夏の暑い部屋で、頭が回らなくなるのを防ぎたい。米国の大学生44人の研究では、エアコンのない寮の学生は熱波の間、朝の計算テストの反応が約13%遅くなっていた

暑い日が続くと、画面の文字を追っても頭に入らず、AIへの指示もうまくまとまらない。そんな日に「集中力が落ちた」と自分を責める必要はありません。研究では、部屋の暑さそのものが、頭の働きの速さと関わっていました。とくに、夜の寝室の暑さが翌朝まで響く可能性があります。
3行でわかる
- 米国の大学生44人を12日間追った研究では、エアコンのない寮の学生は熱波の間、エアコンのある寮の学生と比べて、起きてすぐのテストの反応が約13%遅くなっていました。
- 暑いと眠りの中の深い睡眠が減りやすいことが、睡眠の研究のまとめで示されています。寝室の暑さが朝の頭の働きに響く道筋の一つと考えられています。
- はかどる温度には個人差があります。寝る前に寝室を涼しくする、外の気温でなく部屋の温度を測る、自分に合う温度を記録するのが予防の手がかりです。
01 結論から言うと暑い部屋で頭が働かないのは気のせい?
気のせいではない可能性があります。熱波の間の大学生の研究では、暑い寮で寝起きした学生ほど、朝のテストの反応が遅くなっていました。ただし、若い学生だけを調べた少人数の研究で、どの程度の暑さから影響が出るかはまだはっきりしません。
暑さで頭が働かないと感じるとき、私たちはつい「やる気」や「集中力」の問題だと考えがちです。けれども、体は暑さの中で体温を保つために働き続けています。研究では、部屋の温度が、考える速さや眠りの深さと関わっていました。
集中を守る工夫は、頭の中だけでなく部屋の環境にもあります。空気の入れ替えについては閉めきった部屋と集中の記事、水分については水分不足と集中の記事でも整理しています。
02 研究とデータでわかっていること部屋の暑さで、頭の働きはどのくらい変わる?
エアコンのない寮の学生は熱波の間、計算テストの反応が約13%遅く、色と文字のテストで1分あたりに正しく答えた数が約10%少なくなっていました。色と文字のテストは、部屋が約22〜23℃のときに最もよい成績でした。
Cedeño Laurent ほか / ハーバード大学(2018年)[1]
米国ボストン近郊で、エアコンのある寮(24人)とない寮(20人)に住む大学生に、12日間、毎朝起きてすぐ自分の部屋でスマホのテストを受けてもらいました。途中で5日間の熱波が来ました。熱波の間、エアコンのない寮の学生は、エアコンのある寮の学生と比べて、計算テストの反応が13.3%、色と文字のテストの反応が13.4%遅くなりました。色と文字のテストで1分あたりに正しく答えた数も9.9%少なくなりました。計算テストの正答数の差(6.3%少ない)は、はっきりした差とまでは言えませんでした。
対象: 米国の大学生44人(平均20.2歳)、2016年7月の観察研究 / 限界: 若い学生だけの少人数の研究で、テストは起きた直後だけです。日中も同じ影響が続くかはわからないと、著者ら自身が書いています。
この研究では、熱波が終わって外が涼しくなってからのほうが、2つの寮の差が大きくなっていました。厚い壁の古い建物に熱がこもり、部屋の中の暑さが熱波の期間より長く続いたためと考えられています。また、この論文が紹介している先行研究では、24時間眠らなかったときに計算テストの成績が15.8%下がっていました。熱波の最終日の差(13.9%)は、それに近い大きさだったと著者らは述べています。
Okamoto-Mizuno・Mizuno / 東北福祉大学(2012年)[2]
部屋の暑さ・寒さと睡眠の研究をまとめた総説です。ふとんやパジャマを使うふだんの寝方では、暑さによって夜中に目が覚めている時間が増え、深い眠りとレム睡眠(夢を見ることが多い眠り)が減っていました。湿度が高いと、体にかかる暑さの負担はさらに大きくなっていました。
対象: 睡眠と室温を調べた実験や調査のまとめ / 限界: 個々の研究の人数や条件はまちまちで、頭の働きへの影響を直接調べたものではありません。
Chang・Kajackaite / 南カリフォルニア大学・ベルリン社会科学研究センター(2019年)[3]
ドイツ・ベルリンの大学生543人に、16〜33℃の範囲で温度を変えた部屋で、計算・言葉づくり・ひっかけ問題の課題を受けてもらいました。全員をまとめると、温度と成績にはっきりした関係はありませんでした。男女別に見ると、室温が1℃上がるごとに女性の計算の正答数は1.76%、言葉の課題は1.03%増え、男性はそれぞれ0.63%・0.6%減る傾向でした(男性の減り方ははっきりした差ではありませんでした)。
対象: ベルリンの大学生543人(分析は542人、平均24歳)、2017年の実験 / 限界: 1回1時間ほどの短い実験で、学生だけが対象です。性別以外の個人差は調べていません。
03 まだわかっていないこと暑さと頭の働きで、わかっていないことは?
何℃から影響が出るのか、日中の作業にもどのくらい続くのかは、まだ結論が出ていません。研究の多くは若い学生が対象で、在宅で働く大人や年代の違う人では十分に調べられていません。
- 米国の研究は44人と少なく、テストは起きた直後だけでした。日中の仕事や勉強にどのくらい影響するかはわかっていません。
- 寝不足が暑さと頭の働きの間にあるかを調べた分析は、人数が少なく、結論は出ていません。
- はかどる温度は、性別や服装、暑さへの慣れで変わる可能性がありますが、研究はまだ少ない段階です。
- 生成AIを使った作業そのものと暑さの関係を調べた研究は、見つかりませんでした。
04 今日からできるセルフケア暑さで頭が回らなくなるのを、どう防ぐ?
寝る前に寝室を涼しくしておくこと、外の気温ではなく部屋の温度を測ること、自分がはかどる温度を記録して知ることの3つが、研究から考えられる予防の手がかりです。
寝る前に、寝室を涼しくしておく
暑い寝室では深い眠りが減りやすく、朝の頭の働きにも差が出ていました。寝る前に窓を開ける、冷房を使うなどで、寝室の熱を逃がしておきます。湿度が高い日は除湿も手がかりです。
目安 毎晩、寝る前に1回
外の気温ではなく、部屋の温度を測る
外が涼しくなっても、建物の中には熱がこもり続けることがあります。手持ちの温度計や家電の表示で、作業する部屋と寝室の温度を確かめます。
目安 1日2回(朝と夜)、10秒
自分がはかどる温度を記録する
はかどる温度は人によって違う可能性があります。作業がはかどった日とそうでない日の室温をメモし、服装や座る場所、冷房の設定を自分に合わせて調整します。家族や同僚と感じ方が違うのは自然なことです。
目安 1週間、1日1行のメモ
寝る時間と起きる時間をそろえることも、昼間の頭の働きと関わっていました(睡眠のリズムと集中の記事)。暑さで体調そのものが悪いときは、集中よりも体を休めることを優先してください。
05よくある質問
集中しやすい室温は何度?
決まった1つの数字はまだありません。米国の大学生の研究では、色と文字のテストは部屋が約22〜23℃のときに最も成績がよく、それより暑くても寒くても下がっていました。ただし起きた直後のテストの結果で、感じ方には個人差があります。
男性と女性で、はかどる温度は違う?
ドイツの大学生543人の実験では、部屋が暖かいほど女性は計算と言葉の課題の正答が増え、男性はわずかに減る傾向でした(男性の変化ははっきりした差ではありませんでした)。全員をまとめると、温度と成績に関係は見られませんでした。
外が涼しくなれば、頭の働きもすぐ戻る?
すぐに戻るとは限りません。米国の研究では、熱波が終わったあとも古い建物の中に熱がこもり、テストの差がいちばん大きかったのは外の気温が下がり始めてからでした。外の気温ではなく、部屋の中の温度を見ることが手がかりになります。
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出典
- Cedeño Laurent, J. G., Williams, A., Oulhote, Y., Zanobetti, A., Allen, J. G., & Spengler, J. D. (2018). Reduced cognitive function during a heat wave among residents of non-air-conditioned buildings: An observational study of young adults in the summer of 2016. PLOS Medicine, 15(7), e1002605. https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1002605
- Okamoto-Mizuno, K., & Mizuno, K. (2012). Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm. Journal of Physiological Anthropology, 31, 14. https://doi.org/10.1186/1880-6805-31-14
- Chang, T. Y., & Kajackaite, A. (2019). Battle for the thermostat: Gender and the effect of temperature on cognitive performance. PLOS ONE, 14(5), e0216362. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0216362


