会議や講義の途中で集中が切れる。落書きすると集中は戻る?カナダの大学生172人の実験では、落書きしても注意も記憶も上がらず、メモを取った組がいちばん覚えていた

オンライン会議や長い講義の途中で、話が頭に入らなくなってくる。手元のノートの端に、気づけば丸や四角を描いている。「落書きすると集中できる」という話を聞いたことがある人もいると思います。実験で確かめた研究を調べると、落書きで集中や記憶が良くなる結果は再現されず、要点のメモを取るほうが効果がはっきりしていました。
3行でわかる
- カナダの大学生172人が45分の講義を聞いた実験では、落書きした組と聞くだけの組で、退屈さ、気の散り方、注意、テストの成績に差はなかった。
- いちばん成績がよかったのはメモを取った組で、28問中平均19.1問正解(聞くだけの組は16.6問)。講義中の注意も高く、気が散ることも少なかった。
- 手を小さく動かしても聞き取りの成績は下がらなかった実験もある。集中が切れてきたら、落書きより「要点を一言書く」に切り替えるのが研究に合っている。
01 結論から言うと落書きすると、集中は戻る?
戻るという裏付けはありません。落書きで記憶が良くなった小さな実験はありましたが、退屈な講義のあとで確かめ直した実験では差が出ませんでした。集中を保つ方法としては、要点のメモを取るほうが一貫した結果が出ています。
落書きが集中に役立つという考えは、「退屈で頭がぼんやりしたとき、手を少し動かすと目がさえて、話に注意を戻しやすくなる」という仮説から来ています。一方で、落書きは「心がよそに行っているしるし」にすぎず、話を聞く力を奪うという見方もあります。
実験の結果は、後者に近いものでした。落書きをしても退屈さは減らず、話の中身もよく覚えていませんでした。ただし、落書きのせいで成績が大きく下がったわけでもありません。
02 研究とデータでわかっていること落書きやメモで、何が変わる?
講義を聞く実験では、落書きは聞くだけと変わらず、メモを取った組が最もよく覚えていました。手で小さな道具をいじると目がさえる体の反応は出ましたが、聞き取りの成績は変わりませんでした。
Spencer-Mueller・Fenske / ゲルフ大学(2024) [1]
1つ目の実験では、大学生50人に退屈な講義の録音を15分聞いてもらったあと、短い留守番電話の内容を聞いてもらいました。パーティーに来る人の名前を書き取りながら、合間に図形を塗りつぶした組は、塗りつぶさなかった組より多くを覚えてはいませんでした。2つ目の実験では、172人を「聞くだけ」「図形を塗る落書き」「自由な落書き」「メモを取る」の4組に分け、45分の講義を聞いてもらいました。落書きの2組は、退屈さ、気の散り方、注意のどれも聞くだけの組と変わらず、テストの正解数も同じくらいでした。メモを取った組だけが、講義中の注意が高く、気が散ることが少なく、テストでも28問中平均19.1問と、ほかの3組(15.7〜16.6問)より多く正解していました。
対象: カナダ・ゲルフ大学の学生(1つ目50人、2つ目172人。平均19歳前後で女性が多い) / 限界: 実験室で、落書きのしかたを指示して行った実験です。自分から自然に落書きする場合とは違うかもしれない、と著者らは書いています。
この論文が紹介している先行研究では、2.5分の留守番電話を聞きながら図形を塗りつぶした人のほうが、内容をよく覚えていました。「落書きは集中に役立つ」という話が広まるきっかけになった研究ですが、退屈さを測っておらず、1つ目の実験はその再現を試みて差が出なかった形です。同じ論文は、メモを取るほうが落書きより覚えていたという、別の2つの研究の結果とも一致していると書いています。
Kataokaら / 高知健康科学大学ほか(2026) [2]
医療系の専門学校に通う18〜26歳の33人に、早口の音声や雑音の中の言葉を聞き取る課題を、「手で小さな道具をいじりながら」「ごく軽くペダルをこぎながら」「何もしないで」の3つの条件で、順番を入れ替えて行ってもらいました。体を動かした条件では、目がさえているときに起こる瞳孔の広がりが見られ、特に手で道具をいじったときにはっきりしていました。ただ、聞き取りの正答率は3つの条件で変わりませんでした。
対象: 日本の医療系専門学校の学生33人(18〜26歳) / 限界: 指示されて意図的に手を動かした実験で、課題がやさしすぎる・難しすぎる部分があり、成績の差が出にくかったと著者らは書いています。予備的な結果です。
Sonら / カリフォルニア大学デービス校(2024) [3]
ADHD(注意欠如・多動症)と診断された18〜50歳の大人70人の手首と足首にセンサーを付け、注意の課題中の細かな体の動きを記録しました。正しく答えた回のほうが体の動きが多く、反応の速さが安定している人ほど、課題の後半で多く体を動かしていました。著者らは、体の小さな動きが注意を保つ助けになっている可能性を示しつつ、別の説明もありうると書いています。
対象: 米国のADHDと診断された大人70人 / 限界: 動きを指示せず記録しただけの研究で、動いたから注意が保てたのかどうか(因果)はわかりません。診断のない人に同じことが言えるかもわかりません。
3つの研究を合わせると、退屈な話を聞いているときに「落書き」で集中を取り戻すのは難しそうです。手を小さく動かすことは、少なくとも成績を下げてはいませんでした。一方、メモを取ることは、注意と記憶の両方で一貫して良い結果が出ています。
03 まだわかっていないことどんな人なら、落書きが役に立つ?
まだわかっていません。カナダの実験では、ふだんから落書きをする人や退屈しやすい人でも落書きの効果は見られませんでしたが、実際の会議や画面越しの会議で確かめた研究は見つかりませんでした。
- オンライン会議など、画面越しで聞く場面でも同じ結果になるか
- 指示されずに自分から落書きする場合に、効果が違うか
- 手を小さく動かすことが、聞き取り以外の課題(読む・考える)でどう働くか
- 働く大人や年齢の高い人でも同じ結果になるか(参加者は主に学生)
04 今日からできるセルフケア集中が切れてきたら、何をすればいい?
手を動かすなら、落書きより「要点を書く」ほうに使うのが研究の結果に合っています。集中はどの組でも時間とともに落ちていたので、途中で要点を書き出す区切りをつくり、手を小さく動かすくせは無理に止めなくてかまいません。
落書きしたくなったら、要点を一言書く
ペンが動き出したら、その手で「今の話の要点」を単語1〜3つで書きます。実験では、メモを取った組だけが注意を保ち、内容もよく覚えていました。
目安 1回・10秒
15分ごとに「ここまでの要点」を一行にする
カナダの実験では、どの組でも時間がたつほど退屈さと気の散り方が増えていました。15分くらいを目安に、ここまでの話を一行にまとめ直すと、聞き方に区切りができます。
目安 15分ごと・30秒
聞きながら「質問を1つ」考えておく
研究者は、退屈を和らげるには、何かを足すより取り組み方そのものを変えるほうが良いかもしれないと書いています。「あとで聞くなら何を聞くか」を考えながら聞くと、ただ聞くだけの状態から抜けられます。
目安 会議1回につき1つ
手を小さく動かすくせは、周りに配慮して続けてよい
日本の実験では、手で小さな物をいじりながらでも聞き取りの成績は下がりませんでした。音を立てない、人の視界でちらつかない範囲なら、無理にやめなくてかまいません。
目安 必要なときに
会議のあとに別の作業へ戻りにくいときは、中断から作業に戻る方法の研究が、画面越しの会議そのものが疲れるときは、オンライン会議の疲れの研究が役に立ちます。
05よくある質問
落書きすると集中力が上がるって本当?
はっきりした裏付けはありません。カナダの大学生172人が45分の講義を聞いた実験では、落書きした組と聞くだけの組で、退屈さ、気の散り方、注意、あとのテストの成績に差はありませんでした。以前の小さな実験では落書きで記憶が良くなった結果もありましたが、追試では再現しませんでした。
会議中に落書きするのは失礼?
失礼かどうかは職場の雰囲気によるので、研究からは言えません。少なくとも、落書きをしても話を覚える力が上がらなかった実験があるため、集中のためなら要点のメモに切り替えるほうが研究の結果に合っています。
ペンを回したり、足を揺らしたりするのはだめ?
日本の18〜26歳の33人の実験では、手で小さな道具をいじりながら音声を聞いても、聞き取りの正答率は下がりませんでした。ただ上がったわけでもなく、周りの人の気が散らない範囲にとどめるのが無難です。
メモを取るほうがいいのはなぜ?
メモを取るには、話を聞いて要点を選び、自分の言葉に直す必要があります。カナダの実験では、メモを取った組は講義のあいだ注意が高く、気が散ることが少なく、あとのテストで28問中平均19.1問と、聞くだけの組の16.6問より多く正解していました。
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出典
- Spencer-Mueller EK, Fenske MJ. (2024). Note-taking for the win: Doodling does not reduce boredom or mind-wandering, nor enhance attention or retention of lecture material. Quarterly Journal of Experimental Psychology. https://doi.org/10.1177/17470218231222402
- Kataoka S, Miyaguchi H, Ishizuki C, Fukuda H, Yasunaga M, Kirimoto H. (2026). Fidgeting Increases Pupil Diameter During Auditory Processing in Young Healthy Adults. Brain Sciences. https://doi.org/10.3390/brainsci16020127
- Son HM, Calub CA, Fan B, Dixon JF, Rezaei S, Borden J, Schweitzer JB, Liu X. (2024). A quantitative analysis of fidgeting in ADHD and its relation to performance and sustained attention on a cognitive task. Frontiers in Psychiatry. https://doi.org/10.3389/fpsyt.2024.1394096


