画面と情報に追われて、気持ちが張りつめたまま。笑える動画で笑うと楽になる?8件の研究のまとめでは、笑ったあとのストレスホルモンの下がり方が約32%分大きかった

チャットとAIへの指示、次々に流れてくる情報。一日中画面に向かっていると、夕方には気持ちが張りつめたまま、笑うことも忘れていることがあります。そんなとき、笑える動画を見るのは気休めでしょうか。8件・315人の研究のまとめでは、笑う時間のあとにストレスホルモンの下がり方が、比べた組より約32%分大きくなっていました。効果は「その場」の話で、続けたときのことはまだわかっていません。
3行でわかる
- 笑える動画を見る、笑いのセッションに出るなどの研究8件(315人)をまとめると、笑ったあとのストレスホルモンの下がり方が、比べた組より平均で約32%分大きかった。
- 1回だけの研究(9〜60分)でも約37%分大きく、笑う時間の長さとは関係が見られなかった。スイスの大学生の記録では、よく笑う人ほど、いやなことのあとのストレスが残りにくかった。
- ただし研究は小さく、質は「中くらい〜低い」。測ったのは主にホルモンで、続けたときの効果や、画面疲れの人での結果はまだわからない。
01 結論から言うと疲れて張りつめた気持ちは、笑うと楽になる?
笑える時間を少し取ることは、その場のストレスをゆるめる手として試す価値があります。研究のまとめでは、笑ったあとのストレスホルモンの下がり方が、比べた組より約32%分大きくなっていました。
ストレスホルモンとは、緊張したときに体から多く出る「コルチゾール」のことです。研究では、だ液や血液の中の量を、笑う前と後で比べていました。
比べた相手は、何もしない、静かに座る、本を読む、淡々とした映像を見る、などです。笑いに特別な道具はいりません。ただ、研究は小さなものが多く、「笑えば疲れがとれる」とまでは言えません。
02 研究とデータでわかっていること笑うとストレスホルモンはどのくらい下がる?
8件・315人のまとめでは、笑う時間のあと、ストレスホルモンの下がり方が比べた組より平均で約32%分大きくなっていました。1回だけの研究に絞っても約37%分大きく、くじ引きで組を分けた研究4件でも同じ向きでした。
Kramer・Leitao(2023年)[1]
自然に笑う時間を作った人と、作らなかった人を比べた研究8件をまとめた。5件は笑える動画を見る方法、2件は講師が進める笑いのセッション、1件は自分で行う笑いのプログラムだった。笑う時間のあと、ストレスホルモンの下がり方は、比べた組より平均で31.9%分大きかった。
1回だけの研究(9〜60分)では36.7%分、くじ引きで組を分けた研究4件だけでは37.2%分大きかった。動画でも講師のセッションでも下がる向きで、笑う時間の長さと下がり方には関係が見られなかった。
対象: 8件・315人(平均38.6歳。健康な人のほか、糖尿病や肥満のある人、透析を受けている人を含む) / 限界: 研究ごとの結果のばらつきが大きく、研究の質は「中くらい〜低い」と評価された。1件ごとの人数は10〜80人と少ない。8件中4件では、比べた組との差がはっきりしなかった。
Zander-Schellenbergら(2020年)[2]
スイスの大学生が2週間、1日8回、スマホの質問に答え、前回からの「笑った回数と強さ」「いやな出来事」「ストレスの症状」を記録した。いやな出来事のあとにはストレスの症状が出やすかったが、よく笑っていた人ほど、そのつながりが弱かった。笑いの強さ(大笑いかどうか)では、この差は見られなかった。
対象: バーゼル大学の心理学の学生41人(33人が女性、平均21.6歳) / 限界: 笑わせる実験ではなく、日常の記録から関係を見た研究。笑いが原因でストレスが残りにくくなったとは言い切れない。答えはすべて本人の申告。
Dunbarら(2012年)[3]
英国の研究チームが、笑える映像と淡々とした映像などを見せる実験室の実験5つと、劇場での実験1つを行った。笑ったあとは、痛みに耐えられる限界が上がっていた。気分がよくなる映像を見ただけでは上がらず、笑うこと自体が関わっていると研究者は考えている。
一人で淡々とした映像を見た組、一人でコメディを見た組、4人でコメディを見た組を比べた実験では、はっきり差が出たのは「4人でコメディ」と「一人で淡々とした映像」の間だった。一人でコメディを見た組は、どちらとも差がはっきりしなかった。
対象: 実験ごとに16〜62人の大人、劇場の実験は演者と裏方27人 / 限界: 体の中の物質を直接測ったのではなく、痛みへの強さを手がかりにした推測。ストレスや疲れは測っていない。
03 まだわかっていないこと毎日笑えば、疲れにくくなる?
まだわかっていません。研究の多くは、笑う前と後を1回比べたもので、続けたときの効果は限られています。画面やAIを使う仕事で疲れた人を対象にした研究も、見当たりませんでした。
- まとめに入った研究はどれも小さく、笑っている本人には「笑う組」だとわかってしまう。期待の影響を切り分けられていない。
- 測ったのは主にストレスホルモン。疲れや気持ちのつらさが本人の感じ方としてどれだけ軽くなるかは、このまとめでは調べられていない。
- 何週間か続けた研究3件の結果は分かれていた。続けるほど効くかどうかは、まだはっきりしない。
- まとめに入った研究には一人で見たものも何人かで見たものもあり、笑う前後の人とのやりとりの程度は書かれていなかった。研究者は、これが結果に影響した可能性を限界に挙げている。
04 今日からできるセルフケア疲れたとき、笑う時間をどう取ればいい?
終わりの時刻を決めて、自分が本当に笑えるものを10〜20分見ます。人と一緒に笑える場面があれば、それも大事にします。前後の張りつめ具合を数字でつけて、自分に合うか確かめます。
終わりの時刻を決めて、笑えるものを1本見る
研究で使われたのは、1回9〜60分の笑える動画などでした。短い動画を次々に流すと止めにくいので、見る前に終わりの時刻を決め、1本を選んで見ます。
目安 10〜20分、疲れを感じた日に1回
人と笑える場面を、一つつくる
何人かで笑った実験で、はっきりした差が出ていました。家族や友だちと同じものを見る、昼休みに少し雑談するなど、小さな場面で十分です。
目安 1日1回、5分ほど
前と後で、張りつめ具合を10点でつける
見る前と後に「今どれだけ張りつめているか」を0〜10でメモします。3日ほど続けて下がらなければ、無理に笑おうとせず、別の休み方に切り替えます。
目安 1回30秒、3日試す
暗いニュースを見続けて気分が下がるときはニュースとの距離の取り方、動画を見ているうちに時間を忘れてしまうときはショート動画と時間の感覚の研究も参考になります。笑う以外の方法は音楽とストレスの研究や自然の音の研究にまとめています。
05よくある質問
笑うと本当にストレスは減るの?
8件・315人の研究のまとめでは、笑える動画や笑いのセッションのあと、ストレスホルモン(コルチゾール)の下がり方が、比べた組より平均で約32%分大きくなっていました。ただし1件ごとの研究は小さく、研究の質は「中くらい〜低い」と評価されています。気持ちのストレスそのものを測った結果ではない点にも注意が必要です。
一人で動画を見て笑っても意味がある?
まとめに入った研究には、一人で見たものも、何人かで見たものもありました。一方、英国の実験では、何人かで一緒にコメディを見た組は、一人で淡々とした映像を見た組より痛みに強くなっていましたが、一人でコメディを見た組は、どちらとも差がはっきりしませんでした。一人でもよいですが、人と一緒に笑える場面があればなおよい、と考えるのが研究に近い読み方です。
作り笑いでも効果はある?
ユーモアなしで笑う練習を何回も続ける方法は、ユーモアで笑う方法より効果が大きく、落ち込みを改善しうる、という研究のまとめがあります。ただしこのまとめは、どの研究も偏りの心配が大きく、質は低いと述べています。今回の約32%の結果は、自然に笑った場合の研究だけを集めたものです。
笑える動画を見始めると、止まらなくなりそう
研究で使われた笑いの時間は、1回9〜60分でした。笑う時間の長さと、ストレスホルモンの下がり方には関係が見られていません。終わりの時刻を先に決めて、短い動画を次々に流すより、1本を選んで見るほうが、だらだら続きにくくなります。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Kramer, C. K., & Leitao, C. B. (2023). Laughter as medicine: A systematic review and meta-analysis of interventional studies evaluating the impact of spontaneous laughter on cortisol levels. PLoS ONE, 18(5), e0286260. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0286260
- Zander-Schellenberg, T., Collins, I. M., Miché, M., Guttmann, C., Lieb, R., & Wahl, K. (2020). Does laughing have a stress-buffering effect in daily life? An intensive longitudinal study. PLoS ONE, 15(7), e0235851. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0235851
- Dunbar, R. I. M., Baron, R., Frangou, A., Pearce, E., van Leeuwen, E. J. C., Stow, J., Partridge, G., MacDonald, I., Barra, V., & van Vugt, M. (2012). Social laughter is correlated with an elevated pain threshold. Proceedings of the Royal Society B, 279(1731), 1161–1167. https://doi.org/10.1098/rspb.2011.1373
- van der Wal, C. N., & Kok, R. N. (2019). Laughter-inducing therapies: Systematic review and meta-analysis. Social Science & Medicine, 232, 473–488. https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2019.02.018


