落ちた集中力を、瞑想で取り戻したい。マインドフルネスの効果は、56件の研究のまとめで「小さいが、ある」程度だった

AIの要約や通知に頼る日々が続いて、一つのことに集中できる時間が短くなった気がする。そこで「瞑想で集中力を取り戻したい」と考える人は少なくありません。結論から言うと、マインドフルネスの講座は考える力を少し高めていましたが、効果は小さく、注意そのものへの効果ははっきりしませんでした。期待しすぎず、ほかの方法と組み合わせるのが研究に沿った使い方です。
3行でわかる
- マインドフルネスの講座を調べた56件の研究のまとめでは、考える力全体への効果は小さかった(効果量0.15)。
- 効果が見られたのは、頭の中に情報を置いて作業する「作業記憶」などで、注意そのものでは差がはっきりしなかった。
- 何もしない群には勝っていたが、ほかの活動をした群との差は見られなかった。瞑想だけに頼る理由は、今のところない。
01 結論から言うと瞑想で集中力は取り戻せる?
少しは期待できますが、大きな変化ではありません。研究のまとめで見られた効果は小さく、注意そのものへの効果ははっきりしませんでした。
マインドフルネスは、今この瞬間に注意を向ける練習です。呼吸などに注意を向け、気がそれたら気づいて戻すことをくり返すため、「集中力の筋トレ」のように紹介されることがあります。
ただ、研究で客観的なテストを使って確かめると、話はもう少し控えめでした。ゲームで集中力を鍛える方法の研究は脳トレで集中力を取り戻したいときの記事に、体を動かす方法の研究は運動で集中力を取り戻す記事にまとめています。
02 研究とデータでわかっていること瞑想で考える力はどのくらい変わる?
56件の研究のまとめでは、考える力全体への効果は小さく、作業記憶では少し大きめでした。初心者が1日13分を8週間続けた実験では、注意と記憶の成績が上がっていました。
Whitfieldら(2022)[1]
対面のグループで行うマインドフルネスの講座と、客観的なテストで測った考える力を調べた56件のランダム化比較試験(2,931人)のまとめです。45件(2,238人)を統合すると、効果は小さいものでした(効果量0.15)。分野別では、計画や切り替えなどの「実行機能」(0.15)と、その一部の作業記憶(0.23)でだけ効果が見られ、注意や記憶の分野では差がはっきりしませんでした。
対象: 18歳以上の大人。病気のない人の研究と、病気のある人の研究の両方を含む / 限界: 何もしない群との比較では効果があった(0.20)が、ほかの活動をした群との比較では差がはっきりしなかった(0.07)。偏りの少ない研究は一部だけだった。講座の多くは6〜12週間だった。
Bassoら(2019)[2]
瞑想の経験がない18〜45歳の人を、1日13分のガイド付き瞑想をするグループと、1日13分ポッドキャストを聴くグループに分けました。8週間後、瞑想のグループでは、注意、作業記憶、見たものを覚えている力のテストの成績が上がり、否定的な気分も減っていました。4週間の時点では、こうした差は見られませんでした。
対象: 瞑想の経験がない18〜45歳の大人 / 限界: 1件の実験の結果。内容は論文の要旨で確認した範囲。
Mrazekら(2013)[3]
2週間のマインドフルネスの講座を受けた人は、作業記憶のテストと、米国の大学院入試(GRE)の読解問題の成績が上がり、取り組み中に関係のない考えが浮かぶことが減っていました。もともと気が散りやすかった人では、成績の伸びは、気が散ることが減ったことで説明されていました。
対象: 2週間の講座と比較のグループにランダムに分けられた参加者 / 限界: 1件の実験で、人数や属性は要旨に書かれていない。内容は論文の要旨で確認した範囲。
3つの研究を並べると、瞑想は考える力を少し支えるが、集中力が大きく戻るほどの効果は確かめられていないと言えます。ストレスへの効果はマインドフルネスとストレスの記事で整理しています。
03 まだわかっていないことアプリや独学の瞑想でも効く?
まだわかっていません。56件のまとめは対面のグループ講座だけを対象にしていて、一人で続ける瞑想や、AI時代の集中の悩みに絞った研究は見当たりません。
- 注意そのもの(気を散らさずにいる力)が瞑想で高まるか。56件のまとめでは差がはっきりしなかった。
- 瞑想ならではの効果か。ほかの活動をした群との差は見られず、人と集まる・期待するといった共通の要素が効いている可能性を、著者らも指摘している。
- 一人で音声を聞きながら続ける瞑想に、どこまで同じ効果があるか。
- 講座が終わったあとも効果が続くか。著者らは、終了後の追跡を含めた研究が今後必要だとしている。
04 今日からできるセルフケア瞑想を試すなら、どう始めればいい?
1日10〜15分を、8週間を目安に続けます。結果は小さいと考えて、散歩や運動などほかの方法と組み合わせます。
呼吸に注意を向け、それたら戻す
座って呼吸の感覚に注意を向けます。考えごとに気づいたら、責めずに呼吸へ戻します。この「気づいて戻す」がマインドフルネスの基本の練習です。
目安 1日10〜15分
効果を見るのは、8週間たってから
1日13分の実験では、4週間では差が出ず、8週間で差が出ました。カレンダーに始めた日と8週間後の日を書いておき、途中で判断しないようにします。
目安 8週間続けてから振り返る
瞑想だけに頼らず、体を動かす時間も持つ
瞑想はほかの活動より優れているとは言えませんでした。散歩や運動、自然の中で過ごす時間など、続けやすいものを一つ組み合わせます。
目安 1日1回、10〜30分
作業の前に1分だけ、注意を整える
集中したい作業の前に、1分ほど呼吸に注意を向けてから始めます。1分の効果を確かめた研究はありませんが、ふだんの練習を作業の場面でも使うきっかけになります。
目安 作業の前に1分
05よくある質問
瞑想をすると集中力は上がる?
上がるとしても小さい変化です。56件の研究のまとめでは、考える力全体への効果は小さく(効果量0.15)、注意そのものでは何もしない群などとの差がはっきりしませんでした。作業記憶では少し大きめの効果(0.23)が見られました。
1日何分くらい続ければいい?
決まった答えはありません。初心者が1日13分の瞑想を続けた実験では、8週間で注意と記憶の成績が上がりましたが、4週間の時点では差が見られませんでした。
瞑想は運動や脳トレよりおすすめ?
そうとは言えません。56件の研究のまとめでは、マインドフルネスは何もしない群には勝っていましたが、ほかの活動をした群との差ははっきりしませんでした。
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出典
- Whitfield T, Barnhofer T, Acabchuk R, et al. (2022). The Effect of Mindfulness-based Programs on Cognitive Function in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. Neuropsychology Review, 32(3), 677–702. https://doi.org/10.1007/s11065-021-09519-y
- Basso JC, McHale A, Ende V, Oberlin DJ, Suzuki WA (2019). Brief, daily meditation enhances attention, memory, mood, and emotional regulation in non-experienced meditators. Behavioural Brain Research, 356, 208–220. https://doi.org/10.1016/j.bbr.2018.08.023
- Mrazek MD, Franklin MS, Phillips DT, Baird B, Schooler JW (2013). Mindfulness training improves working memory capacity and GRE performance while reducing mind wandering. Psychological Science, 24(5), 776–781. https://doi.org/10.1177/0956797612459659


