比べて落ち込む

周りはみんな楽しそうで、つらいのは自分だけに見える。米国の大学生の研究では、周りのいやな経験を平均21ポイント少なく見積もり、そう見積もる人ほど孤独を感じていた

約7分で読めます

わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的指針0件を整理
秋の公園に置かれたベンチ
Photo: Onderwijsgek / CC BY-SA 2.5 nl / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

SNSを開くと、旅行に食事に仕事の成功。周りはみんな楽しそうで、しんどいのは自分だけのように見える。そう感じるのは、あなただけではありません。米国の大学生の研究では、人は周りのいやな経験を実際より少なく見積もり、そう見積もる人ほど孤独を感じていました。いやな気持ちは隠されやすく、外から見えにくいためと考えられています。

3行でわかる

  1. 米国の大学生104人の研究では、「ここ2週間で低い成績をとった」などのいやな経験をした周りの学生の割合を、平均21.4ポイント少なく見積もっていた。楽しい経験では、平均するとはっきりしたずれはなかった。
  2. いやな気持ちは、ひとりのときに起きやすく、人前では隠されやすかった。周りのいやな経験を少なく見積もる人ほど、孤独を感じ、悩みを繰り返し考え、生活の満足度が低い関連があった。
  3. ドイツの10〜14歳200人の14日間の日記研究では、SNSをよく使った日ほど「周りのほうがいい暮らし」と感じやすく、そう感じた日は自分を好きな気持ちが下がっていた。

01 結論から言うとつらいのは自分だけに見えるのはなぜ?

周りの人のいやな気持ちは、隠されやすく見えにくいからです。米国の大学生の研究では、周りの学生のいやな経験の割合を平均21.4ポイント少なく見積もっていました。見えている「みんな」は、実際より楽しそうに偏っています。

私たちが周りの人の気持ちを知る手がかりは、目に見える表情や話、投稿です。ところが、いやな気持ちは、ひとりのときに起きたり、人前では抑えられたりしやすいものです。

その結果、楽しい場面ばかりが目に入り、「つらいのは自分だけ」という見え方が生まれます。研究者たちは論文の題名で、これを「みじめさには、思っているより多くの仲間がいる」と表現しています。

02 研究とデータでわかっていること周りのつらさは、どれくらい少なく見えている?

米国の大学生は、いやな経験をした周りの学生の割合を平均21.4ポイント少なく見積もっていました。少なく見積もる人ほど孤独が強い関連がありました。ドイツの10〜14歳では、SNSをよく使った日ほど「周りのほうがいい暮らし」と感じていました。

21.4ポイントいやな経験をした周りの学生の割合を、実際より少なく見積もった平均(米国の大学生104人、2011年発表)
40%と13%人前で気持ちを隠そうとした割合。いやな気持ちと、うれしい気持ちの比較(米国の大学1年生63人)
45%と80%ここ2週間で「自分の生活習慣が悪いと気にした」学生の割合。見積もり(44.8%)と実際(79.8%)
200人・14日間SNSの使い方と「周りのほうがいい暮らし」という感覚を毎晩記録したドイツの10〜14歳(2021年の調査)

Jordan ら(スタンフォード大学ほか、2011)[1]

米国の大学1年生63人に、ここ2週間のいやな経験とうれしい経験を書いてもらうと、いやな気持ちの29%はひとりのときに起き、40%は人前で隠そうとしていました。うれしい気持ちでは、それぞれ15%と13%でした。別の104人に、よくある経験をした周りの学生の割合を見積もってもらうと、いやな経験は平均21.4ポイント少なく見積もっていました。楽しい経験では、平均するとはっきりしたずれはありませんでしたが、「楽しいパーティーに行った」は見積もり54.5%に対して実際は41.3%と、多めに見積もられていました。

対象: 米国西海岸の大学の学生(4つの研究、それぞれ63〜214人) / 限界: 学生だけの研究で、SNSが今ほど広がる前のデータです。

Jordan ら(同じ論文の別の研究)[1]

親しい友達やルームメイト、恋人でも、本人のいやな気持ちを少なく、うれしい気持ちを多めに見積もっていました。いやな気持ちを抑える人ほど、周りからつらさを少なく見積もられていました。また、周りのいやな経験を少なく見積もる人ほど、孤独を感じ、悩みを繰り返し考え、生活の満足度が低い関連がありました。周りの楽しい経験を多く見積もる人ほど、生活の満足度が低い関連もありました。

対象: 米国の大学生とその友達など / 限界: 一度に測った相関で、見積もりが孤独を生むのか、孤独な人が少なく見積もるのか、向きはわかりません。著者も、気分が見積もりに影響している可能性を挙げています。

Irmer、Schmiedek(ドイツ国際教育研究所、2023・2026)[2][3]

ドイツの10〜14歳200人が、14日間、毎晩「今日、周りのほうがいい暮らしをしている、幸せそうだと感じたか」などを記録しました。SNSをよく使った日ほど、この感覚が強く、そう感じた日は自分を好きな気持ちが下がり、悲しさが強くなっていました。同じ参加者の分析では、こうした比べる気持ちで落ち込みやすい子ほど、2週間で気分の落ち込みが強まっていました。SNSを使った日に落ち込みやすいかどうかでは、この結びつきは見られませんでした。

対象: ドイツの10〜14歳200人(2021年4〜6月、学歴・収入の高い家庭が多い) / 限界: 子どもの研究で、大人に同じことが起きるかはわかりません。日記の相関で、因果関係は確かめられていません。

SNSで上の人と比べて落ち込むしくみは「SNSで自分より上の人を見ると、落ち込むのはなぜ?」、孤独な時期が長引いたときは「孤独な時期が続いて、気持ちが沈んだまま戻らない」でも整理しています。

03 まだわかっていないこと見積もりのずれを直せば、気持ちは楽になる?

まだわかっていません。紹介した研究は相関を調べたもので、周りのつらさを正しく知れば孤独が減るかを確かめた実験は、見当たりませんでした。日本の人や、働く大人を対象にした研究もありません。

  • 米国の研究は2011年発表の学生の研究です。SNSが広がった今、ずれが大きくなっているかは調べられていません。
  • ドイツの研究は10〜14歳が対象です。大人がSNSで「周りのほうが幸せ」と感じる頻度や影響は、別に確かめる必要があります。
  • 研究者は、気分が沈んでいるから周りが楽しそうに見える、という逆の向きの可能性も挙げています。

04 今日からできるセルフケア「自分だけつらい」と感じたら、どう考えればいい?

見えている「みんな」は楽しい場面に偏っている、と思い出すことです。研究で見えにくいとわかった部分を補って考え、信頼できる人とは小さなつらさを少しずつ分け合います。お金をかけずに、今日からできます。

1

楽しそうな投稿に「見えていない部分がある」と付け足す

米国の研究では、いやな気持ちの40%が人前で隠されていました。楽しそうな投稿を見たら、心の中で「これは見えている部分だけ」と一言付け足します。

目安 10秒

2

「みんなのほうが幸せそう」と感じた日を、メモで振り返る

ドイツの研究では、SNSをよく使った日ほど、そう感じやすくなっていました。感じた日に何をどれくらい見ていたかを1行書くと、自分が比べやすい場面がわかります。研究で直接試された方法ではなく、結果から考えた工夫です。

目安 1日1分

3

信頼できる人と、小さなつらさを1つ分け合う

研究では、親しい友達どうしでも、いやな気持ちは少なく見積もられていました。「最近ちょっと疲れてて」くらいの一言を話すと、相手のつらさも聞けることがあります。話すかどうか、誰に話すかは自分で決めてかまいません。

目安 会話の中で1分

比べる相手を変える工夫は「人と比べて落ち込むのを、日頃から減らしたい」、SNSとの距離の取り方は「SNSで他人と比べて落ち込む」も参考になります。

05よくある質問

SNSを見なければ、「みんな楽しそう」という感覚はなくなりますか?

なくなるとは言えません。ドイツの10〜14歳の研究では、SNSをよく使った日ほど「周りのほうがいい暮らしをしている」と感じやすい関連がありました。ただ、米国の大学生の研究は、親しい友達どうしでも、いやな気持ちを少なく見積もっていたことを示しています。SNSの外でも起きる見え方のずれです。

楽しそうな投稿ばかりの人は、うそをついているのですか?

うそとは限りません。米国の大学生の研究では、いやな気持ちのほうが、ひとりのときに起きやすく、人前では隠されやすいことがわかっていました。楽しい場面のほうが人の目に触れやすいため、見えている部分が楽しいことに偏るのは自然なことです。

自分のつらさを人に隠すのは、よくないことですか?

よくないとは言えません。いつ、誰に話すかは自分で決めてよいことです。研究では、いやな気持ちを抑える人ほど、親しい友達からもつらさを少なく見積もられていました。わかってほしい相手がいるなら、小さなことから少しずつ話すと、相手にも見えるようになります。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

無料ツール
セルフチェックで「今日やること」をまとめる
当てはまる悩みを選ぶだけ。診断はせず、記事の対策を一覧にします。
研究早見表でほかの悩み210件も見る

出典

  1. Jordan, A. H., Monin, B., Dweck, C. S., Lovett, B. J., John, O. P., & Gross, J. J. (2011). Misery has more company than people think: Underestimating the prevalence of others' negative emotions. Personality and Social Psychology Bulletin, 37(1), 120-135. https://doi.org/10.1177/0146167210390822
  2. Irmer, A., & Schmiedek, F. (2023). Associations between youth's daily social media use and well-being are mediated by upward comparisons. Communications Psychology, 1, 12. https://doi.org/10.1038/s44271-023-00013-0
  3. Irmer, A., & Schmiedek, F. (2026). Affective reactivity to upward social comparisons rather than social media use predicts increases in early adolescent depressive symptoms. Scientific Reports, 16. https://doi.org/10.1038/s41598-026-58879-z