考える力・集中

AIに頼らず、自分でアイデアを出す力を保ちたい。23件の研究のまとめでは、歩いたあとは案を広げる力が大きく伸びていたが、1つの答えを絞り込む力は変わらなかった

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的指針0件を整理
木々の間に続く小道
Photo: Dreamy Pixel / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

企画やアイデアを考える場面で、まずAIに聞くのが当たり前になると、「自分で考える力が落ちないか」と心配になります。研究のまとめでは、考える前に少し歩くと、案を次々に出す力が大きく伸びていました。ただし伸びたのは「広げる」ほうで、答えを1つに絞り込む力は変わっていませんでした。

3行でわかる

  1. 歩くことと創造性の研究23件(計1,036人)のまとめでは、歩いたあとはアイデアを広げる力の成績が大きく上がり、根拠の確かさは「中くらい」とされていました。
  2. 1つの正解を見つける力には差がなく、屋内と屋外でも効果の大きさに統計的な差は見られませんでした。
  3. 案を出す前に歩き、絞り込みは座って行う。歩けない日は、画面を見つめずに体を自由にして考えるのが、研究に合った習慣です。

01 結論から言うと考える前に歩くと、アイデアは出やすくなる?

研究のまとめでは、出やすくなっていました。歩いたあとは、身近な物の使い道をたくさん挙げるような課題の成績が大きく上がっていました。ただし参加者の多くは大学生です。

アイデアを出す力は、研究では大きく2つに分けて調べられています。1つは「発散的思考(案を広げる力)」で、レンガの使い道をできるだけ多く挙げる、といった課題で測ります。もう1つは「収束的思考(答えを絞り込む力)」で、正解が1つに決まっている問題を解く課題で測ります。

歩くことで伸びていたのは、前者の「広げる力」でした。AIに聞く前に自分の案をいくつか出しておく、という使い方と相性がよい結果です。考える前にAIに聞いてしまう悩みは考える前に、ついAIに聞いてしまうでも整理しています。

02 研究とデータでわかっていること歩くと、考える力のどこが変わる?

案を広げる力は大きく伸び、答えを1つに絞り込む力は変わりませんでした。決まった道をまっすぐ歩くより、自由に歩くほうが、案の幅が広がっていました。

d = 0.93歩いたあとの「案を広げる力」の伸び。「大きい」に当たる差(20件の研究のまとめ、2026年)
d = 0.16「答えを絞り込む力」の差。統計的に意味のある差ではなかった(6件、2026年)
1,036人まとめに入った23件の研究の参加者。多くは大学生など
7.1 と 3.1ドイツの17人の実験で、自由に座ったときと画面の一点を見つめて座ったときの、案の種類の数の平均

Thabane ら / マクマスター大学ほか(2026)[1]

歩くことと創造性を調べた16本の論文・23件の研究(計1,036人)をまとめました。案を広げる力を測った20件を合わせると、歩いたあとの成績は大きく上がっていました(d = 0.93)。くじ引きで組を分けた研究だけに絞っても、大きな効果は変わりませんでした(d = 0.82)。

一方、答えを1つに絞り込む力を測った6件では、はっきりした差は見られませんでした(d = 0.16)。屋外で歩いた研究は屋内より効果が少し大きめでしたが、統計的な差ではありませんでした。23件のうち17件は屋内で歩く研究で、2分ほどの自由な歩行から、20分ほどのランニングマシンでの歩行までが含まれていました。

著者たちは、案を広げる力についての根拠の確かさを「中くらい」、絞り込む力については「とても低い」と評価しています。

対象: 23件の研究、計1,036人(多くは大学生など) / 限界: 研究ごとの結果のばらつきが大きく、効果が出た研究の多くが同じ研究者によるものでした。同じ人が歩く・座るの両方を行う研究では、効果が大きめに出やすいと著者たちが注意しています。

Rominger ら / グラーツ大学ほか(2022)[2]

歩くことに限らず、運動全般と創造性の研究をまとめた分析です。運動を取り入れた28件の研究(115の結果)を合わせると、アイデアを出す課題の成績は中くらいの大きさで上がっていました(g = 0.47)。

1回だけ運動する研究より、数日から数週間続ける研究のほうが効果が大きめでした。ふだんの運動量と創造性の関係を調べた7件の研究でも、よく体を動かす人ほど成績が高い関連が見られました。

対象: 大人と子どもの研究を含む28件の介入研究と7件の調査研究 / 限界: 運動の強さや種類の書き方が研究ごとにばらばらで、どんな運動が向いているかまでは比べられていません。著者たちも、きちんと組を分けた研究がもっと必要だと書いています。

Murali・Händel / ヴュルツブルク大学(2022)[3]

ドイツの大学生などを対象にした3つの実験です。1つ目の実験(20人)では、歩きながらのほうが、座っているときより物の使い道を多く挙げていました(1問あたり平均14.1個と12.7個)。

2つ目の実験(17人)では、部屋を自由に歩く、床の印で決めた幅の通路をまっすぐ往復する、いすに楽に座る、50cm先の画面の一点を見つめて座る、の4通りを比べました。案の種類の数は、自由に歩いたとき7.2、自由に座ったとき7.1だったのに対し、通路を往復したとき3.6、画面を見つめたとき3.1でした。差を生んでいたのは、歩くか座るかより、動きや視線をしばられるかどうかでした。

対象: ドイツの18〜35歳の17〜23人ずつ(3つの実験) / 限界: 少人数の実験で、課題は物の使い道を挙げるものだけです。仕事の企画のような実際の場面で同じになるかは調べていません。

03 まだわかっていないこと歩く習慣で、考える力は長く保てる?

まだわかっていません。研究の多くは、歩いた直後や歩いている最中の成績を測ったもので、歩く習慣がAIに頼りがちな人の考える力を長く保つかは調べられていません。

  • 何分歩くのがよいのか、速さや強さで違うのかは、比べた研究がまだ足りません。
  • 参加者の多くは大学生で、働く大人や高齢の人で同じ結果になるかははっきりしません。
  • 研究の課題は「物の使い道を挙げる」などの短いテストです。仕事の企画書や文章の質まで上がるかは調べられていません。
  • 歩いたあとにAIを使う場合と使わない場合で、アイデアの出方がどう違うかを調べた研究は見当たりませんでした。

04 今日からできるセルフケア自分でアイデアを出す力を保つには?

案を出す前に歩き、戻ったらすぐ書き出し、絞り込みは座って行う、という順番を習慣にします。歩けない日は、画面から目を離して楽な姿勢で考えます。

1

アイデア出しの前に歩く

企画やアイデアを考える前、AIに聞く前に、近所や建物の中を歩きます。考えるテーマを1つだけ頭に置いて、道順は決めずに歩きます。

目安 5〜15分

2

戻ったらすぐ、思いついた案を全部書く

良い案かどうかは気にせず、数を出すことだけを目標にします。ここまでは自分だけで行い、AIに聞くのは書き出したあとにします。

目安 3〜5分

3

絞り込みは、座って落ち着いて行う

歩いても答えを1つに絞る力は変わらなかったので、案を比べて選ぶのは机に戻ってからにします。AIに案の抜けを聞くのもこの段階です。

目安 10分

4

歩けない日は、画面を見つめずに考える

画面の一点を見つめて座った条件では、案の種類が半分以下でした。いすの背にもたれる、窓の外を見るなど、視線と体を自由にしてから考えます。

目安 考え始める前に1分

考えが煮詰まったときの離れ方はアイデアが出ないときは、いったん離れる、座りっぱなしを区切る効果は座りっぱなしで頭が回らなくなる、歩くことと気分の関係は散歩すると気分は軽くなる?で整理しています。

05よくある質問

歩くとアイデアが出やすくなるのは本当ですか?

研究のまとめでは、そう言える結果が出ています。23件の研究(計1,036人)を合わせると、歩いたあとはアイデアを広げる力の成績が大きく上がっていました。ただし参加者は大学生などが中心で、1つの正解を見つける力には差が見られませんでした。

外を歩かないと効果はありませんか?

同じまとめでは、屋内と屋外で効果の大きさに統計的な差は見られませんでした。23件のうち17件は屋内で歩く研究で、ランニングマシンの上を歩く実験も含まれています。雨の日は、廊下や部屋の中を歩くのでもかまいません。

何分くらい歩けばいいですか?

まとめに入った実験では、2分ほどから20分ほど歩く方法が多く使われていました。何分がいちばんよいかは、まだ調べられていません。まずは5〜15分を目安に試すと、研究で使われた範囲に収まります。

AIでアイデアを出すのはやめたほうがいいですか?

この記事で整理した研究は、AIを使うかどうかを比べたものではありません。先に自分で案を出し、そのあとでAIに足りない視点を聞く、という順番にすると、自分で考える時間を残しながらAIも使えます。

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出典

  1. Thabane, A., Arora, V., Boilard, J., Sutoski, A., Parpia, S., Calic, G., Busse, J. W., McKechnie, T., Staibano, P., Phillips, M., Reiter-Palmon, R., & Bhandari, M. (2026). The impact of walking on creative thinking: A systematic review and meta-analysis. PLOS One, 21(5), e0347878. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0347878
  2. Rominger, C., Schneider, M., Fink, A., Tran, U. S., Perchtold-Stefan, C. M., & Schwerdtfeger, A. R. (2022). Acute and Chronic Physical Activity Increases Creative Ideation Performance: A Systematic Review and Multilevel Meta-analysis. Sports Medicine - Open, 8, 62. https://doi.org/10.1186/s40798-022-00444-9
  3. Murali, S., & Händel, B. (2022). Motor restrictions impair divergent thinking during walking and during sitting. Psychological Research, 86(7), 2144–2157. https://doi.org/10.1007/s00426-021-01636-w