テレワークで常に見られている気がして疲れる。3,508人の調査で、つらさと関わっていたのは「自分で決められなさ」とプライバシーの侵害感

在宅で働いていると、パソコンの操作記録やチャットの「在席」表示が気になって、トイレに立つのもためらう。オフィスにいたときより、むしろ見られている気がして疲れる。そう感じる人は少なくありません。研究では、仕事を見張られている感覚そのものより、それに伴う「急かされる感じ」「自分で決められない感じ」「のぞかれている感じ」が、心の負担と関わっていることが見えてきました。
3行でわかる
- カナダの働く人3,508人の調査では、仕事を見張られていると感じる人ほど心の負担が大きい傾向があり、その関連は仕事のプレッシャー・自分で決められなさ・プライバシーの侵害感で説明されていました。
- 在宅勤務の研究69本の整理では、コールセンターなど細かく記録される仕事で、在宅でも監視がデジタルの形で続き、仕事と家の境目が崩れていました。
- 41件の文献を整理した研究では、記録が「罰するため」でなく「成長のため」に使われ、理由が説明されるときに、働く人が力を発揮し続けやすいとまとめられていました。
01結論から言うと
テレワークで見られている気がして疲れるのは、自然な反応です。研究では、つらさとの関連は「見られていること」そのものより、急かされる感じ・自分で決められない感じ・のぞかれている感じを通じたものだったので、その3つに手を打てます。
在宅勤務では、上司の目が届かない代わりに、操作記録やオンライン表示、作業時間の記録などで仕事が把握されることがあります。
記録されていると、「サボっていると思われないか」と気になり、ペースを自分で決めにくくなります。家という私的な場所で記録されることに、落ち着かなさを感じる人もいます。
一方で、記録が自分の成長や公平な評価に役立つと感じられる場合は、受け止め方が変わる可能性も指摘されています。何が、何のために記録されているかを知ることが出発点になります。
02研究とデータでわかっていること
見張られている感覚は心の負担と関連していましたが、その関連はプレッシャー・自分で決められなさ・プライバシーの侵害感を通じたものでした。記録の目的や説明のしかたで、受け止め方が変わる可能性も示されていました。
Glavinら(2024年)[1]
カナダ全国の働く人3,508人に、仕事がどのくらい記録・監視・評価されていると感じるかを尋ねました。見張られていると感じる人ほど、仕事のプレッシャーが強く、自分で決められる範囲が狭く、プライバシーを侵されていると感じていました。心の負担との関連は、この3つで説明されていました。一方、仕事の満足度については、見張られている感覚には満足度が高い方向の直接の関連もあり、悪い方向の関連と打ち消し合っていました。
対象: カナダの働く人3,508人(2021年9月、オンライン調査) / 限界: 1回だけの調査で、見張られている感覚が心の負担の原因かどうかはわかりません。
Leeら(2026年)[2]
接客などサービス職の在宅勤務と働く人の健康を調べた研究69本を整理しました。コールセンターなど決まった手順で働き、細かく記録される仕事では、在宅になってもデジタルの記録で管理が続き、席を立ちにくい状態や、仕事と家の境目が崩れる状態が報告されていました。
対象: 2000〜2025年に発表された69本の研究 / 限界: 細かく記録される仕事を扱った研究は3本だけで、はっきりした結論は出せない段階です。
Lu(2026年)[3]
ソフトウェアによる仕事の割り振りや記録、評価についての文献41件を整理しました。働く人が長く力を発揮し続けやすいのは、仕事の進め方や判断を自分で決められる余地が残り、記録が罰するためでなく成長のために使われ、理由の説明や異議を伝える手段がある場合だとまとめていました。
対象: 2015年〜2026年1月の文献41件 / 限界: 文献を整理して考え方をまとめたもので、新しくデータを集めて確かめた研究ではありません。
Zhangら(2025年)[4]
中国のインターネット金融の会社で働く人223人に2回に分けて尋ねたところ、成長を助けるための記録も、ミスを防ぐための記録も、仕事ぶりの高さと関連していました。その一部は「自分ならできる」という感覚を通じたつながりでした。
対象: 中国のインターネット金融の会社で働く人223人(2024年) / 限界: 心の負担ではなく仕事ぶりを調べた研究で、仕事ぶりも働く人自身の回答にもとづいています。
03まだわかっていないこと
テレワークでの監視と心の負担を、時間を追って調べた研究はまだ少なく、日本の働く人での研究も見つかりませんでした。
- 紹介した研究の多くは1回だけの調査や文献の整理で、見られている感覚が心の負担の原因になっているかは確かめられていません。
- 日本のテレワークで、どのくらいの人が「見張られている」と感じているかのデータは見つかりませんでした。
- カメラの常時オンや操作記録など、記録の種類ごとに心への影響がどう違うかも、まだわかっていません。
04今日からできるセルフケア
何が・何のために記録されているかを確かめる、作業の順番や休憩を自分で決めて予定に入れる、終わりの時刻を決めてパソコンを閉じる、の3つです。どれもお金をかけずにできます。
「何が・何のために」記録されているかを確かめる
社内の規程を読むか、上司や担当者に「どんな記録を何に使っているか」を聞きます。研究では、理由の説明や意見を伝える手段があることが大切だとまとめられていました。わからないままの不安が一つ減ります。
目安 一度・15分
作業の順番と休憩を、自分で決めて予定に書く
朝に今日の作業の順番と休憩の時間を予定表に書き、共有しておきます。自分で決められる感覚の低さが、心の負担と関わっていました。休憩も「予定どおり」と思えると、席を離れやすくなります。
目安 毎朝・5分
終わりの時刻を決めて、パソコンを閉じる
在宅では仕事と家の境目が崩れやすいことが報告されていました。終業時刻にパソコンを閉じ、仕事用の画面や通知を見ない時間をつくります。
目安 毎日
記録を「成長のため」に使う相談をする
面談などで「この記録を、自分の働き方の改善にどう使えるか」を上司と話してみます。記録が成長のために使われると感じられると、受け止め方が変わる可能性が指摘されていました。
目安 月1回・10分
05よくある質問
テレワークで見られている気がして疲れるのはおかしい?
おかしくありません。カナダの働く人3,508人の調査では、仕事を見張られていると感じる人ほど心の負担が大きい傾向がありました。その関連は、プレッシャー・自分で決められなさ・プライバシーの侵害感で説明されていました。
在宅勤務でパソコンの操作が記録されていると、ストレスになる?
記録そのものより、それによって急かされる感じや、自分で決められない感じが強まると、心の負担と関わりやすくなります。何が何のために記録されているかを確かめると、不安が小さくなることがあります。
在宅勤務で休憩を取りにくいときはどうすればいい?
朝のうちに休憩の時間を予定表に入れ、共有しておく方法があります。自分で決めた予定として休憩を取ることで、席を離れる後ろめたさが減ります。
職場の監視が気になるけど、上司に聞いてもいい?
聞いてかまいません。研究では、記録の理由が説明され、意見を伝える手段があることが、働く人が力を発揮し続けるために大切だとまとめられていました。「何に使われているかを知りたい」と伝えるのが話しやすい入り方です。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
出典
- Glavin P, Bierman A, Schieman S (2024). Private eyes, they see your every move: workplace surveillance and worker well-being. Social Currents, 11(4), 327. https://doi.org/10.1177/23294965241228874
- Lee J, Almomani Y, Davis A, Miller M, Li P, Cockayne D, Premji S, MacEachen E (2026). Home-based telework and worker health and well-being across service occupations: a critical interpretive synthesis. SSM - Population Health, 101951. https://doi.org/10.1016/j.ssmph.2026.101951
- Lu F (2026). The algorithmic management paradox: a structured integrative review of perceived autonomy on performance in digital workplaces. Frontiers in Psychology, 17, 1829522. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1829522
- Zhang N, Sun X, Jin C (2025). Effect of electronic performance monitoring on employees’ job performance: a social information processing perspective. Behavioral Sciences, 15(3), 256. https://doi.org/10.3390/bs15030256