ショート動画がやめられない、集中力が落ちた気がする。71本の研究が示す関係と、離れ方の工夫

気づくと指が勝手に次の動画へ進んでいる。本を開いても、数分で続きが気になってしまう。そう感じる人は少なくありません。研究では、ショート動画をよく使う人ほど注意力が低いという関連がはっきり見られます。ただし、ショート動画が集中力を下げたのかどうかは、まだ確かめられていません。
3行でわかる
- 71本・計98,299人分の研究をまとめた分析では、ショート動画をよく使う人ほど注意力が低い、中程度の関連がありました。
- 研究の多くは一時点の調査で、「動画のせいで集中力が落ちた」のか「集中しにくい人ほどよく見る」のかは区別できていません。
- 見る時間より「開く回数」と関連したという調査もあります。アプリ単位で距離を置く工夫は、お金をかけずに試せます。
01結論から言うと
ショート動画をよく使う人ほど、注意力が低い関連があります。ただし原因かどうかはまだわかりません。やめられないのは意志の弱さだけではなく、作りの影響も考えられます。
ショート動画は、数秒から数分の短い動画が、指で上に送るだけで次々と流れてくる形式です。おすすめの仕組みが好みに合う動画を選んで出し続けます。
この「終わりがない」作りが、使いすぎにつながりやすいと考えられています。2026年に発表された研究のまとめも、利用者自身の工夫と並べて、無限に続くスクロールに「ひと手間」をはさむような、作る側の工夫を提案しています。
つまり、やめられないことを自分の弱さだけのせいにする必要はありません。一方で、集中力との関係については「よく見る人ほど注意力が低い」というところまでがわかっていることです。「見るから集中力が落ちる」とまでは、まだ言えません。
02研究とデータでわかっていること
71本の研究のまとめでは、ショート動画の利用と注意力の低さに中程度の関連がありました。先延ばしとの関連も報告されています。ただし研究の多くは、学生や若い大人を対象にした一時点の調査です。
ここでの「r」は相関係数という、2つのことがどれだけ一緒に動くかを表す数字です。0なら関係なし、1(またはマイナス1)に近いほど関係が強いことを示します。原因と結果の関係を示す数字ではありません。
Nguyenら(2025)[1]
71本の研究(参加者98,299人)をまとめると、ショート動画をよく使う人ほど、頭の働きのテストや尺度の結果が低い、中程度の関連がありました(r = −0.34)。とくに関連が強かったのは注意力(r = −0.38)と、衝動を抑える力(r = −0.41)でした。この傾向は、若者と大人のどちらでも、動画サービスの違いを超えて見られました。
対象: 71本の研究、合計98,299人 / 限界: 関連を調べた研究のまとめで、原因と結果は区別できません。記憶や推論など、注意力以外の働きを調べた研究は少ないと著者らは述べています(要旨のみ確認)。
Arouchら(2026)[2]
18〜29歳を対象にした17本の研究を整理したところ、ショート動画をよく使う人ほど、注意が途切れやすいなどの傾向が見られました。一方で、関係は逆向きかもしれないとも指摘しています。もともと注意が散りやすい人や、心に負担を抱えている人が、ショート動画をよく使うようになる可能性です。
対象: 中国・アメリカ・イギリス・オーストラリア・イタリア・台湾・ドイツ・インドで行われた17本の研究。多くは大学生や若い大人 / 限界: 一時点の調査と自己申告が中心で、研究ごとに測り方がばらばらなため、数字を1つにまとめる分析はしていません。
この論文が紹介している先行研究では、ショート動画を見る量が多い人ほど、ふだんの「注意がそれる」体験が多い関連がありました。ただ、その研究で作業中に集中を保つ力を測ったところ、はっきりした差は出ませんでした。日常で「集中できない」と感じることと、テストで測る集中力は、必ずしも同じではないようです。
Asadら(2026)[3]
医学生342人のうち、78.4%が毎日ショート動画を見ていました。注意をコントロールする力の低さと関連していたのは、1日にアプリを開く回数でした。1日に見る時間の長さとは、はっきりした関連がありませんでした。
対象: インドの公立医科大学の医学生342人(2025年1〜3月) / 限界: 一時点の調査で、見る時間や回数は本人の申告です。1つの大学だけで集めた結果です。
ZhaoとKou(2024)[4]
ショート動画依存傾向を測る尺度の点数が高い大学生ほど、先延ばしの傾向が強い関連がありました(r = 0.397)。点数が高い人ほど、「自分はやればできる」という感覚(自己効力感)がやや低く、運動量が少ない関連も見られました。
対象: 中国・河南省の2つの大学の学生304人 / 限界: 一時点の調査で、どちらが原因かはわかりません。
Klingelhoeferら(2026)[5]
2週間、1日に最大5回「直近2時間」の様子を答えてもらうと、デジタル機器の使用を自分から控えた場面では、先延ばしがわずかに少ない関連がありました。とくに関連が見られたのは、機器そのもの、アプリ、機能の単位で控えた場合でした。
対象: ドイツの18〜35歳の若い大人237人、12,408回分の回答 / 限界: ショート動画に限った研究ではなく、デジタル機器全般の研究です。観察研究のため、控えたことが先延ばしを減らしたとは言い切れません。
まとめると、「ショート動画と集中しにくさには関連がある」ことは、多くの研究で一貫しています。けれども、その中身はまだ「どちらが先か」がわからない段階です。
03まだわかっていないこと
ショート動画が集中力を下げる原因なのか、減らせば集中力が戻るのかは、まだ確かめられていません。長い期間を追った研究や、減らす実験が足りていません。
- ショート動画が集中力を下げるのか、集中しにくい人がよく見るのか(関係の向き)
- 見る量を減らすと、集中力が戻るのか(減らす実験がほとんどない)
- 働く大人や中高年での影響(研究の多くは学生が対象)
- 記憶や考える力など、注意力以外の働きとの関係
- 見る時間・開く回数・見る内容のどれが大きく関わるのか
04今日からできるセルフケア
原因かどうかはまだわかりませんが、距離の取り方を工夫するのはお金をかけずにできます。時間より開く回数に注目し、アプリ単位で離れる方法を試してみてください。
1日に開いた回数を数えてみる
見た時間ではなく、アプリを開いた回数を紙やメモに正の字で記録します。インドの医学生の調査では、注意をコントロールする力と関連していたのは、時間より開く回数でした。
目安 3日間・開くたびに1画
集中したい時間だけ、アプリ単位で離れる
勉強や仕事の時間だけ、アプリをホーム画面の奥に移す、ログアウトしておく、端末に付いている時間制限の機能を使うなど、アプリや機能の単位で距離を置きます。ドイツの調査では、こうした単位で控えた場面ほど先延ばしがわずかに少ない関連がありました。
目安 1回25〜50分
開く前に「ひと手間」をはさむ
開く前に「今、何のために見る?」と一度だけ心の中で問いかけます。研究のまとめでは、終わりなく続くスクロールにひと手間をはさむ工夫が提案されています(効果を確かめた研究ではありません)。
目安 1回5秒
「すき間時間の代わり」を1つ決めておく
研究のまとめが紹介している調査では、退屈を感じやすいことと、ショート動画の使いすぎとの関連が報告されています。待ち時間に開きたくなったら、窓の外を見る、短く歩くなど、代わりにすることを1つだけ決めておきます。
目安 1回1〜3分
「全部やめる」と決めると、続かなかったときに自分を責めやすくなります。まずは回数を知ること、集中したい時間だけ離れることから始めるのが現実的です。
05よくある質問
ショート動画を見ると、本当に集中力が落ちるの?
71本の研究をまとめた分析では、ショート動画をよく使う人ほど注意力が低いという、中程度の関連がありました。ただし研究の多くは一時点の調査です。ショート動画が集中力を下げたのか、もともと集中しにくい人がよく見るのかは、まだ区別できていません。
見る時間を減らせば、集中力は戻る?
それを直接確かめた研究は、まだほとんどありません。インドの医学生342人の調査では、注意をコントロールする力と関連していたのは、見る時間ではなくアプリを開く回数でした。時間だけでなく、開く回数にも目を向けてみる価値があります。
ショート動画がやめられないのは、意志が弱いから?
そうとは言えません。研究では、次々と動画が流れてくる作りそのものが、使いすぎにつながりやすいと考えられています。ドイツの若者の調査では、アプリ単位で意識的に距離を置いた場面ほど、先延ばしがわずかに少ない関連がありました。意志だけに頼らず、環境で工夫する方法があります。
ショート動画を見ると、勉強や仕事を先延ばししやすくなる?
関連はあります。中国の大学生304人の調査では、ショート動画依存傾向の尺度の点数が高い人ほど、先延ばしの傾向も強い関連がありました(相関0.397)。ただし一時点の調査なので、どちらが先かはわかっていません。
出典
- Nguyen, L., Walters, J., Paul, S., Monreal Ijurco, S., Rainey, G. E., Parekh, N., Blair, G., & Darrah, M. (2025). Feeds, feelings, and focus: A systematic review and meta-analysis examining the cognitive and mental health correlates of short-form video use. Psychological Bulletin, 151(9), 1125–1146. https://doi.org/10.1037/bul0000498
- Arouch, S., Edgcumbe, D., Pezaro, S., & Maravic Da Silva, K. (2026). Short-form video, cognitive and mental health outcomes: a systematic review. BMJ Public Health, 4, e004086. https://doi.org/10.1136/bmjph-2025-004086
- Asad, M. B., Snehika, A., Pulluri, S., Megha, J., & Shilpa, S. (2026). Association of Short-Form Video Use With Attention Control and Sleep Quality Among Medical Students: A Cross-Sectional Study. Cureus, 18(5), e108156. https://doi.org/10.7759/cureus.108156
- Zhao, Z., & Kou, Y. (2024). Effects of short video addiction on college students' physical activity: the chain mediating role of self-efficacy and procrastination. Frontiers in Psychology, 15, 1429963. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1429963
- Klingelhoefer, J., Gilbert, A., & Meier, A. (2026). Digital disconnection as a self-regulatory strategy against procrastination. Scientific Reports, 16, 17133. https://doi.org/10.1038/s41598-026-46218-1