昼間の部屋が薄暗くて、頭がぼんやりするのを防ぎたい。59本の研究のまとめでは明るい光で目がさえる結果が多かったが、よく眠れている人では変わらなかった実験もあった

在宅勤務の部屋や北向きの部屋で、昼間なのに薄暗く、パソコンに向かっていると頭がぼんやりしてくる。そんな悩みはよく聞かれます。昼間の照明の研究をまとめると、明るい光で目がさえ、反応が速くなる結果は多く見られました。ただし効果は、どれだけ眠気がたまっているかで変わり、よく眠れている人では変わらなかった実験もあります。
3行でわかる
- 昼間の照明と頭の働きを調べた59本の研究のまとめでは、明るい白い光や青みの強い光で目がさえる結果が多かった。ただし効果は、たまった眠気の強さや時間帯で変わっていた。
- よく眠れているオランダの20〜30歳の50人の実験では、昼間の照明を24〜2,000ルクスで変えても、目のさえ方ははっきり変わらなかった。
- オーストリアの56人の実験では、目の高さで1,360ルクスの明るさのもとで、130ルクスより複雑な注意の課題の反応がわずかに速かったが、眠気の感じ方は変わらなかった。
01 結論から言うと昼間に部屋を明るくすると、集中は保てる?
明るい光で目がさえ、反応が速くなる研究は多くあります。ただし、効果は眠気のたまり具合や時間帯で変わり、よく眠れている人では変わらなかった実験もあるため、確実とは言えません。
光は、ものを見るためだけでなく、目のさえ方にも関わると考えられています。目には、明るさを体に伝える専用の細胞があり、それが脳の目覚めの働きに信号を送るためです。
夜の明るい光で目がさえることは、多くの研究で確かめられてきました。一方、もともと目が覚めている昼間に、照明でさらに目がさえるかどうかは、研究によって結果が分かれています。部屋の明るさは、集中を支える条件の一つですが、それだけで眠気が消えるとは限りません。
02 研究とデータでわかっていること昼間の照明の明るさで、頭の働きは変わる?
59本の研究のまとめでは、明るい白い光で反応が速くなった研究が4本、複雑な課題の成績がよくなった研究が9本ありました。一方、よく眠れている50人の実験では、明るさを変えても目のさえ方は変わりませんでした。
Sirajiら / マレーシア・モナシュ大学マレーシア校ほか(2021年)[1]
11のデータベースから、昼間の電灯の光が目のさえ方と頭の働きに与える影響を調べた59本の研究を集めて整理しました。明るい白い光も、青みの強い光も、目のさえ方を高める結果が多く見られました。ただし、その効果はどれだけ眠気がたまっているかや、光を浴びる時間帯によって変わっていました。
明るい白い光では、反応の速さなどの単純な課題で効果があった研究が4本(午前3本・午後1本)、複雑な課題で効果があった研究が9本(午前5本・午後4本)でした。青みの強い光では、単純な課題で10本、複雑な課題で4本でした。頭を使う複雑な作業にどんな光がよいかは、作業の難しさや、比べた光の条件によって変わり、はっきりしませんでした。
対象: 昼間の照明を調べた59本の研究 / 限界: 研究ごとに光の強さや色、作業の内容が異なり、結果を数値でまとめた分析(メタ分析)ではありません。
Lokら / オランダ・フローニンゲン大学(2018年)[2]
よく眠れている健康な50人に、朝7時半から夕方5時半まで、ごく暗い光(10ルクス未満)の1時間半と、実験の光の1時間をくり返し浴びてもらいました。実験の光の明るさは24〜2,000ルクスの5段階で、1段階あたり10人です。眠気の感じ方、反応の速さ、まぶたの動きなどを測りましたが、明るさが増すほど目がさえるという関係は、統計の補正後にはどの指標でも認められませんでした。
対象: 睡眠不足のないオランダの20〜30歳の50人(女性25人・男性25人) / 限界: 1段階10人と少人数です。研究者は、よく眠れている人は昼間もともと目がさえていて、それ以上は上がりにくい可能性を挙げています。睡眠不足の人は調べていません。
Canazeiら / オーストリア・インスブルック大学ほか(2023年)[3]
オフィスに似せた部屋で、午前中に5回、明るさの異なる白い光を浴びながら注意の課題に取り組んでもらいました。短時間の強い光を浴びている間は、弱い光より単純な課題の反応が速くなりました。その後の複雑な注意の課題では、目の高さで1,360ルクスの明るさのほうが、130ルクスより反応がわずかに速くなりました。一方、眠気の感じ方は、光の条件による違いが見られませんでした。
対象: オーストリアの20〜50歳の56人(平均28.4歳、睡眠の問題がない人) / 限界: 午前中の短時間の効果だけを調べていて、夜の睡眠への影響はわかっていません。照明の試作品は共同研究者の照明会社が開発したものです。
03 まだわかっていないことどのくらいの明るさなら、集中を守れる?
まだわかっていません。研究ごとに光の強さや色、作業の内容がばらばらで、「何ルクスなら集中しやすい」という目安は示されていません。在宅の部屋で長く続けた研究もほとんどありません。
- 59本のまとめは、結果を数値でまとめたものではなく、研究ごとに条件が大きく違います。効果がなかった研究もふくまれています。
- どの実験も、短い時間の効果を調べたものです。明るい部屋で何週間も働いたときに、集中や疲れがどう変わるかはわかっていません。
- 実験の多くは、睡眠の問題がない若い大人が対象です。年齢の高い人や、睡眠不足が続く人で同じ結果になるかはわかりません。
- 昼間に明るい光を浴びることが夜の眠りにどう影響するかも、オーストリアの研究者は今後の課題としています。
04 今日からできるセルフケア昼間の薄暗い部屋で、ぼんやりを防ぐには?
明るさを足すことは手軽に試せる工夫の一つです。ただ、研究では眠気のたまり具合で効果が変わっていたため、明るくしても眠いときは、睡眠や休憩も合わせて見直すのが現実的です。
頭を使う作業の前に、手元と顔のまわりを明るくする
天井の照明に加えて机のライトをつける、窓の近くに移るなど、目の高さに届く光を増やします。実験では、目の高さの明るさが高いほうで複雑な課題の反応がわずかに速くなりました。光源が直接目に入らない向きにします。
目安 作業の前に1分
ぼんやりしやすい時間帯を1週間メモする
研究のまとめでは、光の効果は時間帯で変わっていました。頭が回らなくなる時間を記録し、その時間の前に部屋を明るくしたり、明るい場所で作業したりします。
目安 1日1行・1週間
明るくしても眠いときは、光以外を疑う
よく眠れている人の実験では明るさで変わらず、まとめでも眠気のたまり具合で効果が変わっていました。眠気が強い日は、前の晩の睡眠時間を確かめ、短い休憩をはさみます。
目安 眠い日に・休憩10分
午後の眠気には「午後になると眠くて頭が働かない」、部屋の空気には「閉めきった部屋にいると、頭がぼんやりして集中できない」、室温には「夏の暑い部屋で、頭が回らなくなるのを防ぎたい」も参考になります。
05よくある質問
昼間に部屋を明るくすると、集中しやすくなる?
条件によります。59本の研究のまとめでは、明るい白い光で目がさえ、反応が速くなった研究が多くありました。ただし、よく眠れている20〜30歳の50人の実験では、昼間に明るさを最大2,000ルクスまで上げても、目のさえ方ははっきり変わりませんでした。
部屋を明るくしても眠いのはなぜ?
研究のまとめでは、光の効果は、どれだけ眠気がたまっているかや時間帯で変わっていました。明るくしても眠気が強いときは、光より睡眠不足など別の原因が大きい可能性があります。
明るい部屋では、考える作業もはかどる?
はっきりしていません。研究のまとめでは、光の効果は単純な反応の速さより、複雑な作業のほうで結果がそろっていませんでした。オーストリアの56人の実験では、明るい光のもとで複雑な注意の課題の反応がわずかに速くなりました。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Siraji MA, Kalavally V, Schaefer A, Haque S (2021). Effects of Daytime Electric Light Exposure on Human Alertness and Higher Cognitive Functions: A Systematic Review. Frontiers in Psychology, 12, 765750. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.765750
- Lok R, Woelders T, Gordijn MCM, Hut RA, Beersma DGM (2018). White Light During Daytime Does Not Improve Alertness in Well-rested Individuals. Journal of Biological Rhythms, 33(6), 637–648. https://doi.org/10.1177/0748730418796036
- Canazei M, Dick M, Pohl W, Weninger J, Hubel N, Staggl S, Weiss EM (2023). Impact of repeated morning bright white light exposures on attention in a simulated office environment. Scientific Reports, 13, 8730. https://doi.org/10.1038/s41598-023-35689-1


