考える力・集中

集中力や頭の切り替えが鈍った気がする。語学や楽器など新しいことを学ぶと戻る?1週間の語学の集中講座を受けた大人では、注意を切り替える力の成績が上がっていた

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わかっている度 ★☆☆ 低研究3本・公的指針0件を整理
オルガンの鍵盤
Photo: LanderBik / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

調べものも文章もAIに任せるようになって、頭を使う場面が減った。集中が続かず、話の切り替えにもついていけない気がする。そんなとき、語学や楽器のような新しいことを学べば取り戻せるのでしょうか。結論から言うと、新しいことを学んだあとに注意の働きがよくなった研究はあります。ただ、研究はまだ少なく小規模で、確かなことは言えない段階です。

3行でわかる

  1. 英国で1週間の語学の集中講座を受けた18〜78歳の33人では、注意を切り替える力の成績が上がった。何もしなかった人たちでは変わらなかった。
  2. 語学以外の集中講座を受けた人たちも、その中間くらい成績が上がっていて、語学だけの効果とは言い切れない。9か月後の追跡では、週5時間以上続けた人は全員、講座前より成績がよかった。
  3. 60歳以上を対象にした研究のまとめでは、語学や楽器の学習で一部の認知の働きがよくなっていたが、研究の数が少なく、結果も分かれていた。

01 結論から言うと新しいことを学ぶと、集中力は戻る?

戻る可能性はありますが、まだ結論は出ていません。語学の集中講座のあと注意を切り替える力が上がった研究がある一方、研究は小規模で、ほかの学びでも近い変化が見られました。

この記事でいう「注意を切り替える力」は、やっていることを途中で切り替えながら、正しく続ける力のことです。研究では、音を数えながら、合図の音で「足す」と「引く」を切り替える課題で測られていました。

研究者が手がかりとして挙げているのは、新しさ、ほどよい難しさ、続けることの3つです。慣れた作業をくり返すより、少し手ごわい新しいことに取り組むほうが、頭を使う課題の成績がよくなりやすいという考え方です。決まったゲームを練習する脳トレの研究は脳トレで集中力を取り戻せるかを調べた記事にまとめています。

02 研究とデータでわかっていること語学や楽器を学ぶと、頭の働きは変わる?

1週間の語学の集中講座では、注意を切り替える力の成績が上がり、週5時間以上続けた人は9か月後も講座前より成績がよいままでした。60歳以上の研究のまとめでも一部の働きがよくなっていましたが、研究の質はまだ十分ではありません。

59.7→78.5語学の集中講座を受けた33人の、注意を切り替える課題の正答率(%)の講座前と後。何もしなかった人では53.9→53.3(英国、18〜78歳、2016年発表)
週5時間9か月後の追跡で、これ以上語学を続けた8人は全員、講座前より成績がよかった(同じ研究、追跡できたのは17人)
9本60歳以上が外国語を学んだ介入研究の数。結果は分かれ、質が十分と評価された研究はなかった(2021年のまとめ)
126人60〜85歳がピアノを習った4件の実験の参加者の合計(2018年のまとめ)

Bakら(2016)[1]

スコットランドで、ゲール語の1週間の集中講座を受けた33人(授業は平均14時間ほど)と、比べる34人の注意の働きを、講座の前と後に測りました。語学の講座を受けた人は、注意を切り替える課題の正答率が平均59.7%から78.5%に上がりました。何もせずふだんどおり過ごした18人では変わりませんでした(53.9%→53.3%)。語学以外の集中講座(美術や映像制作など)を受けた16人は60.6%から73.8%で、その中間でした。年齢を18〜40歳、41〜60歳、61〜78歳に分けても、どの年代でも成績が上がっていました。

講座の約9か月後に17人を追跡すると、週5時間以上ゲール語を続けた8人は全員、講座前より成績がよくなっていました。週4時間以下の9人では、上がった人、変わらない人、下がった人がいました。注意を持続する課題と、関係ない音を無視する課題では、はっきりした変化はありませんでした。

対象: 英国の18〜78歳(語学グループの平均年齢は50歳) / 限界: 参加者は自分で講座を選んだ人たちで、ランダムに分けていない。語学の講座と語学以外の講座の差は統計的にははっきりしなかった。追跡の分析は探索的で、人数も少ない。

Wareら(2021)[2]

60歳以上の健康な人が外国語を学んだ介入研究9本を整理しました。結果は一貫していませんでしたが、注意の切り替えや、関係ない情報を抑える力、作業の記憶(ワーキングメモリ)がよくなったとする研究がありました。評価の点数が高めだった5本のうち4本で、注意の切り替え、関係ない情報を抑える力、ワーキングメモリ、脳の領域どうしのつながりのいずれかに改善が見られました。一方、知能や言葉の記憶、言葉の流ちょうさがよくなった形跡はありませんでした。

対象: 60歳以上の健康な人を対象にした研究 / 限界: 研究の数が少なく、質が十分と評価された研究は1本もなかった。著者らも、まだはっきりした結論は出せないとしている。

Román-Caballeroら(2018)[3]

楽器や歌などの音楽活動と、年をとってからの認知の働きを調べた13件の研究をまとめました。長年音楽を続けてきた高齢者を比べた9件では、注意(標準化平均差0.44、小さい効果)や処理の速さなどの成績がよい関連がありました。60〜85歳が4〜6か月ほどピアノを習った4件の実験(計126人)では、推論の力(0.44、小さい効果)などがよくなっていましたが、注意を含むほかの多くの働きでははっきりした差が出ませんでした。練習をやめたあとの追跡で、効果が保たれなかった働きもありました。

対象: 59歳以上の健康な人を対象にした研究 / 限界: 9件は比べただけの研究で、もともと頭の働きがよい人が音楽を続けていた可能性を除けない。実験は4件と少なく、研究ごとのばらつきも大きい。

3つを並べると、少し難しい新しいことを学び、それを続けることで、注意の働きがよくなる可能性があると見えてきます。ただ、語学の講座の研究では語学以外の講座でも近い変化があり、何を学ぶかより、新しいことに集中して取り組むこと自体が効いているのかもしれません。

03 まだわかっていないことAIに頼って鈍った頭にも、効く?

わかっていません。紹介した研究はAIとは関係がなく、AIに頼るようになって集中力が落ちたと感じる人を対象に、学ぶことの効果を試した研究は見当たりません。

  • 働く世代を対象に、新しいことを学ぶ効果をランダムに分けて確かめた研究は少ない。紹介したまとめの多くは60歳以上が対象。
  • 語学、楽器、ほかの習いごとのどれが、注意の働きに特に効くのかはわかっていない。
  • どのくらいの時間と期間続ければ効果が保たれるのかは、小さな追跡研究しかない。
  • テストの成績の変化が、日々の仕事や暮らしでの集中しやすさにつながるかは確かめられていない。

04 今日からできるセルフケア頭の切り替えを取り戻すために、今日できることは?

初心者として始められる少し難しいことを1つ選び、最初の数日はまとまった時間をとります。続けるなら週に数時間を目安にします。効果は確かではないので、楽しめるものを選ぶのが大切です。

1

初心者から始められる「少し難しいこと」を1つ選ぶ

まったく知らない言語、触ったことのない楽器など、慣れていないことを選びます。語学の講座の研究では、まったくの初心者のグループでも成績が上がっていて、中級のグループより上がり幅が大きい傾向がありました(統計的にははっきりしない差)。

目安 選ぶのに10分

2

最初の数日だけ、まとまった時間をとる

研究の講座は1週間で授業が平均14時間ほどでした。休みの日などに、1日1〜2時間をその学びにあて、スマホやAIを使わずに取り組んでみます。

目安 1日1〜2時間を数日

3

続けるなら、週の練習時間を決めておく

9か月後の追跡では、週5時間以上続けた8人は全員、講座前より成績がよくなっていました。1日40分ほどにあたります。「平日の夜に30分、週末に1時間」のように、いつやるかを先に決めておくと続けやすくなります。決め方は「いつ・どこで・何を」を決める計画の記事にまとめています。

目安 週5時間(1日40分ほど)

4

語学や楽器にこだわらず、新しい講座でもよい

語学以外の集中講座を受けた人たちも、成績が中間くらい上がっていました。料理、絵、写真など、興味の持てる新しいことで構いません。

目安 月に1つ、気になる学びを探す

05よくある質問

大人になってから語学を始めても、頭の働きは変わる?

変わる可能性はあります。英国の研究では、1週間の語学の集中講座のあと、18〜40歳、41〜60歳、61〜78歳のどの年代でも、注意を切り替える課題の成績が上がっていました。ただ、ランダムに分けた研究ではなく、確かな結論ではありません。

楽器を習うと集中力は上がる?

はっきりとは言えません。60〜85歳が4〜6か月ほどピアノを習った4件の実験のまとめでは、推論の力などがよくなっていましたが、注意を含む多くの働きでは差がはっきりしませんでした。長年音楽を続けた人で注意の成績がよい関連はありますが、比べただけの研究です。

脳トレアプリと、語学や楽器を学ぶのはどちらがいい?

直接比べた研究は見当たりません。決まったゲームを練習する脳トレは、練習したゲームだけが上達した大規模な実験があります。詳しくは脳トレの記事にまとめています。

AIを使うのをやめたほうがいい?

やめる必要はありません。学びの時間だけAIを使わずに取り組むなど、使い分けるのが現実的です。AIに頼ったあとの力の変化を調べた研究はAIに頼りきりで力が落ちた気がするときの記事にまとめています。物忘れや集中しにくさが急に強くなったときや、日常生活に支障があるときは、医療機関に相談できます。

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出典

  1. Bak TH, Long MR, Vega-Mendoza M, Sorace A (2016). Novelty, Challenge, and Practice: The Impact of Intensive Language Learning on Attentional Functions. PLoS ONE, 11(4), e0153485. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0153485
  2. Ware C, Dautricourt S, Gonneaud J, Chételat G (2021). Does Second Language Learning Promote Neuroplasticity in Aging? A Systematic Review of Cognitive and Neuroimaging Studies. Frontiers in Aging Neuroscience, 13, 706672. https://doi.org/10.3389/fnagi.2021.706672
  3. Román-Caballero R, Arnedo M, Triviño M, Lupiáñez J (2018). Musical practice as an enhancer of cognitive function in healthy aging — A systematic review and meta-analysis. PLoS ONE, 13(11), e0207957. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0207957