人とふれあう機会が減って、気持ちが落ち着かない。137件の研究のまとめでは、触れられると不安や落ち込みが和らぎ、ロボットや物からでは効果が小さめだった

在宅で働き、話し相手はチャットやAI。気づけば何週間も、誰とも体が触れていない。そんな日が続いて、なんとなく気持ちが落ち着かない人もいるはずです。137件の研究をまとめた分析では、人に触れられることで不安や落ち込みが中くらい和らいでいました。一方、ロボットや物からの接触では、心への効果は小さめでした。ひとりでもできる方法も含めて整理します。
3行でわかる
- 137件の研究のまとめでは、マッサージなど人から触れられる方法は、大人の不安や落ち込みを中くらい和らげていた。
- ロボットや物からの接触でも効果はあったが、心への効果は人からの接触より小さかった。長くするより、回数を重ねるほうが効果と関連していた。
- ドイツの大学生159人の実験では、緊張する場面の前に自分の胸とお腹に20秒手を当てた人も、ハグを受けた人と同じように、ストレスホルモンの上がり方が小さかった。
01 結論から言うと人に触れられると、気持ちは落ち着く?
研究のまとめでは、その傾向がありました。触れられることで、大人の不安や落ち込みは中くらい和らいでいました。ただし病気のある人で効果が大きく、健康な人では小さめです。
ここでいう「触れる」は、マッサージ、なでる、手を置く、ハグなどです。誰かに触れられる機会は、在宅勤務やひとり暮らし、画面越しのやりとりが増えるほど減りやすくなります。研究者も、新型コロナの時期に人との接触が減ったことで、この問題への関心が高まったと述べています。
一方で、触れられるのが苦手な人もいますし、望まない接触はかえって負担になります。研究が示しているのは、本人が受け入れている接触の効果です。
02 研究とデータでわかっていることどんな触れ方が、どれくらい効く?
触れ方の種類による差ははっきりせず、回数を重ねるほど効果が大きい傾向でした。人からの接触のほうが、ロボットや物からの接触より心への効果は大きく、自分で自分に触れる方法にもストレスを和らげた実験があります。
効果の大きさの数字は、0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きいが目安です。
Packheiserら(2024年)[1]
触れる方法と触れない方法を比べた研究137件をまとめた分析です。子どもと大人の研究85件(新生児は別に分析)では、全体の効果は中くらい(0.52)でした。大人では、痛み(0.69)、落ち込み(0.59)、その時の不安(0.64)がよく和らいでいました。
ロボットや物による接触は、体への効果は人による接触と同じくらいでしたが、心への効果は小さめでした(0.34と0.58)。触れる人が家族や友人か、医療の専門家かでは、大人では差がありませんでした。回数を重ねるほど効果は大きくなりましたが、1回を長くしても効果は増えませんでした。大人の研究の中央値は、1回20分・4回でした。
対象: 子ども・大人・新生児の研究(多くはマッサージ。大人の研究は女性が多い) / 限界: 触れたかどうかを参加者に隠せない研究ばかりで、小規模な研究ほど効果が大きく出やすい偏りもあった。健康な大人の心への効果は0.37と、病気のある人(0.63)より小さかった。
Dreisoernerら(2021年)[2]
人前でのスピーチと暗算という、緊張する課題の直前に、20秒のハグを受けた人、自分の体に20秒手を当てた人、紙飛行機を折った人を比べました。手を当てた人のほとんどは、右手を胸に、左手をお腹に置き、2〜3回深く呼吸していました。課題のあと、ハグと手を当てた人はどちらも、紙飛行機の人よりストレスホルモン(コルチゾール)が低くなっていました。
ただし、心拍数と、本人が答えたストレスの強さには差がありませんでした。体の反応は変わっても、「楽になった」と感じるとは限らない結果です。
対象: ドイツの大学生159人(平均21.8歳。多くが心理学の学生で、女性が多い) / 限界: 実験室での1回の結果で、日常の場面で同じ効果があるかは確かめられていない。ハグは、その日に会った実験の協力者からのものだった。
Cohenら(2015年)[3]
健康な大人404人に、14日間、毎晩電話で、人との衝突とハグを受けたかを聞きました。そのあと風邪のウイルスにさらす実験をすると、衝突が多いほど感染しやすくなる関係が、ハグをよく受けていた人では弱まっていました。感染した人の中では、ハグが多い人ほど症状が軽い傾向がありました。
対象: 健康な大人404人 / 限界: ハグの回数は本人の報告で、ハグが原因で症状が軽くなったとは言えない(関連を見た研究)。
03 まだわかっていないことひとりでも、触れる効果は得られる?
自分で自分に触れる方法は、1件の実験でストレスホルモンを下げていましたが、研究はまだ少ないです。触れる機会の少なさそのものが、孤独や落ち込みとどう関わるかもはっきりしていません。
- 自分に手を当てる方法を、日常で続けたときの効果は調べられていない。
- 研究の多くはマッサージで、病気のある人を対象にしたもの。健康な大人の、ふだんのハグや握手の効果は、まだはっきりしない。
- 5分未満の短い接触の研究はほとんどなく、短くても同じ効果があるかはわからない。
- ロボットや物による接触は、体への効果の大きさが研究によってばらつきやすかった。どんな条件なら効くかは今後の課題とされている。
04 今日からできるセルフケア触れ合いが少ない日、何をすればいい?
緊張する場面の前に、自分の胸とお腹に20秒手を当てて深く呼吸するのが、ひとりでもすぐできる方法です。家族やパートナーがいれば、相手が望むときに短い接触を、回数を重ねて取り入れます。
ひとりで胸とお腹に手を当てる練習を続けた実験は、疲れと緊張が抜けないときの5分の練習の記事にまとめています。
胸とお腹に手を当てて、20秒呼吸する
右手を胸に、左手をお腹に置き、手の温かさと重みを感じながら2〜3回深く息をします。実験では、緊張する課題の直前に行っていました。会議や発表の前に試せます。
目安 1回20秒・緊張する場面の前
身近な人とは、短い接触を「ときどき」より「こまめに」
研究では、1回を長くするより、回数を重ねるほうが効果と関連していました。肩に手を置く、手をつなぐ、ハグするなど、お互いが心地よい形を選びます。相手が望まないときはしません。
目安 1回数十秒・できる日に1回
触れる道具より、人と会う予定を一つ入れる
ロボットや物からの接触は、心への効果が人より小さめでした。触れ合いが少ないと感じたら、家族や友人と会う予定を、まず月に一つ入れてみます。
目安 月1回・予定を決めるのに5分
05よくある質問
ひとり暮らしで、触れてくれる人がいません。意味のある方法はある?
ドイツの大学生の実験では、自分の胸とお腹に20秒手を当てた人も、ハグを受けた人と同じように、緊張する課題のあとのストレスホルモンが低くなっていました。ただし本人が感じるストレスの強さには差がなく、研究も1件だけです。
ぬいぐるみやロボットでも効果はある?
137件の研究のまとめでは、ロボットや物による接触でも効果はありましたが、心への効果は人による接触より小さめでした。体への効果も研究によるばらつきが大きく、どんな条件なら効くかはまだわかっていません。
ハグは長いほうがいい?
研究のまとめでは、1回を長くしても効果は大きくならず、回数を重ねるほうが効果と関連していました。ただし5分未満の短い接触を調べた研究はほとんどありません。
知らない人や専門家に触れられても、効果は同じ?
大人では、家族や友人による接触と、医療の専門家による接触で、効果に差はありませんでした。一方、新生児では親が触れるほうが効果が大きかったと報告されています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Packheiser J, Hartmann H, Fredriksen K, Gazzola V, Keysers C, Michon F (2024). A systematic review and multivariate meta-analysis of the physical and mental health benefits of touch interventions. Nature Human Behaviour. https://doi.org/10.1038/s41562-024-01841-8
- Dreisoerner A, Junker NM, Schlotz W, Heimrich J, Bloemeke S, Ditzen B, van Dick R (2021). Self-soothing touch and being hugged reduce cortisol responses to stress: A randomized controlled trial on stress, physical touch, and social identity. Comprehensive Psychoneuroendocrinology. https://doi.org/10.1016/j.cpnec.2021.100091
- Cohen S, Janicki-Deverts D, Turner RB, Doyle WJ (2015). Does hugging provide stress-buffering social support? A study of susceptibility to upper respiratory infection and illness. Psychological Science. https://doi.org/10.1177/0956797614559284


