友達や家族に悩みを打ち明けられて、何と返せばいいかわからない。AIと人の返事を比べた実験では、助言より気持ちを受け止める返事のほうが「わかってもらえた」と感じられていた

友達や家族から悩みを打ち明けられて、何と返せばいいか迷った経験は多くの人にあると思います。役に立つことを言わなければ、と助言を考えるうちに、返事が遅れてしまうこともあります。AIと人の返事を比べた米国の455人の実験では、「わかってもらえた」と感じさせたのは、助言よりも気持ちを受け止める返事でした。
3行でわかる
- 悩みへの返事をAIと人が書いた実験では、AIの返事のほうが「わかってもらえた」と感じられていた。AIは気持ちを受け止める返事が多く、助言は少なかった。
- 「わかってもらえた」感覚と結びついていたのは、気持ちを認める・相手の言葉をまとめる・努力をねぎらう返事で、助言や自分の体験談とは結びついていなかった。
- 拒絶された経験を話した人は、よく聞いてもらえると、ふつうに聞いてもらうより会話のあとの孤独感が低かった。聞き方は練習で変えられる。
01 結論から言うと悩みを打ち明けられたら、何と返せばいい?
まずは解決策より、相手の気持ちを言葉にして受け止めるのがよさそうです。実験では、気持ちを認め、話をまとめ、努力をねぎらう返事ほど「わかってもらえた」と感じられ、助言の多さは関係がありませんでした。
悩みを聞くと、多くの人は「何か役に立つことを言わなければ」と考えます。実際、実験で人が書いた返事は、AIの返事より助言や自分の経験談が多くなっていました。
一方で、話した側が求めているのは、必ずしも答えではありません。研究者は、人に「わかってもらえた」と感じさせたいなら、助言したくなる気持ちを少し抑えて、気持ちの支えを増やすとよいかもしれないと述べています。
02 研究とデータでわかっていること「わかってもらえた」と感じる返事とは?
気持ちを認める、相手の言葉をまとめ直す、努力をねぎらう返事です。AIはこうした返事が多く、そのぶん「わかってもらえた」と感じられていました。ただしAIが書いたと知らされると、その感覚は下がりました。
Yinら(2024年)[1]
参加者に、いま抱えている複雑な悩みを声で話してもらった。翌日、その悩みへの短い返事を読んでもらった。返事は、ネットで集めた別の参加者が「相手がわかってもらえたと感じるように」書いたものか、AI(Bing Chat)が同じ指示で書いたものだった。AIの返事のほうが「わかってもらえた」感覚は高かった(7点満点で5.74と5.17)。ただし、返事を「AIが書いた」と知らされた人は、「人が書いた」と知らされた人より低かった(5.13と5.81)。
別の人たちが返事を採点すると、AIの返事は気持ちの支えが多く(5.76と4.64)、具体的な助言は少なかった(3.28と4.31)。「わかってもらえた」感覚は気持ちの支えと結びつき、助言とは結びついていなかった。人の返事に多かった「自分の経験談」と「自分なりの見方」も、結びついていなかった。
対象: 米国在住の英語を母語とする大人455人(平均43.8歳) / 限界: 返事を書いた人は知らない相手で、力の入れ方は中くらいと評価されていた。家族・友人・専門家の返事と比べたものではない。返事の書き方と「わかってもらえた」感覚の関係は、相関を見た分析。
Itzchakovら(2023年)[2]
人から拒絶された経験を話してもらい、聞き手の聞き方を変えた5つの実験(合計1,643人)。どの実験でも、よい聞き方をされた人は、話したあとの孤独感が低かった。訓練を受けた聞き手と10分間対面で話した実験では、孤独感は10点満点で、ふつうの聞き方で3.82、よい聞き方で2.43だった。
動画の実験で「よい聞き方」として使われたのは、目を見る、うなずく、身を乗り出す、「どう感じた?」と開いた質問をする、「確認させてね、〜ということだよね」と話をまとめ直す、「簡単じゃなかったよね」「話してくれてありがとう」と伝える、といった行動だった。悪い聞き方の例には、話の途中でスマホを見ることが入っていた。
対象: イスラエルと英国の大学生、ネットで集めた一般の大人 / 限界: 実際に会話した実験の聞き手は初対面の人。研究者は、最近の拒絶や親しい関係で確かめることを今後の課題としている。拒絶ではなく「運が悪かった出来事」を話した場合は、よい聞き方でも孤独感は下がらなかった。孤独感は会話直後の測定。
Ovsyannikovaら(2025年)[3]
うれしい出来事やつらい出来事を書いた文章に対して、AI(ChatGPT-4)と人が書いた返事を、第三者に読み比べてもらった4つの実験。共感力で選ばれた人や、電話相談の訓練を受けたボランティアの返事と比べても、AIの返事のほうが思いやりがあると評価された。書き手を明かしても同じ傾向で、AIの返事は「理解している・認めている・気にかけている」と受け取られていた。
対象: カナダと米国の大人556人 / 限界: 評価したのは悩みを書いた本人ではなく第三者。用意された短い文章への返事で、実際の会話とは違う。
03 まだわかっていないこと親しい人の悩みでも、同じ返し方でいい?
まだはっきりしません。研究の多くは知らない人どうしの短いやりとりで、親しい人との会話や、悩みが解決したかどうかまでは調べていません。
- 家族や友人など、相手をよく知っている人の返事でも同じ結果になるかはわからない。研究者は、親しい人や専門家のほうが知らない人より力を持っている可能性を挙げている。
- 助言が役に立つ場面(相手が答えを求めているときなど)との使い分けは、調べられていない。
- 人がAIの助けを借りて返事を書いたとき、受け手がどう感じるかはわかっていない。
- よい聞き方で下がった孤独感が、どのくらい続くかは測られていない。孤独感が下がったのは人から拒絶された話のときで、ほかの悩みでも同じかはわからない。
04 今日からできるセルフケア相談されたとき、その場で何を言えばいい?
最初のひと言で気持ちを受け止め、次に相手の話を短くまとめて確かめます。助言や自分の経験談は、相手が求めたときに回します。スマホを置いて聞くだけでも、聞き方は変わります。
最初のひと言は、気持ちを受け止める言葉にする
「それはつらかったね」「そう感じるのは当然だと思う」「よくがんばってきたね」と、気持ちを認めて努力をねぎらいます。実験で「わかってもらえた」と結びついていたのは、こうした返事でした。
目安 1〜2文、最初の返事で
相手の話を短くまとめて、合っているか確かめる
「〜ということで合ってる?」と相手の言葉を使ってまとめ直し、「そのとき、どう感じた?」と開いた質問をします。よい聞き方の実験で使われていた行動です。
目安 会話の中で1〜2回
助言や経験談は、求められてから
言いたくなったら、「聞くだけがいい?一緒に考えたほうがいい?」と先に尋ねます。助言や自分の経験談の多さは、「わかってもらえた」感覚と結びついていませんでした。
目安 助言の前に1回尋ねる
話を聞く間は、スマホを置く
対面なら画面を伏せ、相手の目を見てうなずきます。話の途中でスマホを見ることは、実験で「悪い聞き方」の例として使われていました。
目安 話を聞く10分間
会話を続ける質問の研究は雑談が続かないときの記事に、文字のやりとりで気持ちが伝わるかは文字だけのやりとりの研究にまとめています。AIで書いた文章がどう受け止められるかはAIで書いたメッセージの記事、自分が打ち明ける側の心理はAIになら話せる理由の記事も参考になります。
05よくある質問
悩みを相談されたら、アドバイスはしないほうがいい?
しないほうがいいとまでは言えません。455人の実験では、返事に含まれる助言の多さは「わかってもらえた」感覚と関係がありませんでした。ただしこの研究が調べたのは「わかってもらえたか」で、悩みが解決したかではありません。先に気持ちを受け止め、助言は相手が求めたときにするのが一つの順番です。
LINEやメールの文字だけでも、気持ちは伝わる?
伝わる可能性があります。455人の実験は、文字で書かれた50〜60語ほどの短い返事を読んでもらうものでした。それでも、気持ちを受け止める工夫が多い返事ほど「わかってもらえた」と感じられていました。オンラインのビデオ通話でも、よい聞き方で孤独感が下がった実験があります。
返事の文面をAIに考えてもらってもいい?
研究ではまだはっきりしません。同じ返事でも、AIが書いたと知らされると「わかってもらえた」感覚は下がっていました。人がAIの助けを借りて書いた返事がどう受け止められるかは、研究者も今後の課題としています。
うまく言葉が出てこないときは、どうすればいい?
言葉より、聞く姿勢から始められます。よい聞き方の実験では、相手の目を見る、うなずく、スマホを見ないといった態度も、よい聞き方の一部として使われていました。「話してくれてありがとう」と伝えるだけでもかまいません。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Yin, Y., Jia, N., & Wakslak, C. J. (2024). AI can help people feel heard, but an AI label diminishes this impact. Proceedings of the National Academy of Sciences, 121(14), e2319112121. https://doi.org/10.1073/pnas.2319112121
- Itzchakov, G., Weinstein, N., Saluk, D., & Amar, M. (2023). Connection Heals Wounds: Feeling Listened to Reduces Speakers' Loneliness Following a Social Rejection Disclosure. Personality and Social Psychology Bulletin, 49(8), 1273–1294. https://doi.org/10.1177/01461672221100369
- Ovsyannikova, D., de Mello, V. O., & Inzlicht, M. (2025). Third-party evaluators perceive AI as more compassionate than expert humans. Communications Psychology, 3, 4. https://doi.org/10.1038/s44271-024-00182-6


