仕事とAIの不安

AIに仕事を奪われそうな不安で、挑戦する気持ちまでしぼみそう。中国の会社員583人の調査では、AIの使い方や得意・不得意をわかっている人ほど、不安があっても「伸びたい」気持ちが下がりにくかった

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的指針0件を整理
木の机に置かれたノート
Photo: Anntinomy / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

AIに仕事を取られるかもしれないと思うと、新しいことに手を出すより、今の仕事を守ることで頭がいっぱいになる。そう感じる人は少なくありません。結論から言うと、中国の会社員583人の調査では、AIの使い方や得意・不得意をわかっていると感じる人ほど、不安があっても「伸びたい」という気持ちが下がりにくい傾向がありました。

3行でわかる

  1. AIで仕事を奪われる不安が強い人ほど、「失敗や損を避けたい」意識が強く、仕事を減らしたり避けたりする工夫が多い関連があった。
  2. AIを使いこなし、できること・できないことを見分けられると感じる人では、不安と「伸びたい」気持ちの低下との結びつきが半分以下に弱まっていた。
  3. ただし調査研究で、AIを学べば不安が減ると確かめた実験ではない。日本の働く人でも同じかはわかっていない。

01 結論から言うとAIの不安で守りに入るのは防げる?

ある程度は防げる可能性があります。AIの使い方や限界をわかっていると感じる人ほど、仕事を奪われる不安があっても、挑戦する気持ちが下がりにくく、守りに偏りにくい傾向がありました。ただし調査で見えた関連です。

ここでいう「守り」は、研究で「予防の構え」と呼ばれるものです。仕事で損をしない、間違えない、言われたことを確実にこなす、という方向に意識が向く状態です。反対の「伸びたい」気持ちは「促進の構え」と呼ばれ、昇進や成長、理想の働き方に意識が向く状態です。

どちらも誰にでもあるもので、守りの構えが悪いわけではありません。ただ、不安から守りだけに偏ると、新しい仕事の進め方を試す機会が減りやすいと考えられています。AIの仕組みや限界を知っていることが、その偏りを和らげる手がかりになるかもしれない、というのが今回の研究の見方です。

02 研究とデータでわかっていることAIを知っている人は、不安の影響が小さい?

中国の会社員583人の調査では、AIを知っていると感じる人ほど、仕事を奪われる不安と「伸びたい」気持ちの低下の結びつきが弱くなっていました。96件の研究のまとめでも、技術による雇用不安は、仕事から距離をとる行動と関連していました。

583人2週間おきに3回答えた中国の会社員(2026年発表)
0.27→0.11不安が強いほど「伸びたい」気持ちが下がる結びつきの強さ。AIを知る度合いが低い人と高い人の比較(同じ調査)
0.44仕事を奪われる不安と、仕事を減らしたり避けたりする工夫との相関(同じ調査)
96件技術で仕事を失う不安を調べた研究のまとめ(合計4万3,104人、2026年発表)

FanとWang(2026)[1]

AIに仕事を奪われる不安が強い人ほど、「損や失敗を避けたい」意識が強く、その意識を通して、面倒な作業を避けたり会議の時間を減らしたりする「避ける方向の工夫」が多い関連がありました(不安との相関は0.44)。一方で不安が強い人ほど「伸びたい」気持ちは弱く、それを通して、新しい技術を取り入れる・人脈を広げるといった「広げる方向の工夫」が少なくなる流れも見られました。AIを知っていると感じる度合いが高い人では、不安と「伸びたい」気持ちの低下との結びつきが弱く、低い人の約0.27に対して約0.11でした。不安と「損を避けたい」意識の結びつきも、0.49から0.40に弱まっていました。

対象: 中国のさまざまな業種の会社員583人(女性50.4%、35歳以下が約7割)。不安とAIの知識、2週間後に構え、さらに2週間後に仕事の工夫を答えた。AIの知識は、気づく・使う・見極める・倫理の4つの面を本人が答えた(例:「しばらく使えば、できること・できないことを判断できる」) / 限界: 自分で答えた調査で、因果関係はわからない。WeChatでの紹介などで集めた人で、デジタルに慣れた人が多かった可能性がある。不安が強い人ほど「広げる方向の工夫」が減る、という全体の関連ははっきりしなかった。

LiangとWong(2026)[2]

技術に仕事を奪われる不安を調べた96件の研究をまとめると、不安が強い人ほど、仕事への前向きな気持ちが低く(相関−0.41)、すぐに感じるつらさが強く(0.41)、仕事から距離をとる行動が多い(0.34)関連がありました。学ぶ力が高い集団では、不安とすぐに感じるつらさとの結びつきが弱くなっていました。

対象: 96件の研究、合計4万3,104人 / 限界: 「学ぶ力」は各研究の大卒以上の割合で代わりに測っており、一人ひとりの力ではない。長い目で見た心の状態との結びつきには、学ぶ力による違いは見られなかった。多くは関連を見た研究。

Gülerら(2026)[3]

トルコで理学療法を学ぶ大学生438人では、AIの知識があると感じる人ほど、将来の仕事に楽観的でした(相関0.396)。AIへの不安は弱く関連していましたが(−0.147)、年齢や成績、AIの使用頻度などをそろえると、将来への楽観と独立して結びついていたのはAIの知識のほうだけでした。

対象: アンカラとコンヤの大学で理学療法・リハビリテーションを学ぶ学生438人(2026年2〜3月にオンラインで調査) / 限界: 1回だけの調査で因果関係はわからない。AIの知識は本人の感じ方で、テストで測ったものではない。働く人ではなく学生。

3つを並べると、AIの不安を「なくす」より、AIの使い方と限界を少しずつ知っておくことが、守りに偏りすぎないための支えになりうるという見方が浮かびます。変化に合わせられる感覚との関係は、AIで仕事がなくなる不安に身構えすぎないための記事で、職場の支えとの関係は、AIで仕事が変わる不安をひとりでためこまないための記事で整理しています。

03 まだわかっていないことAIを学べば不安は減ると言える?

まだ言えません。今回の研究はどれも調査で、AIを学ぶ練習をした人としなかった人を比べた実験ではありません。不安が少ない人ほどAIを学びやすい、という逆向きの可能性も残っています。

  • AIの知識を高める練習をすると、仕事の不安や守りの構えが変わるのかを確かめた実験は、見つけられなかった。
  • 中心の研究は中国の会社員で、日本の働く人や、年齢の高い人、AIをほとんど使わない人に当てはまるかはわからない。
  • AIの知識は本人の感じ方で測られていて、実際の知識や技能とは違う可能性がある。
  • 結びつきが弱まる幅は大きくなく、AIを知っている人でも不安は守りの構えとはっきり結びついていた。

04 今日からできるセルフケアAIの不安で守りに入りすぎないためには?

研究で測られた「AIを知っている」は、使ってみる、できること・できないことを見極める、という身近な行動でした。お金をかけずに、少しずつ試せることから始められます。

1

自分の仕事を「任せやすい作業」と「人の判断が要る作業」に分けて書く

ふだんの仕事を5〜10個書き出し、AIに手伝わせやすいものと、相手との話し合いや判断が要るものに分けます。漠然とした「全部奪われる」という不安を、具体的な形にできます。

目安 10分・月に1回

2

小さな作業を1つAIで試し、できたことと間違えたことをメモする

メールの下書きや資料の要約など、失敗しても困らない作業で試します。「ここは使える」「ここは確かめ直しが要る」を1行ずつ残すと、AIの限界を見極める力が少しずつ育ちます。

目安 15分・週に1回

3

「守りたいこと」の横に「伸ばしたいこと」を1つ書く

不安なときは、失いたくないものばかりが浮かびます。その横に、この1年で身につけたいこと、やってみたい仕事を1つだけ書き足し、「伸びたい」気持ちの置き場所をつくります。

目安 5分・不安が強い日に

4

避けたくなった仕事に気づいたら、理由を一言で書く

会議や新しい作業を避けたくなったとき、「疲れているから」「不安だから」と理由を一言書きます。不安からの回避が続いているとわかったら、同僚に聞く・小さく試すなど、別の一歩を選びやすくなります。

目安 1分・気づいたときに

05よくある質問

AIの不安が強いのは、AIを知らないせい?

そうとは限りません。中国の会社員の調査では、AIの知識がある人でも、仕事を奪われる不安は「失敗を避ける」意識と結びついていました。知識があると、その結びつきが少し弱かったという結果で、不安そのものが消えるわけではありません。

AIのことを勉強すれば、不安はなくなる?

そこまではわかっていません。今回の研究は調査で、AIを学ぶ練習をした人と、しなかった人を比べた実験ではありません。学ぶことで不安が減るかは、これからの研究を待つ必要があります。

仕事の一部を避けたくなるのは、悪いこと?

悪いとは限りません。研究で「避ける方向の工夫」とされたのは、面倒な作業や会議の時間を減らすような行動で、必要な場面もあります。ただ、不安から避けることが続くと、新しいことに手を出す機会も減りやすい点には気をつけておけます。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Fan, C., & Wang, H. (2026). Job Replacement Anxiety and Approach-Avoidance Job Crafting: The Roles of Regulatory Focus and AI Literacy. Behavioral Sciences, 16(9), 1519. https://doi.org/10.3390/bs16091519
  2. Liang, J., & Wong, C.-H. (2026). Navigating the Digital Storm: A Systematic Review and Meta-Analysis of Technology-Induced Job Insecurity, Its Outcomes and Moderators. Behavioral Sciences, 16(9), 1474. https://doi.org/10.3390/bs16091474
  3. Güler, M. A., Demirdel, S., Demirdel, E., & Güler, M. B. (2026). Artificial intelligence literacy, rather than artificial intelligence anxiety, is associated with career optimism in physiotherapy and rehabilitation students: a cross-sectional study. BMC Medical Education, 26, 1462. https://doi.org/10.1186/s12909-026-09899-w