頭の切り替えや段取りの力が落ちた気がする。米国の20〜67歳の132人が半年続けた試験では、週4回の有酸素運動で切り替えや計画の力の成績が上がり、年齢が高い人ほど伸びが大きかった

段取りを考えるのはAI任せ、作業の切り替えにも時間がかかる。そんな毎日が続くと、「頭の回転が落ちたのでは」と心配になります。座りっぱなしの生活が長い人なら、体を動かす習慣を半年続けることで、切り替えや計画の力が少し上がるという試験の結果があります。どこまでわかっていて、どこからはわかっていないのかを整理しました。
3行でわかる
- 運動の習慣がなかった米国の20〜67歳の132人の試験では、週4回の有酸素運動を半年続けた組で、切り替えや計画の力(実行機能)の成績が、ストレッチの組より上がった。
- 伸びは年齢が高い人ほど大きかった。一方で、記憶・処理の速さ・注意の成績には差がなかった。
- 29件の試験のまとめでも効果は小さめ。少し息がはずむ運動を短い時間から始め、週の合計を増やしていくのが研究に近いやり方。
01 結論から言うと落ちた気がする頭の働きは、運動で戻る?
切り替えや計画の力については、有酸素運動を何か月か続けると、成績が少し上がるという試験の結果があります。ただし効果は控えめで、記憶など、すべての頭の働きが上がるわけではありません。
ここでいう「切り替えや計画の力」は、心理学で実行機能と呼ばれるものです。作業を切り替える、段取りを考える、ルールを覚えて迷路を解くといった、頭の「司令塔」にあたる働きです。
米国の試験では、運動の習慣がなく、体力が平均より低い大人が、週4回の有酸素運動を半年続けました。その結果、この司令塔の働きを測るテストの成績が上がっていました。ただし、記憶など、ほかの働きの成績はストレッチの組と変わりませんでした。
02 研究とデータでわかっていること半年の運動で、どの力がどのくらい変わった?
週4回・半年の有酸素運動で、切り替えや計画の力の成績が、ストレッチを続けた組より上がりました。伸びは40歳より60歳で大きく、記憶や処理の速さには差がありませんでした。
Stern ら(2019)[1]
運動の習慣がなく、体力が平均より低い20〜67歳の132人を、くじで2つの組に分けました。一方は有酸素運動、もう一方はストレッチと体幹の運動を、どちらも週4回、半年続けました。有酸素運動の組では、体力が上がり、作業の切り替えや迷路を覚えて解くテストで測った「切り替えや計画の力」の成績が上がりました。伸びは年齢が高いほど大きく、40歳では0.23、60歳では0.60でした(成績のばらつきを1とした値)。脳の前のほうの一部で、大脳の表面(皮質)が厚くなっていました。記憶、処理の速さ、ことば、注意の成績には、組の間で差がありませんでした。
対象: 米国ニューヨークの、もの忘れなどの問題がない20〜67歳の132人 / 限界: 人数が少なく、途中でやめた人が有酸素運動の組で33.3%、ストレッチの組で24.2%いました。試験が終わったあとも効果が続くかは調べていません。参加者は自分がどちらの組かを知っていました。
Smith ら(2010)[2]
18歳以上の大人を対象に、有酸素運動を1か月を超えて続けた試験29件(2,049人)をまとめました。運動した組では、注意と処理の速さ、切り替えや計画の力、記憶の成績が、運動以外の組より少しよくなっていました。ただし差は小さく、作業中に情報を覚えておく力(ワーキングメモリ)については、結果がそろいませんでした。
対象: 1966〜2009年に発表された、大人の有酸素運動の試験29件 / 限界: 研究チームは、より大人数で、長く追跡する試験が必要だと述べています。
世界保健機関(WHO)(2020)[3]
18〜64歳の大人には、中くらいの強さの有酸素運動を週150〜300分、または強めの運動を週75〜150分すすめています。大人の運動のよい効果の一つに、頭の健康(認知の健康)を挙げています。少しでも体を動かすほうが、まったく動かさないよりよく、今は目安に届かない人も、少しの量から始めて、だんだん増やすようすすめています。
対象: 世界の子どもから高齢者までの運動の指針 / 限界: 頭の働きのためだけの運動量を示したものではありません。
1回の運動のすぐあとに注意の働きがどう変わるかは「頭が働かない日が続いて、集中力が戻らない」、ストレスで落ちた頭の働きの戻り方は「ストレス続きで頭が回らず、能力が落ちた気がする」で紹介しています。
03 まだわかっていないこと運動をやめたら、効果はなくなる?
まだわかっていません。米国の試験は半年の運動の直後に調べたもので、運動をやめたあとも効果が続くかは確かめていません。AIの使いすぎで落ちた力が運動で戻るかを調べた研究も、まだありません。
- 米国の試験は132人と小さく、途中でやめた人も多くいました。研究チームは、記憶など、ほかの働きの差を見つけるには人数が足りなかった可能性を挙げています。
- 対象は運動の習慣がなく、体力が低めの人でした。すでに運動している人でも同じように伸びるかはわかりません。
- 伸びは年齢が高いほど大きかった一方、20代でどのくらい変わるかははっきりしていません。
- テストの成績の伸びが、仕事のしやすさなど毎日の実感につながるかは、わかっていません(日常の動作の評価では差がありませんでした)。
04 今日からできるセルフケア頭の働きのために、どう体を動かせばいい?
いきなり週4回にしなくてかまいません。少し息がはずむ運動を短い時間から始め、週の合計を少しずつ増やし、何か月か続けることが、研究と指針から考えられるやり方です。
早歩きを10分、1日のどこかに入れる
通勤の一駅分や昼休みに、少し息がはずむくらいの速さで歩きます。WHOの指針は、目安に届かない人も少しの量から始め、だんだん増やすようすすめています。
目安 1回10分・週3〜4回から
週の合計時間を、カレンダーに書いて数える
歩いた日と分数をメモし、週の合計を見ます。WHOの指針の目安は、中くらいの強さで週150〜300分です。まずは週60分、次に週100分と、段階を分けて増やします。
目安 週1回、合計を見直す
半年を一つの区切りにして続ける
米国の試験で切り替えや計画の力の伸びが確かめられたのは、半年続けたあとでした。1〜2週間で変化を感じなくても、すぐにやめず、季節が2つ変わるくらいまで続けるつもりで取り組みます。
目安 24週間(約半年)
05よくある質問
ストレッチやヨガだけでも、頭の働きはよくなりますか?
この試験では、ストレッチと体幹の運動を同じ回数続けた組と比べて、有酸素運動の組で切り替えや計画の力の成績が上がっていました。ストレッチ自体に効果がないとまでは言えませんが、頭の働きを目的にするなら、息がはずむ運動を含めるほうが研究に近い形です。
何週間くらいで変化が出ますか?
この試験は24週間(約半年)続けたあとに差を調べています。29件の試験のまとめで対象にしたのも1か月を超えて続けた試験でした。数日で変わるものではなく、何か月か続けることが前提と考えたほうがよさそうです。
若い人には意味がないのですか?
意味がないわけではありません。試験では40歳でも成績の伸びが確認されていました。ただ、伸び方は年齢が高いほど大きく、20代でどのくらい変わるかははっきりしていません。
記憶力も良くなりますか?
この試験では、記憶の成績はストレッチの組と差がありませんでした。29件の試験のまとめでは記憶にも小さな改善が見られましたが、どちらも差は控えめです。
もの忘れが急に増えた、いつもできていたことができなくなったなど、気になる変化があるときは、医療機関に相談できます。持病がある人や、長く運動していなかった人は、運動を始める前に医師に相談すると安心です。
無料ツール
セルフチェックで「今日やること」をまとめる
当てはまる悩みを選ぶだけ。診断はせず、記事の対策を一覧にします。
研究早見表でほかの悩み365件も見る
出典
- Stern, Y., MacKay-Brandt, A., Lee, S., McKinley, P., McIntyre, K., Razlighi, Q., Agarunov, E., Bartels, M., & Sloan, R. P. (2019). Effect of aerobic exercise on cognition in younger adults: A randomized clinical trial. Neurology, 92(9), e905-e916. https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000007003
- Smith, P. J., Blumenthal, J. A., Hoffman, B. M., Cooper, H., Strauman, T. A., Welsh-Bohmer, K., Browndyke, J. N., & Sherwood, A. (2010). Aerobic exercise and neurocognitive performance: a meta-analytic review of randomized controlled trials. Psychosomatic Medicine, 72(3), 239-252. https://doi.org/10.1097/PSY.0b013e3181d14633
- Bull, F. C., Al-Ansari, S. S., Biddle, S., et al. (2020). World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. British Journal of Sports Medicine, 54(24), 1451-1462. https://doi.org/10.1136/bjsports-2020-102955


