AIとの付き合い方

AIに聞くたびに答えが違って、何を信じればいいかわからない。研究では、食い違う情報で混乱した人ほど、助言そのものを「当てにならない」と感じやすかった

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わかっている度 ★☆☆ 低研究4本・公的指針0件を整理
分かれ道に立つ道しるべ
Photo: Stephen Burton / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

さっきと同じことを聞いたのに、AIの答えが変わっている。どちらが本当なのかわからず、調べるほど頭が混乱していく。そんなとき、モヤモヤするのはあなたの理解力が足りないからではありません。食い違う情報で混乱し、やがて「もう何も信じない」に傾くのは、研究でも見られてきた人の自然な反応です。

3行でわかる

  1. AIの答えは同じ質問でも揺れる。医学の選択問題44問を10回ずつ聞いた研究では、英語で15問の答えが大きく割れていた。
  2. 食い違う健康情報の研究では、混乱した人ほど「どれも当てにならない」と感じる傾向があり、その気持ちは別の確かな情報にも広がっていた。
  3. 答えが変わる理由を先に知った人は、食い違いを見ても受け止め方が少し前向きだった。その場では「違う部分」と「範囲」を区切るのが手がかりになる。

01 結論から言うとAIの答えが毎回違って混乱するのは普通?

普通の反応です。AIの答えは同じ質問でも揺れることがあり、食い違う情報に混乱する人は多いことが研究で示されています。困るのは混乱そのものより、「全部信じない」に振れることです。

AIは、質問のたびに文章を組み立て直します。そのため、同じ質問をしても、言い回しだけでなく結論が変わることがあります。

人は、手元の情報が食い違うと「何が正しいのかわからない」という居心地の悪さを感じます。健康情報の研究では、この混乱が強い人ほど、助言や研究そのものを疑う気持ちが強い傾向がありました。

ただし、生成AIの答えの食い違いと心の反応を直接調べた研究は、まだほとんどありません。この記事は、AIの答えの揺れを測った研究と、ニュースなどの食い違う健康情報の研究を組み合わせて整理しています。

02 研究とデータでわかっていること食い違う答えを見ると、人の心はどう動く?

食い違う情報を多く見聞きした人ほど混乱が強く、混乱は「どれも当てにならない」という反発と結びついていました。その反発は、食い違っていない別の健康情報への受け止め方にも広がっていました。

15/44問ChatGPT(GPT-3.5)に同じ選択問題を英語で10回ずつ聞き、答えが大きく割れた問題(2023年12月)
9問上の研究で、10回とも同じ答えだったのに10回とも不正解だった問題(英語の24問中。論文の表から集計)
71.8%米国の成人631人のうち、栄養について食い違う情報をメディアで中程度以上見聞きしていた人(2010年)
2,716人食い違う健康ニュースを見せたあと、別の健康の広告への受け止め方を調べた米国の成人(2020年)

Qiu & Zhou(2024)[1]

一酸化炭素中毒についての医学の選択問題44問を、ChatGPT(GPT-3.5)に中国語と英語でそれぞれ10回ずつ聞いた。英語では24問が10回とも同じ答えだったが、15問は答えのばらつきが大きかった。中国語でも15問でばらつきが大きかった。

論文の表で、英語で10回とも同じ答えだった24問を数えると、15問は毎回正解、9問は毎回不正解でした。答えがそろっていても、正しいとは限らないということです。

対象: 中国の医師向け試験対策アプリの問題44問、2023年12月29日に実施 / 限界: 1つの分野・1つの古い無料版モデルでの結果で、いまのAIや日常の質問にそのまま当てはまるとは限らない。

Nagler(2014)[2]

ワイン・魚・コーヒー・サプリについて食い違う情報を多く見聞きした人ほど、「何を食べればいいかわからない」という混乱が強かった。混乱が強い人ほど、「科学者は意見を変えてばかり」「栄養の助言は話半分に聞く」といった反発の気持ちも強かった。

見聞きした量と混乱の結びつきは小さめでした。一方で、混乱と反発の結びつきは比較的はっきりしていました。反発が強い人ほど、野菜を食べる・運動するといった、食い違いの少ない行動への意欲も低い傾向がありました。

対象: 米国の成人631人(2010年2〜3月の全国調査) / 限界: 一時点の調査で、関連は示せても、食い違う情報が混乱を引き起こしたとまでは言えない。

Nagler ら(2022)[3]

2〜6週間かけて3回に分けた実験で、食い違いのある健康ニュースやSNS投稿を見せられた人は、食い違いのない記事を見た人に比べ、そのあと見た無関係な健康の広告に身構えやすかった。広告で勧める行動の印象も低めだった。

この広がりは、健康の助言や研究全体への反発の気持ちを通じて起きていると分析されています。ひとつの話題の食い違いが、別の話題の受け止め方にまで及んでいたということです。

対象: 米国の成人2,716人(2020年7〜8月、全国を代表するパネル) / 限界: 見せた話題は乳がん検診やビタミンDなど6つの健康の話題で、AIの答えではない。

Nagler ら(2023)[4]

食い違う健康情報を見る前に、「科学は真実そのものではなく、真実を探す営み。意見が変わるのは、うそをついたのではなく、より多くを学んだから」といった、答えが変わる理由を説明する短い文を読んだ人は、何も読まなかった人より科学を前向きにとらえ、反論しようとする気持ちも少なかった。

効果は小さめでした(効果の大きさを表す値で0.16〜0.25)。また、食い違いを見たときのいやな気分そのものは減っていませんでした。

対象: 米国の成人1,604人(2022年5月、オンラインの実験) / 限界: 若く学歴の高い人に偏ったオンライン参加者で、効果を見たのは1回の短い文を読んだ直後のみ。

03 まだわかっていないことAIの答えの食い違いで、心はどこまで疲れる?

まだ結論は出ていません。生成AIの答えの食い違いが、使う人の気分や不安にどう影響するかを直接確かめた研究は、ほとんど見当たりません。

  • この記事の心の反応の研究は、ニュースやSNSの健康情報についてのもので、AIとのやりとりを調べたものではありません。
  • AIの答えの揺れ方は、モデルの種類や質問の分野で大きく変わります。紹介した研究は古い無料版の1分野の結果です。
  • 「答えが変わる理由を先に知る」効果は1回の実験で、効果も小さく、気分の改善までは確認されていません。AIの場面で同じ効果があるかも未確認です。

04 今日からできるセルフケア答えが食い違って混乱したら、どうする?

答えが揺れる仕組みを先に知っておき、食い違ったら「どこが違うか」と「どの範囲の話か」を区切ります。大事な判断は、AIの答えをそろえることではなく、確かな情報源で決めます。

1

「答えは揺れるもの」と先に言葉にしておく

「AIは毎回文章を組み立て直すので、答えが変わることがある。変わったのは、自分の理解が悪いからではない」と一度メモしておく。答えが変わる理由を先に知った人は、食い違いの受け止め方が少し前向きだった研究があります。

目安 1分・最初の1回だけ

2

食い違った「1点」だけを書き出す

2つの答えを並べて、一致している部分と違う部分を分け、違う点を1行で書く。全体を疑うのではなく、確かめる対象を1点に絞ります。

目安 2〜3分

3

そろっても正解とは限らないと覚えておく

何度聞いても同じ答えが出るほど、つい安心しがちです。研究では10回とも同じで10回とも不正解の問題がありました。健康やお金など大事なことは、公的機関のページや専門家で確かめます。

目安 大事な判断のときだけ5〜10分

4

「この質問については」と範囲を区切る

「もう何も信じられない」と感じたら、「食い違ったのはこの質問についてだけ」と声に出すか書く。混乱が、ほかの確かな情報まで疑う気持ちに広がるのを防ぐ工夫です。

目安 30秒

何度も聞き直して安心しようとするループに入りやすい人は、不安なことをAIに何度も聞き直してしまうときも参考になります。AIと意見が分かれて自分を疑ってしまうときはAIと意見が違うと自分が間違っている気がする、答えをそのまま信じてしまう心配があるときはAIの答えをつい信じてしまうで整理しています。

05よくある質問

AIの答えが毎回違うのは、AIが壊れているから?

壊れているとは限りません。AIは同じ質問にも毎回文章を組み立て直すため、答えが揺れることがあります。2023年12月の研究では、同じ選択問題44問を10回ずつ聞くと、英語で24問は毎回同じ答え、15問は答えが大きく割れていました。

何度聞いても同じ答えなら、正しいと考えていい?

そうとは限りません。上の研究の表を数えると、英語で10回とも同じ答えだった24問のうち9問は、10回とも不正解でした。答えがそろうことと、正しいことは別です。大事なことは公的機関や専門家の情報で確かめます。

混乱して、AIもネットも全部信じられなくなりました。おかしいですか?

おかしくありません。食い違う健康情報の研究では、混乱した人ほど「どれも当てにならない」という気持ちが強い傾向がありました。食い違ったのは「その質問について」だけだと範囲を区切ると、ほかの確かな情報まで手放さずに済みます。

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出典

  1. Qiu J, Zhou Y (2024). Assessing the accuracy and consistency of answers by ChatGPT to questions regarding carbon monoxide poisoning. PLoS One, 19(11), e0311937. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0311937
  2. Nagler RH (2014). Adverse outcomes associated with media exposure to contradictory nutrition messages. Journal of Health Communication, 19(1), 24-40. https://doi.org/10.1080/10810730.2013.798384
  3. Nagler RH, Vogel RI, Gollust SE, Yzer MC, Rothman AJ (2022). Effects of prior exposure to conflicting health information on responses to subsequent unrelated health messages: Results from a population-based longitudinal experiment. Annals of Behavioral Medicine, 56(5), 498-511. https://doi.org/10.1093/abm/kaab069
  4. Nagler RH, Gollust SE, Yzer MC, Vogel RI, Rothman AJ (2023). Sustaining positive perceptions of science in the face of conflicting health information: An experimental test of messages about the process of scientific discovery. Social Science & Medicine, 334, 116194. https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2023.116194