SNSを眺めているだけなのに、人と比べて落ち込む。962人の調査では、見ている投稿を「励まされる」と感じる人ほど、眺める時間が長くても心の不調は多くなかった

投稿もコメントもせず、ただ流れてくる写真や近況を眺めているだけ。それなのに、閉じたあと気分が沈んでいる。そんな経験はめずらしくありません。研究では、SNSを「見るだけ」で使う時間がねたみや落ち込みと結びつくという結果がある一方、影響は人や見ている中身によって大きく違うこともわかってきました。比べて落ち込む前にできる工夫を、研究から整理します。
3行でわかる
- 米国の実験では、Facebookを見るだけで使った人は、やりとりに使った人より、時間がたつにつれて気分が下がっていました。日常の追跡では、ねたみが強まることを通して気分が下がっていました。
- オーストラリアと米国の962人の調査では、見るだけの時間そのものは心の不調と関係していませんでした。見ている投稿を「励まされる」と受け止める人では、眺める時間が長くても心の不調は多くありませんでした。
- オランダの中学生世代の研究では、見るだけで使ったあとに気分がよくなる人が46%、悪くなる人が10%と、人によって大きく違いました。
01 結論から言うとSNSを眺めるだけで、比べて落ち込みやすくなる?
眺めるだけの使い方は、ねたみや落ち込みと結びつくという研究があります。ただし影響は人によって大きく違い、見ている投稿をどう受け止めるかで変わっていました。眺め方を少し変えることで、比べて落ち込むのを防げる可能性があります。
研究では、投稿やコメント、メッセージなど、人とやりとりする使い方を「能動的な利用」、流れてくる投稿を見るだけの使い方を「受け身の利用」と呼んで区別してきました。
受け身の利用で気分が下がりやすい理由として、研究者が挙げてきたのが「上との比較」です。楽しそうな投稿ばかりを続けて見ると、自分の毎日が見劣りして感じられ、ねたみが生まれやすくなります。
一方で、最近の研究では「見るだけなら必ず悪い」とは言えないこともわかってきました。この記事では、比べて落ち込む前に眺め方を整える工夫を扱います。比べて落ち込むしくみそのものは SNSで上の人を見ると落ち込むのはなぜかの記事、見る量を減らす方法は SNSをやめるより減らす記事 で紹介しています。
02 研究とデータでわかっていること見るだけの使い方は、心にどう関わっていた?
米国の実験と日常の追跡では、見るだけの使い方がねたみを通して気分の低下と結びついていました。一方、962人の調査では眺める時間そのものは心の不調と関係がなく、投稿を前向きに受け止める人ほど不調が少ない傾向でした。
Verduynら(2015年) [1]
実験室で、参加者にFacebookを「見るだけ」か「やりとりする」かのどちらかで使ってもらいました。見るだけで使った人は、やりとりに使った人より、時間がたつにつれて気分が下がっていました。日常生活の中で1日に何度も気分を尋ねる追跡でも同じ結果が出て、見るだけの使い方がねたみを強め、それが気分の低下につながっていました。
対象: 米国のFacebook利用者(実験室の実験と、日常生活の追跡の2つの研究) / 限界: 10年ほど前のFacebookの研究で、いまのSNSや日本の人で同じになるかは確かめられていません。
Evansら(2023年) [2]
見るだけの使い方の時間は、うつ・不安・ストレスの強さと直接の関係がありませんでした。ただし、見ている投稿を「励まされる」「親しみがある」「ためになる」などと前向きに受け止めている人ほど、心の不調は少ない傾向でした。前向きな受け止めが少ない人では眺める時間が長いほど不調が多く、多い人では眺める時間が長いほど不調が少ないという関係でした。若い人ほど、眺める時間と不調の結びつきが強めでした。
対象: オーストラリアの大学生460人と米国のネット調査の502人のFacebook利用者(17〜97歳、平均31.1歳) / 研究デザイン: 1回きりのアンケート調査 / 限界: この分析の仮説は、データを集めたあとに立てられたものです。「否定的な投稿を避けると不調が減る」という結果は出ていません。
Yueら(2022年) [3]
見るだけの使い方が多い人ほど、自分より状況のよい人と比べて落ち込む比べ方が多く、その比べ方はストレスの高さと関連がありました。一方で、物事の見方を変えて気持ちを整えるくせがある人は、落ち込む比べ方が少なく、「自分もああなれるかも」と前向きに比べる比べ方が多い傾向でした。
対象: コロナ禍に武漢に住んでいた大人1,131人 / 研究デザイン: 1回きりのアンケート調査 / 限界: 感染拡大という特殊な状況での調査で、関連を示したもので因果関係はわかりません。
Beyensら(2020年) [4]
中学生世代に1週間、1日6回スマホで気分とSNSの使い方を答えてもらいました(合計2,155回)。見るだけで使ったあとの気分の変化は人によって大きく違い、気分がよくなる人が46%、ほとんど変わらない人が44%、悪くなる人が10%でした。
対象: オランダの14〜15歳63人 / 限界: 人数が少なく、1週間だけの記録です。
03 まだわかっていないこと眺める時間を減らせば、落ち込まずに済む?
まだ結論は出ていません。若い人を4年間追った研究では、見るだけの時間が増えた年に不安や落ち込みが増えるという関係は見られませんでした。時間より、何をどう見ているかが大事な可能性があります。
- オランダの16〜25歳321人を4年間追った研究では、一人ひとりの中で見るだけの時間が増えても、その後の不安や落ち込みは増えていませんでした。やりとりの時間が増えると次の年に不安や落ち込みが減っていたのは、3回あった年ごとの変化のうち1回(2021年から2022年)だけでした[5]。
- 紹介した研究の多くはFacebookなど少し前のSNSで、短い動画が中心のいまのSNSで同じ結果になるかはわかっていません。
- 「励まされる投稿を増やすと落ち込みが減る」ことを、実際に試して確かめた実験はまだ見つかっていません。
- 日本の人を対象に、見るだけの使い方と比べて落ち込む気持ちを調べた研究は、まだ少ない状況です。
04 今日からできるセルフケア比べて落ち込む前に、眺め方をどう整える?
見たあとの気分を確かめ、励まされる投稿を増やし、見るだけでなくやりとりにも使います。どれもお金をかけずに、今日からできます。
3日間、見たあとの気分に「+」か「−」をつける
SNSを閉じたあと、気分がよくなったら「+」、沈んだら「−」をメモします。オランダの研究では、見たあとの気分の変化は人によって正反対でした。まず自分がどちらに近いかを知ります。
目安 1回10秒・3日間
励まされるアカウントを3つフォローする
見ていて「励まされる」「ためになる」と感じる分野のアカウントを増やします。962人の調査では、投稿を前向きに受け止める人ほど、眺める時間が長くても心の不調が少ない傾向でした。
目安 5分・1回
見たら1つ、コメントかメッセージを送ってから閉じる
眺めるだけで終わらせず、友だちの投稿に一言コメントするか、気になった人にメッセージを1通送ります。米国の実験では、見るだけで使った人は、やりとりに使った人より気分が下がっていました。
目安 1回1分
上の人を見たら「1つ学べることは?」と言い換える
うらやましい投稿を見たら、「あの人のやり方で、自分にも取り入れられることは?」と1つだけ考えます。武漢の調査では、見方を変えるくせがある人ほど、落ち込む比べ方が少なく、前向きな比べ方が多めでした。
目安 1回1分
比べて浮かんだ悪い考えを書き直す練習は 「自分なんて」と考えてしまうときの記事、人の幸せを一緒に喜ぶ練習は 幸せそうな投稿を見て落ち込むときの記事 で紹介しています。
05よくある質問
SNSを見るだけで落ち込むのは、心が弱いから?
心が弱いからではありません。米国の実験では、見るだけの使い方をしてもらうだけで、時間とともに気分が下がっていました。楽しそうな投稿を続けて見ると、ねたみが生まれやすいことが関わっていました。
SNSはやめたほうがいい?
やめなくても工夫の余地はあります。962人の調査では、眺める時間そのものは心の不調と関係がなく、見ている投稿を前向きに受け止める人では、時間が長くても不調は多くありませんでした。見る中身と使い方を整えることから始められます。
投稿しないで見ているだけの人は、みんな落ち込みやすいの?
みんなではありません。オランダの中学生世代の研究では、見るだけで使ったあとに気分がよくなる人が46%、変わらない人が44%、悪くなる人が10%でした。自分が見たあとどう感じるかを確かめるのが近道です。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Verduyn P, Lee DS, Park J, Shablack H, Orvell A, Bayer J, Ybarra O, Jonides J, Kross E (2015). Passive Facebook usage undermines affective well-being: Experimental and longitudinal evidence. Journal of Experimental Psychology: General, 144(2), 480-488. https://doi.org/10.1037/xge0000057
- Evans O, Hardacre S, Rubin M, Tran M (2023). Content appraisal and age moderate the relationship between passive social media use and mental ill-being. Frontiers in Psychology, 14, 1181233. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1181233
- Yue Z, Zhang R, Xiao J (2022). Passive social media use and psychological well-being during the COVID-19 pandemic: The role of social comparison and emotion regulation. Computers in Human Behavior, 127, 107050. https://doi.org/10.1016/j.chb.2021.107050
- Beyens I, Pouwels JL, van Driel II, Keijsers L, Valkenburg PM (2020). The effect of social media on well-being differs from adolescent to adolescent. Scientific Reports, 10, 10763. https://doi.org/10.1038/s41598-020-67727-7
- Tibbs M, Deschênes S, van der Velden P, Fitzgerald A (2025). An Investigation of the Longitudinal Bidirectional Associations Between Interactive Versus Passive Social Media Behaviors and Youth Internalizing Difficulties. A Within-Person Approach. Journal of Youth and Adolescence, 54(4), 849-862. https://doi.org/10.1007/s10964-024-02093-5


