人とのつながり

ストレスがたまった日、人に小さな親切をすると楽になる?米国の77人の2週間の記録では、親切がふだんより多かった日ほど、ストレスによる心の調子の落ち込みが小さかった

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的指針0件を整理
朝の公園の若木の前に置かれたベンチ
Photo: Wolfgang Weber / CC BY 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

仕事の締め切り、通知の山、思いどおりに進まない作業。ストレスがたまった日は、自分のことで手いっぱいで、人のことまで気が回らないものです。それでも「人に親切にすると気持ちが楽になる」という話を聞くと、本当かなと思うかもしれません。研究では、小さな親切が多かった日ほど、ストレスによる心の落ち込みが小さかったという記録が出ています。ただし、手間の大きい手助けには別の面もありました。

3行でわかる

  1. 米国の77人が2週間、毎晩つけた記録では、ドアを押さえるような小さな親切がふだんより多かった日ほど、ストレスの出来事による心の調子の落ち込みが小さかった。
  2. オーストリア・イタリア・ドイツの803人が1日5回つけた記録では、人を手助けしたあとに気分が上がっていた。一方で、手間が大きいと感じた手助けほど、そのあとのストレスが高かった。
  3. どれも記録を分析した研究で、親切がストレスを和らげる原因とまでは言えない。試すなら、余裕のない日ほど、数十秒から数分で終わる小さな親切にとどめるのが合っている。

01 結論から言うとストレスの多い日に人に親切にすると、楽になる?

楽になる方向の関連はあります。米国の記録では、小さな親切が多かった日ほど、ストレスの出来事があっても心の調子の落ち込みが小さくなっていました。ただし、親切が原因だと確かめた実験ではありません。

ストレスを受けると、人は戦うか逃げるかの反応をするとよく言われます。それとは別に、人に近づいて世話をしたり、つながりを求めたりする反応もある、という考え方があります。研究者たちは、人を助けることが、ストレスへの気持ちの反応を和らげる手がかりになるのではないかと考えて調べてきました。

今回の研究から言えるのは、「ストレスが消える」ではなく、「ストレスで気持ちが沈む度合いが小さくなる」という関連です。そして、引き受ける手間が大きいと、かえって負担になりうることもわかってきています。

02 研究とデータでわかっていることどんな親切が、どのくらい関係していた?

米国の研究で数えたのは、ドアを押さえる、困っていそうな人に声をかけるといった小さな親切です。欧州の研究では、手助けのあとに気分が上がる一方、手間の大きい手助けほど、そのあとのストレスが高い関連がありました。

約4.8点親切がふだんよりかなり少ない日に、ストレスの出来事が1つ増えるごとに下がった心の調子の評価(0〜100)。かなり多い日は−0.25点で、はっきりした差がなかった(米国の18〜44歳の77人、2016年発表)
約半分ストレスによるいやな気分の高まり方。親切がかなり多い日は、かなり少ない日の約半分だった(同じ研究)
803人1週間、1日5回、気分と手助けを記録したオーストリア・イタリア・ドイツの大人(2020年春の外出制限中、2024年発表)
846人米国デトロイト周辺で、手助けとストレスの出来事を聞かれ、その後5年間を追われた人(2013年発表)

Raposaら(2016年)[1]

地域で募集した大人に、14日間、毎晩寝る前にスマホで答えてもらった。その日にあったストレスの出来事(人間関係、仕事や学校、家庭、お金、健康など)の数と、知らない人や知り合いにした親切(ドアを押さえる、勉強を手伝う、手伝いが必要か声をかける、など)の数、気分、その日の心の調子(0〜100)を記録した。

親切がふだんよりかなり少ない日は、ストレスの出来事が1つ多いごとに、心の調子の評価が約4.8点下がっていた。親切がかなり多い日は、ストレスが多くても心の調子にはっきりした差がなかった(−0.25点)。前向きな気分も同じで、親切が少ない日にだけストレスで下がっていた。いやな気分は、親切が多い日もストレスで高まっていたが、その高まり方は少ない日の約半分だった。

対象: 米国の大学の研究チームが地域で募集した18〜44歳の77人(平均24.5歳、女性53%)。飲酒の研究のために集められ、週1回以上お酒を飲む人が条件だった / 限界: 1日1回の記録で、親切とストレスのどちらが先だったかは確かめられない。白人が7割で、ほかの文化で同じ結果になるかはわからない。

Proniziusら(2024年)[2]

新型コロナの外出制限が続いていた2020年4〜5月に、1週間、1日5回、スマホでその時の気分とストレス、前回の記録から人を手助けしたかと、その手間の大きさを答えてもらった。2回目の記録の参加者に最近の手助けを聞くと、相手は友達、親、親せき、パートナー、子どもなど身近な人が多く、内容は家事の手伝いや、仕事・勉強の手伝いが多かった。

手助けをしたあとは、していないときより気分が上がっていた(その前の気分の違いを考えに入れた分析)。2020年11〜12月の2回目の記録(303人)でも気分は上がっていて、手助けの前の気分が低めだった人ほど上がり方が大きかった。一方、手助けそのものは、そのあとのストレスを下げていなかった。手間が大きいと感じた手助けほど、そのあとのストレスが高かった(1回目の記録のみ)。

対象: オーストリア522人、イタリア251人、ドイツ30人の18歳以上の803人(平均31.9歳、女性559人) / 限界: 外出制限中という特別な時期の記録で、参加者はふだんより落ち込みやストレスが強かった。記録を分析した研究で、手助けが気分を上げた原因とまでは言えない。

Poulinら(2013年)[3]

最初の聞き取りで、過去1年のストレスの多い出来事と、友達や親せき、近所の人への手伝い(買い物や家事、子どもの世話など、お金をもらわない手助け)をしたかを聞き、5年間追った。年齢や最初の健康状態などを考えに入れると、手助けをしていなかった人では、ストレスの出来事が多いほど5年以内に亡くなるリスクが高い関連があった(1.30倍)。手助けをしていた人では、この関連は見られなかった(0.96倍)。

対象: 米国デトロイト周辺の846人(1987〜1988年に聞き取り) / 限界: 実験ではないため、手助けが原因とは言えないと著者ら自身が書いている。気分ではなく長い期間の健康を見た研究で、その日のストレスへの対処を調べたものではない。

03 まだわかっていないこと親切がストレスを和らげる原因なの?

まだわかっていません。今回の研究はどれも、人の毎日の記録や聞き取りを分析したものです。ストレスの多い日に親切をするよう割り振って比べる実験は、今回の研究には含まれていません。

  • 米国の研究は1日1回の記録で、親切とストレスの出来事のどちらが先だったかはわからない。著者らも、1日に何度も記録する研究や実験が必要だとしている。
  • 欧州の研究では、手助けで上がったのは気分で、ストレスの点数は下がっていなかった。親切で「楽になる」のが、どの気持ちなのかはまだはっきりしない。
  • 知らない人への親切と、家族や友達への手助けで違いがあるかは、直接は比べられていない。
  • 日本の人や、AIやチャットに追われる今の働き方で、同じ結果になるかは調べられていない。

04 今日からできるセルフケア余裕のない日に、無理なく親切を足すには?

数十秒から数分で終わる小さな親切を、1日1つから試します。手間の大きい手助けは、余裕のない日ほど範囲を決めて引き受けます。どれもお金をかけずにできます。

1

数十秒で終わる親切を、1日1つしてみる

後ろの人のためにドアを押さえる、困っていそうな同僚に「何か手伝えることある?」と声をかける、落とし物を拾って渡す。米国の研究で数えられていたのは、こうした小さな親切でした。

目安 1回30秒〜1分・1日1〜2回

2

気分が沈んでいるときこそ、小さく手を貸す

気持ちが落ちているときは、家族の家事を1つ手伝う、友達の質問に短く答えるなど、すぐ終わる手助けを選びます。欧州の記録では、手助けの前の気分が低めの人ほど、手助けのあとの気分の上がり方が大きくなっていました。

目安 1回5分以内

3

手間の大きい頼まれごとは、範囲を決めて引き受ける

疲れている日に大きな頼まれごとが来たら、「今日は10分だけなら」「この部分だけなら」と先に範囲を伝えます。欧州の記録では、手間が大きいと感じた手助けほど、そのあとのストレスが高い関連がありました。

目安 頼まれたときに1分

親切をした側の幸福感についての研究のまとめは誰かの役に立てているか不安なときの記事に、自分が助けを頼む側のときの研究は人に質問するのが怖いときの記事にまとめています。

05よくある質問

人に親切にすると、ストレスはなくなる?

なくなるとまでは言えません。米国の77人の記録では、親切が多かった日もストレスでいやな気分は高まっていて、その高まり方が約半分になっていました。欧州の803人の記録でも、手助けのあとに上がったのは気分で、ストレスの点数そのものは変わっていませんでした。

どんな親切でも効果は同じ?

同じとは限りません。米国の研究で数えたのは、ドアを押さえる、困っていそうな人に声をかけるといった小さな親切でした。欧州の研究では、手間が大きいと感じた手助けほど、そのあとのストレスが高い関連がありました。

疲れていて、人を手伝う余裕がないときは?

無理に手伝わなくてかまいません。研究で関連があったのは、数十秒から数分で終わる小さな親切でした。手間の大きい手助けは、そのあとのストレスが高い関連があったので、余裕のない日は引き受ける範囲を小さく決めておくほうが合っています。

家族や友達を手伝うのでも同じ?

米国の研究は、知らない人や知り合いへの親切を数えたものでした。欧州の研究では、手助けの相手の多くは友達や親、パートナーなど身近な人で、手助けのあとに気分が上がっていました。相手による違いは、まだはっきり比べられていません。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Raposa EB, Laws HB, Ansell EB (2016). Prosocial Behavior Mitigates the Negative Effects of Stress in Everyday Life. Clinical Psychological Science, 4(4), 691–698. https://doi.org/10.1177/2167702615611073
  2. Pronizius E, Forbes PAG, Feneberg AC, et al. (2024). Everyday helping is associated with enhanced mood but greater stress when it is more effortful. Scientific Reports, 14, 24120. https://doi.org/10.1038/s41598-024-75261-z
  3. Poulin MJ, Brown SL, Dillard AJ, Smith DM (2013). Giving to Others and the Association Between Stress and Mortality. American Journal of Public Health, 103(9), 1649–1655. https://doi.org/10.2105/AJPH.2012.300876