AIにおすすめを絞ってもらうと、すぐ決まるのに後悔が残る。韓国の17人の実験では、好みの候補だけから選ぶと速く決まった一方、選んだあとの後悔は大きかった

旅行先も、夕飯の店も、買う家電も、AIに聞けば「あなたにおすすめの3つ」がすぐに出てきます。迷う時間は減ったのに、決めたあとで「本当にこれでよかったのかな」とモヤモヤが残る。そんな感覚に心当たりはありませんか。候補を絞って選ぶ実験では、速く決まって満足度も高いのに、自信は下がり、後悔は大きくなるという、ちぐはぐな結果が出ていました。
3行でわかる
- 韓国の17人の実験では、好みの候補だけから映画を選ぶと速く決まり、満足度も高かった一方、選んだあとの後悔は7段階で平均5.69と、好みでない候補から選んだときの2.92より大きかった。
- 自分で先に候補を絞ってから選んだ28人の実験でも、決めるのは速くなったが、選んだものの良さは上がらず、後悔はやや大きかった。
- 香港の652人の実験では、1つだけ示されるより4つや16個から選べるほうが行動に移す人が多かった。AIの答えを1つにしぼるより、先に自分の基準を書いてから比べるのが手がかりになる。
01 結論から言うとAIに候補を絞ってもらうと、なぜ後悔が残る?
候補がしぼられて選びやすくなると、人は比べる手間をあまりかけずに決めやすくなり、そのぶん自信が下がって後悔が残りやすいと考えられます。AIのおすすめそのものを調べた研究ではなく、候補をしぼる実験からの推測です。
選択肢が多すぎると選べなくなることは「選択のオーバーロード(選びすぎの負担)」と呼ばれ、長く研究されてきました。そこで、候補を減らせば楽になるはず、と考えがちです。
ところが韓国の実験では、好みの候補だけにしぼって選ぶと、決めるのは速くなっても、選んだ人自身が「いちばんいいものを選べた」と思いにくく、後悔が大きくなっていました。研究者らは、選びやすくなったぶん頭を使う量を節約してしまい、よく比べないまま決めたことが関わっていると考えています。ここで紹介するのは映画のポスターを選ぶ実験で、AIのおすすめに同じことが起きるかは確かめられていません。
02 研究とデータでわかっていること候補をしぼると、選び方はどう変わる?
好みの候補だけから選ぶと速く決まり満足度も高い一方、自信は下がり、後悔は大きめでした。自分で候補をしぼってから選んでも、選んだものの良さは上がりませんでした。一方で、選択肢が1つだけより、いくつかあるほうが行動に移す人は多くなっていました。
Seo ら(2026)[1]
映画のポスターを6〜24枚並べ、見たい1本を選んでもらう実験を2つ行いました。1つめは、本人が前もって高く評価したポスターだけを並べる条件(好みの候補だけ)と、低く評価したものだけを並べる条件の比較です。好みの候補だけのときは決めるのが速く(平均5.85秒と7.38秒)、楽しさや満足度も高い一方、「いちばんいいものを選べた」という自信は低く、後悔は7段階で平均5.69と、もう一方の2.92より大きくなっていました。候補の数が増えるほど、好みの候補だけの条件では、並んだ中でいちばん好きなものを選べる度合いが大きく下がっていました。2つめは、先に自分でお気に入りに印をつけ、その中から選ぶ実験です。この場合も決めるのは速くなりましたが、選んだものの良さは変わらず、自信は下がり、後悔は大きめでした。
対象: 韓国の大学の実験に参加した主に大学生。1つめは18人(18〜27歳)が参加し17人を分析、2つめは30人(19〜32歳)が参加し28人を分析 / 限界: 人数が少なく、映画のポスターを選ぶ実験室の課題です。AIのおすすめを使ったわけではありません。
Yeung ら(2025)[2]
オンラインで参加した人を、心のセルフケアの練習を1つだけ示される組、4つから選べる組、16個から選べる組に分けました。「練習をやる」と選んだのは、1つだけの組で約4人に1人だったのに対し、4つの組と16個の組では約半数でした。選んだことへの満足も、1つだけの組より4つや16個の組のほうが高くなっていました。
対象: 香港で大学のメールやSNSを通じて集めた652人(平均21.77歳) / 限界: その場1回の選択と練習を調べたもので、2週間後の調査は回答が少なく分析できていません。AIが選択肢を出す場面ではありません。
Misuraca ら(2024)[3]
選択肢の多さと選びにくさの研究を整理したレビューです。この論文が紹介している先行研究のまとめ(メタ分析)では、選びすぎの負担はいつでも起きるのではなく、条件しだいで起きるとされています。条件として、好みや基準がはっきりしているか、「決めること」が目的か「眺めること」が目的か、時間に追われているか、いちばんを探すタイプか「これで十分」で決めるタイプかなどが挙げられています。理想の選択肢を先に思い描けていると選ぶ難しさが小さくなり、その差は候補が多いときほど大きいという先行研究も紹介されています。
対象: 選択肢の多さに関する査読論文 / 限界: 研究を集めて整理したレビューで、新しい実験ではありません。AIのおすすめを扱った研究は含まれていません。
迷ったときにAIに決めてもらわないと落ち着かない場合は「AIに選んでもらわないと、小さなことも決められない」、AIの答えにそのまま乗ってしまう癖は「AIに頼りすぎて、自分で決められなくなった気がする」で整理しています。
03 まだわかっていないことAIのおすすめでも、同じように後悔は残る?
AIが出したおすすめから選んだときの満足や後悔を、直接調べた研究は見当たりませんでした。ここでの結果は、映画のポスターや心のセルフケアの練習を選ぶ実験と、選択肢の研究のレビューからの推測です。
- AIが理由つきで候補を出したとき、ただ並べられたときと同じように後悔が大きくなるかはわかっていません。
- 韓国の実験は17人と28人と少なく、映画という気軽な選択でした。家や仕事など大きな決断で同じになるかは確かめられていません。
- 後悔は選んだ直後に答えてもらったもので、時間がたってから後悔が続くかはわかりません。
- 研究者らが提案する「候補どうしの違いを目立たせる」工夫が、実際に後悔を減らすかはまだ試されていません。
04 今日からできるセルフケアAIのおすすめで決めたあと、モヤモヤしないためには?
AIに聞く前に自分の基準を書き、出てきた候補の違いを自分の言葉で1行ずつ比べてから決めます。「いちばん」ではなく「これで十分」の線を先に決めておくのも一つの方法です。
AIに聞く前に、自分の基準を3つ書く
「予算は5千円まで」「駅から近い」など、ゆずれない条件をメモしてから質問します。選択肢のレビューでは、好みや理想がはっきりしている人ほど、候補が多くても選ぶ難しさが小さいとされていました。
目安 2分
候補を2つ並べ、違いを自分の言葉で1行書く
「Aは近いけど高い、Bは安いけど遠い」のように、何を取って何をあきらめるかを書き出してから決めます。韓国の研究者らは、あっさり決まりすぎるのを防ぐために、候補の違いを目立たせる工夫を提案しています(効果はまだ試されていません)。
目安 3分
答えは1つではなく、3〜4個出してもらう
AIに「1つに決めて」と頼む代わりに、少し幅をもたせて候補を出してもらい、最後は自分で選びます。香港の実験では、1つだけ示されるより、4つから選べるほうが行動に移す人が多くなっていました。
目安 1回の質問
「これで十分」の線を先に決める
基準を満たすものが見つかったら、そこで決めると先に決めておきます。レビューでは、いちばんを探し続けるタイプの人ほど、選択肢が多いときに疲れや不満を感じやすいとされていました。
目安 1分
05よくある質問
AIに1つだけ決めてもらえば、迷わずに済みますか?
迷う時間は減るかもしれませんが、行動につながりやすいとは限りません。香港の652人の実験では、心のセルフケアの練習を1つだけ示された組で「やる」と選んだのは約4人に1人で、4つや16個から選べた組では約半数でした。AIの話ではありませんが、自分で選ぶ余地を少し残すほうがよい場面もあると考えられます。
選択肢は少ないほど、満足できるのではないですか?
そうとは限りません。選択肢の多さの研究をまとめたレビューでは、選びすぎの負担が出るかどうかは、好みがはっきりしているか、決めることが目的か、時間に追われているかなどの条件で変わるとされています。数を減らすことより、自分の基準がはっきりしているかが関わっていると考えられます。
決めたあとに後悔するのは、選び方が悪かったからですか?
そうとは言えません。韓国の実験では、好みの候補だけから選んだときのほうが、選んだものへの満足度は高い一方で、後悔も大きくなっていました。研究者らは、あっさり決まりすぎて比べる手間が減ったことが、自信の低さと後悔につながった可能性を挙げています。
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出典
- Seo, S., Lee, S., Lee, N., & Kim, S.-P. (2026). Reducing cognitive demand fails to mitigate choice overload: Multimodal neural and gaze evidence for effort conservation. iScience, 29(10), 117616. https://doi.org/10.1016/j.isci.2026.117616
- Yeung, S. K., Leung, F. H. T., Lee, J. C. M., Cheung, G. M. H., Li, C. W., & Mak, W. W. S. (2025). Effects of Choice Set Sizes and Moderations of Anxiety and State Emotions on Mental Health Self-Care Uptake, Engagement, and User Experience: Experimental Study. JMIR Human Factors, 12, e71165. https://doi.org/10.2196/71165
- Misuraca, R., Nixon, A. E., Miceli, S., Di Stefano, G., & Scaffidi Abbate, C. (2024). On the advantages and disadvantages of choice: future research directions in choice overload and its moderators. Frontiers in Psychology, 15, 1290359. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1290359


