落ち込んでいる友達を慰めたいのに、うまく言えない。中国の大学生の実験では、慰めがうまくいかなかった場面でも、慰められた側は相手の温かさを、慰めた側が思うより高く評価していた

友達が落ち込んでいる。何か声をかけたいのに、気の利いた言葉が浮かばない。下手なことを言って、かえって傷つけたらどうしよう。そう迷って、結局何も送れなかった経験のある人は少なくありません。研究では、慰める側は相手の受け止め方を実際より悪く見積もりやすいことがわかっています。相手が見ているのは、言葉の上手さより、気にかけてくれた温かさのほうでした。
3行でわかる
- 中国の大学生が友達に慰めのメールを送った実験では、送った側は「相手が気まずく感じる」度合いを、相手の実際の答えの2倍ほどに見積もっていた(10点満点で3.7点と1.7点)。
- 慰めがうまくいかなかった場面を想像した実験では、慰めた側は自分の温かさが低く見られると予想したが、慰められた側の評価はそれより高かった。
- 別の研究チームの実験でも、支えの言葉を伝えた人は、相手の受け止め方を実際より悪く見積もっていた。上手に言うことより、まず気にかけていると伝えることが手がかりになる。
01 結論から言うとうまく慰められないなら、声をかけないほうがいい?
声をかけないより、短くても気持ちを伝えるほうがよいと考えられます。複数の研究で、慰めや支えの言葉を伝えた人は、相手の受け止め方を実際より悪く予想していました。相手が重く見ていたのは、言葉の上手さより温かさでした。
慰めようとするとき、人は「うまく言えるか」「役に立てるか」を気にしがちです。研究者は、慰める側は自分の能力を、慰められる側は相手の温かさを見ている、というずれを指摘しています。
このずれがあると、慰める側は「下手に言うくらいなら黙っていよう」と考えやすくなります。けれど、相手にとっては、気にかけてくれたこと自体が支えになりえます。完璧な言葉を探すより、気持ちを向けていると伝えることを先にしてよさそうです。
02 研究とデータでわかっていること慰めた側の予想と、相手の受け止め方はどう違う?
慰めた側の予想は、相手の実際の受け止め方より悪い方向にずれていました。中国の大学生の実験では、慰めがうまくいかなかった場面で特に大きくずれました。別のチームの実験でも、支えの言葉は送った人の予想より好意的に受け止められていました。
Wangら(2024年)[1]
中国の大学生37人が、実際に友達へ慰めのメールを送りました。送った人は、相手が気まずく感じる度合いを10点満点で平均3.7点と予想しましたが、答えてくれた友達35人の答えは平均1.7点でした。
続く3つの実験では、試験に落ちた友達を慰める場面などを、慰める側か慰められる側の立場で想像してもらいました。128人の実験では、慰められた側の満足度は平均5.0点(−7〜7点)で、慰めた側の予想の3.6点より高くなっていました。
136人の実験では、慰めがうまくいかなかった場面で、慰めた側は自分の温かさが7点満点で4.1点ほどと見られると予想しましたが、慰められた側の評価は5.1点ほどでした。うまくいった場面では、予想と評価に差はありませんでした。研究者は、慰める側は自分の能力に、慰められる側は相手の温かさに目を向けているために、このずれが起きると考えています。
対象: 中国の大学生(4つの実験で合わせて337人) / 限界: 実際に慰めた実験は35組と小さく、残りの3つは場面を想像して答える実験。慰める側と慰められる側は別の人で、自己申告の答え。
Dunganら(2022年)[2]
支えの言葉を伝えるかどうかは、「相手がどう受け止めるか」の予想と結びついていました(ネットで集めた大人100人)。ところが、その予想はずれていました。
知り合いに支えのメッセージを送った学生120人も、初対面の相手に直接支えの言葉をかけた大人50組も、相手が実際より悪く受け止めると予想していました。大人300人の実験からは、伝える側は支えの言葉が「上手かどうか」に、受け取る側は「温かさ」に目を向けているというずれが、予想の外れを説明する可能性が示されています。
対象: 4つの研究で、ネットで集めた大人、学生、初対面の大人の組 / 限界: 1つの研究チームの実験で、送ったメッセージの内容や関係の深さによって結果が変わるかは、まだ十分にわかっていない。
Roosら(2023年)[3]
「話を聞いてもらえた」と感じるとはどういうことかを、これまでの研究から整理し、オランダと米国の調査で確かめた研究です。人と人のあいだでは、話す機会があり、注意を向けてもらい、共感され、尊重されたときに、聞いてもらえたと感じると整理されています。
8つの質問で、聞いてもらえた感覚を測る方法も作られました。言葉の上手さではなく、注意・共感・尊重といった向き合い方が中心になっている点は、慰めの研究の結果ともつながります。
対象: オランダの194人と米国の1,000人の調査 / 限界: 聞いてもらえた感覚の中身と測り方を整理した研究で、慰めの言葉の効果を調べた実験ではない。
03 まだわかっていないことどんな言葉なら、いちばん相手の支えになる?
まだはっきりしていません。紹介した研究は、慰める側の予想が悪い方向にずれることを示したもので、どんな言葉が一番よいかを比べたものではありません。相手との関係や、落ち込みの深さによっても変わりえます。
- 紹介した研究[1]は、実際に慰めた実験は分析できたのが35組と小さく、ほかは場面を想像して答える実験だった。
- 深く落ち込んでいる人や、長く苦しんでいる人を慰める場面でも、同じずれが起きるかはわからない。
- メッセージと直接の会話で、伝わり方がどれくらい違うかは十分に調べられていない。
- 日本の人を対象にした同じ種類の実験は見当たらない。
04 今日からできるセルフケア落ち込んでいる友達に、何と声をかける?
上手な言葉より先に、「気にかけている」と短く伝えることから始められます。研究では、慰めや支えの言葉は送った人の予想より好意的に受け止められていて、相手は言葉の上手さより温かさを見ていました。
打ち明けられたときの返し方は、悩みを打ち明けられたときの記事にまとめています。話を聞くうちに自分までしんどくなったときは、友達の悩みを聞いて疲れたときの記事も読めます。
迷ったら、3行でいいので送る
「大変だったね」「気になって連絡したよ」「返事はいらないからね」のように、短く送ります。研究では、慰めのメールを送った人は、相手の気まずさを実際の2倍ほどに見積もっていました。
目安 1通、3分
励ましや解決策より、「気にかけている」を先に
「次は大丈夫」「こうすればいい」と急がず、まず「つらかったね」と気持ちを受け止めます。研究では、慰められた側は言葉の上手さより、相手の温かさに目を向けていました。
目安 最初のひとこと
話してくれたら、さえぎらずに聞く
相手が話し始めたら、途中で自分の意見をはさまず、うなずきや短い相づちで聞きます。研究では、話す機会、注意、共感、尊重がそろうと、人は聞いてもらえたと感じていました。
目安 5〜10分
うまくいかなかった気がしても、自分を責めない
相手の反応が薄くても、「失敗した」と決めつけないでおきます。研究では、慰めがうまくいかなかった場面でも、慰められた側は相手の温かさを、慰めた側の予想より高く評価していました。
目安 送ったあとに1分
落ち込んでいる友達に、何と声をかければいい?
研究からは、上手な言葉より「気にかけている」と伝えることが大事だと考えられます。中国の大学生の実験では、慰められた側は言葉の上手さより、相手の温かさに目を向けていました。「大変だったね」「気になって連絡したよ」のような短い言葉で十分です。
慰めのメッセージを送ると、迷惑にならない?
送った側が思うほど迷惑には感じられていないようです。中国の大学生が友達に慰めのメールを送った実験では、相手が感じる気まずさを、送った側は10点満点で3.7点と予想しましたが、受け取った側の答えは1.7点でした。
慰めたのに相手の反応が薄かった。失敗した?
そうとは限りません。慰めがうまくいかなかった場面を想像した実験では、慰めた側は自分の温かさを低く見られると予想しましたが、慰められた側の評価はそれより高めでした。反応が薄いのは、疲れていて返す元気がないだけのこともあります。
励ましの言葉は、かけないほうがいい?
禁止する必要はありませんが、急がないほうがよいと考えられます。「聞いてもらえた」と感じる研究では、話す機会、注意、共感、尊重が中心でした。まず気持ちを受け止め、励ましは相手が話し終えてからにすると伝わりやすくなります。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Wang R, Li L, He J (2024). The Misprediction of Helpers in Comforting Situations and Its Mechanism. Psychology Research and Behavior Management, 17, 329-343. https://doi.org/10.2147/PRBM.S442519
- Dungan JA, Munguia Gomez DM, Epley N (2022). Too Reluctant to Reach Out: Receiving Social Support Is More Positive Than Expressers Expect. Psychological Science, 33, 1300-1312. https://doi.org/10.1177/09567976221082942
- Roos CA, Postmes T, Koudenburg N (2023). Feeling heard: Operationalizing a key concept for social relations. PLOS ONE, 18, e0292865. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0292865


