AIに慰めてもらわないと、気持ちが落ち着かなくなった。380人の実験では、慰めるだけの返事より、自分で立て直すコツを示す返事のほうが、AIなしでも気持ちが戻りやすかった

いやなことがあるたびにAIに話し、「大丈夫だよ」と言ってもらうと落ち着く。けれど、AIがないと気持ちを立て直せない気がしてきた。そんな人に向けて研究を整理しました。380人の実験では、慰めるだけの返事より、自分で立て直すコツを示す返事のほうが、AIなしでも気分が戻りやすくなっていました。
3行でわかる
- 中国の380人の実験では、AIの返事が慰める形でも、自分で立て直すコツを示す形でも、その場のいやな気分は同じくらい楽になった。
- 差が出たのはそのあと。コツを示す返事を受けた人は、AIなしで次のいやな場面に向き合ったとき、気分の戻りが大きく、AIが必要だと感じる度合いも低めだった。
- AIをやめる必要はない。気持ちの名前・別の見方・自分でできる一歩をAIと一緒に考え、AIなしでも同じ3つを書く練習をすると、自分で立て直す力を取り戻す手がかりになる。
01 結論から言うとAIに慰めてもらうのをやめるべき?
やめる必要はありません。研究で差が出たのは、慰めてもらうかどうかではなく、AIの返事の形でした。自分で立て直すコツを一緒に考える使い方に変えると、AIなしでも気持ちが戻りやすいという実験結果があります。
AIは、いつでもすぐに、否定せずに話を聞いてくれます。いやなことがあったときに頼りたくなるのは、自然なことです。実際、実験でも、AIとの短い会話でいやな気分ははっきり軽くなっていました。
気になるのは、「AIがいないと落ち着けない」と感じ始めたときです。2026年に発表された実験は、まさにこの点を調べました。慰めることを中心にした返事と、自分で気持ちを立て直す手順を示す返事を比べ、AIが使えない場面でどうなるかを見ています。
AIに相談してよい範囲そのものは「AIに悩みを相談してもいい?」、同じ不安を何度も聞き直してしまうときは「不安なことをAIに何度も聞き直してしまう」で扱っています。
02 研究とデータでわかっていることAIの慰め方で、そのあとの気持ちは変わる?
1回の実験では変わっていました。その場の楽になり方は同じでしたが、自分で立て直すコツを示す返事を受けた人は、AIなしの場面で気分が戻りやすく、またAIに頼りたい気持ちは弱めでした。
Wang(2026年)[1]
最近あった、がっかりした・不安になったなどの日常の出来事を思い出してもらい、AIと3往復の会話をしてもらいました。一方のグループのAIは、気持ちに名前をつけ、別の見方を促し、自分で選べる対処を1つ一緒に考え、本人の力を強調しました。もう一方のAIは、なぐさめと励ましをくり返し、いつでも話を聞くと伝え、またAIに話しに来るよう促しました。その場のいやな気分は、どちらも同じくらい下がりました(1〜7点で1.67点と1.61点)。
その後、AIを使わずに、別のいやな場面への向き合い方を書く課題をしてもらいました。コツを示すAIと話した人は、書いたあとにいやな気分が下がった幅が大きく(0.99点と0.71点)、自分で気持ちを扱える自信も高めでした(5.09点と4.59点)。慰めるAIと話した人は、「AIが必要だ」と感じる度合い(4.32点と3.31点)と、またAIに頼りたい気持ち(3.68点と3.05点)が強めでした。
対象: 中国・広州の大人380人(18〜48歳、平均25.2歳、57.1%が女性。会話型AIを使ったことがある人) / 限界: 1回の短い会話と、同じ日の実験室の課題だけの結果。「またAIに頼りたい気持ち」は、その場の気持ちで、依存を測ったものではない。実際にもう一度AIの返事を求めた人の割合(27.9%と36.8%)の差は、はっきりしなかった。
Morelloら(2023年)[2]
スマホなどを使って、出来事の受けとめ方を見直す練習(認知的再評価)を含むプログラムを調べた、30件のランダム化比較試験をまとめました。心の健康の指標全体で、小〜中くらいの効果がありました(効果の大きさ0.34)。不安と落ち込みの症状には効果が見られた一方、心の苦しさや幸福感では、はっきりしませんでした。
対象: 30件の試験・合計5,377人。18歳以上の大人で、20件は患者以外(その多くは症状がやや高め)、10件は患者 / 限界: 多くのプログラムは、見直しの練習以外の要素も含んでおり、見直しの練習だけの効果はわからない。多くの研究で偏りのおそれが高いと評価された。
Uğuzら(2026年)[3]
トルコの18〜30歳の610人に調査をしました。孤独を感じている人ほど、AIの対話サービスに頼る傾向が強いという関連がありました。また、周りの人から支えられていると感じている人ほど、AIに頼る傾向が弱いという関連もありました。AIを使う目的では、勉強や学習(39.2%)に次いで、気持ちの支え(23.8%)が多くなっていました。
対象: トルコの18〜30歳の610人(平均23.8歳) / 限界: 1回だけの調査で、どちらが原因かはわからない。すべて本人の回答による。
03 まだわかっていないことAIの使い方を変えれば、自分で立て直す力は戻る?
まだわかっていません。AIの返事の形で差が出たのは、1回の会話のあと、同じ日の課題だけです。何週間も使い方を変えたときに、自分で立て直す力が戻るかを確かめた研究は見当たりません。
- AIの返事の形を比べた実験は1件だけで、中国の比較的若い大人が対象だった。
- 研究で使われたAIの返事は、研究者が指示した形にそろえたもので、ふだん使うAIが同じように返すとは限らない。
- AIに慰めてもらうことが、長い目で見て依存につながるのかは、まだ調べられていない。
- 孤独とAIへの頼りやすさの関連は1回の調査で、どちらが先かはわからない。
04 今日からできるセルフケアAIなしでも気持ちを立て直すには、何から始める?
AIに話すときは、慰めの言葉だけでなく、気持ちの名前・別の見方・自分でできる一歩の3つを一緒に考えてもらいます。AIなしでも同じ3つを書く練習をし、自分で立て直せた経験を増やします。
AIに「3つを一緒に考えて」と頼む
「今の気持ちに名前をつけて」「別の見方はある?」「自分でできることを1つだけ一緒に決めたい」と頼みます。実験で、AIなしの場面でも気分が戻りやすかったのは、この3つを含む返事でした。一歩は、AIに決めてもらわず自分で選びます。
目安 5分・3往復ほど
AIを開く前に、自分で3行書く
いやなことがあったら、AIを開く前に「気持ち」「別の見方」「自分でできる一歩」を1行ずつ書きます。書けなかった行だけAIに相談します。実験でも、AIなしで向き合い方を書いたあと、いやな気分が下がっていました。
目安 3分・いやなことがあった時に
自分で立て直せた日を、1行で記録する
AIを使わずに落ち着けた日や、自分で選んだ一歩を実行できた日に、「何をしたら落ち着いたか」を1行書きます。実験では、自分で気持ちを扱える自信が高い人ほど、AIなしの課題での向き合い方が上手という関係がありました。
目安 1分・できた日に
AIに話すほど同じことを考え続けてしまうときは「AIに愚痴を聞いてもらうほど、いやなことが頭から離れない」も参考になります。
05よくある質問
AIに慰めてもらうのは、よくないこと?
よくないとは言えません。380人の実験では、慰める返事でも、自分で立て直すコツを示す返事でも、その場のいやな気分は同じくらい楽になっていました。差が出たのは、そのあとAIなしで気持ちを立て直す場面でした。
AIへの頼り方で、その後の気持ちは変わる?
1回の実験では変わっていました。気持ちに名前をつけ、別の見方と自分でできる一歩を考える返事を受けた人は、慰める返事を受けた人より、AIなしの課題で気分が戻りやすく、AIが必要だと感じる度合いも低めでした。何週間も続く効果はまだ確かめられていません。
AIに慰めてもらう回数が多いのは、依存のサイン?
回数だけでは判断できません。この記事の実験は、依存を診断するものではなく、1回の会話のあとに「またAIに頼りたい」と思う気持ちを測ったものです。AIが使えないとつらい、人に話さなくなった、と感じる場合は、使い方を見直すきっかけになります。
自分で気持ちを立て直す練習に、効果はある?
スマホなどで考え方の見直しを練習する方法を調べた30件の試験のまとめでは、心の健康に小〜中くらいの効果がありました。不安と落ち込みには効果が見られた一方、全体的な幸福感などでは、はっきりしませんでした。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Wang C (2026). How emotional response styles of generative AI companions shape adaptive emotion regulation and short-term AI reliance. Frontiers in Psychology, 17, 1950163. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1950163
- Morello K, Schäfer SK, Kunzler AM, Priesterroth LS, Tüscher O, Kubiak T (2023). Cognitive reappraisal in mHealth interventions to foster mental health in adults: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Digital Health, 5, 1253390. https://doi.org/10.3389/fdgth.2023.1253390
- Uğuz Ö, Doğan S, Güngör D (2026). Loneliness and AI chatbot dependence in young adults: the mediating role of perceived social support. BMC Psychology, 14, 1184. https://doi.org/10.1186/s40359-026-04916-5


