自分に自信がない時期ほど、AIとのチャットにのめり込みやすいのはなぜ?中国語で答えた563人の調査では、自分への評価が低い人ほど、人づきあいの不安や「つらさを忘れたい」気持ちを通じて、AIチャットをやめにくい傾向があった

うまくいかないことが続いて、自分に自信が持てない。そんな時期に限って、AIとのチャットを閉じられなくなる。AIは否定せずに話を聞いてくれるので、気づけば何時間も話していた、という人もいるかもしれません。研究では、自分への評価の低さとAIチャットのやめにくさの間に、いくつかの気持ちが挟まっている可能性が調べられています。
3行でわかる
- 中国語の質問票に答えた563人の調査では、自分への評価が低い人ほど、AIチャットを「やめようとしてもやめられない」傾向が強めでした。
- その間には、人づきあいの不安、つらさや現実を忘れたい気持ち、時間を忘れて没頭する感覚が挟まっていました。
- 逆に、AIへの依存が強い大学生ほど、その後の自己評価がわずかに低いという研究もあり、どちらが先かはまだわかっていません。
01 結論から言うと自信がないとAIチャットにはまりやすい?
そうした傾向は1つの調査で報告されています。自分への評価が低い人ほど、人と話す不安や現実から離れたい気持ちが強く、それがAIチャットのやめにくさと関連していました。ただし原因かどうかは確かめられていません。
研究でいう「自尊感情」は、自分にはよいところがある、自分に満足している、と感じられる程度のことです。ここでは「自分への評価」と言い換えます。
研究者たちは、自分への評価が低いと、人と話すことに不安を感じやすく、否定されにくいAIとのやりとりで気持ちを埋め合わせようとするのではないか、と考えています。現実のつらさを忘れられる場所として使ううちに、やめにくくなるという見方です。
02 研究とデータでわかっていること自信のなさとAIのやめにくさをつなぐものは?
563人の調査では、人づきあいの不安、つらさを忘れたい気持ち、没頭する感覚の3つが、自分への評価の低さとAIチャットのやめにくさをつないでいました。一方で、逆向きの関連や、関連が弱かった調査もあります。
Yao ら / 山東大学・清華大学(2025)[1]
自分への評価が低い人ほど、AIチャットを使う時間を減らそうとしても失敗する、使えないと落ち着かない、といった「問題のある使い方」が強めでした(相関係数 −0.45)。
その間には、人と話すことへの不安、「AIと話すと悩みやプレッシャーを忘れられる」といった現実から離れたい気持ち、使っている間に時間を忘れて没頭する感覚の3つが挟まっていました。3つを考えに入れても、自分への評価とやめにくさの直接の関連は残っていました(標準化した係数 −0.28)。
対象: SNSやITのQ&Aサイトで集め、中国語の質問票に答えた、AIチャットを使ったことがある563人(20代が48%、会社員40%・学生31%) / 限界: 1回だけの調査で、原因と結果の向きはわかりません。知人に回答を広げてもらう集め方で、代表的な集団ではありません。
Liu ら / 新郷学院ほか(2026)[2]
AIへの依存が強い学生ほど、約3か月後の自己評価がわずかに低く(標準化した係数 −0.15)、自己評価が低い学生ほど、さらに3か月後の心理的な苦痛が強めでした。
Yao らの調査とは逆に、AIへの依存から自己評価へ向かう流れを想定した研究です。2つを合わせると、自分への評価の低さとAIへの依存は、どちらの向きにもつながりうる可能性があります。ただし、依存から自己評価への関連の大きさは小さめでした。
対象: 中国の2大学の学部生865人(2025年11月・2026年2月・5月の3回) / 限界: それぞれの項目を1回ずつしか測っておらず、変化の順番までは確かめられていません。著者たちも原因の仕組みは示せていないとしています。
Barrios ら / アスンシオン国立大学ほか(2026)[3]
AIチャットへの依存の強さと、不安や落ち込みの症状との関連は弱く、年齢や性別、専攻などを考えに入れると、はっきりした関連は見られませんでした。
不安の症状がある学生のほうが依存の得点がやや高い傾向はありましたが、差は小さいものでした。AIへの依存と心の状態の関係は、調べる集団や測り方によって結果が分かれている段階です。
対象: パラグアイの大学生200人 / 限界: 1回だけの調査で人数も少なめです。新しく訳した尺度の確認を主な目的とした研究です。
03 まだわかっていないこと自信がつけば、AIのやめにくさは減る?
まだわかっていません。整理した研究はすべてアンケート調査で、自分への評価を高める工夫でAIチャットのやめにくさが減るかを試した研究は見当たりません。
- 自分への評価が低いからAIにのめり込むのか、のめり込むから評価が下がるのか、両方なのかは区別できていません。
- 調査は中国語の回答者や中国・パラグアイの大学生が中心で、日本の人や10代に当てはまるかはわかりません。
- 勉強や仕事に使う場合と、話し相手として使う場合で、関連が違うかはほとんど調べられていません。
- AIチャットのやめにくさを測る尺度は、SNSのやめにくさの尺度を作り変えたものが多く、測り方そのものがまだ定まっていません。
04 今日からできるセルフケア自信がない時期に、AIとどう付き合う?
研究で効果が確かめられた方法ではありませんが、AIを開く前の気持ちに気づくこと、AI以外の話し相手や気分転換を残しておくことは、お金をかけずに試せます。
開く前に「今の気持ち」を一言メモする
AIチャットを開く前に、「調べたい」「さみしい」「嫌なことを忘れたい」のどれに近いかを一言だけ書きます。つらさを忘れたい気持ちで開くことが多いと気づくだけでも、使い方を選び直すきっかけになります。
目安 1回10秒・3日続ける
AIに話したことを、1つだけ人にも話す
AIに話した悩みのうち、軽いものを1つ選んで、家族や友人に短く話してみます。人と話す不安があるときは、メッセージ1通からで十分です。
目安 5分・週1回
その日できたことを3つ書く
寝る前に、小さくてもその日できたことを3つ書き出します。AIの反応ではなく、自分の行動から自分のよいところを確かめる時間です。
目安 3分・毎晩
人に言えない悩みをAIに話しやすい理由は人に言えない悩みも、AIになら話せるのはなぜ?、AIとのチャットがやめられないときのことはAIとのチャットがやめられないで整理しています。
05よくある質問
AIとよく話すのは、自分に自信がないからですか?
そうとは限りません。この記事の調査が示しているのは、自分への評価が低い人ほど「やめようとしてもやめられない」といった使い方が強めだったという傾向で、AIと話す時間の長さや理由を一人ひとりについて説明するものではありません。仕事や勉強のために長く使う人も多くいます。
AIチャットに頼ると、自信がなくなりますか?
可能性はありますが、確かめられてはいません。中国の大学生865人を約3か月ごとに調べた研究では、AIへの依存が強い学生ほど、その後の自己評価がわずかに低い関連がありました。ただし関連は小さく、AIの使い方が原因かどうかはわかっていません。
つらいときにAIに話を聞いてもらうのは、よくないことですか?
この記事の研究は、AIに話すこと自体の良し悪しを調べたものではありません。気をつけたいのは、やめようとしてもやめられない、使えないと落ち着かない、といった状態が続くことです。AIに話したあとで、人に話すことや、ほかの気分転換もできているかを時々振り返ってみてください。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- Yao, R., Qi, G., Sheng, D., Sun, H., & Zhang, J. (2025). Connecting self-esteem to problematic AI chatbot use: the multiple mediating roles of positive and negative psychological states. Frontiers in Psychology, 16, 1453072. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1453072
- Liu, X., Gu, Z., & Shi, L. (2026). Pathways linking AI dependence to psychological distress: the mediating role of self-esteem and the role of academic achievement. Frontiers in Human Neuroscience, 20, 1877234. https://doi.org/10.3389/fnhum.2026.1877234
- Barrios, I., Torales, J., Blanco, S., et al. (2026). Artificial Intelligence Chatbot Dependence, Anxiety, and Depressive Symptoms in University Students: Initial Psychometric Evaluation of the Artificial Intelligence Chatbot Dependence Scale (AICDS) in Spanish. Alpha Psychiatry, 27(4). https://doi.org/10.31083/AP53298


