考える力・集中

スマホに頼って物忘れが増えた気がする。記録に任せると覚えにくくなる条件と、「覚えるつもり」の力

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本を整理出典照合済み(2026-10-03)
ノートに書き込みながら机で作業する人の手元
Photo: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

予定も電話番号も、調べたことも全部スマホの中。いざ思い出そうとすると出てこなくて、「頭が衰えたのでは」と不安になる。そんな声はよく聞かれます。研究では、道具に任せた情報は覚えにくくなる場面がある一方で、それが記憶力そのものの低下を意味するとは言えない、という結果が出ています。

3行でわかる

  1. ドイツの大学生の実験では、画面に頼って作業した人ほど、あとで内容を思い出しにくくなりました。
  2. ただし、道具に最大限頼るよう指示された人でも、「あとでテストがある」と知っていれば、記憶への影響をほぼ打ち消せました。
  3. 英国の3万6千人の調査では、ネットを毎日使う人ほど言葉を覚える検査の成績が良い関連がありました。ネットの使用が記憶を弱めるという結論は出ていません。

01結論から言うと

スマホに任せた情報は、頭に残りにくくなることがあります。ただしこれは覚えるつもりがないときに起きやすく、記憶力が落ちたとは限りません。大事なことは「覚えるつもり」で見ると、差は小さくなります。

メモや画面など、頭の外に情報を置いておくことを、心理学では「認知のオフロード(頭の荷下ろし)」と呼びます。

荷下ろしをすると、その場の作業は速く正確になります。そのかわり、置いた情報は頭に残りにくくなります。

大事なのは、これが「覚える必要がない」と判断したときに起きやすいことです。覚えておこうという目的があると、道具に頼っても記憶は残りやすいことが、実験で示されています。

02研究とデータでわかっていること

道具に任せると、その内容は覚えにくくなることが実験で示されています。一方で、覚えるつもりがあれば影響は小さく、ネットをよく使う人ほど記憶の成績が良いという関連も報告されています。

172人×3画面に頼るほど、あとで思い出しにくくなったドイツの大学生の実験(2021年)
36,542人ネットを毎日使う人ほど、言葉を覚える検査の成績が良い関連があった英国の調査(2011〜2012年のデータ)
22本ネット検索と記憶の研究をまとめた分析。頭の負担などには影響が見られた一方、はっきりした結論が出ない項目もあった(2024年)

Grinschglら(2021年)[1]

タブレットで、見本の図柄を別の枠に写す作業をしてもらいました。見本を見るのに2秒待たされる条件では、人は見本に頼る回数を減らしました。作業は遅くなりましたが、予告なしの記憶テストでは図柄の配置をよく覚えていました。

対象: ドイツの大学の学生172人(18〜47歳) / 限界: 図柄の配置を覚える実験室の課題で、スマホの使い方そのものを調べたものではありません。

Grinschglら(2021年)[1]

続く実験で、「あとで記憶テストがある」と前もって知らせました。知らされた人は、自分から見本に頼る回数を減らしました。さらに、最大限に見本に頼るよう指示された人でも、テストを知っていれば、記憶への悪い影響をほぼ打ち消せていました。

対象: 実験ごとに新しい学生172人 / 限界: 研究者は、覚えるという目的がないときに、頼ることが記憶に不利に働くと結論づけています。テストの予告で頼る回数が減る結果は、別の実験では再現されませんでした。

KangとMalvaso(2024年)[2]

英国の大規模な世帯調査のデータで、ネットを使う頻度と、読み上げられた10語を思い出す検査の成績を比べました。年齢などを考慮しても、ネットを毎日使う人は、それより使う頻度が低い人より、すぐ後と時間をおいた後の両方で多くの言葉を思い出していました。

対象: 英国の36,542人(平均46.6歳、2011〜2012年のデータ) / 限界: 一時点の調査で、ネットが記憶を良くするのか、記憶の良い人がネットをよく使うのかは区別できません。毎日使う人と週に数回使う人の差は小さいものでした。

Gongら(2024年)[3]

ネット検索と記憶の関係を調べた22本の論文(35の比較、合計30,889人、12〜89歳)をまとめました。頭の負担(認知負荷)や、自分の記憶や知的な力への自信などには影響が見られました。一方、「認知の測定」に分類された研究群では、はっきりした結論が出ませんでした。

対象: 2011〜2021年に発表された研究 / 限界: 研究によって測っているものがばらばらで、地域によって結果に違いがありました。

03まだわかっていないこと

スマホを長く使うと記憶力そのものが落ちるかは、わかっていません。長い期間追いかけた研究は少なく、生成AIに頼る習慣と記憶の関係もこれからの研究課題です。

  • スマホに頼る習慣が、何年もかけて記憶力を変えるかどうかを追いかけた研究は、ほとんど見つかりませんでした。
  • 実験の多くは大学生が対象で、図柄や単語など実験用の材料を使っています。
  • 英国の調査は2011〜2012年のデータで、スマホが今ほど広まる前のものです。
  • 調べものをAIに任せる場合に、同じことが起きるかはまだ確かめられていません。

04今日からできるセルフケア

スマホに任せるのは悪いことではありません。覚えておきたいことだけ「覚えるつもり」で見る、記録する前に一度思い出してみる。この区別をするだけで、記録と記憶を両立しやすくなります。

1

「任せる情報」と「覚えたい情報」を分ける

電話番号やパスワードは任せてよい情報です。仕事の段取りや人の名前など、自分で使いたい情報だけを「覚えるつもり」で見ます。実験では、覚える目的があると記憶への影響が小さくなりました。

目安 1日1回・1分

2

メモを見る前に、一度思い出してみる

予定や買い物リストを確かめる前に、何が書いてあったかを10秒だけ思い出します。そのあとで答え合わせをします。

目安 1回10秒

3

調べたことを一言で言い直す

ネットで調べたら、画面を閉じて「つまり何だったか」を一言でつぶやくか書きます。自分の言葉にする手間が、頭に残るきっかけになります。

目安 1回30秒

4

メモは「見る回数」を決める

1つの作業の中で何度もメモを見返す代わりに、最初にしっかり見てから取りかかります。実験でも、見本を見る回数が少ない人ほど内容を覚えていました。

目安 作業の最初に1回

05よくある質問

スマホのせいで記憶力が落ちた?

研究では、スマホに任せた情報は頭に残りにくいことがある一方、記憶力そのものが落ちるという結論は出ていません。ネットをよく使う人ほど記憶の検査の成績が良い、という関連も報告されています。

メモをとると覚えられなくなる?

メモに任せた内容は覚えにくくなることがあります。ただ実験では、あとでテストがあると知っていると、その影響が小さくなる場合がありました。忘れても困らない情報はメモに任せて大丈夫です。

「スマホ認知症」は病気?

この記事で紹介した研究では、その言葉は使われていません。物忘れが急に増えた、日常生活に支障が出ているといったときは、医療機関に相談できます。

人の名前がすぐ出てこないのもスマホのせい?

名前が出てこないのは、スマホを使わない人にもよくあることです。この記事で紹介した研究は、名前の思い出しにくさとスマホの関係は調べていません。

出典

  1. Grinschgl S, Papenmeier F, Meyerhoff HS (2021). Consequences of cognitive offloading: Boosting performance but diminishing memory. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 74(9), 1477-1496. https://doi.org/10.1177/17470218211008060
  2. Kang W, Malvaso A (2024). Frequent internet use is associated with better episodic memory performance. Scientific Reports, 14, 24914. https://doi.org/10.1038/s41598-024-75788-1
  3. Gong C, Yang Y (2024). Google effects on memory: a meta-analytical review of the media effects of intensive Internet search behavior. Frontiers in Public Health, 12, 1332030. https://doi.org/10.3389/fpubh.2024.1332030