寝る時間と起きる時間が毎日バラバラで、昼間に頭が働かない。米国の大学生61人の研究では、不規則な人ほど体内時計が2時間半ほど遅れ、成績も低い傾向があった

平日は遅くまで作業やスマホ、休日は昼まで寝る。そんな毎日で、昼間に頭がぼんやりして集中できない。睡眠時間は足りているはずなのに、と感じる人もいるかもしれません。米国の研究では、睡眠時間とは別に、寝る時刻と起きる時刻の毎日のずれが大きい人ほど、体内時計が遅れ、成績が低い傾向がありました。
3行でわかる
- 米国の大学生61人を30日間調べた研究では、毎日の寝起きのずれが大きい人ほど成績が低い関連があった。ずれの大きさは、睡眠時間の長さとは関連がなかった。
- 最も不規則な12人は、最も規則的な12人より、眠りを促すホルモンが出始める時刻が平均で2時間半ほど遅かった。昼間に浴びる光も少なかった。
- 米国の研修医2,115人の研究では、睡眠時間や起きる時刻のばらつきが大きい人ほど、気分の落ち込みの症状が強い関連があった。ただし関連の大きさは小さかった。
01 結論から言うと寝る時刻がバラバラだと、集中力は落ちる?
落ちる可能性があります。米国の大学生の研究では、毎日の寝起きのずれが大きい人ほど成績が低い関連がありました。睡眠時間が同じくらいでも、時刻のずれは別の要素として関わっていました。ただし因果関係はまだ確かめられていません。
睡眠は「何時間寝たか」で語られがちです。けれど研究者は、もう一つの軸として「毎日同じ時刻に寝て起きているか」にも注目しています。
体には、およそ1日の周期で眠気や目覚めを調整する体内時計があります。寝起きの時刻が日によって大きくずれると、この時計が遅れる方向にずれやすいと考えられています。昼間に頭が働かない感じは、時差ぼけに近い状態が関わっているのかもしれません。
02 研究とデータでわかっていること寝起きのずれは、頭の働きや気分とどう関わる?
3つの研究で、毎日のずれが大きい人ほど、成績が低い、体内時計が遅い、気分の落ち込みが強い、という関連がありました。どれも観察した研究で、ずれをなくせば改善すると確かめたものではありません。
Phillips ら(ブリガム・アンド・ウィメンズ病院、ハーバード大学医学部ほか、2017)[1]
米国の大学生61人が30日間、睡眠日誌をつけました。毎日の寝起きのそろい方を0〜100で表す指標をつくると、そろっている人ほど成績(GPA)が高い関連がありました。この指標が10上がるごとに、GPAは平均0.10高くなっていました。そろい方と、1日の平均睡眠時間には関連がありませんでした。最も不規則な12人は、最も規則的な12人より、眠りを促すホルモン(メラトニン)が出始める時刻が遅く、昼間に浴びる光も少なくなっていました。研究者は、この遅れを「西へ2〜3つ時差のある地域へ移動したのと同じくらい」と表現しています。
対象: ハーバード大学の学部生61人(18〜24歳) / 限界: 少人数の相関の研究です。研究者も、因果関係は判断できないと書いています。キャンパスに住み、昼寝で補える学生という特殊な条件でした。
Okano ら(マサチューセッツ工科大学、2019)[2]
化学の授業をとる大学生88人が、1学期のあいだ活動量計をつけて過ごしました。睡眠の質がよく、時間が長く、ずれが小さい人ほど、成績がよい関連がありました。睡眠の長さ・質・ずれの3つで、成績のばらつきの約24%(24.44%)を説明できました。一方、テスト前日の1晩の睡眠と、そのテストの点数には関連がありませんでした。ずれと成績の関連は男性で見られ、女性でははっきりしませんでした。
対象: 米国の大学の化学の授業の受講生(100人が参加し88人が完了) / 限界: 相関の研究です。睡眠は市販の活動量計で測った推定値でした。
Fang ら(ミシガン大学ほか、2021)[3]
忙しい研修1年目の医師2,115人が、腕につける機器で睡眠を記録し、スマホで毎日の気分を答えました。睡眠が短い人や寝る時刻が遅い人に加えて、睡眠時間や起きる時刻のばらつきが大きい人ほど、気分の落ち込みの症状が強い関連がありました。同じ人の中でも、前の晩との睡眠時間や起きる時刻のずれが小さい日ほど、翌日の気分がよい関連がありました。ばらつきと平均の睡眠時間の関連の大きさは同じくらいでしたが、どちらも小さなものでした。
対象: 米国の研修医2,115人(平均27.5歳、女性56%) / 限界: 観察した研究で、研究者もカフェインや運動の時刻など別の要因の可能性を挙げ、因果は判断できないとしています。
寝不足と気分の関係は「寝不足の翌日、イライラして落ち込みやすい」、寝る前の画面との付き合い方は「寝る前のスマホで眠れない」でも整理しています。
03 まだわかっていないこと寝起きをそろえれば、集中力は戻るの?
まだはっきりしていません。紹介した研究はどれも観察した研究で、寝起きの時刻をそろえる実験で集中力が上がるかは確かめられていません。日本の働く大人を対象にした研究も見当たりませんでした。
- 寝起きのずれは、生活全体の不規則さの目印にすぎない可能性があります。ハーバード大学の研究者も、ずれが他の生活のリズムの代わりになっているかもしれないと書いています。
- 対象は大学生と研修医です。会社員や子育て中の人など、ほかの暮らし方の人で同じ関連があるかは、わかっていません。
- 「何時間までのずれなら大丈夫」という目安は、これらの研究からは出せません。
04 今日からできるセルフケア寝起きのずれを小さくするには、何から始める?
まず起きる時刻をそろえ、朝のうちに外の光を浴びることから始めます。研究で効果が確かめられた方法ではありませんが、ずれや光と体内時計の関連から考えられる、お金のかからない工夫です。
寝る時刻より先に、起きる時刻をそろえる
寝つく時刻は思いどおりになりにくいので、起きる時刻を先に決めます。休日も、いつもの時刻から大きくずらさないようにしてみます。
目安 毎朝・まず1週間
朝のうちに、外の光を浴びる
ハーバード大学の研究では、不規則な人ほど昼間に浴びる光が少なく、研究者は光を使った工夫が役立つ可能性を挙げていました。窓辺で朝食をとる、駅まで歩くなどで十分です。
目安 起きてから1時間以内に10分ほど
寝た時刻と起きた時刻を、1週間メモする
研究で使われた睡眠日誌のように、毎朝2つの時刻を書きます。平日と休日でどれくらいずれているかが目で見えると、どこから直すかを決めやすくなります。
目安 1日30秒
週末にまとめて寝て取り戻せるかは「平日の寝不足を、週末の寝だめで取り戻したい」、夜ふかしがやめられないときは「寝る時間を削ってまでスマホを見てしまう」も参考になります。
05よくある質問
睡眠時間が足りていれば、寝る時刻がバラバラでも大丈夫ですか?
大丈夫とは言い切れません。米国の大学生61人の研究では、毎日のずれの大きさと睡眠時間の長さには関連がなく、成績と関連していたのはずれの大きさのほうでした。研修医2,115人の研究でも、睡眠のばらつきと平均の睡眠時間は、気分の落ち込みと同じくらいの大きさで関連していました。
休日の寝だめで、平日の寝不足を取り戻すのはよくないですか?
寝だめそのものの良し悪しを、この記事の研究は確かめていません。ただ、米国の大学生の研究では、平日に寝不足になり休日に長く寝るような毎日のずれは、成績の低さと関連する要素の一つとして扱われていました。寝だめについては別の記事で、1晩10時間ベッドにいられた実験を紹介しています。
夜勤やシフト勤務で、寝る時刻をそろえられません。
紹介した研究は、シフト勤務の人向けの対策を確かめたものではありません。できる範囲で、起きる時刻や光を浴びる時刻をそろえる工夫が考えられますが、強い眠気や不調が続くときは、職場の産業医や医療機関に相談できます。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Phillips AJK, Clerx WM, O'Brien CS, Sano A, Barger LK, Picard RW, Lockley SW, Klerman EB, Czeisler CA (2017). Irregular sleep/wake patterns are associated with poorer academic performance and delayed circadian and sleep/wake timing. Scientific Reports, 7, 3216. https://doi.org/10.1038/s41598-017-03171-4
- Okano K, Kaczmarzyk JR, Dave N, Gabrieli JDE, Grossman JC (2019). Sleep quality, duration, and consistency are associated with better academic performance in college students. npj Science of Learning, 4, 16. https://doi.org/10.1038/s41539-019-0055-z
- Fang Y, Forger DB, Frank E, Sen S, Goldstein C (2021). Day-to-day variability in sleep parameters and depression risk: a prospective cohort study of training physicians. npj Digital Medicine, 4, 28. https://doi.org/10.1038/s41746-021-00400-z


