暗いニュースばかり見てしまう、やめたい。2〜4分の閲覧で気分が下がった実験と、ニュースとの距離の取り方

AIに仕事を奪われるかもしれないという記事、物価の話、どこかで起きた災害。気づくと暗いニュースばかりを次々に読んでいて、閉じたあとも気持ちが沈んだまま。この「止まらない読み続け」は、ドゥームスクロールと呼ばれ、研究が進みはじめています。わずか数分の閲覧でも気分が下がった実験があり、見る量と時間帯を決めることが、気持ちを守る手がかりになります。
3行でわかる
- 暗いニュースをSNSで2〜4分見ただけで、何も見なかった人より前向きな気分が下がった実験があります。
- 同じSNSでも、人の親切についての投稿を見た人には、同じような気分の低下は見られませんでした。
- 暗いニュースを読み続ける傾向が強い人ほど、心の負担が大きく、睡眠の質が悪い関連がありました。
01結論から言うと
暗いニュースは、短い時間見ただけでも前向きな気分が下がった実験があります。問題はSNSそのものより、暗い内容に浸り続けることだと考えられます。見る時間と量を決め、寝る前は避けることが、気持ちを守る現実的な方法です。
危険な情報に目が向くのは、身を守るための自然な心の動きです。不安なときほど「もっと知っておかないと」と感じて、手が止まらなくなります。
ただ、SNSやニュースのサイトは、次々と新しい情報が出てくる作りです。自分で区切りを決めないと、いつまでも読み続けてしまいやすくなります。
02研究とデータでわかっていること
数分の暗いニュースで前向きな気分が下がったことが、実験で示されています。長い時間ニュースを見続けることや、読み続けてしまう傾向は、強いストレスや睡眠の質の悪さとの関連が報告されています。
Buchananら(2021年)[1]
参加者をくじで分け、新型コロナのニュース(SNSの投稿や動画)を見る人、新型コロナに関わる親切な行動の話題を見る人、何も見ない人で比べました。ニュースを2〜4分見た人は、何も見なかった人より前向きな気分がすぐに下がりました。親切の話題を見た人には、同じ気分の低下は見られませんでした。
対象: 2つの実験で299人と603人(平均年齢29歳と26歳) / 限界: 若い女性が多い集団で、効果がどのくらい続くかは調べていません。親切の話題で前向きな気分が上がるという予想は、確かめられませんでした。
Holmanら(2014年)[2]
2013年のボストンでの爆発事件のあと、ボストン・ニューヨーク・全米から選んだ人を調べました。事件後の1週間に、事件の報道を1日6時間以上見ていた人は、事件に直接さらされた人よりも強い急性のストレス反応と関連していました。
対象: アメリカの4,675人 / 限界: 1回の調査による関連で、もともと不安が強い人が報道を長く見た可能性も残ります(事件前の心の状態は考慮されています)。
Saticiら(2023年)[3]
暗いニュースを読み続けてしまう傾向を測る質問票を使って調べると、この傾向が強い人ほど心の負担が大きく、その心の負担を通じて、生活の満足度などが低い関連がありました。
対象: トルコの18〜55歳の460人(3つの調査のうちの1つ) / 限界: 1回のアンケートによる関連の研究で、原因と結果は区別できません。
CamadanとUzunoğlu(2025年)[4]
暗いニュースを読み続ける傾向が強い人ほど、睡眠の質が悪い関連がありました。その間には、スマホが手元にないと不安になる気持ちの強さが関わっていました。
対象: トルコの18〜77歳の大人663人(8割が女性) / 限界: 1回のアンケートによる関連の研究です。
03まだわかっていないこと
ニュースの見方を変えると、どのくらい気分や睡眠がよくなるのかは、まだ確かめられていません。読み続けることと心の負担のどちらが先かも、はっきりしていません。
- ここで紹介した研究の多くは、新型コロナの流行や大きな事件の時期のものです。AIなど、ふだんの不安なニュースで同じ結果になるかは、研究がまだ少ない状態です。
- 気分が落ちている人ほど暗いニュースを探してしまう、という逆向きの関係もありえます。
- 「1日何分までなら大丈夫」という目安は、研究ではまだ示されていません。
04今日からできるセルフケア
ニュースを見ない日をつくる必要はありません。見る時間をまとめる、寝る前は閉じる、暗い話のあとに別の話題も目に入れる。この3つから試すのが手軽です。
ニュースを見る時間を決める
「朝と夕方に10分ずつ」のように、見る時間をまとめます。長い時間、繰り返しニュースを見ることがストレスと関連していたためです。合間に気になったら、メモして次の時間に回します。
目安 1日2回・各10分
寝る1時間前はニュースを閉じる
読み続ける傾向は、睡眠の質の悪さと関連していました。寝る前は、ニュースのサイトやSNSを開かないと決めておきます。
目安 毎晩、寝る1時間前から
暗い話のあとに、別の話題を1つ見る
実験では、人の親切についての投稿を見た人には、気分の低下が見られませんでした。暗いニュースを読んだら、身近な良い出来事や、好きなものの話題に目を移します。
目安 1回2〜3分
「知っておくべきこと」かを自分に聞く
読む前に「これを知って、今日なにか行動が変わるか」と考えます。変わらないなら、あとで見出しだけ確認すれば十分なことが多いです。
目安 1回5秒
05よくある質問
ドゥームスクロールとは?
不安になる暗いニュースを、SNSやサイトで止められずに次々と読み続けてしまうことです。研究では、この傾向を測る質問票も作られています。
ニュースを見るのを完全にやめたほうがいい?
そこまでは研究で示されていません。問題と関連していたのは、長い時間・繰り返し見ることや、読み続けてしまう傾向でした。見る時間を決めて付き合う方法から試せます。
AIのニュースを見るたびに焦るのはおかしい?
おかしくありません。暗いニュースを数分見ただけで、前向きな気分が下がった実験があります。焦りを感じたら、見る時間を区切るサインと考えてみてください。
寝る前にニュースを見ると眠れなくなる?
読み続ける傾向が強い人ほど睡眠の質が悪い関連がありました。ただし原因と結果は区別できていません。寝る前は閉じておくのが手軽な工夫です。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
出典
- Buchanan K, Aknin LB, Lotun S, Sandstrom GM (2021). Brief exposure to social media during the COVID-19 pandemic: Doom-scrolling has negative emotional consequences, but kindness-scrolling does not. PLOS ONE. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0257728
- Holman EA, Garfin DR, Silver RC (2014). Media's role in broadcasting acute stress following the Boston Marathon bombings. PNAS. https://doi.org/10.1073/pnas.1316265110
- Satici SA, Gocet Tekin E, Deniz ME, Satici B (2023). Doomscrolling Scale: its Association with Personality Traits, Psychological Distress, Social Media Use, and Wellbeing. Applied Research in Quality of Life. https://doi.org/10.1007/s11482-022-10110-7
- Camadan F, Uzunoğlu Ö (2025). The role of FoMO and nomophobia in explaining the relationship between doomscrolling and poor sleep quality. BMC Psychology. https://doi.org/10.1186/s40359-025-03865-9