比べて落ち込む

人と比べてばかりで、うれしいことも素直に喜べない。20件の試験のまとめでは、よい瞬間を意識して味わう練習で、前向きな気持ちが増え、落ち込みや不安が軽くなっていた

約7分で読めます

わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的指針0件を整理
温かい紅茶の入ったカップ
Photo: Kritzolina / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

うれしいことがあっても、すぐに「あの人のほうがすごい」と比べてしまい、素直に喜べない。そんな日が続くと、毎日から楽しさが抜けていくように感じます。結論から言うと、20件の試験・4,805人のまとめでは、よい瞬間を意識して味わう練習で、前向きな気持ちが増え、落ち込みや不安の症状も軽くなっていました。効果は中くらいで、比べて落ち込む人だけを調べた研究ではありません。

3行でわかる

  1. SNSで自分より上の人と比べることは、54の調査集団・36,583人のまとめで、心の負担と結びついていました。幸福感の低さとも関連していました。
  2. よい出来事に注意を向け、長く、深く感じようとする「味わう」練習は、20件のくじ引きの試験のまとめで、心の状態を中くらいよくしていました。練習の期間は中央値で14日でした。
  3. ただし、比べる相手に別の練習をした試験では効果は小さめで、結果の幅も大きめでした。米国の大学生145人の実験では、人前で評価される緊張のあと、15分その場を味わう練習で前向きな気持ちが高くなっていました。

01 結論から言うと比べて喜べなくなった心は、取り戻せる?

よい瞬間を意識して味わう練習で、前向きな気持ちが増え、落ち込みや不安が軽くなったという試験のまとめがあります。効果は中くらいです。比べて落ち込む人に絞った研究はまだなく、わかっている度は中くらいです。

心理学では、よい出来事に気づき、その気持ちを長く、深く感じようとすることを「味わう(セイバリング)」と呼びます。おいしいものをゆっくり食べる、きれいな景色に足を止める、うれしかったことを人に話す、といった、誰でもしている小さな行動です。

人と比べる癖があると、よいことがあっても「でも、あの人は」と気持ちがすぐに別の方向へ向かいがちです。味わう練習は、比べる前に、まず自分に起きたよいことに注意をとどめる練習とも言えます。比べる癖そのものを直す方法ではありませんが、喜ぶ力を少しずつ取り戻す手がかりになります。

02 研究とデータでわかっていること味わう練習で、心の状態はどのくらい変わる?

20件の試験のまとめで、味わう練習の効果は全体で中くらいでした。ただし、何もしない組と比べた試験より、別の練習をした組と比べた試験のほうが効果は小さく、研究によるばらつきも大きめでした。

0.268SNSで上の人と比べることと、幸福感の低さの相関の平均(54の調査集団・36,583人、2026年のまとめ)
4,805人味わう練習を調べた20件のくじ引きの試験の参加者。全員が大学生以上の大人(2026年のまとめ)
0.51味わう練習の効果の大きさ(全体)。別の練習と比べた試験だけでは0.30
14日練習の期間の中央値(真ん中の半数は7〜28日)

Leiら(2026年) [1]

SNSで自分より上の人と比べることと、心の状態の関係を調べた研究をまとめました。上と比べる人ほど心の負担が大きい関連があり、相関の平均は0.33でした。最も強かったのはねたみなど人の評価にまつわる嫌な気持ち(0.438)で、不安、落ち込み、幸福感の低さ(0.268)、自信の低さ(0.263)とも結びついていました。

対象: 54の調査集団・36,583人(10代の集団と大人の集団を含む) / 限界: 多くは関連を見た研究で、比べるから落ち込むのか、落ち込んでいるから比べるのかは区別できません。

Chenら(2026年) [2]

味わう練習を、くじで組を分けて試した20件の試験をまとめました。全体の効果の大きさは0.51で、中くらいでした。落ち込みや不安の症状は0.61、前向きな気持ちや幸福感は0.50の改善でした。東洋と西洋、練習の期間の長さで、効果に差は見られませんでした。

対象: 20件の試験・4,805人。高齢者、大学生、一般の大人、病気の人や家族を介護する人など。日本の試験も2件含む / 限界: 研究によるばらつきが大きく、3割の試験は偏りのおそれが高いと判定されていました。

Chenら(2026年) [2]

何もしない組や順番待ちの組と比べた試験では効果は0.77、時間や手間をそろえた別の練習と比べた試験では0.30でした。この差は統計的にははっきりしませんでした。対面や紙での練習では効果がはっきりした一方、ネットやスマホでの練習は試験の数が少なく、はっきりしませんでした。

対象: 上と同じまとめ / 限界: 発表の偏りを補正する方法の一つでは効果がほぼ0まで下がりました。研究者は、ほかの方法の結果から、偏りの影響は小さいと判断しています。

Klibertら(2022年) [3]

「なぜ自分は魅力的な人なのか」を3分間スピーチしてもらい、人から評価される緊張をつくりました。そのあとくじで5つの組に分け、15分の課題をしてもらいました。前向きな言葉の文章を一語ずつゆっくり味わい、心に起きる気持ちを感じた組は、何もしない組や、買い物を思い浮かべる組、よい思い出を思い出す組より、前向きな気持ちが高くなっていました。

対象: 米国の大学生145人(18〜25歳、女性73.8%) / 限界: 練習の直後に1回測っただけで、効果がどのくらい続くかはわかりません。

03 まだわかっていないこと比べる癖がある人にも、同じように効く?

まだわかっていません。まとめに含まれた試験は、高齢者や病気の人、学生などが中心で、人と比べて落ち込む人に絞った試験は見当たりませんでした。比べる癖そのものが減るかも調べられていません。

  • まとめた研究者は、気持ちを測る方法が本人の答えに頼っている点を、偏りが生じやすい点として挙げています。
  • 練習の期間を長くすると効果が大きくなるという結果は出ていません。何日続ければ十分かは、わかっていません。
  • 米国の大学生の実験では、よい思い出を思い出す組は、その場を味わう組ほど前向きな気持ちが高くなりませんでした。どの味わい方が誰に合うかは、まだ整理されていません。
  • ネットやスマホを使った練習は試験の数が少なく、効果があるかはっきりしませんでした。

04 今日からできるセルフケア喜ぶ力を取り戻すには、何から始めればいい?

1日1回、よかった瞬間に足を止めて、その気持ちを少し長く感じてみます。人に話す、写真やメモに残すのも味わい方のひとつです。まずは2週間を目安に続けます。どれもお金をかけずにでき、研究の内容をもとにした工夫です。

1

よかった瞬間に、比べる前に一度立ち止まる

温かい飲み物がおいしい、空がきれい、仕事が一つ片づいた、など小さなことで十分です。そのとき何を感じているかに、少しのあいだ注意を向けます。まとめの論文が紹介している分類では「今に注意を向ける」味わい方です。

目安 1日1回・1分

2

うれしかったことを、誰かに一言話す

まとめの論文が紹介している分類では、味わう行動の一つに「人と分かち合う」が入っています。家族や友人に「今日こんなことがあった」と話すか、短いメッセージを送ります。

目安 1日1回

3

写真か1行メモで、よかった瞬間を残す

意味のある写真を撮ったり見返したりすることも、味わい方の例として挙げられていました。人に見せるためではなく、自分のために残します。SNSに投稿しなくてかまいません。

目安 1日1枚・1行

4

まず2週間続けて、変化を振り返る

まとめた試験の練習期間は、中央値で14日でした。2週間たったら、メモを読み返して、喜べた瞬間が増えたかを確かめます。合わなければ、別の味わい方に替えます。

目安 2週間

SNSで上の人を見ると落ち込む仕組みは 上と比べると落ち込むのはなぜかの記事、よい思い出を思い出す実験は 比べて落ち込んだ日に思い出を使う記事 にまとめています。人の幸せを一緒に喜ぶ練習は 「その人のために喜ぶ」練習の記事 も参考になります。

05よくある質問

人と比べて、うれしいことも喜べなくなるのはなぜ?

はっきりした仕組みはわかっていません。54の調査集団・36,583人のまとめでは、SNSで上の人と比べる人ほど、ねたみや不安、落ち込み、幸福感の低さと結びついていました。多くは関連を見た研究で、比べるのが原因かどうかは区別できていません。

「味わう」練習は、本当に効果がある?

20件のくじ引きの試験・4,805人のまとめでは、全体で中くらいの効果がありました。ただし、時間や手間をそろえた別の練習と比べた試験では効果は小さめで、研究によるばらつきも大きめでした。比べて落ち込む人に絞った試験はまだありません。

どのくらい続ければいい?

まとめた試験の練習期間は中央値で14日、真ん中の半数は7〜28日でした。期間が長いほど効果が大きいという結果は出ておらず、何日で十分かはわかっていません。まず2週間を目安に試すのが、研究の範囲に合った考え方です。

楽しかった思い出を思い出すのでもいい?

米国の大学生145人の実験では、人前で評価される緊張のあと、その場の文章をゆっくり味わった組のほうが、よい思い出を思い出した組より前向きな気持ちが高くなっていました。1回の実験の結果で、思い出すことに意味がないという結論ではありません。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

無料ツール
セルフチェックで「今日やること」をまとめる
当てはまる悩みを選ぶだけ。診断はせず、記事の対策を一覧にします。
研究早見表でほかの悩み293件も見る

出典

  1. Lei Y, Hu S, Sun Y, Zheng L (2026). "Looking up" linked to feeling down: a meta-analysis of online upward social comparison and psychological maladjustment. Frontiers in Psychology, 17, 1825169. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1825169
  2. Chen PH, Tung HH, Wu YC, Sie J (2026). Effectiveness of savoring interventions: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Applied Psychology: Health and Well-Being, 18(2), e70134. https://doi.org/10.1111/aphw.70134
  3. Klibert JJ, Sturz BR, LeLeux-LaBarge K, Hatton A, Smalley KB, Warren JC (2022). Savoring Interventions Increase Positive Emotions After a Social-Evaluative Hassle. Frontiers in Psychology, 13, 791040. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.791040