仕事とAIの不安

AIを使うようになって、自分の役割がわからなくなった。中国の会社員541人の調査では、生成AIを使う人ほど「何を期待されているかわからない」感覚が強い一方、仕事の幅を広げる自信も高まっていた

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的指針0件を整理
木の机の引き出しに並んだ文房具とノート
Photo: Palm Beach Police Department / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

AIが下書きも提案も出してくれるようになって、仕事は進むようになった。それなのに「自分は何をする人なんだろう」と、足元がぐらつく感じがする。そう感じるのは、あなたの力不足のせいではありません。研究では、生成AIを使う働き方そのものが、役割の線を引きにくくすることが調べられています。

3行でわかる

  1. 中国の会社員541人の調査では、生成AIをよく使う人ほど「何を期待されているかわからない」という役割のあいまいさを強く感じていた。
  2. 同じ人たちで、仕事の幅を広げられるという自信も同じくらい高く、AIは役割を「ぼやけさせる」と「広げる」の両方に関わっていた。
  3. AIの得意・不得意や任せてよい作業を見分けられる人ほど、あいまいさとの結びつきは弱かった。どの研究も1回か短期間の調査で、因果はまだわからない。

01 結論から言うとAIを使うと、自分の役割があいまいになるのはなぜ?

AIが仕事の一部を担うと、どこまでが自分の担当で、何を期待されているかの線が引きにくくなるためと考えられています。調査では、生成AIを使う人ほど役割のあいまいさを感じていました。

ここでいう「役割のあいまいさ」は、心理学の用語です。自分の仕事の範囲や、周りから期待されていることがはっきりしない状態を指します。

AIが案を出し、文章を整え、判断の材料まで用意してくれると、自分が担う部分が見えにくくなります。研究者たちは、責任の所在や決める権限がぼやけることも理由として挙げています。

一方で、AIを使うことで「もっと広い仕事も引き受けられる」という自信が高まる面もありました。ぐらつきと手応えは、同じ人の中で同時に起きうるものです。

02 研究とデータでわかっていること役割のあいまいさと仕事の不安は、どんな人で強い?

AIの得意・不得意を見分けられる人ほど、AIを使っても役割のあいまいさが強まりにくい傾向がありました。職場のAI活用が深まりすぎると、仕事を失う不安が高まる調査もあります。

541人役割のあいまいさを調べた中国のハイテク企業5社の会社員(2026年発表)
約4分の1AIをよくわかっている人では、AIの使用とあいまいさの結びつきの強さが、わかっていない人の約4分の1だった
U字職場のAI活用と仕事を失う不安の関係(中国の会社員411人、2026年発表)
321人AIで将来が脅かされると感じる程度と、落ち込みとの関連を調べた2回調査の人数(2023年発表)

Zhangら(2026)[1]

生成AIをよく使う人ほど、役割のあいまいさを強く感じていた(標準化した係数0.347)。同時に、仕事の幅を広げられるという自信も同じ大きさで高かった(同0.347)。役割があいまいな人ほどAIとの協働は少なく、自信が高い人ほど協働は多かった。

AIの使い方・得意不得意・倫理をわかっている程度(AIリテラシー)が低い人では、AIの使用とあいまいさの結びつきが0.558だったのに対し、高い人では0.140と弱かった。

対象: 中国・天津のハイテク企業5社で、生成AIを使った経験のある会社員541人(女性49%) / 限界: 1回きりの調査で、AIを使ったことがあいまいさの原因とまでは言えない。ChatGPTのような汎用ツールを自分の判断で使う場面に限られる。

Fu・Zhang(2026)[2]

勤め先でのAI活用の度合いと、仕事を失う不安の間にはU字の関係が見られた。活用がほどほどの範囲では不安が低めで、活用が深まりすぎると不安が高まっていた。自分ならやり遂げられるという感覚(自己効力感)が高い人では、ほどほどの活用で不安が下がる働きが強く、活用しすぎで不安が高まる働きは弱かった。

対象: 中国の製造業・小売・IT・金融などで働く411人 / 限界: 1回きりの調査で、時間とともに関係が変わるかはわからない。AI活用の度合いは本人の受け止め方で測っている。

Xuら(2023)[3]

AIが自分の将来の仕事を脅かすと感じている人ほど、約2週間後の調査で気分の落ち込みが強い関連があった(係数0.18)。この関連は、心のエネルギーが尽きた感じ(情緒的消耗)を通じて説明されていた。会社から支えられていると感じる人では、消耗と落ち込みの結びつきが弱かった。

対象: 中国の大学の研究チームによる、さまざまな職業の働く人321人(25〜40歳が89.1%)の2回調査 / 限界: 役割のあいまいさそのものは測っていない。落ち込みの度合いは質問票で測ったもので、診断ではない。

03 まだわかっていないことAIが原因で役割が見えなくなる、と言える?

まだ言えません。ここで紹介した研究はどれも中国の働く人を1回か約2週間あけて調べたもので、AIを使ったからあいまいになったのか、もともとの職場の事情なのかは区別できていません。

  • 同じ人を何か月も追いかけて、AIを使い始めてから役割の感じ方がどう変わるかは、ここで紹介した研究では調べられていない。
  • 日本の職場で同じ結果になるかは確かめられていない。上司との関係や仕事の分け方の文化で変わる可能性がある。
  • AIリテラシーを高める研修をすると、役割のあいまいさが本当に減るのかを試した実験はまだない。
  • 「ほどほど」のAI活用がどのくらいの量なのかは、研究によって測り方が違い、目安は出ていない。

04 今日からできるセルフケアAIと働く中で、自分の役割を見失わないためには?

AIに任せた部分と自分が判断した部分を言葉にし、期待されていることを周りと1つずつ確かめるのが、研究の知見から考えられるお金のかからない工夫です。

1

AIに任せたことと、自分が決めたことを書き分ける

1日の終わりに、今日の仕事でAIが担った部分と、自分が判断・確認した部分を2列で書き出します。研究で役割のあいまいさを和らげていた「任せてよい作業を見分ける力」を、自分の仕事で確かめる練習になります。

目安 1日5分、1週間

2

「期待されていること」を1つだけ確かめる

研究で使われた質問は「自分に何が期待されているか正確にはわからない」でした。上司や同僚に「この作業、AIの下書きのあとは私が最終確認する形でいいですか」のように、具体的な1点だけ聞いてみます。

目安 週1回、5分の会話

3

AIが苦手なことを1つ試して確かめる

普段の作業でAIの答えをわざと1つ検証し、間違いやすい点や自分が補った点をメモします。AIの得意・不得意がわかるほど、自分の出番も見えやすくなります。

目安 週1回、15分

4

任せる範囲を一度に広げすぎない

活用が深まりすぎると不安が高まる調査もありました。新しくAIに任せる作業は1週間に1つずつにして、そのたびに自分の役割がどう変わったかを振り返ります。

目安 週1つずつ

05よくある質問

AIを使うと、自分の役割があいまいになるのはなぜ?

AIが下書きや提案まで出してくれると、どこまでが自分の仕事で、何を期待されているのかの線が引きにくくなるためと考えられています。中国の会社員541人の調査では、生成AIをよく使う人ほど役割のあいまいさを強く感じていました。ただし調査は1回きりで、AIが原因とまでは言えません。

役割があいまいに感じるのは、AIを使うのが向いていないから?

そうとは言えません。同じ調査では、生成AIを使う人ほど、仕事の幅を広げられるという自信も同じくらい高まっていました。あいまいさと自信は、同じ人の中で同時に起きうるものとして扱われています。

AIを使えば使うほど、仕事の不安は増える?

中国の会社員411人の調査では、職場のAI活用がほどほどの範囲では仕事を失う不安が低めで、活用が深まりすぎると不安が高まるU字の関係が見られました。使う量と不安は一直線の関係ではなさそうです。

会社がAIの研修をしてくれない。自分でできることは?

研究では、AIの得意・不得意や任せてよい作業を見分けられる人ほど、AIを使っても役割のあいまいさが強まりにくい傾向がありました。普段の作業でAIに任せた部分と自分で判断した部分を書き分けてみるなど、お金をかけずにできる確かめ方があります。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Zhang Q, Zhang J, Dong S. (2026). Dual pathways of generative AI use: role ambiguity and self-efficacy in employee-AI collaboration. Frontiers in Psychology, 17, 1793095. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1793095
  2. Fu W, Zhang H. (2026). The impact of artificial intelligence application on employees' job insecurity: the moderating roles of self-efficacy and transformational leadership. Frontiers in Psychology, 17, 1786588. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1786588
  3. Xu G, Xue M, Zhao J. (2023). The Association between Artificial Intelligence Awareness and Employee Depression: The Mediating Role of Emotional Exhaustion and the Moderating Role of Perceived Organizational Support. International Journal of Environmental Research and Public Health, 20(6), 5147. https://doi.org/10.3390/ijerph20065147