

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出典

  1. Kizilcec RF, Reich J, Yeomans M, Dann C, Brunskill E, Lopez G, Turkay S, Williams JJ, Tingley D (2020). Scaling up behavioral science interventions in online education. Proceedings of the National Academy of Sciences. https://doi.org/10.1073/pnas.1921417117
  2. Kizilcec RF, Cohen GL (2017). Eight-minute self-regulation intervention raises educational attainment at scale. Proceedings of the National Academy of Sciences. https://doi.org/10.1073/pnas.1611898114
  3. Harkin B, Webb TL, Chang BP, Prestwich A, Conner M, Kellar I, Benn Y, Sheeran P (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin. https://doi.org/10.1037/bul0000025